日本共産党愛知県議員の下奥奈歩と日本共産党愛知県委員会委員長石山淳一は6月26日、大村秀章愛知県知事に対して、「令和6年度包括外部監査の結果報告書」に対する「愛知県の見解」について、9項目の公開質問状を提出、そのあと、県政記者クラブで記者発表しました。
「愛知のPFI事業は極めて不明朗」
記者発表での石山委員長のあいさつと説明
4月25日に各県議会議員に対して「令和6年度包括外部監査の結果報告書」とそれに対する「愛知県の見解」なる文書が送付されました。これによると「報告書の内容には、本県の認識と異なる記述が含まれる」ことから、この「愛知県の見解」を作成したとのことですが、包括外部監査の報告書に対してこのような見解が出されることは極めて異例なことです。
「愛知県の見解」は、県総務局長から県会議員に送付され、県の見解への理解を求めてきましたが、そのためにも、包括外部監査の指摘に対してなぜ愛知県は極めて異例な対応を行ったのか、解明する必要があります。そこで日本共産党愛知県議員の下奥奈歩と日本共産党愛知県委員会委員長石山淳一の連名で、大村秀章愛知県知事に対して、9項目の公開質問状を愛知県に送り回答を求めることにし、先ほど提出してまいりました。その内容について説明させていただきます。
配布資料は、4種類です。1は公開質問です。2は愛知県から提出された政策顧問設置要綱などです。3は共産党議員団が作成した愛知県PFI事業の概要の一覧です。4は、4月25日に愛知県総務局長から県会議員に送付された包括外部監査報告書に対する「愛知県の見解」と送付文書です。
令和6年度の包括外部監査は、IGアリーナ・新体育館、国際展示場、ステーションAi、この3つのPFI事業を監査対象にしていますが、私どもは2016年から運営が始まっている「愛知県有料道路運営事業」も議論の対象に加えて議論する必要があると思っています。添付資料3には一覧表の一番下に有料道路を入れてあります。
今回の包括外部監査報告書が問題にしている核心は何か。それは、大村知事の高校の同級生で、コンサル会社の社長をつとめ、現在も、その任にある政策顧問の存在、その政策顧問が果たしている役割です。
政策顧問は、社長である自社のホームページで、新アリーナの建設について、「実は」と述べて「地域住民のスポーツイベントなどを想定した従来の公共的な貸館業」ではなく、「プロスポーツやコンサートなどの開催を想定し、収益の最大化を図る工夫をしている」と述べています。県民のための施設ではなく、企業が儲ける場を提供するものとして建設したと言っています。
愛知県有料道路事業はもっと赤裸々に語っています。「私は愛知県の政策顧問として、有料道路コンセッションに深くかかわりました。事業損益の会社帰属率が収入料金のわずか±1%でしかなかったのを±6%まで引き上げることができた。利潤の確保は民間が参入する最も高いハードルでした」と述べています。県民の税金が使われてすすめられた公共事業に民間企業も参入して、いかに儲けがでるようにするか、自分は儲けをだすようにしたと、その成果を語っています。
こうした考えをもつ政策顧問ですが、「監査報告書」が問題としたのは、県が行う公共事業に対する政策顧問の言動が、県知事に対して助言をおこなう政策顧問の役割の範囲を逸脱しているのではないか、ふさわしくないのではないか、ということです。
そして日本共産党としては、より根本的な問題として思うは、そもそもPFI事業というものが、県民の莫大な税金が使われる公共事業でありながら、実際には特定企業の利益を実現するものになっており、これでは、県という住民自治の機関として公平性、公共性が根本から問われるのではないか、利権と疑われかねない問題が生まれているのではないか、ということです。
以上の認識のもとに「監査報告書」と「愛知県の見解」で主要な論点となっている2つ問題を中心に公開質問状としました。
県政策顧問は「一私人」でよいのか、守秘義務が保たれない
第1の論点は、政策顧問という存在の規定とそれにかかわる守秘義務の問題です。
包括監査報告書には、新体育館の報告で、「県は、政策顧問と計33回相談、要求水準案や事業者選定で要望・修正を受ける(報告書P189)」また、国際展示場の報告で「政策顧問が「基準審議」「提案評価」する事業者選定委員会に2回出席。職員に11回助言(報告書P70)」「第4回事業者選定委員会(応募者のプレゼン、委員の意見交換と仮採点)に、政策顧問も出席(県の議事概要)」となっています。
政策顧問の役割は、知事に助言し、補佐をするところにあります。しかし、現在の政策顧問は、事業者選定委員会に出席をして、職員にまで助言をしている。
1事業で数百億円の建設費(※新体育館450億円、国際展示場316億円)、長期間にわたって千億円単位の事業運営費(※有料道路は30年間で約3300億円の料金収入)という莫大な資金や公費が投入されます。そのような事業の重要な情報が交わされる会議や委員会、機密が求められる場に、政策顧問が参加し、何度も助言をしている。これは、政策顧問としての立場を逸脱しているのではないか、と指摘しているわけです。
それに対して「愛知県の見解」は、政策顧問は公務員ではなく「1私人」であり、民法の「善管注意義務」があるから、「知り得た情報の漏洩はない」と何回も強調しています。添付資料2が愛知県政策顧問設置要綱ですが、その条文に、守秘義務の事項はありません。東京都の要綱には、「服務」「第5条 特別顧問は職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。守秘義務を遵守する誓約書を提出する」と明記しています。これに比べ、愛知の特別顧問の規定は、あまりにもずさんであり、公共性、公平性を保たなければならず、そのために守秘義務が厳格に求められる県という任務にてらして、あまりにも杜撰であり、守秘義務が保たれている保障はない、といわざるをえません。 地方公務員法第34条「秘密を守る義務」に違反すると、免職や減給の懲戒処分と1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられます。公務に係る情報は大変厳しく防護されているのです。民法の「善管注意義務」とは、「善良な管理者として注意を払う」との解説がありますが、極めて抽象的でゆるい義務です。
公平性、客観性が疑われる事業者選定委員会、
同じ顔触れの委員で事業者を「答申」している
第2の論点は、事業者選定委員会の位置づけと委員の選任の問題性です。
現在県は、事業者選定委員会を「附属機関(地方自治法138条の4第3項)」と位置づけていません。そのため、選定委員も1私人のような中途半端な身分となっています。
「愛知県PFI導入ガイドライン」は、「事業者選定委員会は、公平性、透明性、客観性を確保したうえで、落札者(優先交渉権者)を選定します」と重要な役割を定めています。実際にも、4つの事業の事業者選定委員会は、数人の選定委員の性能評価点と入札価格評価点の合計で、第1位の応募者を「最優秀提案者」と選定し、県に「答申」しています。
監査報告書は、「臨時的でも、当該機関の職務が県の意思決定過程に組み込まれていれば、当然、附属機関である」と指摘しています。しかし、「愛知県の見解」では、事業者選定委員会を「意見聴取の一環」と低く位置づけ、「附属機関条例主義に違反するものではない」としています。
また、事業者選定委員会の委員についても監査報告書は、「附属機関の構成員の職で臨時又は非常勤のものは、地方公務員法第3条第3項第2号の特別職の地方公務員に該当する」また「各種選定委員会の構成に多様性が必要である」と意見しています。
しかし、「県の見解」は「監査人の独自の見解によるものである」と一蹴しています。
実際はどうなっているでしょうか。4つの事業者選定委員会の選定委員は、全ての委員会の委員になっている方が3名もいます(添付資料3 ※山内弘隆、藤本欣一、山田 泉)。そして、多数の委員が、政策顧問が役員である(社)建設プロジェクト運営方式協議会、(社)PPP推進支援機構の理事や監事を務めています。県は、「事業者募集に当たって、選定委員名を公表した上で、選定委員と利害関係ない企業であることを応募の条件としているので、問題なし」としていますが、これは県としてはチェックしていない、ノーチェックということを吐露するものです。
「監査報告書」と「愛知県の見解」との主要な論点2つについて、説明しました。ここにポイントを置いて、県に対して質問状をだしたということをご理解ください。
発表資料
1.包括外部監査の結果報告書と「愛知県の見解」に関する公開質問状
2.「令和6年度包括外部監査の結果報告書」に対する「愛知県の見解」
3.包括外部監査が指摘する愛知県PFI事業(3事業)と愛知県有料道路運営事業の概要
(「各事業への政策顧問の関わり」「同じ顔ぶれの事業者選定委員」「前田建設工業の関わり」などがわかる)
4.政策顧問のレポート
「日本初の有料道路PPP(官民連携)はいかにして実現したか(抜粋)」
(参考資料)
1. 政策顧問が副会長の2つの社団法人の役員と会員企業(日本共産党愛知県議団が各社団法人のHPから編集)
(政策顧問と選定委員の関係、利害関係にあるゼネコン特に前田建設工業が会員企業として名を連ねていることに注目)
2. YAHOOニュース【独自】外部監査で愛知県と政策顧問のいびつな関係や入札の不透明さ指摘 県は異例の反論 5月10日
3. 名古屋市民オンブズマン記事 n18d824d238b5『政策顧問の闇』に切り込んだ愛知県包括外部監査 —— しかし知事は全否定 ~PFI 3事業に潜む不透明な構造とガバナンス崩壊の現実~ 5月29日