【しもおく奈歩議員】 愛知県東部を流れる豊川は豊橋に住む私にとっても馴染み深い川です。その豊川を水源とする豊川用水は東三河の農業をはじめとした産業と県民の生活を支える大切な役割を果たしています。この豊川用水がこの冬から春先に渇水となり、厳しい節水が強いられる事態となりました。その要因は、地球規模の気候変動から豊川水系の流域面積の狭さまで複合的だと思いますが、愛知県として取り組むべき渇水対策についていくつかうかがいたいと思います。
はじめに、今回の渇水の県民生活への影響についてうかがいます。住民には夜間の水道水使用の自粛が呼びかけられたほか、水不足により、キャベツが大きく育たず、小玉になるなど野菜の生育にも影響が出てました。介護施設では入浴やデイサービスを制限するところもありました。今回の豊川用水の節水により、愛知県として影響をどのように把握しているのか、まずうかがいます。
【水資源課担当課長】 節水対策の初期段階では、生活及び工業への影響については企業庁、農業への影響については農業水産局及び農林基盤局が、それぞれ市町、事業者、農業関係者から随時聞き取りを行うとともに、豊川用水節水対策協議会において、関係利水者間で情報共有を図りました。
次に、節水対策の強化に伴い、水道及び工業用水については愛知県企業庁渇水対策本部、農業用水については営農用水対策連絡会議により関係機関との連携等を強化するとともに、東三河県庁本部員会議を活用し、地域全体で部局横断的な情報共有体制の強化を図りました。
その後、宇連ダムの枯渇等さらなる渇水の進行を踏まえ、知事を本部長、副知事を副本部長、9局及び企業庁、病院事業庁、教育委員会の長を本部員とする愛知県渇水対策本部を3月24日に設置し、被害状況の把握や情報発信等に取り組みました。
【しもおく奈歩議員】 渇水対策として、愛知県も様々な努力をしてきたと思います。その対応に問題はなかったのか、うかがいたいと思います。
佐久間導水の使用を要請したのが遅すぎたのではないか、という点です。副知事が佐久間導水の使用を要請したのは3月27日でしたが、その10日前には既に宇連ダムの貯水率が0%となっており、用水に水を流すために初めて、宇連ダムの底から水を汲みあげることまでしていました。もっと早い決断が必要だったのではありませんか。県の認識を伺います。
【水資源課担当課長】 渇水対策については、次の手順で実施することが基本です。
まずは、利水者のみで同一水系内で対策を行う必要です。その後、利水者のみの対策では対応が困難となった場合、河川法第53条に基づいて、河川管理者に渇水時における水利使用の調整を依頼し、同一水系内での緊急渇水対策を行います。さらに、悪化した場合は、他水系への協力を依頼することとなります。
今回の豊川用水における渇水対応では、昨年8月29日以降、利水者による節水を開始し、段階的に節水を強化してきましたが、利水者による節水だけでは対応が困難になったことから、2月9日に河川管理者に豊川水系内における緊急渇水対策を要請し、19日に決定された。
しかし、その後も降雨に恵まれず、宇連ダムが枯渇するなど状況は一層深刻化したことから、天竜川水系の関係者と協議・調整を重ね、佐久間緊急導水の実施に御理解をいただき、3月27日の要請に至りました。
今回の佐久間緊急導水の要請は、適切な手順を踏んで実施されたものであり、今後とも渇水時の状況や水源の見通しを踏まえ、関係機関と緊密に連携し、適時適切な対応に努めてまいります。
【しもおく奈歩議員】 国(中部地方整備局)は6月4日に、豊川渇水報告会を開きました。中部地整がそこで述べたのは、「設楽ダムが完成していれば今回の渇水を回避できた」ということでした。今回の渇水の水不足量は4500万㎥だった。設楽ダムの貯水量は6800万㎥なので、ダムがあれば水不足は回避できたという報告です。愛知県も設楽ダムが完成していれば渇水を回避できたという認識ですか?
【水資源課担当課長】 中部地方整備局は、今回の渇水の不足量について、取水を制限した水量、河川の機能維持に必要な水量及び他水系等から融通した水量を合計し、4500万立方メートルと試算しており、その考え方は適当なものと認識しています。県としては設楽ダムが完成していれば渇水被害を大きく軽減できたものと考えます。
【しもおく奈歩議員】 その認識では、ダムが完成するまでには渇水が繰り返されると思います。いま国の水資源に対する考え方も大きく変わってきています。国の水資源開発基本計画(いわゆるフルプラン)は抜本的に改正されています。
2017年に国土審議会答申「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」では、「従来のフルプランを抜本的に見直し・・・需要主導型の『水資源の開発』からリスク管理型の『水の安定供給』へ」転換すると述べています。
「危機時における水の確保のための施策体系」では、「既存施設の徹底活用」をうたい、「連絡管の整備 危機時に用水事業者間で用水の相互融通」「ダム群連携 効率的な水運用により、危機的な渇水時にも長く持ち堪え、早期の回復が可能な対応力を確保」とあり「危機時における柔軟な対応」を求めています。水資源対策が水源開発中心から既存施設の連携での対応重視に変わってきたと考えますが、県は国の考え方をどう受けとめていますか。
【水資源課担当課長】 国土審議会の答申においては、既存施設の徹底活用に加え、ハード対策と合わせて必要なソフト対策の一体的な推進など、多様な手法を組み合わせて水資源の安定確保を図る新たな考え方が示されており、県としては、この新たな考え方に沿って施策を進めています。豊川水系における既存施設の徹底活用の取組として、水資源機構の豊川用水二期事業、県企業庁の豊橋浄水場再整備等事業により、水の安定供給の確保に努めています。
【しもおく奈歩議員】 そこで今回、知事も使用を要請した佐久間ダム導水路についてです。もっと積極的に活用できないか、伺います。
天竜川水系の佐久間ダムから豊川への導水については1957年(昭和32年)に、「分水協定」が結ばれました。いまも有効なこの分水協定では、愛知県側が使える水量や使用期間、分水量を制限する条件などはどうなっていますか?
【水資源課担当課長】 佐久間導水は協定において、佐久間ダムから豊川用水への導水期間は5月6日から9月20日、導水量は最大で毎秒14立方メートル、期間内の導水総量は年間5000万立方メートルを上限とされています。
また、佐久間ダムがある天竜川水系において節水が行われている場合、豊川用水への導水量は制限される。
佐久間導水総量5000万㎥は、水不足分をカバーできた
佐久間分水機関の通年化など協定の改善を
【しもおく奈歩議員】 この協定が結ばれてから68年が過ぎました。気候温暖化や渇水の状況、また佐久間ダムの電力需要などは大きく変わっています。年間分水総量5000万㎥の水は、今回の長期間の水不足分をカバーできる量です。また最近の宇連ダムの貯水量の変化を見ると、夏場だけでなく冬から春先にかけてもう一つ渇水のピークが来ることが増えています。
そこで提案です。水資源開発の新しい考え方に沿って、この佐久間導水を積極的に活用する考えはありませんか。具体的には、5月から9月までの期間制限をなくして通年利用を可能にする、分水量を制限する条件も見直して、5000万㎥を有効に活用できるよう、分水協定の見直しを関係機関に働きかけてはいかがでしょうか。
【水資源課担当課長】 今回の渇水においては、天竜川水系でも取水制限が実施されている厳しい状況の中、関係者の御理解と御協力により佐久間ダムからの緊急導水が実現し、大きな社会的影響を回避することができました。したがって、県としては、現在の協定は有効に機能しており、見直しが必要な状況にはないと認識しています。
【しもおく奈歩議員】 先ほど述べた国土審議会答申では、水資源開発計画について水循環政策との整合にも留意するよう指摘しています。「水利用の過程において流域を俯瞰した総合的な対応を行い。水源涵養機能といった課題に応じて、健全な水循環の維持または回復に向けた取組の計画的な推進に資するよう」にと。
具体的には、木を切ってダムをつくるよりも、流域の森林を育てて保水力を高めることにもっと目を向けなさい、ということだと思います。とくに豊川水系は、矢作川や木曽川などと比べると流域面積がはるかに狭く、急峻な地形とあいまって保水力が弱いと指摘されています。
農林基盤局からの説明では、宇連ダムの流域森林面積は約1万3700ヘクタールありますが、徐間伐(じょかんばつ)など森林を健全に育てるための手入れ作業は森林の3割程度とのことでした。これでは降った雨が山にもダムにも貯まらずにあっという間に流れてしまいます。きちんと森林を整備すれば水資源涵養量は降雨量の2割から3割にもなるとの林野庁の調査結果もあります。そこで最後にうかがいます。豊川の水資源確保には宇連ダム流域での徐間伐など人工林整備が有効な対策として欠かせないと考えますがいかがでしょうか。
【水資源課担当課長】 水源林の整備は、水源涵養の機能向上に資する必要な取り組みと認識しています。
一方で、今回のような大規模渇水への対応については、流域の森林を育て、保水力を高めることのみで、東三河地域で必要な水資源を確保することは困難であると考えます。
東三河地域においては、1977年に豊川水源基金が設立され、水源地域における造林や森林整備、作業路整備への支援が行われています。県としては、当基金への助成を通じて、水源涵養機能の向上に向けた取組を着実に進めてまいります。
【しもおく奈歩議員】 渇水対策は設楽ダム建設ありきではありません。いくつか提案しましたが、環境を守ることが豊川の渇水対策につながります。大型開発よりも既存の施設を有効活用すべきです。豊川水系の渇水対策に全庁あげて取り組むことを強く求めて質問を終わります。