決算第5号「令和6年度国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算」の認定についても反対の立場から討論します。
必要な公費負担もせず、国保料(税)のさらなる値上げを招いた
反対する理由は、国民健康保険の財政運営の責任主体となった愛知県が、国保の構造的な危機のなかで、必要な公費負担もせず、市町村に多額の納付金を課して、国保料(税)のさらなる値上げを招いたからです。
国保料(税)を引き上げた市町村数の推移を見てみましょう。自治体キャラバンの調査結果によると、5年前の2021年度は7市町村13%だけでした。それが2022年度は30市町村56%と5割に達し、 2023年度も28市町村52%、そして2024年度は41市町村76%と値上げする市町村が一気に増えました。ちなみに2025年度も42市町村78%となっており高止まりです。連続して値上げする市町村も増えており、事態は深刻です。市町村から県に納める納付金も、2021年度から2025年度までの5年間で被保険者一人当たり3万2884円、24.1%も引き上げられています。
県は、県民と市町村の負担軽減のために積極的な役割を果たせ
2018年の法改正により、愛知県は国民健康保険について「財政運営の主体」となりました。いまこそ県民と市町村の負担軽減のために積極的な役割を果たすべきです。日本共産党はこの引き上げ分にほぼ相当する一人当たり3万円、被保険者117万人なので単純計算では351億円、これは一般会計決算の歳入総額3兆1387億円のわずか1.11%です。また国保の特別会計の実質収支152億円、前年度62億円の2.45倍です。結果的に納付金の取りすぎです。愛知県の責任と負担で一般会計から国保会計へ必要な繰り出しを行い、市町村への納付金を減らして、国保料(税)を引き下げることは充分可能です。
ところが令和6年(2024年)度から6年間の「第3期愛知県国保運営方針」では、「令和11年度までに「納付金ベースの統一」すなわち、「自治体毎の医療費を全く考慮せずに、国保適用人口と所得状況だけで各自治体の納付金を決定する」とし、県内の国保料の完全統一ができる環境を醸成するとしました。そのために市町村に対しては、徹底して、「決算補填目的の『一般会計繰入金』を廃止する」方針を打ち出しました。国保財政について、一般会計からの繰入れ、公費負担の拡大は保険料を抑えるために必要です。本来、市町村が独自に判断すべき一般会計繰入金について、県が削減するよう強制することは認められません。
「国の施策・取組に対する愛知県からの要請」では、国民健康保険について、「被保険者の年齢構成が高いため医療費水準が高く、また所得水準が低いため保険料負担率が高いといった構造的な問題を抱えており、医療費に見合う保険料(税)収入の確保が困難」との認識を示して、「2018年度から、財政基盤強化策として、毎年3400億円の公費が投入されることとなったが…更なる財政基盤の強化策が必要」と国に公費負担の増額を求めています。
あわせて「地方単独の医療費助成に係る国庫負担金の減額措置の廃止」も国に要求しています。愛知県が2013年度で廃止した市町村への国保の県単独補助金(最高額28億円(1997年度)はまさに地方独自の医療費助成に係る国庫負担金の減額措置を補填するものでした。東京都では現在でも、都の医療費助成事業実施による国庫負担削減分などへの補助として一般会計から約58億円を繰り入れています。愛知県はまず自らの公費負担を決断すべきです。
国保の構造的な問題を解決するために国に強く働きかけるとともに、県民と市町村の負担軽減のために愛知県は国保運営の責任主体としての役割を積極的に果たすよう強く求めて討論とします。