議会報告

生活保護制度「権利として公平性の確保を。不当に削減した保護費の緊急是正を」      2025年9月議会/福祉医療委員会

カテゴリー:

 

【しもおく奈歩議員】 参議院選挙で、外国人を敵視する排外主義の流れが起こりました。その特徴は、他者の存在、他者の尊厳と人権を認めないことにあります。外国人は生活保護を受けやすい、外国人の犯罪が増えて治安が悪化している、中国人などに土地が買い占められているなど、根拠のないデマやウソがふりまかれ生活の苦しさは外国人のせいだという、誤った認識を広げています。

この中の一つ、外国人の生活保護が増えている、外国人だったら生活保護を受けやすい、といったことについてです。生活保護法は対象を国民と定めていますが、政府は行政措置で同法に準じて外国人にも保護を行うとしています。

  国の調査によりますと、世帯主が外国籍を有する被保護世帯の人数は減っています。2013年度が75,248人に対し、23年度は65,683人です。

  そこで、伺います。愛知県内の世帯主が外国籍を有する被保護世帯の人数2013年度と2023年度それぞれお示しください。また、生活保護の受給者全体のうち、世帯主が外国籍を有する被保護世帯の人数の割合をお示しください。そして、生活保護が受けられる外国人はどういった方が対象になるのでしょうか伺います。

【地域福祉担当課長】 厚生労働省が実施している被保護者調査によれば、県内における世帯主が外国籍を有する被保護世帯の人数は、2013年度は5,668人、2023年度は5,386人であります。

生活保護受給者全体に占める同世帯の割合については、県内の生活保護受給者数は、2013年度は79,778人、2023年度は77,350人であることから、2013年度は7.1%、2023年度は6.96%であります。

生活保護の対象となる外国人については、国の通知等により、適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住者、定住者等の在留資格を有する外国人とされております。

【しもおく奈歩議員】 いまお示しいただいたように、生活保護の外国人は、少ない状況であります。外国人技能実習生や留学生は、対象になっていません。対象を絞っているというのが事実だと思います。この間日本国内で増えてきた外国人の約8割が、就労など生活保護の対象外の在留資格の人々です。現在、在留外国人の半数以上が対象外、非正規滞在者はいうまでもありません。

この間、ふりまかれている外国人は生活保護をうけやすい、優遇されているという主張に対して、愛知県としてどのように受け止めていますか。優遇されていないということを、事実をもってしっかり示す必要があると思いますが答弁を求めます。

【地域福祉担当課長】法務省の在留外国人統計によると、県内に在留する永住者、定住者等の在留資格を有する外国人の数は、2023年末は184,327人であり、2013年末の148,553人と比較して、35,774人増加しております。一方で、県内の世帯主が外国籍を有する被保護世帯の人数は、2023年度は5,386人、2013年度は5,668人であり、282人減少しております。

 また、外国人に対する生活保護については、国の通知等により、行政上の措置として、一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱いに準じて必要と認める保護を行うこととされております。保護の内容等については、日本人と取扱い上の差等をつけるべきではないとするほか、外国人に対しても、収入や資産の状況を含め、当然一般国民に対する場合と同じく保護決定に必要な種々の調査をしなければならないとされており、各福祉事務所は、同通知等に沿って、外国人に対しても日本人と同様に、保護の決定及び実施を行っているところであり、外国人が優遇されているということはございません。

【しもおく奈歩議員】 外国人が優遇されていないとしっかりご答弁でいただきました。日本人も、本来受ける権利がある人が受けられていないという実態もあります。日本では人口の1.6%しか生活保護を利用していない状況で、先進諸外国よりもかなり低い利用率です。生活保護を利用する資格のあるひとのうち現に利用している人の割合、捕捉率は2割程度となっています。ドイツは、利用率9.7% 捕捉率64.6%。フランスは、利用率5.7% 捕捉率91.6%と高くなっています。

生活保護を受け辛くしている背景には、バッシングや人権侵害が、生活保護へのハードルを高くしています。また、国が、生活保護を引き下げ、最高裁の判決に耳を貸そうとしないことや、生活保護の申請時に財布の中身を確認する自治体があることなど、憲法25条で定められた国民の生存権を守る権利としての生活保護の受給が抑えられてきたことがあるのではないかと思います。

三重県鈴鹿市は生活保護の申請者に窓口で財布の中身を箱に出させていたことが明らかになりました。25円しかなかった男性は不安のなかで箱にお金を入れること自体が惨めな気持ちだったと、しんぶん赤旗の取材にこたえていました。鈴鹿市は、市長が謝罪し自己申告制に改めることになりました。

こうした人権侵害を行っているのは鈴鹿市だけではありません。中日新聞の9月12日の報道によりますと、愛知県内でも9つの市で財布の中身を確認するということが行われていたことがわかりました。

県の福祉事務所の管轄内では、こうした財布の中身を確認するという鈴鹿市のようなことが行われていたのか、伺います。また、県福祉事務所へ「生活保護申請時の所持金の確認方法についてという通知を出したそうですが、その通知を出した日付と内容をお示しください。

【地域福祉担当課長】 生活保護業務において、県は町村を所管しており、地域ごとに5か所の県福祉事務所を設置し、申請の受付や保護費の支給等の事務を行っております。一連の報道を受けて、県福祉事務所に確認したところ、一部の県福祉事務所において、申請者の了承を得た上で、財布の中の現金を確認した事例がありました。

  このため、今後は、申請者の心情に配慮し、所持金の確認は原則として申請者からの自己申告のみによること、のほか、改めてにはなりますが、面接時において、申請者に対し、所持金を含む現金の正確な申告の必要性について十分に説明を行うこと、面接は周囲から見えない、会話等が聞こえない環境で実施することを徹底するなど、申請者のプライバシーに十分配慮すること、を内容とする通知を、県福祉事務所に発出しました。

【しもおく奈歩議員】 通知を出した日付について、お願いします。

【地域福祉担当課長】 通知の日付につきましては、2025年9月18日でございます。

【しもおく奈歩議員】 生活保護は憲法25条を具体化したものであり、権利です。申請の際に、財布を確認する行為は人権侵害であり、許されないことだと思います。県の認識を伺います。また、財布の中身を確認していた報道されている愛知県内の9つの市に対して、県がこういう通知を出したということも含めて助言すべきではないでしょうか。伺います。

【地域福祉担当課長】申請時の所持金は、保護の要否判定に関わるため、正確に把握することは前提としつつ、県としては、申請者の心情に配慮する必要があるとの認識から、県福祉事務所における所持金の確認方法については、原則自己申告のみによるとしました。

 また、市への助言・指導については、所持金の具体的な確認方法について、厚生労働省に見解を確認したところ、福祉事務所が個別に判断することであり、国として統一的な取扱いを示す予定はない、とのことでありました。

このため、県としましては、市福祉事務所に対し統一的な指導はいたしませんが、市福祉事務所から県に相談があった場合には、県福祉事務所における取扱いを参考として伝えるなどの助言を行ってまいりたいと考えております。

【しもおく奈歩議員】 人権侵害までは言及されませんでしたけど通知を出したということでありました。また、市には指導まではできないけどということ、それはそうだと思いますけど、今回出した通知について相談があった場合は取扱いについて伝えていくということでしたので、それは是非やっていただきたいというふうに思いますけど、こうした財布を確認する行為が人権侵害であり許されないと、こういう認識のもとにたっていただきたいと思います。

 生活保護の申請は国民の権利ですということを広く広げていくことと、生活保護法にも違反した行為や無法な指導をやめさせ、必要な人がきちんと保護を受けられるようにすることが求められています。

 生活保護引き下げという、深刻な問題もあります。2013年から2015年に政府が行った生活保護基準引き下げについて、最高裁の統一判断は、厚労省が用いた指標や手続きに過誤・欠落があったとし、保護費削減を違法と認定しました。この判決は、国の生活保護行政が個人の尊厳、憲法13条、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、憲法25条第1項、生活保護法3条を侵害し続けたことを厳しく断罪した画期的判決です。

 この認定までのあいだに、裁判を起こしてから全国で原告の少なくとも232人が亡くなっています。最高裁判決後にも、猛暑なのにエアコンを設置できない神奈川の原告が亡くなりました。愛知でも、3人が亡くなりました。顔も名前もだして裁判を戦ってきた愛知の原告の方は、保護基準の引き下げで、1日1食の生活になった、お風呂は、夏でもシャワーで週一回になりました、最終的な判断が出て、これで終わる、やっと報われるそう思っていました、いつまでこの生き地獄を続ければいいのですか、速やかに最高裁判決に従った謝罪と遡及支給、そして検証・再発防止を求めますと、これは厚労省が設置した専門委員会の会合で、弁護団・原告が行った意見表明で述べられた内容です。

 生存権を脅かす事態が続いています。命に関わる被害の回復は、急務です。そこで、伺います。生活保護基準引下げ訴訟いのちのとりで裁判最高裁判決を踏まえ、被害の回復へ、生活保護利用者に謝罪し、引下げ前基準との差額保護費の遡及支給、検証を行なうことを、国に求めるべきと考えますがいかがでしょうか。答弁を求めます。

【地域福祉担当課長】生活保護の基準については、生活保護法に基づき厚生労働大臣が定めることとされております。また、今回の判決を受けて、国は、最高裁判決への対応に関する専門委員会を設置し、判決の趣旨及び内容を踏まえた今後の対応の在り方について、学識経験者による検討を進めているところであります。

 県といたしましては、こうした国の動向を注視し、国から今後の方針が示された際には、速やかに対応してまいります。

【しもおく奈歩議員】 注視だけではなくて、先ほどもお話ししたように愛知でも亡くなっている方がいる、こういう状況で本当に命がかかった問題なので、是非権利の回復として、国が早急に対応すべきということを県からも求めていく必要があると思います。健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、生存権が保障される生活保護にしていくことを求めこのテーマについては終わります。

▲ このページの先頭にもどる

© 2015 - 2025 日本共産党 愛知県委員会