今年の夏も、連日猛暑日となっています。私は、地元・豊橋市内の県立高校へ視察に行き、熱中症対策について懇談しました。各高校では、熱中症から子どもたちの命と健康を守るために、暑さ指数計を保健室で毎日、数時間ごとに記録をとっている高校や指数計を独自に増やして8個、18個と配備している高校もありました。また経口補水液を置いている、授業中でも水分補給を認めているなど、各高校様々な努力がされていることを教えていただきました。
愛知県の県立高校でのエアコン設置と公費負担の到達点
愛知県の県立高校のエアコンについては現在は、クラス教室は公費設置が進みましたが元々は公費でエアコンが設置されていたのは騒音や公害の影響で窓の開閉が困難な二校だけでした。その他の高校は、県がエアコンをつけてくれませんでした。そういう中で、子どもたちの命や健康が心配になったPTAがお金を出すからと教育委員会に掛け合い、エアコンを保護者の財政負担でつける動きが広がっていきました。「エアコンの設置は、贅沢施設だ」という見方もあり公費による設置は進みませんでしたが年々暑さが増してくるなかで、エアコンがなければ授業が受けられない命と健康に関わる問題で必須のものとして、公費負担を求めてきました。
私は県議1期目(2015年~)の時から「高校のエアコン、PTAに財政負担させているのは問題だ」と指摘してきました。2018年9月議会一般質問で、県の財政でエアコン設置を進めるよう求めました。また、毎年の予算要望でも繰り返し公費で設置(電気代含め)するよう求めてきました。その中で、普通教室は2021年度から公費負担となりました。
また、県立高校の体育館等へのエアコン設置も現在進められています。これも、2018年の一般質問や予算要望で求め、2期目(2023年~)も教育・スポーツ委員会の中で求めてきた中で実現しました。4年かけてすべての高校体育館等へ設置されます。子育て中の方や元教員の方から歓迎の声が寄せられました。費用面については、2024年の2月議会での教育・スポーツ委員会で質問し、「整備する高校の体育館・武道場への空調整備の光熱費については、体育の授業、学校行事のほか、部活動等での活用も含め、全額公費で負担する」ことを確認しています。
しかし一方で、未だ県立高校の理科室や家庭科室などの特別教室にはPTA負担が残っています。この問題について、予算要望と合わせて教育・スポーツ委員会の中で質問して負担解消を求めました。
エアコン代のPTA負担 高校三年間で3万円にも
県立高校のエアコンのPTA負担の状況はどのようになっているのか、愛知県教育委員会に聞き取って負担の有無、最大の額、最小の額、平均、保護者負担の合計を出していただきました。
県立高校エアコンの保護者負担がある高校は、全日制では147校中138校、定時制では28校中19校となっています。2023年度と比べると負担が増えていました。直近の2024年度の数字を紹介します。全日制は、最大26400円・平均10100円・最小600円(年間一人当たり)。定時制高校は、最大21600円・平均3100円・最小300円となっております。保護者負担の総額は、約9.6億円です。
全日制にとっても大きな経済的負担ですが、定時制高校の生徒は働きながら通う生徒もいる中でこの負担は重いものになっています。また、学校間で2万円以上の格差が生まれていることも問題です。同じように学校で学ぶのに、通う学校によって負担が大きく違います。
愛知県のある高校では、PTAで「空調の特別会計」があり生徒一人月額900円×12ヶ月=10800円負担していると聞きました。3年間で3万円の経済的負担になっています。「県費でお願いしたいです」と、いう声が保護者から寄せられました。
公費負担が多数 全都道府県の調査で明らかに
2023年の9月議会で、「学校設置者の責務として子どもたちの安全、健康と命を守るという立場からから、PTA負担を全て無くして、設置費用・維持費などの費用は愛知県が責任を持つべきではないでしょうか」と、全額県負担に切り替えることを求めた私の質問に県教育委員会は、正面から答えませんでした。また、「愛知県と同様にエアコンに関する負担を保護者に求めている都道府県はどこですか?保護者に負担を求めていない都道府県はどこですか? 全国の状況についてどう把握しているのか」と質問した中で、近隣県の三重県と岐阜県について普通教室、特別教室共にPTAが設置したエアコンを公費化したことがわかりました。この答弁を引き出すのに、事前に党岐阜県議、三重県議から情報提供いただいたことが力になりました。
日本共産党東京都議の方とお会いしてお話しする機会があったときに、愛知県の高校はエアコンのPTA負担があることをお話ししたところ「なにそれ?」と大変驚かれました。このときに、全都道府県の状況を把握したいと思いました。
県教育委員会に、全都道府県の実態調査を求めましたが積極的な返事をいただけなかったので、愛知県議会事務局に調査を依頼し「県立高校のエアコンの費用負担について」全都道府県の状況を把握することができました。高校エアコン代 集計結果
その調査の結果をみてみると、「普通・特別教室、体育館等におけるエアコンの使用費負担」は47都道府県のうち68%(32都府県)が全額公費で負担、都道府県とPTAそれぞれが負担しているのは、23%(愛知県含む11道県)でした。「設置にかかる費用負担」は64%(30都道府県)が全額公費負担、都道府県とPTAそれぞれが負担しているのは28%(愛知県含む13県)ということがわかりました。使用費・設置費両方とも全額公費負担となっているのは、26都府県でした。 (4県は内容によって異なると、回答)。(資料2を参照)使用費負担のグラフ
愛知県にいるとPTA負担が当たり前のようになっていて、他もそうなっていると思っていたら、実は多くのところが公費で負担するのが当たり前になっていたのです。使用費負担だけみると、東海のエリアで「都道府県PTAそれぞれ負担」になっているのは、愛知県だけです。財政力指数全国2位の愛知県が、子どもたちの命と健康守る部分に予算を付けずに置き去りにし、自己責任にしてきた異常さが浮き彫りになりました。
PTA費は打ち出の小槌ではない
調査結果を示して負担解消と設置拡大を強く要望
この調査結果を踏まえて、8月7日に*再び「県立高校エアコン代の保護者(PTA)負担廃止を求める要望」を県教育委員会へ申入れを行い、「生徒の生命と健康を守るため、愛知県が責任を持ってすべての学校の教室にエアコンを設置するとともに、全国の調査結果も受けとめて、学校の備品としてのエアコンの設置・使用及び維持管理は全て公費でまかなうべき」と、求めました。(*6月に、一度熱中症対策の申し入れの中でも要望しました)
今回は、PTA負担解消に絞っての要望としました。県教育委員会は、「PTA負担が良しとは思っていません。特別教室へのエアコン設置について、検討しなきゃいけないと思っています」と、述べられました。県立高校の特別教室のエアコン設置率は、愛知ではまだ53.8%です。PTA負担を解消し公費での設置へ熱中症から子どもを守るために、早急に進めるよう求めました。
PTA費は、打ち出の小槌ではありません。子どもたちの命・健康に関わるものは、公費で負担すべきです。教育は子どもの権利であり、憲法26条ですべての国民は等しく教育を受ける権利があると述べられています。教育基本法では、教育の機会は平等に保障されるべきことや、差別されないことが位置づけられています。「学校保健安全法」の第4条の規定に基づき、学校設置者は、「当該学校の施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする」とあり、この法律は、財政上の措置についても国及び地方公共団体に求めています。
私たちは、エアコンのPTA負担解消とともに、この連日の猛暑から命を守るために、教員や生徒が日常的に使用する教室すべてにエアコン設置することを求めています。特別教室だけでなく、教員の準備室にエアコンが設置されていない、定時制高校の給食調理室にもエアコンがないという問題もあります。また、学校断熱化も進めていく必要があります。
教育予算を増やす県政への転換を
最後に、今回の調査結果で「エアコンの保護者負担は当たり前じゃない、全額公費負担は実現可能」ということがよくわかりました。今後、関係する民主団体にもこの調査結果を知らせて、県立高校のエアコンPTA負担解消、全ての教室にエアコン設置をと県民のみなさんとともに声をあげて、実現へ力をあわせていきたいと思います。
教育にかかる負担の軽減は、子育て支援策の大きな課題の一つです。今回は、エアコンのPTA負担解消に焦点をあてましたが、高校生の交通費、制服代など様々な財政負担が大きくのしかかっています。さらに、タブレット端末も来年度からは家庭の負担になってしまうという問題もあります。
どんな経済的状況にあってもお金の心配なく教育を受けられる愛知県へ。公立高等学校費46位(高等学校に関わる予算等全国順位-総務省統計でみる都道府県のすがた2025年版)という全国最低クラスの教育予算の一方で、大型開発・大企業応援となっている愛知県政を大本から変えて、教育に関わる予算を抜本的に増やすことを引き続き求めていきます。
今後、もっとPTAで負担しているものは何があるのかということも気になっているので調べてみたいと思っています。