2025 年6 月26 日、愛知県知事に対し、日本共産党愛知県委員会委員長 石山淳一と日本共産党愛知県議会議員下奥奈歩は、包括外部監査の結果報告書と「愛知県の見解」に関する公開質問状(クリックしして開示)を提出しました。7月10日、知事から「公開質問状への回答」(クリックして開示)が文書で届きました。
8月21日、県政記者クラブで記者会見を行い、「知事からの公開質問状の回答」について、以下の見解を発表しました。
「令和6年度包括外部監査の結果報告書」とその内容に異を唱える「愛知県の見解」が同時に公表されるという(前代未聞)、極めて異例の事態に対して、日本共産党は6月26日、愛知県委員会の石山淳一委員長としもおく奈歩県議会議員の連名で大村秀章愛知県知事あてに9項目の公開質問状を提出しました。愛知県からは、指定した回答期限の7月10日に別紙のとおり、愛知県知事としての文書回答がありました。
回答内容を公表する記者発表まで日数が経過してしまい、申し訳ありません。この間、回答内容の分析及び新たな情報の確認などの作業を行ってきたところです。
質問した9項目について、愛知県はていねいに文書で回答してきました。しかしながら、回答内容は一言でいうと「愛知県の見解」で述べてきたことの繰り返しであり、私たちの疑問を解消するものではありませんでした。
監査の見解を頭から否定するのは、あまりに非常識
問題の核心は、包括外部監査がとりあげた大村知事肝いりの愛知県の三つの大型プロジェクト(新体育館、国際展示場、ステーションAi)が、県民の莫大な税金を投入する事業でありながら、特定企業の利益のための事業となっていることにあります。
これらのビッグプロジェクトを進めるために愛知県が導入し推進してきたPPP、PFI、とりわけコンセッション方式のなかで、行政の公平性や透明性が疑われると、公的な報告で指摘されたのです。とりわけ政策顧問の位置づけと行動、事業者選定委員会の位置づけと委員の選任状況について外部監査から厳しい指摘がされたのに、県は、「見解が違う」、の一点張りです。その対応の異常さが、今回の回答であらためて浮き彫りになりました。私たちが新たに知りえたこととあわせてご報告します。
第一に、監査結果報告書の受けとめについてです。一問目、二問目の回答では、監査意見に対し、「監査人独自の解釈」とか「本県の認識や事実と隔たりがある」「事実誤認や誤解を与える可能性がある」などの記述が目立ちますが、監査に臨んだ弁護士は包括外部監査に取り組んで3年目です。議会の議決を経て県から監査を委託しておきながら、自分たちとは見解が違うから、と監査の見解を頭から否定するのは、あまりに非常識ではないでしょうか。
見解が違っても、まずは監査の指摘を受けとめ、ルールに基づき必要な見解を主張すればよいだけの話です。議論すらして欲しくない、という態度がむき出しです。この回答で、県の対応の異常さがますます際立ちました。監査を依頼した相手方に対してあまりに失礼ですし、県の見解に異論をはさむな、と言うことは、外部の目で行政をチェックする包括外部監査の制度そのものを否定するに等しい態度です。なぜ、ここまで頑ななのか。やはり政策顧問について触れてほしくないのだ、と思います。
「一私人として守秘義務を守っている」の根拠なし
第三問への回答では、政策顧問の守秘義務は保持されている、との見解が繰り返されています。しかし、ほんとうに彼は一私人として守秘義務を守っているのか?この間、政策顧問が社長をつとめる建設コンサルタント会社では、政策顧問として知りえた情報が社内で公然と語られていたという情報が私たちに届いています。一私人としてではなくコンサル会社ぐるみ愛知県の政策顧問として扱われていたのではないのか?知りえた情報を社内で利用していたことはなかったのか?政策顧問の肩書や政策顧問として知り得た情報を会社の利益のために使っていたとしたら問題です。守秘義務を伴う契約書すら交わしていない政策顧問に対して、「知りえた情報を自己の利益に利用することを防止する方法もない」とする監査報告書の指摘を否定する根拠は、県の回答では示されませんでした。
飛びますが、第九問で、政策顧問の知事の海外出張への同行について質問しました。政策顧問からの自己負担で同行したいとの申し出があったから同行させたとの回答ですが、本来、業務に必要ならば旅費はきちんと支払うべきです。そうしていないのは、政策顧問にはそこまでしてもらう必要がないと県は判断しているからではないでしょうか。では、ほんとうに海外渡航費用は自己負担なのか?政策顧問が社長をつとめる会社の費用で渡航しているのではないか?また海外渡航時のスケジュールは、守秘義務があるにもかかわらず政策顧問が社長をつとめる会社の政策秘書が調整しているのではないか?あわせて明らかにする必要があると思います。
事業者選定委員の多くが県政策顧問が主導する社団法人の理事や監事
第四問は、事業者選定員会についてです。「選定委員と利害関係のある企業は事業に応募できないのだから、問題はない」という回答です。しかし、この「関係」とは資本関係、役員の兼務に限られています。私たちの調査では、事業者選定委員の多くが政策顧問が主導する二つの一般社団法人に理事や監事となっており、企業会員には受注企業の一つである前田建設工業が名を連ねています。やはり事業者選定委員会の位置づけも包括外部監査の指摘とおり見直す必要があるのではないでしょうか。(※ 包括外部監査 新体育館など愛知県のPFI4事業の概略表)
第五問から第八問までの回答へのコメントは時間の関係で省略します。
全体として、ますます疑惑は深まってきたと思います。
政策顧問は、一私人としてではなく、コンサル会社の社長として、会社の利益につながる情報を愛知県から取得し、活用していたのではないか。
つながりの深い人物を次々に事業者選定委員会の委員にして事業者選定への影響力を高める。事業の受け皿として、単なる建設会社からコンセッション方式を活用して公共施設の建設だけでなく長期間の運営まで商売を広げる路線を掲げた前田建設工業と利害が一致し、ピタッとはまる。その方向へ、愛知県の事業方式を誘導し、事業者も選定した構図が浮かび上がってきます。
損害を受け、不利益をこうむるのは県民
結果として、県は何も損害を受けていない、と回答にはありますが、損害を受け、不利益をこうむるのは県民です。
例えば、新体育館でも県民のスポーツ利用やアーティストの意向よりもスポンサーや興行優先、バリアフリーへの配慮も足りず、事業費(運営権対価込み)が他の提案より約80億円も高いプランが採用されたのではないか。豪華な新アリーナですが、予定の数倍、40室ものVIPルームをつくったことで、ファンとの交流を大切にしたい多くのアーティストからそっぽを向かれる会場となってしまい、名古屋飛ばしの解消にも貢献しない会場となってしまった。税金の使い方が問われますし、県民が損害を受けています。
知事と関係が深い政策顧問には、職員の誰もモノが言えない、ラインの指示も無視した業務への介入があっても誰も止められない、そんな職場になってはいなかったのか、あわせてとても気になります。
県議会はどうでしょうか。地方自治法第252条の34は、「議会は監査人に対して説明を求めたり、意見を述べることができる」と規定されています。これからはわかりませんが、これまでこの件に関する議会での質問がないのも気になります。忖度や圧力があったのでは、と思います。
行政のおかしいこと、まちがっていることには、きちんと意見を述べて正していく。そのために議会があり、監査があり、さらに外部監査という制度まで設けています。
職場を黙らせ、議会を黙らせ、今度は自ら任命した外部の監査まで黙らせようとする愛知県の異様な姿勢の背景に何があるのか、日本共産党は引き続き、みなさんと共に問題解明を進めていく決意です。県民のみなさんにも広く情報提供を呼びかけます。どうぞ、よろしくお願いします。
参考
〇PPP(Public-Private Partnership)とは、行政と民間が連携して公共サービスを効率的に提供する仕組み)。
〇その一形態であるPFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法
〇公共施設等運営(コンセッション)方式とは、利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共 主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式 (平成23年PFI法改正により導入)。 公的主体が所有する公共施設等について、民間事業者による安定的で自由度の高い運営を可能とし、利用者ニーズを反映した質の高いサービスを提供できるとするもの。施設所有権を持つ公共が運営権を設定し、民間事業者は運営権対価を支払い、施設を自由に運営する。
〇二つの一般社団法人「建設プロジェクト運営方式協議会」「PPP推進機構」
〇包括外部監査の指摘に対する通常の対応…略
〇前田建設の経営方針とPPP・・・略
〇新体育館の事業者選定に関する問題点…略
〇地方自治法第252条の34
(議会による説明の要求又は意見の陳述)
第252条の34 普通地方公共団体の議会は、外部監査人の監査に関し必要があると 認めるときは、外部監査人又は外部監査人であつた者の説明を求めることができる。
2 普通地方公共団体の議会は、外部監査人の監査に関し必要があると認めるときは、外部監査人に対し意見を述べることができる。