議会報告

提出議案に反対討論          2025年6月議会

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 日本共産党 しもおく奈歩です。私は、只今議題となっております。第104号議案令和7年度愛知県一般会計補正予算について、及び第108号議案、第110号議案、第123号議案、第124号議案について反対討論を行います。

  まず、第104号議案 令和7年度愛知県一般会計補正予算についてです。 反対理由の第一は、米国の関税措置の影響を受ける中小・中堅企業への支援についてです。

 海外からの輸入品に一方的に関税を課すトランプ米大統領のやり方が世界に衝撃と怒りを広げています。「トランプ関税」に毅然と抗議し、撤回を求めると同時に、トランプ関税への対応は必要です。しかし、補正予算に計上された、「自動車サプライヤー支援」の次世代自動車産業振興事業費及び「幅広い産業の海外販路開拓支援」の国際経済連携推進事業費については賛成できません。理由は、そもそも大企業として位置づけられてきた中堅企業を中小企業支援の枠組みで支援するものだからです。

中小企業のための予算を大企業支援にも使えるようにするものであり、結果的に中小企業・小規模事業所への支援が圧迫されかねません。中堅企業とは、2024年の産業競争力強化法の改定で新たに定義されたものであり、従来は大企業とされていた企業のうち従業員数が2000人以下の企業です。全国では約9000社、愛知県でいえば432社で合計の売上高は19兆3000億円です。

本来、中小企業基本法で定める中小企業よりも規模の大きい企業、自力で十分経営できる大企業への支援を中小企業支援の名を借りて行うのは問題です。中堅企業への支援がどうしても必要ならば、中小企業支援の枠に押しこめるのではなく、大企業向けの補助金等を削り、中小企業への支援とは別枠で制度設計すべきです。東京商工リサーチが行った、「トランプ関税に関するアンケート」の中で、政府や行政に求める支援について中小企業では、「事業や雇用維持に向けた返済義務のない給付金・助成金の支給」が38.6%で最大となっていました。また、名古屋商工会議所の調査では、製造業ではトランプ関税の影響が既に出ていると回答した割合が23%、自動車・自動車部品では29%となっていました。「先が見通せず不安」という声もいくつかありました。今、緊急に行わなければいけないのは中小企業への直接支援です。

 第二は、あいちシンクロトロン光センター整備費補助金です。これこそ、典型的な大企業支援そのものです。トヨタ自動車やデンソーなど特定大企業の研究開発を促進するためであり、自力で十分に研究開発できるだけの資金力を持っている大企業へ、県民の税金をさらに投入することはすべきではありません。 第三に、アドバンスド エアモビリティ アジアシンポジウム開催支援についてです。ドローンや空飛ぶ車の電動化、自動化など次世代の空の移動手段の開発を促進し、空港の新たな利活用の可能性を検討するとしています。 今、ドローンは軍事転用され、ロシアによるウクライナ侵略の主要な兵器となっています。イスラエルによるガザの虐殺でも使われていました。最近では、イスラエルとイランの衝突にもドローンが兵器として利用されました。そして、アメリカがイランの核施設を空爆したということも起きました。航空技術がすでに軍事に転用されてしまっています。また、このシンポジウムの運営委員会は「伝統的な航空業界/規制当局、軍関係者、新規参入者/非産業部門間の理解と協力をサポート」することも重点にしていることや参加者の中に「軍事および民間航空機関の代表者」も入っているということが、ホームページに掲載されていました。航空産業への支援は、一歩間違えば新たな兵器開発・軍事産業への支援となりかねません。しかし、このシンポジウムへの支援では航空技術の軍事転用への歯止めはなにもありません。航空産業の振興には、平和利用に限定する仕組みを設けるべきです。軍事転用への明確な歯止めがないままの航空産業支援は、行うべきではありません。

 第四に、電子処方箋導入促進費補助金についてです。医療のデジタル化を促進する、国の医療情報化支援基金の交付決定を受けた病院や診療所、薬局が電子処方箋を導入するための補助の一部を県が担うというものです。電子処方箋の導入に伴い、医療機関や薬局がシステムの設定を間違え、医師が処方したものとは違う薬が画面に表示されるトラブルがこれまでに少なくとも7件起きていることが確認されたと昨年報道されていました。慎重な検討が必要であり、拙速な導入推進は立ち止まるべきです。この補助に含まれるリフィル処方箋の導入も問題です。一度診察すれば一定期間は再診なしに薬局で同じ処方箋により3回まで調剤できるというものですが、医療費抑制を目的に長期処方を助長するもので、患者の疾病・状態管理に支障を来しかねず、命にかかわる問題に直結します。医療費抑制ではなく、個々の患者に寄り添える医療体制構築こそ求められています。 

また、医療現場からは新たな機器の導入により負担が増えるという声もあります。いま必要なのは、機器の導入への補助ではありません。国の医療費抑制によって約6割が赤字となっている、医療機関経営への直接支援です。以上、4つの理由により第104号議案には賛成出来ません。

 次に、第108号議案 愛知県県税条例の一部改正についてです。 この条例改正は、軽油取引税の課税免除措置の対象となる外国の軍隊に関する規定を整備するとして、具体的には、免除措置の対象国を日豪円滑化協定の対象であるオーストラリア一国から、地方税法施行令で定める円滑化協定の締約国に拡大するものです。円滑化協定とは、二国政府間で締結された、軍事共同訓練および共同作戦を提供する防衛・安全保障協定であり、そのモデルは日米地位協定です。対象となる円滑化協定の締約国がオーストラリアからフランスへ拡大される予定ですが、これはアメリカ主導の軍事的連携強化の一環を担うものに他なりません。アジア太平洋地域での軍事的緊張を高めるものであり、賛成できません。

 次に、第110号議案 愛知県国際展示場条例の一部改正についてです。愛知県国際展示場の駐車場使用料の値上げ提案ですが、理由は隣接する中部国際空港の駐車場料金の値上げに合わせるからとのことです。県の公共施設の料金設定が、隣接する株式会社の意思決定に左右されて良いのでしょうか。空港島エリア全体で駐車場をどう活用するのか検討することも含めて、施設の所有者としての主体的判断が必要だと思います。県民の負担増につながる、駐車場使用料の値上げに賛成出来ません。

 最後に、第123号及び第124号議案訴えの提起についてです。いずれも、高校生へ貸し付けた「定時制課程及び通信制課程修学資金貸付金」及び「奨学金貸付金」の返済を求めて訴えを起こすものであり賛成できません。返済能力を考慮せず、高校生の時に貸し付けた奨学金です。さらに大学で多額の奨学金を借り、数百万の返済に追われている若者も少なくありません。裁判に訴えて機械的に返済を迫るのではなく、個々の実情を十分に把握したうえで、一人ひとりに寄り添った対応に力を尽くすことが必要だと思います。

 高校授業料の実質無料化が進行するなかで、子どもたちに、奨学金という名の借金を負わせ、取り立てるやり方はやめるべきです。そもそも、奨学金は、国民の教育を受ける権利を保障するもので給付を基本にするべきです。高すぎる学費の引き下げ、返さなくていい給付型奨学金への転換と返済支援を決断し、進めていくことが必要です。憲法は「教育の機会均等」=どんな経済的条件でも平等に教育を受ける権利があることを保障しています。お金の心配なく学べる、若い世代に寄り添う県政への転換を強く求めて、討論とします。

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