【しもおく奈歩議員】 医療機関が行う電子処方箋の導入支援の補正予算についてです。厚生労働省が、電子処方箋導入費用などの補助対象を3月末だったものを、2025年9月までに導入した医療機関等に変更されたことにより、県の予算も増額されました。 まず、伺います。全国の電子処方箋の導入率、愛知県内の導入率を病院、診療所、歯科診療所、薬局それぞれどういう状況になっているのかお示しください。
電子処方箋 導入状況 2025年3月末時点
全国 愛知 補正後の見込み
病院 9.2% 8.8% +6.8%= 15.6%
診療所 12.6% 16.1% +0.3%= 16.4%
歯科 3.3% 2.7% +1.6%= 4.3%
薬局 73.4% 71.7% +27.2%= 98.9%
【しもおく奈歩議員】 薬局では、進んでいるものの病院など医療機関では導入が進んでいないのが現状だと思います。愛知県保険医協会は、2024年9月に「物価高騰に関する医療機関の影響調査」を実施されました。その中で、「マイナンバーカード、電子処方箋など、人手や手間ばかりが増えることを続けている。」「新システム導入に伴う費用も重なり、経営を圧迫している。」といった、声が寄せられていました。また、国がすすめる医療DXのためのシステム導入や維持に伴う費用も重なり経営を圧迫しており、すでに閉院した医療機関や廃業を検討しているという深刻な実態もあるそうです。
病院などでの導入が進まないのは、費用負担や経営負担が一因にあると考えますが、導入が進んでいない状況を県はどのように認識されているのか伺います。
【医薬安全課担当課長(医薬)】 国が2025年2月に行ったアンケート調査によれば、薬局に比べ病院、診療所の導入が進まない理由としては、システムベンダーといわれる電子処方箋を発行・管理するためのシステムを開発・提供する事業者の対応の遅れや、対応可能なシステムベンダーの不足、システム導入・改修費用が高額であることなどが挙げられており、県としても同様に考えています。
【しもおく奈歩議員】 物価高騰への対応や人件費など、今必要なのは機器の導入への補助ではなく病院経営への直接支援だと思います。東京都では、民間病院への321億円の補助事業が2025年度予算に計上されました。愛知県でも、こういったことを取り組んでほしいです。
電子処方箋の導入に伴い、医療機関や薬局がシステムの設定を間違え、医師が処方したものとは違う薬が画面に表示されるトラブルが、これまでに少なくとも7件起きていることが確認された、と昨年報道されていました。誤った薬が渡されることは無かったということですが、もし誤表示に気づかず処方した場合、患者さんの健康に影響する可能性があります。また、処方箋の発行形態の確認、処方内容のサーバー登録など事務負担が増加することもあり慎重な検討が必要だと思います。
トラブルや現場の混乱、事務負担など現場の声を丁寧に聞き取り、拙速な導入推進は立ち止まるべきではないでしょうか。答弁を求めます。
【医薬安全課担当課長(医薬)】 昨年12月に発生した電子処方箋システムのトラブルについては、国から、一部の医療機関や薬局において医薬品のシステムコードの誤登録により、本来の処方と異なる情報が薬局に伝達されたとの報告がされています。これを受け、国では、医療機関等に対して、医薬品のシステムコードの設定が適切に行われているか一斉点検を実施しており、それ以降、全国で同様のトラブルが発生したとの情報はありません。
県としては、引き続き、質の高い医療サービスの提供と医療機関・薬局の業務効率化を進めていくため、電子処方箋の導入促進を図っていきます。
【しもおく奈歩議員】 保険医協会の調査で寄せられた声をみても、拙速に進めていいものとは思いません。
この補助内容には、リフィル処方箋の導入も含まれています。これは、1度診察すれば一定期間は再診なしに薬局で同じ処方箋を3回まで出すというものです。この導入について、全国保険医団体連合会は「医療費抑制を目的に長期処方を助長するもので、患者の疾病・状態管理に支障を来しかねない。」と指摘しています。命にかかわる問題に直結します。医療費抑制ではなく、個々の患者に寄り添える医療体制構築こそ求められていると思います。
最後に伺います。今回、国の期間延長を受けて電子処方箋推進へ補助を出すのは医療費削減になる、というお考えがあるかということでしょうか。答弁を求めます。
【医薬安全課担当課長(医薬)】電子処方箋を導入することで、医療機関や薬局では、直近から過去5年分の処方・調剤された情報をシステム上で確認することが可能になることから、患者への重複投薬や多剤投与が減り、より安全安心な医療を受けることができるとともに、医療費の適正化につながると考えています。
【しもおく奈歩議員】 政府は今後「マイナ保険証」をもとに、電子カルテや電子処方箋を標準化しデータの共有をはかる計画としています。マイナ保険証への誘導につながる恐れがあります。
いくつもの問題がある、電子処方箋の導入推進は立ち止まるべきということを申し上げ、質疑を終わります。