私は、ただいま議題となっております。第1号議案 令和7年度愛知県一般会計予算について、及び第5号議案、第40号議案、第99号議案について反対討論を行います。
今回愛知県の予算には、保育料無料化の第二子への拡充や保育士の配置改善事業費の新設、性暴力対応看護師セインの宿直の全額補助など、県民の要望として求めてきたことが前進した部分もあります。しかし、暮らしに冷たく、大企業には優遇、大規模イベントに多額の税金を投入するものであり、全体的には県民のくらしを守る役割を果たす中身にはなっていません。
まず、第1号議案 令和7年度愛知県一般会計予算についてです。
理念から逸脱し、県民に莫大な費用負担をもたらす
アジア・アジアパラ競技は問題
反対理由の1点目は、中部国際空港代替滑走路整備への支援など、「中部国際空港の将来構想」への支援に熱心になっていることです。
先月、開港20周年を迎えた中部国際空港セントレアは、中部圏の玄関口ですが、旅客貨物とも利用は伸びていません。空港会社の公表資料によると、愛知万博が開かれた2005年度が1230万人、訪日客が増えた2019年度が1260万人でした。その後、コロナで落ち込んだ需要は戻っていません。「完全24時間化」「大規模改修への対応」を理由に、代替滑走路を推進、2027年度末に供用開始予定としています。合わせて、新たな滑走路の新設の構想もあります。需要低迷の中、不要不急の空港機能の強化を行うべきではありません。
2点目は、大規模イベントやアジア・アジアパラ競技大会への多額の予算投入についてです。
まず、愛知万博20周年記念事業についてです。愛知県は、3月25日~9月25日にかけて記念事業を開催します。総事業費は、約17億円です。愛知の大型プロジェクトとして位置付けられています。また、大阪・関西万博とも連携しています。 半年間に及ぶ大型事業ではなく、もっと簡素な記念事業にすべきだと思います。
次に、アジア・アジアパラ競技大会についてです。開催まで1年半をきったアジア・アジアパラ競技大会ですが、予算の規模と中身が不透明で、県の負担増への歯止めもなく、このままでは「簡素な大会」どころか莫大な費用負担により県民生活と県財政を大きく圧迫する事態になりかねません。
愛知県の負担は400億円とした、アジア競技大会招致当初の枠組は変えないとの議会答弁を繰り返しつつ、予算では組織委員会への負担金だけで既に898億円規模、アジアパラ競技大会の県負担も含めて当初予定の約1.7倍となっています。歯止めはあるのか、と聞いても明快な答弁はありませんでした。組織委員会が必要といえば青天井に、いくらでも県の負担が増えていってしまいます。
また、愛知県最大のビッグプロジェクトとなっている大会ですが、2025年度予算の重点事業をまとめて108項目が紹介されている、「予算の概要 参考資料」には、なぜか全く掲載されていません。大会一年前なのに不自然です。掲載しなかった理由について伺うと、当局は、「不確定要素が多いことから、総合的に判断し、参考資料は作成していない」と答弁されました。予算の規模も事業内容も、議会や県民にまともに説明できないのです。このままでは、この大会についての予算は白紙委任せよ、ということになってしまいます。予算を審議する議会軽視だと思います。
さらに、今大会を契機に2027年のリニア開業をアジアに発信し、宣伝の場にしようとしていることやビジネスチャンスととらえ国際競争力の強化を掲げていることも問題です。OCA憲章には「アジアにおけるスポーツまたは選手のあらゆる政治的、商業的その他不適切な利用に反対する」とあります。
大型プロジェクトと産業政策のためにスポーツを利用する、こうした発想から抜け出し、大会本来の意義とスポーツの価値そのものを大切にする県政への転換こそ強く求められているということを指摘しておきます。
受験競争の低年齢化・激化を招く県立の中高一貫校
疲弊する教員、臨時教員に頼る県教委
3点目は、中高一貫校と教員不足の問題についてです。中高一貫校の入試が行われ、探究学習重視型の学校では入試倍率が高くなり、結果的に受験競争の低年齢化、激化を招きました。探究型とよばれる中高一貫校の各校は、文科省がすすめてきたスーパーサイエンススクール構想など、一部のエリートを育成する教育を受け継いだものです。「学歴が高くないと豊かな生活ができないと思わせる政治の責任は重い」という声も伺ってきました。本来の教育のあるべき姿にたって、改めて中高一貫校は見直すべきです。
教員不足について、「早急に解消すべき課題」としながらも全く解決も解消の見通しもたっていないことが、委員会の質問の中で明らかになりました。厳しい職場環境の下で、精神疾患で休職する教員は、5年間で237人から361人へ1.5倍以上も増えています。しかし、教員不足について県教育委員会は、「やがて子どもの数が減るから正規の教員採用は抑制する」という姿勢から一歩も抜け出しません。正規の採用を抑えた分を多くの臨時教員に頼っています。県が推し進める、国際バカロレア教育の教員採用には条件をクリアすれば一次試験免除や加点などの優遇があります。いわゆるエリート教育には手厚い一方で、現場経験を積んだ臨時教員の希望者を正規採用とすることには消極的です。
教育に格差を持ちこんではいけません。子どもたちの権利を守り保障するためにも、一刻も早く教員不足を解決すべきです。
4点目は、結婚支援の取り組みについてです。今回、愛知県こども計画 はぐみんプラン2029では、愛知県が運営する「あいち結婚サポートセンター登録者」の成婚組数を2025年度からの5年間で500組とする数値目標まで設けています。これは、よりプライベートな領域に踏み込むものになり問題だと思います。
自治体が婚活支援の旗振りを行うことは、いつ誰と結婚するか、結婚しないか、子どもを産むか産まないか自由な生き方を認める、リプロダクティブ・ヘルス・ライツやジェンダー平等に反するものです。
今年は、女性差別撤廃条約を日本政府が批准してから40年の節目の年です。男女の賃金格差是正、選択的夫婦別姓などジェンダー平等を大きく前に進めて、個人の尊厳が大切にされる愛知県政の実現こそ求められています。
5点目は、警察手数料の道路使用許可手数料についてです。この中に、デモ行進への申請に対し、2500円徴収することが含まれています。これは、2024年6月から始まったものです。これに対し、民主団体などから怒りの声があがり「デモ申請に係る手数料徴収を免除するよう求める」署名は、1827筆集まりました。
問題は、憲法に保障された国民の重要な権利である、表現の自由、政治的意見表明の一つであるデモ行進についても一律2500円の手数料を徴収するとした点です。国民の大切な権利に制限を加えることはあってはならないことです。
デモ申請に手数料、国民の表現行為・活動を委縮させることは問題
県警から、愛知県だけがデモを含めた街宣活動やイベントなどの行為は手数料を徴収していないと説明されましたが、調べてみると東京都、大阪府、兵庫県などいくつかのところでは、デモ申請にかかる道路使用許可の手数料が免除されています。
また、説明が途中で変わり、デモ申請については労働組合や自治会、町内会、農協や漁協など警察が認めた公益性のある団体は免除するというチラシがあとから出てきました。市民団体や有志のデモでは徴収するが、労組などは除外する。公益性の有無を、県警が勝手に決めて線を引くことも問題です。
そもそもなんで手数料を徴収するのか、県警は愛知県の行財政改革の一環、受益者負担の徹底だと言います。公安委員会に届けられるデモ申請は労組などからのものもふくめ、2024年一年間で137件でした。すべて手数料の対象としても、年間34万2500円です。実際には、免除団体からの申請もあるのでもっと少ないと思います。
デモ行進は政治的主張の表現行為であり、それ自体が公益性をもっています。国民の表現行為に対してお金を取り、自由であるべき活動を委縮させることは問題です。手数料の徴収はきっぱりやめるべきです。
6点目に、財政調整基金についてです。
2024年度末の財政調整基金残額は、これまで最高の2835億円になる見込みです。基金にためこむのではなく、いまこそ物価高騰の暮らしへの支援や、「岩手県や徳島県のような賃金引上げへの財政支援」に活用すべきです。
以上の理由により、第一号議案には賛成できません。
低所得世帯が多い国保料金の値上げは問題
n次に、第5号議案 令和7年度愛知県国民健康保険事業特別会計予算についてです。
被保険者一人当たりの納付金が、2160円増加し、16万9090円になりました。この4年間で約3万3000円も増加しています。低所得世帯が多い国保加入者にとっては重すぎる負担です。あわせて保険料の統一化に向けて、赤字解消計画と称して一般会計からの法定外繰り入れをやめよと、市町村への指導を強めています。余剰金を活用して、値上げ幅を抑えてはいますが、納付金のアップと赤字解消計画をおしつけ、この二つが市町村国保の値上げを招いています。
愛知県が、一般財源を使って3年で上げた納付金をもとに戻せば保険料が一人年3万円下がります。県の予算のわずか1.3%で実現できます。国民健康保険料の引き下げを積極的に進めるべきであり、国民健康保険料の値上げを進めることに賛成できません。
大企業・先端産業ばかりの支援は問題
苦労して賃上げする中小・小規模事業者への支援こそ
次に、第40号議案 産業空洞化対策減税基金条例の一部改正についてです。
産業空洞化対策 減税基金と名称変更では済まされない問題です。そもそも、法人県民税減税の代わりに基金を積みたて企業を支援するというものです。しかも、IT企業、航空宇宙産業、スタートアップ支援、高度先端産業への支援が中心で、中小企業、小規模事業者には恩恵がありません。内部留保をため込む大企業へきちんと課税をし、苦労して賃上げしている中小企業、小規模事業者への直接支援こそ行うべきです。大企業応援中心の基金には賛成出来ません。
最後に第99号議案 教育委員会教育長の選任についてです。
県教育委員会は、県政の単なる一部局ではありません。首長から独立した行政委員会として位置付けられた組織です。そのトップは行政に精通した方がふさわしいという役職ではありません。首長から独立した機関を、教育固有の原理に基づき運営できる方こそ選任すべきです。教育は、一人ひとりの、「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者」を育てる営みです。
しかし、愛知県の教育は産業界に役立つ人材育成に力を集中する教育行政へと進められています。教育は産業界のためにあるわけではありません。こうした、教育行政を継承し、産業界の要請に応える県政を推進してきた方を、教育委員会のトップとすることに、賛成できません。
以上、反対する理由を述べてまいりました。県民生活を守るためにも、大企業優遇や大型開発促進から転換し、中小企業とくらし、教育、福祉の分野に手厚い施策をすすめるとともに、人権を守る愛知県政になっていただきたいということを求め、討論を終わります。