【しもおく奈歩議員】 アジア・アジアパラ競技大会について、大村知事は予算説明で、国内から多くの人を呼び込む、多様性を尊重し合う共生社会の実現に貢献するビッグプロジェクトと位置付けています。アジア最大のスポーツの祭典という本来の目的よりも、ビジネスチャンスとしてしかとらえていないのでないか、とても気になります。
【スポーツ局担当課長】 アジア競技大会への注目度を一段と高めるとともに、大会を通じた地域活性化を図るという観点で、リニアプロジェクトや本県の産業力、観光資源などを引き続き発信してまいります。
【しもおく奈歩議員】 〇愛知で開催することの意義、スポーツの発展にどのように寄与し、多様性を尊重した共生社会の実現にどう貢献するのか?この大会の開催意義をあらためてまず確認したいと思います。
【スポーツ局担当課長】 開催の意義についてでございますが、アジア競技大会を2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催によるスポーツへの関心の高まりを引き継ぐ、日本のスポーツ界の次なる大きな目標として位置づけております。
また、世界有数の産業力を誇るこの地域が一体となって、アジアを代表するアスリートに最高のパフォーマンスの場を提供し、スポーツの振興や国際交流の促進、大会開催を通じた人づくり、また、交流人口の拡大や国際競争力の強化など様々な効果を生みだし、愛知・名古屋のみならず、日本全体の成長に貢献したいと考えております。
併せて、日本で初めてとなるアジアパラ競技大会の開催により、障がいへの理解促進や、障がいのある方の社会参加の促進の大きな役割を果たし、ひいては、多様性を尊重し合う共生社会の実現への貢献を目指してまいります。
【しもおく奈歩議員】 あわせて今度の大会では、「簡素で合理的、機能的な大会運営」を掲げています。
東京2020オリンピックについて、大会経費の肥大化、汚職・談合事件、ジェンダー平等への体系的な取組の不十分さが大きな課題として指摘されています。この苦い経験も踏まえて、今度のアジア・アジアパラ競技大会は、県民生活に負担をかけず、簡素な大会にしたい、ということだと理解しています。いまも「簡素で合理的、機能的な大会運営」に徹するという方針は変わっていませんか?
【スポーツ局担当課長】 愛知・名古屋でのアジア競技大会、アジアパラ競技大会は、引き続き、簡素で合理的、機能的な大会運営を目指した開催準備を進めてまいります。
【しもおく奈歩議員】 この理念と方針が貫かれているか、順次、確認していきたいと思います。アジア・アジアパラ競技大会基金積立金について質疑した10日の委員会で、私は、2016年の大会招致時点では、大会主催者負担経費が850億円、愛知県の負担額は400億円。それがいまではアジアパラ大会と合わせた大会経費が、1080億円から1900億円とも報じられる事態となった。愛知県の負担額は現時点で、組織委員会負担金が898億円、開催都市として名古屋市と共同で実施する事業の経費も合わせると1281億円と指摘しました。当初見込みの400億円からは実に3倍を超える負担増ですが、当局は否定しませんでした。
これで簡素な大会だと言われても納得はできません。アジア・アジアパラ競技大会への愛知県の負担額は現時点では1281億円これで全てですか? クルーズ船や移動型宿泊施設の経費など現時点では金額がわからないが今後の新たな負担となるものはどんなものがありますか? それらを見込んだ大会経費の総額についてはどのような規模になるのでしょうか?
新年度の予算について具体的にいくつかうかがいます。愛知県としてのアジア・アジア競技大会に関する今年度予算はいったいいくらなのか。アジア・アジアパラ競技大会の推進予算は「予算の重点施策の概要」では総額で約285億円と説明されていますが、これですべてか検証したいと思います。
大会の推進としてまとめられたこの285億円には、昨年まで大会推進の予算としていた、愛知名古屋合同準備会負担金が入っていません。大会推進費とは別に、計上された「国際スポーツ推進費」約52億円がこれまでの合同準備会負担金にあたると思いますが、なぜ大会推進予算として位置づけなかったのですか?
また推進費には予算の6倍、320億円も債務負担行為がありますが何に使うのですか?予算書には、建設費として、「アジア・アジアパラ競技大会関連道路整備事業」として約42億円が計上されています。これは何を整備するのですか?大会推進のための事業そのものではありませんか? なぜ大会推進の予算として位置づけないのでしょうか?
アジア・アジアパラ大会活用誘客推進費6643万円も出てきます。競馬場跡地利用基盤整備事業費負担金も約5億円計上されていますが、この費用も令和5年までは大会推進の費用として計上されていました。これらが大会推進に関連する予算ではない理由は何ですか? 同じ基準で考えれば、宿泊施設バリアフリー整備推進事業費8750万円は関連経費から外すべきではないですか?
「予算の概要 参考資料」はとてもわかりやすい予算説明です。その2025年度版には、愛知県の重点施策が108項目紹介されていますが、ビッグプロジェクトであるアジア・アジアパラ競技大会がどこにもありません。昨年度は「アジア・アジアパラ競技大会の開催に向けた取組を進めます」という項目がありました。予算規模が増えたのに掲載しないのは不自然だと思いますがその理由はなんですか?
【スポーツ局担当課長】 OCAやAPC、各競技団体等との協議・調整、社会経済状況の変動など、不確定要素が多いことから、総合的に判断しまして、2025年度当初予算の参考資料は作成をしておりません。
【しもおく奈歩議員】 大会の推進のための予算は2025年度、285億円という説明は不正確ではありませんか。県全体でいくらになるのか、あらためてうかがいます。
【スポーツ局担当課長】 2025年度当初予算では、組織委員会への負担金や、開催都市として名古屋市と共同で実施する事業の経費について、債務負担行為を含め、当該年度に必要となる経費を計上しております。来年度の大会組織委員会への負担金の主な内訳としましては、競技対策費として約78億円、宿泊対策費として約37億円、大会情報システム開発等の情報技術対策費として約28億円、競技会場の仮設整備費として約12億円などの事業費を計上しております。
また、2026年度までの債務負担行為として、ただ今申し上げた項目以外に、メディア関連費、警備対策費、式典・文化プログラム対策費、輸送対策費など約419億円を、お願いしております。
【しもおく奈歩議員】 愛知県の大会関連予算は285億円をはるかに超えます。ところが県民への説明は全く不十分。予算を小さく見せ、しかも十分な説明もない。あえて見えにくい予算にしている。これでは県民の不安と負担はふくらむばかりです。
次に組織委員会への負担金についてうかがいます。組織委員会負担金として約264億円、あわせて債務負担行為としてその2倍近い419億円が計上されています。それぞれ何にいくら使う予定ですか? 組織委員会への負担金は898億円。昨年までに100億円以上を既に支出しています。これまでの議会答弁は、「アジア競技大会の開催経費850億円のうち行政負担は600億円、愛知県が400億円、名古屋市が200億円、行政負担の変更の予定はない。」の一点張りでした。しかし、大会1年前の時点で、予定していた400億円の2倍を超えています。どういうことなのか、あらためて説明を求めます。
【スポーツ局担当課長】 現在、大会組織委員会では、OCAやAPC、各競技団体等と協議、調整を行いながら、大会の運営に係る様々な計画の作成を進めつつ、経費の縮減、合理化をしながら、経費の精査を行っているところですので、大会経費の全体像等をお示しすることができない状況でございます。何卒ご理解をいただきたいと存じます。
【しもおく奈歩議員】 このままでは組織委員会への負担金はいったい、いくらになるのですか?議会では「変更の予定はない」と答弁しながら、予算では、方針変更の説明もないまま、なし崩し的に負担金を増やす。大問題です。いつ、どこで、誰が、方針を変更したのですか?議会軽視ではありませんか?
大会開催経費が膨らむことは予想されたことです。何度も警告してきたではありませんか。あらためて、県・市の負担金はどういうものかお聞きします。組織委員会が必要とする費用が増えたら、自動的に県・市の負担も増えることになるのですか? 当初は850億円のうち600億円が行政負担でした。その比率がそのまま維持されて県・市の負担金が増えるのですか?それとも県400億円、市200億円という金額は変えずに、あとの増加分は組織委員会の裁量と責任で財源をまかなうのでしょうか?大会組織委員会の経費と行政負担との関係を明確に示してください。どういうルールになっていますか?
【スポーツ局担当課長】 大会組織委員会の経費は、大会の準備・運営に係る経費であり、県、市からの負担金のほか、スポンサー収入やチケット収入などでまかなうこととしております。
アジア競技大会における愛知県と名古屋市の行政負担600億円について、県市の負担割合は2対1となっております。
大会経費については、建設資材や人件費等の物価高騰により上振れの要因があることから、経費の縮減、合理化を徹底するとともに、パートナー企業の更なる獲得に向けたセールスや、寄附金募集活動の実施など、財源の確保に取り組むとともに、国に対しても、引き続き財政支援を強く要請してまいります。
【しもおく奈歩議員】 少なくとも、400億円をこえることになる債務負担行為は認められません。実際にはもう変わっているじゃありませんか。あらためて議会と県民に経過と全体像を示す必要があります。どこまで県の負担が増えるか、その歯止めはなにかあるのですか?
競馬収益などからの新たな財源500億円についてうかがいます。競馬組合収益配分金などから500億円の財源を確保したと知事が発言したが、これは県と市で分け合って活用するのか?それとも丸ごと組織委員会の経費に充てるのでしょうか? 500億円の内訳を具体的に教えてください。あわせて新年度予算には計上されていないようですが、どこで議決し、いつ執行するのでしょうか?報道によると、競馬では今後の見込みも含めて10年間の収益配分金を確保したとありましたが、将来の収益まで押さえるやり方は、不確定要素が大きくて、まさにギャンブルではありませんか? 財源として適切とは言えますか?大会協賛レースの開催で21億円とも言われているが、愛知県はギャンブル依存症対策に力を入れているはずです。その一方でギャンブルをあおるようなことはすべきでありません。
【スポーツ局担当課長】 アジア競技大会の大会経費については、建設資材や人件費等の物価高騰など社会経済状況の変動等により大変厳しい状況にあることから、当初計画の行政負担600億円に加え、別途財源として愛知県競馬組合からの収益金配分金など、500億円を新たに確保し、充当することで、この2月議会へ予算議案をお諮りしております。
組織委員会への負担金については、これまでも毎年度、議会に必要となる予算を計上し、審議をしていただいており、承認いただいた予算に従い執行をしております。
【しもおく奈歩議員】 大会を支える人の問題についてもうかがいます。アジア大会推進局の職員を269人増やす。県では職員定数を前年度比603人増やすとしましたが、そのかなりが大会推進局の職員増です。主に県庁内の各部局から異動させ、あわせて任期付き職員の採用も行うと説明されています。大会推進局の増員のために、どの部局の職員を何人削ることになるのですか?任期付き職員の採用も予定していますが、何人、どうやって採用するのですか?県の退職者のみなさんに募集案内が送付されていますが、何人に案内を送り、何人採用する計画ですか?一般募集もするのでしょうか?
【スポーツ局担当課長】 2025年度は大会の前年度となり、組織委員会の体制整備が本格化する中、円滑かつ着実に業務を遂行していくため、大会関連業務に従事する人員の大幅な増員が必要となります。現状では、現役職員のみによる対応が困難な状況にあることから、各局を通じて、県のOB職員へもお声がけをしております。その後、OB職員から300名を超える従事意向の希望がありましたので、募集案内を送付し、順次面接を行っております。
なお、採用人数については、これは組織委員会の採用になりますが、募集案内には「欠員状況等を踏まえて決定」すると記載がされており、採用人数については示されておりません。なお、今回の募集案内は、組織委員会ホームページにも掲載されており、随時、必要に応じて職員の募集を行っているところです。
【しもおく奈歩議員】 大会運営のボランティアを4万人確保するという計画ですが、今年1月までの募集期限が4月まで延長されました。応募状況は厳しいということでしょうか?ボランティアが集まらない理由をどう考えていますか? 4万人の予定に対して、現状では何人確保できたのでしょうか?今後の見通しもお示しください。ボランティアの不足分を期限付き任用職員やアルバイト、または県職員で補うようなことはありませんか?
【スポーツ局担当課長】 応募状況につきましては、現在集計中でお示しすることができません。目標応募数にはまだ達していないという状況でございます。これまでも、色々な場面でブース出展やチラシ配布など行ってまいりました。今後も、大学や各競技団体、スポンサー企業等に対して個別に参加を働きかけるなど、引き続きボランティアの確保に努めてまいります。
県の行財政を圧迫する事態、
思い切った「決断」が求められている
【しもおく奈歩議員】 スポーツ推進審議会では、ボランティア集めに苦労している。ボランティアを募るのに、大会の意義や魅力を語れず、とにかく困っているから応募して、となっているのではないか、とも指摘がありました。しっかり受け止めていただきたい。
アジア・アジアパラ競技大会の開催費用が当初見込みの3倍を超えます。これでは簡素な大会を貫いているとは言えません。予算と人の配置でも、愛知県の行政を大きく圧迫する事態となりつつあります。県民には何も知らされることなく大会経費だけが膨らんでいく。どこまでなら許されるか、いくらまでに抑えるか、目安も歯止めもない。ボランティアも予定通り集まらない。このままで良いのですか。
県民はこの大会を支持しているのでしょうか。 この大会への県民の関心と支持具合、予算規模の変更がどこまでなら許されるのか、など、いちど県民アンケートを行ってみてはどうでしょうか。
何のための大会かが忘れられてしまい、「愛知に人を呼び込む」、「アジアにおける愛知の産業の存在感を強める」ことにばかり関心が向いてはいないでしょうか。このまま経費と負担の増大が歯止めなく続くのならば、「簡素で合理的、機能的な大会運営」が貫けず、県民生活と愛知県財政を大きく圧迫する事態になりかねません。いまこそ、大会の是非も含めて思い切った判断をすべき時である、と指摘して質疑を終わります。