補正予算(第9号)「アジア・アジアパラ競技大会基金」の質疑
教育スポーツ委員会
【下奥奈歩】
第76号議案令和6年度愛知県一般会計補正予算のうち、アジア・アジアパラ競技大会基金積立金についてうかがいます。
そもそも2016年のアジア競技大会の招致段階では、大会主催者負担経費850億円とし、愛知県の負担額はアジア競技大会で400億円と言われていた。本来ならこの基金だけで基本的に賄えたはずだが、全然足りないのが実態です。
アジアパラ競技大会と合わせた大会経費は当初見込みの1,080億円が、今や1,900億円とも3,000億円とも報じられている事態です。愛知県の負担額は、現時点で明らかになっているだけで組織委員会への負担金が898億円、開催都市として名古屋市と共同で実施する事業の経費も合わせると1,281億円とされていますが、それで収まる保証はありません。
大会に必要な費用負担が増えるなら、その中身と理由をきちんと公開し、県民に説明して理解を求めたうえで、必要な予算を提案すべきです。大会経費が幾らまで膨らむのか、その見通しも示さず、毎年ほぼ同額の基金を積み立てることに県民の理解は得られません。
大会は2026年と、すぐそこまで迫っています。過去3年間と同様に約100億円を基金へ積立てを行っていますが、基金への積立予算約106億円を組んだ積算根拠をまず明らかにしてください。そのためにも現時点での大会経費の全体像、県の負担額を示してもらう必要があります。答弁を求めます。
【担当課長】
基金への積立は、開催年に近づくにしたがい、単年度に多額の資金が必要となることが想定されるため、できる限り年度間の財政負担の平準化を図る観点から行っているものです。
2024年度の県税収入の動向等を踏まえて検討した結果、一般財源による積立額は100億円となっています。なお、現在、大会組織委員会では、アジア・オリンピック評議会(OCA)やアジアパラリンピック委員会(APC)、各競技団体等と協議・調整を行いながら、大会の運営に係る様々な計画の作成を進めつつ、経費の縮減、合理化をしながら、経費の精査を行っているところであり、大会経費の全体像等を示すことができない状況であることをご理解願います。
【下奥奈歩】
全体像を早く示してもらう必要があると思います。
アジア・アジアパラ競技大会基金条例では、「大会の開催に必要な財源を確保するため、基金を設置する」とあるが、この基金は大会経費のどの部分になっていくのか。現在、この基金を取り崩すことなく、組織委員会への負担金や施設整備、また開催都市としての必要経費を一般財源で予算執行しています。基金の残高は今回の補正の結果、当初予定していた組織委員会への負担金400億円に相当する金額となります。
この基金は、組織委員会の負担金に該当するものなのですか。それとも、国から支援をということでしたが、国からの支援が得られないときや企業からの協賛金が不足したときに備えているのでしょうか。また大会経費とは別に計上される国際スポーツ推進事業費など一般的なスポーツ振興にも使うことができるのですか。この基金で大会経費のどれぐらいをカバーすると見込んでいるのか、そのあたりを具体的に伺いたい。
【担当課長】
この基金は、アジア競技大会及びアジアパラ競技大会の開催に必要な財源を確保するために、開催に要する財政負担についてできる限り年度間で平準化を図る観点から、積立てを行っているものです。
アジア・アジアパラ競技大会基金条例第6条においては、「第20回アジア競技大会及び第5回アジアパラ競技大会の開催のための財源に充てるときに限り、処分することができる」とされており、その目的は明確に規定されております。
このため、アジア競技大会及びアジアパラ競技大会の競技、輸送、宿泊に関する諸計画の作成や競技会場の仮設整備といった、大会の準備、運営を行う組織委員会への負担金など、大会の開催に要する事業へ充当することを想定しています。
【下奥奈歩】
今回の補正予算で約106億円の積立金を計上していますが、物価高騰で苦しむ多くの県民を直接支援する施策に使えたはずだと私は思います。アジア・アジアパラ競技大会のための経費が膨らみ、県民生活と県の予算編成を圧迫するというおそれが強まっています。抜本的に見直す必要があることを指摘して質問を終わります。
補正予算(第9号)「アジア・アジアパラ競技大会基金」反対の討論
3月10日 本会議
ただいま議題となっております第76号議案、令和6年度愛知県一般会計補正予算(第9号)について、反対の立場から討論します。
反対の理由は、アジア・アジアパラ競技大会基金について、現時点では抜本的な見直しが必要と考えるからです。
私は昨年の2月議会で、この基金への積立てを補正予算で組むのはいかがなものか、必要な予算なら補正ではなく当初予算に計上すべき、と討論しました。一年がたち、アジア・アジアパラ競技大会をめぐる状況と基金の役割はどうなったでしょうか。
今回の補正予算では、大会基金に約106億円を積み立て、年度末の基金残高は約415億円となる見込みです。
2016年のアジア競技大会招致時点では、「大会主催者負担経費850億円」とし、行政負担の上限は600億円。愛知県400億円、名古屋市200億円とされていました。アジアパラ競技大会の県負担は別途
100億円から120億円と見込んでいましたが、基本的に4年間で積み上げた基金400億円でアジア競技大会への県負担分はまかなえるはずでした。
ところが、現時点では、組織委員会への県負担金だけでも、すでに当初予定の約1.7倍の898億円となっています。開催都市として名古屋市と共同で実施する事業の経費も合わせると1281億円となり、さらなる上振れも予想される事態です。現状の基金だけではとてもまかないきれません。
2022年2月議会で制定されたアジア競技大会基金条例、その後2022年6月議会において改正されたアジア・アジアパラ競技大会基金条例では、第一条で、「大会の開催に必要な財源を確保するため…基金を設置する」としています。開催年度の財政に過大な負荷をかけないための基金ですが、現状ではその役割を果たせていません。財源の手立ては、はっきり言って、国の支援をあてにしているだけです。
このままでは大会が開かれる2026年度には重い財政負担が県民生活と県財政にのしかかる恐れが非常に強い、と指摘せざるを得ません。
大会経費の増大は複数の要因がありますが、「建設資材や人件費の高騰など社会経済状況の変動による上振れ」も確かにその一つだとは思います。しかし、この大会のためには、物価高騰でどれだけ費用がかさもうと県の財政を注ぎ込む。その一方で、物価高騰に対応する県民向けの支援策は国の交付金の範囲でしか手を打たず、昨年度とほぼ同様のメニューから一歩も踏み出そうともしません。
補正予算を組むのなら、予算執行で生じた余剰金はアジア競技大会のためにではなく、物価高騰で苦しむ県民のための施策にこそ活用すべきです。
大会開催経費の大幅な上振れにより、理念としていた「簡素で合理的、機能的な大会運営」は限りなく困難となりつつあります。この現状を踏まえれば、大会開催の是非も含めた抜本的な見直しこそ、いま必要ではないでしょうか。昨年までと同様に予算の余剰金を基金に積み立てて済むような状況ではない、と申し上げて討論とします。