【しもおく奈歩議員】 通告に従い、第8款警察費 2項警察活動費のうち、警察活動事業費について質問したいと思います。
愛知県警は、痴漢対策へ啓発活動を行っています。受験シーズンになると、インターネットやSNSで受験生を狙った痴漢を煽る投稿がされています。試験に遅刻できず、被害の申告をためらう受験生の弱みにつけ込んだ悪質なものです。痴漢は、性暴力であり重大な犯罪です。個人の尊厳を踏みにじるものであり許せません。
その被害実態は、深刻でありけっして些細な問題ではありません。日本共産党愛知県委員会は、「痴漢ゼロをめざす被害実態アンケート」を2023年に行いました。その中で、8割が性的接触などの痴漢被害やハラスメント被害を受けたことがあると答えました。被害にあった場所では、電車内や路上と半数の方が回答しました。また、「高校の通学時に痴漢被害にあった」「複数回被害にあった」という声が寄せられていました。電車に乗る、道を歩くなどの日常が、性暴力の危険にさらされています。
その被害にあってから「電車に乗るとき、知らない人が隣にすわることに恐怖を感じる」「電車に1人で乗ると、心臓がバクバクして手が震える」「電車に乗ることがこわくなった」という、心身へのダメージが長期にわたるものであることが綴られていました。
そこで、伺います。痴漢の深刻な被害を、軽視せずに重く受け止めていただきたいと思います。心にも、日常の生活にも影響を及ぼす被害、こうした実態をどのように認識していますか、答弁を求めます。
【警察本部長】 痴漢は重大な犯罪であり、個人の尊厳を踏みにじる極めて卑劣な行為であることから断じて許すことはできません。
通学や通勤など、日々の生活の中で突如その被害に遭われた方は深く傷つき、その恐怖や苦痛、心身に及ぼす影響は甚大であると認識しております。
【しもおく奈歩議員】 私たち日本共産党は、市民の声とともに「痴漢ゼロ」へと声をあげてきました。そのなかで、2023年に政府が初の「痴漢撲滅パッケージ」を取りまとめ公表しました。そのパッケージの痴漢対策をすすめる上での基本認識に、「痴漢は重大な性犯罪である」「痴漢の被害は軽くない」「被害者は一切悪くない」「被害者を一人にしてはいけない」「痴漢は他人事ではない」と示しています。
そこで、伺います。愛知県警も、この5つの点について、同じ認識のもとに立っていますか。また、痴漢は重大な人権侵害だという認識をもっていますか。県警の基本認識を伺います。
【警察本部長】 県警察では、「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」に示された「痴漢対策を進めるうえでの基本認識」における5つの点について同じ認識のもと、加害者の検挙措置をはじめ、痴漢の撲滅に向けた対策にとりくんでおります。また、痴漢は重大な人権侵害であることも認識しております。
【しもおく奈歩議員】 私は、日本共産党愛知県委員会と日本共産党名古屋市議団とともにこの間、繰り返し痴漢撲滅をと、特に受験シーズンへの体制強化を求めて申入れを行ってきました。今年、1月にも「受験シーズンにおける痴漢・盗撮加害の防止と被害者の救済に関する」申入れを行いました。私は、その際に「被害にあわないように気を付けてね」というメッセージの発信ではなく、加害防止!痴漢は許さない、というメッセージの発信を求めました。愛知県警察が、学生と作ったポスターは「痴漢や盗撮は犯罪です」というメッセージになり、こうした前向きな変化もあります。
しかし一方で、名古屋駅前などで愛知県警が配布したのは「安全祈願のお守り」でした。これには、驚きました。なぜ、重大な犯罪である痴漢行為への対策がお守りの配布になるのでしょうか。痴漢にあう前提で「被害にあわないように気を付けてね」というメッセージになってしまうと思います。私たちは、再度「痴漢加害防止へ対策を」と申入れを行いました。そして、この問題をSNSで発信したところ「痴漢は、犯罪なのに神頼みなの?」「安全祈願では、対策にならない」「犯罪防止にならない」「お守りよりも痴漢ゼロを」など、怒りの声が寄せられました。また、「こういうことやるなら、受験生1人に警官1人をお守りにつけてほしい」という声もありました。
さらに、駅によってはいまだに「痴漢・盗撮に注意」という貼り紙もあると伺いました。その貼り紙に傷ついた若者は、鉄道会社に掲示をやめるよう抗議しましたがその声は聞き入れてもらえませんでした。そのかたは「注意しない被害者が悪い」と言われているようでつらいし傷つきます。と、おっしゃっていました。
兵庫県の駅構内の放送内容は「兵庫県警察、鉄道警察隊からのお知らせです。電車・駅構内での痴漢・盗撮は悪質な犯罪行為です。被害に遭われた方、見かけられたかたは110番または、鉄道警察隊痴漢等被害相談所に連絡してください。痴漢、盗撮撲滅にご協力お願いします」という発信になっているそうです。
そこで、伺います。被害にあわないように、と注意喚起をするその認識を変えて、「痴漢撲滅・痴漢は性暴力であり犯罪です」と、ポスターだけでなくアナウンスや動画、SNSでの発信も含めて加害防止への発信に軸足を移すべきだと、考えますがいかがでしょうか。答弁を求めます。
【警察本部長】 加害防止への発信を中心とした公報啓発について、お答えいたします。痴漢を撲滅するためには、加害者側が犯行を思いとどまるような対策が重要である一方、被害に遭わないための未然防止対策も必要であると考えております。
県警察では、被害者の心情に配慮しながら、加害防止及び被害防止の両面から痴漢を撲滅するための情報を発信しているところであり、引き続きポスターの掲示だけではなく、鉄道事業者などと連携した車内放送やSNS等あらゆる媒体を活用した広報啓発に努めてまいります。
【しもおく奈歩議員】 目撃など、第三者が被害を確証し、痴漢を止める行動をとることができるよう、痴漢や盗撮、ハラスメントを見逃さず、被害者を一人にさせない「アクティブバイスタンダー」の役割を重視した取り組みも進めていただきたいと思います。アクティブバイスタンダーができる5つの行動があります。①「注意をそらす」②「第三者に助けを求める」③「証拠を残す」④「後からの対応、被害者への声掛けなど」⑤「直接介入する」という5つです。日本共産党愛知県委員会のアンケートで、被害にあったとき周りは無関心だったという回答が24.6%でした。
愛知県警察本部生活安全特別捜査課の痴漢対策ポイントの中で、周囲が助けたことにより犯罪断念は100%となっています。
東京都の都営交通では「痴漢目撃助けたいー助ける準備できていますか?」と、痴漢を目撃した時の3つの行動「車内非常通報器を押して助ける」「スマホアプリを見せて助ける」「声かけで助ける」と示したポスターや動画を発信しています。
そこで、伺います。第三者への介入を促す工夫、周知・啓発に取り組んでいただきたいと思いますがいかがでしょうか。答弁を求めます。
【警察本部長】 県警察では、現在、痴漢撲滅に向けて、目撃者など第三者による介入を促すための取り組みとして、駅構内におけるポスターの掲示やSNS等による広報・啓発を行っているほか、防犯ブザー機能等を有する、愛知県警公式アプリ「アイチポリス」の普及なども推進しているところでございます。
今後も、創意、工夫を凝らし、あらゆる機会を通じ、痴漢撲滅に向けた広報・啓発に努めてまいります。
【しもおく奈歩議員】 答弁いただきましたので、要望させていただきます。
痴漢は人権侵害だと認識いただいていることは確認できました。 痴漢は、けっして軽い被害ではありません。尊厳を根こそぎ踏みにじられて被害者の人生を狂わせてしまう、深刻なものです。
昨年、内閣府は国として初となる痴漢被害に特化した調査結果を公表しました。その中でも、「何年たってもその瞬間の記憶は薄れないし、ずっとトラウマになっている」などの実態とともに、「夜も女性専用車両があった方がいい」「被害者のケアを回復するまで行政が無料でしていただきたい」などの要望がありました。受験シーズンの強化とともに、日常の公共交通機関も安心して、安全に利用できるよう加害防止へ啓発強化を要望します。
加害防止と被害防止と両面から取り組むとの答弁でしたが、被害者を責めるようなことがないように、重ねて、加害防止に軸足をおいて取り組んでいただくことを要望します。
今回は、議案質疑ということで愛知県警察に質問しましたが、私は、この対策は愛知県警察と愛知県が局横断的に取り組むべき課題だと思います。国では、内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、国土交通省が連携して政策を実施しています。「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ実行連絡会議」も開かれています。 また、東京都でも各局の取組情報を共有し、相互連携を図りながら局横断的に対策を進めるために、警視庁も含めて、総務局、都市整備局などと「痴漢撲滅プロジェクトチーム」を設置しました。 愛知県警と愛知県で連携しながら、痴漢撲滅プロジェクトチームをぜひつくっていただき、力を尽くしていただくことを要望し質問を終わります。