議会報告

イスラエルスタートアップとの連携に問題あり。女性起業家へのハラスメント対策を           2025年2月議会 「議案への質疑と答弁」

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【しもおく奈歩議員】 第5款 経済労働費 第2項 商工業費のうち、海外スタートアップ支援機関連携推進事業費とスタートアップ支援事業費について伺います。

まず、海外スタートアップ支援機関連携推進事業費についてです。

 愛知県が力を入れているスタートアップ支援ですが、この海外連携事業には、9か国22の海外スタートアップ支援機関・大学等との連携事業の実施をうたっています。問題は、そのなかにイスラエル国国家イノベーション庁並びにSNC(スタートアップ・ネイション・セントラル)というイスラエルの二つのスタートアップ支援機関との連携事業が含まれていることです。

 愛知県議会は昨年の6月議会で「ガザ地区における人道上の危機的状況の改善と速やかな停戦の実現を求める決議」を全会一致で採択しました。ようやく今年1月19日に期限付きですが停戦合意が発効しましたが、人道上の危機は依然として続いています。イスラエルは、ガザ地区での4万人をはるかに超える殺戮と深刻な人権侵害に深く関与しており、国際社会からは厳しい批判の声があがっています。国際刑事裁判所は、イスラエルのネタニヤフ首相に「人道に対する罪と戦争犯罪の容疑」で逮捕状を発行しました。その裁判所の所長は、愛知県出身の赤根さんという方です。こうした、愛知県出身の方がご活躍されているなかで、愛知県はイスラエルのスタートアップ連携を進めています。

 大村知事は「スタートアップ(こう)国論(こくろん)」で「イスラエル国防軍は人材と技術の両面でイスラエルのイノベーションを支えている」と書いています。知事はイスラエルの高い技術力などを高く評価されていますが、それはイスラエルのスタートアップが軍と不可分の関係にあることと直結しているからだ、との指摘もあります。

 そこでうかがいます。イスラエルのスタートアップと連携しても、戦争への加担につながる恐れがない、と断言できますか? マッチングしたイスラエル企業の一つが軍事製品の開発等を行う企業を顧客にしていることも判明しています。イスラエルの二つの支援機関との覚書には、軍事利用への歯止めとなるような条項はなにもありません。軍事利用の歯止めはありますか?

【経済産業局長】 イスラエル支援機関連携事業は、県内企業が求める課題解決や新規事業開発に対し、イスラエルのスタートアップの知見やノウハウを活用する取組であり、県内企業の発展、本県産業の振興を目的としています。また、これまでの協業分野は、ヘルスケア、農業、繊維、在庫管理などであり、イスラエルの軍事産業に加担するものではありません。

 さらに、協業候補となるイスラエルのスタートアップについては、県が連携しているイスラエルのスタートアップ支援機関や、事業の委託事業者、県において、当該スタートアップが軍事産業に関係していないかの情報を確認した上で、事業へ参画していただくこととしています。

 国際法違反や人権侵害に加担することになると危惧

【しもおく奈歩議員】 現在は「人権を尊重する企業責任」の順守が国際社会からからの強い要請となっています。国連では「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)が定められ、「企業は自らの活動や取引関係によって人権に負の影響を与えないように努める」としています。スタートアップ企業もこの指導原則は守るべきものです。同時にこの原則では、「企業が人権に与える影響を防止・対処するための枠組みは国家と企業の双方に適用される」としており、国や地方自治体も企業活動が人権侵害にならないように関与することが要請されています。

 この点ではイスラエルとの連携はどうか。国際司法裁判所は、ガザでの戦闘行為にとどまらず、イスラエルによる半世紀以上に及ぶ占領・入植活動についても国際法違反と断じる厳しい勧告的意見を提出しています。国際社会から違法とされた入植活動に関わっていないイスラエルの企業はあるのでしょうか。

 直接の軍事関連分野でなくとも、イスラエルとの事業連携そのものが国際法違反や人権侵害に加担することになると危惧しますが、県の認識を伺います。とくにイスラム教徒が多いアジア諸国ではイスラエルに対する厳しい批判が広がっています。イスラエルとの事業連携は愛知県が力を入れているアジア諸国との関係にマイナスなのではありませんか。

【経済産業局長】 2023年10月から始まったイスラエルとパレスチナ武装勢力間の衝突に対し、本県は、日本政府と同様、事態の早期鎮静化と平和的解決が図られることを望んでいるところです。一方、アメリカの調査会社の調査では、イスラエルは、現在、世界第7位のユニコーン数を輩出している世界有数のスタートアップ大国であることから、本県は2022年度からイスラエルのスタートアップ支援機関との連携事業を実施しているところです。

 本事業は、県内企業が求める課題解決や新規事業開発に対し、イスラエルのスタートアップの知見やノウハウを活用する取組であるため、国際法違反や人権侵害に加担することにはならないと考えています。また、本県は、現在、世界9か国22のスタートアップ支援機関や大学等と連携しており、そのうちアジアでは、中国の清華大学、上海交通大学、浙江大学、韓国の慶尚南道、シンガポールのシンガポール国立大学との連携事業を実施しているところですが、これまでに本県のイスラエルとの事業連携に関する懸念や意見はお聞きしていません。

【しもおく奈歩議員】 スタートアップの事業連携では、一般的に、どの企業がどの企業とつながって新製品の開発をしているのか、などは公開されず、秘密の状態にしておくことが一般的です。イスラエル支援機関連携事業の成果サポートでも公開されているのは参加企業数のみです。海外スタートアップ支援機関との連携事業そのものが、事実上ブラックボックスとなっています。イスラエルのどんな企業と、どんな開発を進めているか、は全くわからないまま、県の公的関与が続いています。スタートアップ特有のこのような連携のありかたは、税金の使い方の透明性確保とも相いれません。

 イスラエルとの事業連携を通して私たち県民や県内企業を人権侵害に加担させることがあってはなりません。県は国際法を遵守する立場にしっかり立って、イスラエルの二つのスタートアップ支援機関との連携を中止すべきと考えますがいかがですか?

【経済産業局長】 本県は、2022年5月にイスラエルのイノベーション庁、Start-Up Nation Centraの2機関とそれぞれ覚書等を締結し、県内企業が求める課題解決や新規事業開発に対し、イスラエルのスタートアップとのマッチングを行ってきたところです。

 今後についても、県内企業が連携するイスラエルのスタートアップが軍事産業に関係していないかの確認を慎重に行った上で、引き続き本事業を実施することにより、県内企業の課題解決や新規事業開発に繋げてまいりたいと考えています。

  女性起業家へのハラスメント対策が求められている

【しもおく奈歩議員】 次に、スタートアップ支援事業費について伺います。

  愛知県は、スタートアップ支援の中で、女性起業家への支援も行うとしています。今、日本のスタートアップ業界でのハラスメントが深刻です。スタートアップ・エコシステムにおけるセクシュアル・ハラスメント:予備調査2024の調査結果では、女性起業家の52.4%が過去1年間でセクハラを経験したということが判明しました。

 こうしたハラスメントなど人権に関わる課題が守られているのか、そうでない場合、必要な対応をすることが求められます。ハラスメントはあってはならないことと考えますが、県の認識を伺います。また、国内のスタートアップ業界でハラスメントが起こっている実態を県は、認識されていますか。

 先ほど紹介した調査の結果の中で「加害者のうち44.4%が投資家やベンチャーキャピタルであり、⽴場の強弱が顕著なケースが多い」と分析されています。つまり、権力を持っている立場の人が権力のない立場の人に向かっているということです。こうした力関係の中で被害を訴えることも難しく、被害をすべて報告した⼈は14.8%となっています。

 スタートアップ業界でのこうしたハラスメントの深刻さには、投資と引き換えに性的関係や個⼈的な関係を要求する「対価型のハラスメント」が起こりやすい構造的な問題があると考えますが、県の認識を伺います。

 女性起業家が個人として対策をすればいいという問題ではなく、業界の構造の問題として捉える必要があります。セクハラをはじめとするハラスメントをどう防いで、もし加害が起きてしまったら、処罰や救済がされるのかといった対応が必要な課題だと思います。

 「セクハラ被害を受けた女性起業家の方の中には、事業撤退に追い込まれ多額の負債を抱えたり、体調を崩したりして病気療養に時間を要してしまう人もいます。こうした状況があるにもかかわらず、起業家のセクハラに対する法規制は存在していません。起業家の皆さんが被害をどこに相談をすればいいのかも明確になっておらず、1人で悩まれ、問題解決がなされないままになってしまっているのは大きな問題です」と、労働問題に詳しい弁護士の方が指摘しています。

 女性起業家支援の中に、ハラスメントを無くしていく姿勢を示していただきたいと思います。相談窓口の設置や救済機関をつくるなど、検討していただきたいと思いますがいかがでしょうか。

【経済産業局長】 ハラスメントについては、生産性の低下等の経営的な損失につながることが考えられることから、各種法律により事業者に対して雇用関係の有無や性別などに関わらず必要な対策を取ることが義務付けられており、県としてもあってはならないことと考えています。

 スタートアップ業界においても、多様性、公平性、包摂性、いわゆるDE&Iの推進は、事業成長やイノベーションの創出のための重要な指針となっています。一方、この業界では男性の比率が高く、また投資家と起業家という立場の違いを背景とした「対価型のハラスメント」が起きやすい構造にあることから、投資家の団体である一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会では、昨年3月、ハラスメント根絶に向けたガイドラインを策定し、会員企業に対策を呼び掛けるなど、業界を挙げた取組が進められています。

 日本最大のスタートアップ支援拠点であるSTATION Aiでは、仮にプログラム内等でハラスメント事案が発生した場合、スタートアップの身近で伴走支援を行っているコミュニティマネージャーが相談に対応する体制を既に整えるとともに、現在ハラスメントに関する指針の検討・策定を進めています。また、来年度新規で実施する女性起業家支援事業においても、女性起業家が安心してコミュニティに参画できる環境づくりに努めてまいります。

  今後も、女性起業家を含む多様なプレイヤーが参画し、イノベーションを次々と巻き起こす、スタートアップエコシステムの形成を目指して取り組んでいきます。

「県はイスラエルとの連携中止を」22,337人の署名に応えよ

【しもおく奈歩議員】 海外スタートアップ支援機関連携推進事業費について要望します。

 愛知県が、連携協定を結んだ「スタートアップ・ネイション・セントラル」のCEOを務めるアヴィ・ハッソ氏は、「ガザでの戦争は脅威であると同時に、現場で新たなテクノロジーを試す機会でもある」という、虐殺をテクノロジーの実験の場だというような危険な発言をしている人物です。多大な犠牲をだして、テクノロジーの発展だということは受け入れることはできません。イスラエルでは軍出身のスタートアップ事業者も多いのです。イスラエルが行う戦争に加担することにつながってしまう危険があるものに、県民の税金を投入すべきではありません。

 「愛知県はイスラエルとの事業連携をやめてください」と県民のなかで運動が広がり、県議会には先日、2万2337人分の署名とともに陳情が提出されました。こうした県民の声も、受け止めていただき、イスラエル国国家イノベーション庁並びにSNC(スタートアップ・ネイション・セントラル)というイスラエルの二つのスタートアップ支援機関との連携事業の中止を強く求め、質疑を終わります。

録画映像 | 愛知県議会 本会議中継

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