【しもおく奈歩議員】 年々、不登校の子どもたちが増え続けています。41万5千人、10月に文科省が公表した小中高の不登校児童生徒数は過去最多となりました。保護者や不登校の子どもたちに寄り添った丁寧な支援と、子どもの権利が守られ通いたくなる学校運営を行うことが必要です。
そこで、まず不登校が増えている実態について愛知県の状況がどのようになっているか、小中学校、高校それぞれお示しください。
【義務教育課担当課長】 文部科学省が実施した「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果では、本県の小学校の不登校児童が9,375人で前年度に比べて1,967人の増加、中学校の不登校生徒が14,676人で1,309人の増加となっております。
【高等学校教育課担当課長】 同じ調査で、本県の高等学校の令和5年度の不登校生徒数は3,274人で前年度に比べて366人の増加となっております。
【しもおく奈歩議員】愛知県でも、増えている状況だと思います。そこで、以下伺います。不登校にたいする県の認識を伺います。
また、心の傷を負っている子どもが安心して休む権利が守られるべきです。だからこそ、不登校への対策とし「学校復帰を前提としない」ことが大事だと考えますが、この点についても県の認識を伺いたいと思います。
【義務教育課担当課長】 文部科学省は不登校に関して「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」という考え方を令和元年の通知において示しております。これを踏まえ、児童生徒にとって不登校の期間が、休養や自分を見つめ直す機会となるよう支援していくことが大切だと認識しております。
【しもおく奈歩議員】 不登校の要因は、様々だと思います。「教育システムの制度疲労」もその要因のひとつにあると思います。日本では、教育を数値で評価し競わせる競争主義を導入してきました。国連・子どもの権利委員会は「極度に競争的な教育制度が子どもに発達の障害をもたらしている」と繰り返し指摘しています。また、子どもを権利の主体でなく、管理の対象とみるような管理主義を広げてきました。学校の校則もその流れの中にあります。こうした教育政策は子どもにとって大きなストレスです。不登校の急増は、そのあらわれではないでしょうか。
さらに、教員不足や学校の先生が忙しすぎるのも問題だと思います。不登校の子どもの育ちと学びを支える活動をするNPO法人「多様な学びプロジェクト」のアンケートのなかで、学校に行きづらいと思い始めたきっかけは、の項目では「先生との関係」「学校システムの問題」「授業が合わない」の三つが、上位に上がったそうです。
そこで、伺います。不登校の要因、背景は多様で複合的です。その一因には、今述べさせていただいた学校の現状があるのではないでしょうか。県の認識を伺います。
【義務教育課担当課長】 議員お示しのとおり、不登校の要因や背景は多様で複合的であると認識しております。その一因として学校が挙げられることについて、学校は児童生徒が集まって学ぶ場であり、教員が教える以上、生じるストレスをゼロにすることは難しいものの、相談しやすい体制づくりや学級運営の工夫等により、子供たちの悩みを少しでも減らせるよう取り組んでいるところです。
【しもおく奈歩議員】 学校のシステム・制度等が不登校の要因の一員として考えていないのですか。確認のために改めて伺います。
【義務教育課担当課長】 不登校の要因の一因として、教師との関係であったりなど、学校ということが一因としてあるということは認識しております。
【しもおく奈歩議員】すべての子どもたちにとって、学校が安心できる安全な場所となることが重要です。そのためにも、教員不足の解消や少人数学級の実施、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを各学校に常駐できる予算の拡充が必要です。
そこで、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置状況について、小中学校と高校それぞれ現状どのようになっているのか伺います。
【義務教育課担当課長】小中学校におけるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置状況等についてお答えします。スクールカウンセラーについては、全小中学校に配置しており、小学校は月1回程度、中学校は週1回程度、相談できるようにしております。また、不登校児童生徒の割合が県平均を上回る学校には、配置時間を増やして配置しております。
令和5年度の相談件数は、小学校38,898件、中学校60,979件となっております。スクールソーシャルワーカーについては、今年度、49市町村が配置しており、このうち、希望する42市町村に対して人件費等の補助をしております。
【高等学校教育課担当課長】高等学校についてお答えします。スクールカウンセラーは、全県立高等学校に配置しており、全日制と通信制は、学校の実情に応じて、月1日から月3日、定時制は月2日程度、相談できるようにしております。なお、令和5年度の相談件数は、12,868件となっております。
スクールソーシャルワーカーは、今年度10名を配置しており、希望する全ての学校の相談に応じられる体制を整えています。
【しもおく奈歩議員】 愛知県は、国への要望のなかでスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーが足りない現状を認識し財政措置の拡充を求めています。国への要望はもちろん必要なことですが、愛知県独自の努力も必要です。
そこで伺います。県として、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーを充実させ気兼ねなくいつでも安心して相談できる体制をつくるために、県の予算を拡充すべきではないでしょうか。答弁を求めます。
【義務教育課担当課長】 スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーについては、これまで毎年、配置の拡充に努めてきたところです。今後も、予算の確保に努めてまいります。
【しもおく奈歩議員】 学校に行けない子どもの居場所のひとつに、フリースクールがあります。私は、10月の末に、田原市に本校をもつ「ゆずりは学園」豊橋校へ視察に行ってお話しを伺ってきました。理事長と学園長は、「不登校からそのまま引きこもってしまう場合もある」と、社会に出ていく後押しへ可能な限り早い段階で救いたいとフリースクールを経営しています。
しかし、フリースクールは公的な支援がないため利用者の負担が発生しています。豊橋校の場合は、1時間500円4時間学んで帰ると2000円の利用料です。そこに加えて、交通費の負担もあります。ゆずりは学園に相談に来る保護者の方から「フリースクールに通わせたい。でも、送迎や月謝が払えない」という声が多数あるようです。新日本婦人の会が、不登校についての緊急アンケートを行いました。その調査で「子どもの不登校による保護者の経済的負担」があることが浮き彫りになりました。フリースクールの利用料で出費が増えて経済的に追い詰められている、声が寄せられています。
今、フリースクールに通う子どもたちを支援する動きが滋賀、京都、東京など広がっています。愛知県内では、2024年度から大府市がフリースクールの授業料の助成を始めました。
そこで伺います。フリースクールに通うための経済的負担をなくすために、愛知県としても、フリースクールへの助成を行っていただきたいと思います。憲法の教育の機会均等、義務教育無償、法の下の平等の理念から支援の具体化を求めます。県の考えを伺います。
【義務教育課担当課長】 フリースクールに対する助成については、現時点では考えておりませんが、他の都道府県や市町村の取組を引き続き研究してまいります。
【しもおく奈歩議員】 教育の予算の枠の中で支援をしていく、教育の枠の中から追い出さないことが重要だと考えますが、この考え方について県の認識を伺います。
【義務教育課担当課長】 繰り返しの答弁になりますが、フリースクールに対する助成については、現時点では考えておりません。引き続き研究をしてまいります。
【しもおく奈歩議員】 フリースクールはじめ、不登校児童生徒への支援は子どもの学ぶ権利を保障するとともに命をつなぎケアを担う重要な役割を果たしている場だと思います。県として、積極的に支援の具体化を進めるべきです。
最後に、不登校は、社会や教育のあり方を背景にしたもので、本人や家庭の責任ではありません。子どもたちの、学校強制でない教育への権利、安心して休む権利、自分らしく生きられる権利などを保障するそうした立場にたった対応を求め、質問を終わります。