「防災・減災、国土強靭化対策の更なる推進についての意見書(案)」について、反対の立場から討論します。
防災・減災対策の推進についての意見書であれば、賛同したいところですが、「国土強靭化対策の推進」について、いくつか問題点があるので、指摘したいと思います。
自公政権の推進する「国土強靭化」は、「国際競争力強化の向上に資する」「国家機能などの重要な機能の代替性の確保」などは明確にされていますが、国民一人一人の生命と財産を守ることはもっぱら『地域住民の力を向上させる』ことにまかされており、「国家機能」や「国際競争力」が優先され、国民の命と財産を守る防災対策が「後回し」になる傾向は昨年の法改正によっても基本的に変わっていません。
国土強靭化政策は「国民の生命や財産を守る」ことより「強靭な経済基盤を構築する」ことに重きを置く政策と指摘しなくてはなりません。強靭化基本法にもとづく基本計画では、国土形成計画と一体で、リニア中央新幹線、新東名や新名神などにより三大都市圏を結ぶ日本中央回廊の形成を新たに盛り込んでいます。道路ネットワークの機能強化、港湾の耐災害性強化、事前防災対策、重要インフラの機能強化なども、実際には不要不急の大型開発が防災・減災の名で進められることに強い危惧を持ちます。
本年一月に発生した能登半島地震では多くの尊い人命が失われ、国民の生命や財産が脅かされる事態が生じています。住宅の耐震化の遅れ、集落の孤立化、劣悪な避難所生活の長期化、自治体職員の少なさ、医療や介護・福祉の虚弱さ、広範囲の液状化による被害、原発で何か起きても避難できない恐怖、そして増え続ける災害関連死、等々。どれもこれまでの国土強靭化では十分対応できなかったことばかりです。国土強靭化の見直しこそ必要です。
能登半島地震から学ぶべき教訓は何か。いま必要なのは、防災・減災に名を借りた大型開発、強靭な経済基盤の構築を目的とする国土強靭化ではありません。地域の特性に応じた住民と自治体が必要とする防災施策、住民の命と生業を守る施策こそ、国は地域まかせにせず、全力をあげて取り組むべきです。
本意見書案には、防災対策の財源確保やインフラの老朽化対策など、賛同できる項目も多々ありますが、国土強靭化対策の根本的な問題は無視できません。よって、本意見書(案)には賛同できないことを申しあげて、討論とします。