議会報告

【本会議・討論】 「県直営で、信用と安定ある美術館運営を」   5月臨時県議会で反対討論     

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 私は、ただいま議題となっております。第93号議案 令和6年度愛知県一般会計補正予算について、反対討論を行います。

 文化施設活性化推進事業費についてです。

反対理由の第一に、美術館に必要な調査、収集、展示、研究の本来的機能を十分に発揮するためには、最も公共性が高く、最も安定性がある直営が望ましいからです。

芸文センターは指定管理やコンセッションが望ましいが、美術館については、管理者が安定しない指定管理では寄贈者などからの信頼を得にくい、信頼、信用を確保するためにはより安定した運営形態として地方独立行政法人化を進めるとしています。安定性が大切というのなら、直営の方がより安定しています。

 直営では予算の単年度主義が問題で、長期的な視点で運営しにくい、と説明がありました。また、施設ががんばって稼いでも施設のために使う仕組みがない、と聞きました。

 しかし二つの美術館はそもそも赤字です。利益を出したのに県に吸い上げられるというのは現実離れした理由にしか過ぎません。予算はたしかに単年度主義ですが、いまでも美術館の企画展などは数年かけて計画されています。単年度で完結するような事業はほとんどありません。数年間にわたり計画的に事業をすすめるのに直営で支障があるとは思えません。

 愛知県という組織にある信用と安定性を活かしてこそ文化施設の運営にプラスになると私は確信します。

反対理由の第二に、地方独立行政法人は効率的な組織なのか、私には疑問です。

経営の合理化が民営化の目的ではない、と言うかもしれませんが、民間の力を活かすことのメリットが効率性の向上にあることは周知の事実です。

 しかし今回、法人化を予定するのは県美術館と陶磁美術館の二つだけ、美術館が入る芸文センターの建物は別組織となります。「愛知文化施設活性化基本計画」によると、職員数は 61人、予算規模は年間約10億円です。この人数を県から切り離し、わざわざ新たに理事長を雇い、理事会を構成し、県への報告や計画書をつくり、採用などの人事管理も独自で行う。効率的とは思えません。

 独法化しても、職員を非公務員化しても、職員の処遇は基本的に県の職員に準拠するとのことでした。そうならば、管理費削るか入場料収入を上げるかしない限り、県からの交付金に依存する状態が続き、県からの交付金を減らすわけにもいきません。独自に稼ごうとしても、陶磁美術館の広大な敷地の活用ぐらいしか民間の知恵を活かせません。

  独立行政法人化するには、人員も事業規模も小さすぎ、かえって非効率ではないでしょうか。行き着く先は施設の売却か合併しかなくなるのではないか、と危惧します。

  いま必要なことは、愛知県の文化予算を抜本的に拡充することであり、コンサル任せではなく、自前の文化芸術政策をしっかり立てることです。瀬戸や常滑との連携を強めることも必要です。

  そもそも美術館、芸術文化施設において、優れた文化を創造しかつ継承するためには、息の長い取組みと目先の利益にとらわれることのない長期的な展望が必要です。文化芸術を蓄積し、次の世代に継承するための組織である美術館・博物館は本質的に市場原理や効率性、採算性とは相容れることがないのです。施設の活性化という狭い枠ではなく、愛知県の文化芸術をどう育てるのか、この機会に根本的に検討することを強く求めて、討論を終わります。

 

 

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