【しもおく奈歩議員】
愛知県教育委員会ではこの春の公立高校の受験から、出願方法について紙媒体をやめて、Web出願システムの利用を開始しました。このことについて、インターネット環境に不慣れな方や日本語が不自由な外国にルーツをもつ子どもたちへの配慮が足りないのでは、といった声が寄せられています。今後の改善につなげていただきたいとの思いから以下、質問します。
新しいシステムを採用するときには、試行期間を設けるとか、これまでのシステムも当分の間は併用を認めるとか、スムーズな導入に向けて一定の移行期間を設けることが一般的だと思います。ところが今回は、いきなり、Web出願だけですよ、と出願方法を全面的に一気に切り替えた、と聞いています。
Q1どうして、出願方法をWeb出願のみに切り替えたのでしょうか、これまでの紙媒体での願書提出を、一切認めないことにした理由は何か、おうかがいします。
【県教委・担当課長】 公立高校入試にWeb出願システムを導入した理由についてお答えします。中学生を含めてスマートフォンが普及し、様々な手続きのオンライン化が進んでまいりましたので、受検生や保護者の利便性を向上するとともに、中学校や高等学校での事務作業の軽減を図るため、Web出願システムを導入いたしました。
紙の願書による出願を廃止してWeb出願のみにいたしましたのは、紙とWeb出願を併用しますと、出願を確認して調査書などを発行する中学校や、出願を受け付ける高等学校での事務手続きが煩雑になり、ミスが生じやすくなって、結果として、受検生に不利益が生じる可能性があるからでございます。
【しもおく奈歩議員】
多様な受験生がいることは、想定されていたのでしょうか。あまりにも強引な進めかただと思います。
「愛知県公立高等学校入学者選抜Web出願システム利用規約」には、第5条(システムの利用環境)で、「システム利用者は、本システムを利用するために必要な全ての機器等(ハードウエア、ソフトウエア及びネットワークに係る全てのものを含む)を、自己の負担により用意するものとします。本システムを利用するための通信費用、印刷費用その他一切の費用はシステム利用者の負担とします。」とあります。
つまり高校入試のために、必要なWeb環境を整えるために生徒と保護者に新たな負担を求めたのです。スマホはかなり普及したとは思いますが、100%の家庭に印刷プリンターがあるとは思えません。中学校では代わりに印刷してもらえたのですか。
なかには経済的に困難な家庭もあるでしょう。また、一念発起して通信制の高校を受験したいと思った夜間中学で学ぶ高齢者が、この仕組みに対応できずに今年の進学を断念した、という話も聞きました。高校は全日制だけではありません。定時制や通信制の高校もあります。そして受験を希望する方の年齢や経済状態も実は多様です。中学校からサポートを受けられる人ばかりではありません。
新たなシステムのために費用負担を課したのは問題だと思います。経済的にWeb出願の環境が整えられない受験生へはどのようにサポートできたのでしょうか。自宅でプリントアウトできない方はどこでプリントアウトできるのでしょうか、せめて学校などで印刷は代行できるようにすべきではないですか。
Q2そこで伺います。プリンターがない、スマホやパソコンがないか十分に扱えない受験希望者へのサポート、はどうするのか、お答えください。中学校からサポートを受ける条件がない方へのサポート体制も伺います。
【県教委・担当課長】 受検票を印刷するためのプリンターが自宅にない場合は、中学校で印刷するようお願いしておりますし、コンビニにある複合機でも印刷できるようになっております。スマートフォンやパソコンがない、又は、自分でうまく操作できない生徒については、中学校の先生方にお願いして支援をしていただきました。
また、中学校の サポートを受けることが難しく、高等学校教育課にお電話いただいた方については丁寧にご説明し、電話だけでは対応が難しい場合には、県庁にお越しいただき、担当者がサポートしながらWeb出願システムで出願していただくなどの対応をいたしました。
【しもおく奈歩議員】
現場の学校関係者から「高校に直接出願についての問い合わせが多数あり、志願者のサポートが不足していると感じた」「不登校や引きこもりなど、再出発し受験に挑戦する場合に、中学校からサポート受けづらい。受験生へのフォローの充実が必要」という声が寄せられました。また、外国にルーツがある方も、中学校からサポートを受けられたとしても、その子に付きっきりになることは難しい・・という声もありました。取り残されてしまう受験生がいないように、サポート体制の充実を要望します。
多様性がある受験希望者のなかで、外国にルーツを持つ日本語が不自由な方々へはあたたかな配慮が必要と考えます。
願書を出して受験する仕組みは、Web 出願となっても基本的に変わらないとのことですが、日本語が不自由な人には、システムの利用規約をはじめ、煩雑な手続きを理解するのはなかなか大変だと思います。システム上簡略化できないのか、受験生と関係者の声をよく聞いていただき、今後に生かしていただきたいと思います。
どんなことに困ったか。「DV被害の母子家庭の住所表記は、避難してきた現住所か住民票上の住所か、困った」「外国で義務教育を終えたが、外国の中学校名は簡単に入力できない。卒業照明の名前の表記もアルファベットかカタカナで書くのか、とまどう。」「ルビ付きの入試問題を希望するのにも、いつからどれくらい日本にいるのか調べるシステムになっているが、母国と何度か行き来しており、うまく設問に回答できなかった」などの例を聞きました。日本語が不自由な受験希望者が直面したこうした疑問にもていねいに寄り添ってサポートする体制が必要です。
Q3-1そこで伺います。いまは電話での対応が中心だと思いますが、対面で相談できる窓口をつくることや、これまで通りの紙面での願書も受け付けるなど、柔軟な対応が必要と考えますがいかがでしょうか。
【県教委・担当課長】 高等学校教育課にお電話などでご相談いただいた場合は、出願方法などを丁寧に説明させていただいております。来日して間もない方など、電話だけでの対応がむずかしい場合は、先ほどもお伝えしたとおり、出願資格の確認を兼ねて県庁にお越しいただいて、対面でサポートしております。
また、日本語の支援が必要な方にとっては、むしろGoogle翻訳などインターネットの翻訳サービスを使うことで、簡単に入力したい内容を母語から日本語に変換し、コピーアンドペーストできますので、紙の願書よりも、Web出願の方が手続きしやすいと考えております。なお、ウェブを使うことが難しく、サポートも受けられない方については、引き続き高等学校教育課の窓口で対応してまいります。
【しもおく奈歩議員】
対応はされてきたということですが、寄せられた声があるように、多様な志願者を想定したうえで、WEB出願の導入は紙の願書と併用しながら段階的に行う必要があったと思います。全面的にWEB出願に移行したのなら、ネット環境がない、言語の理解が難しいといった方への最大限の配慮が求められます。「教育の専門用語が多い説明文は理解するのが難しい、やさしい日本語に直したり、多言語で表記したりしてほしい」との声がありました。
Q3-2学校関係者から、「web出願の手引きのやさしい日本語が必要。できれば多言語版、英語のほかに、ベトナム語、中国語なども必要」と声を伺いました。英語だけではなく、多言語対応について、ご検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
【県教委・担当課長】先ほども申しましたが、ウェブでの翻訳サービスを使っていただくことで、多様な外国の方に対応することができると考えています。また、必要があって、どうしても困るという声があれば、高等学校教育課にご相談いただきたいと考えています。
【しもおく奈歩議員】
Q4出身地に関係なく対等平等に、受験を希望する人たちが安心して利用できるシステムへと改善するためにも、外国にルーツのある子どもたちを支援する団体や様々な学習支援に取り組むみなさんからも意見を聞き取っていただくことも必要と考えますが、いかがでしょうか。
【県教委・担当課長】今回導入したWeb出願システムの使いやすさについてご意見をいただくため、現在、インターネットによるアンケートを行っております。
このアンケートについては、Web出願システムによる合格発表の画面や、高等学校教育課のウェブページ上で、案内をしております。受検生本人と保護者だけでなく、出願や受検に際してご支援していただいた団体の方々や様々な学習支援に取り組むみなさんからもご意見をいただければと思っております。
今回のWeb出願システムの導入に際しては、本番で円滑に手続きいただけるよう、秋に公立中学校3年生全員を対象としたテストを行い準備してまいりましたが、実施の途上で、受検生や保護者にご負担やご心配をおかけした点もありましたので、アンケートの結果も踏まえ、システムのさらなる安定性、利便性の向上に努めてまいります。
【しもおく奈歩議員】
Web環境への適応も時代の流れだとは思います。しかし、その中で、排除される人が出てしまうことはあってはならないことです。多様性を尊重することが求められています。また、受験生にとってその年が勝負です。移行期間をつくり、丁寧な対応が必要であり、全面的に導入するのは、拙速だったと思います。
様々な背景をもった高校受験希望者に、寄り添った対応を求めます。いま、経済的な格差をなくすために高校授業料の実質無償化も進んできました。こんな時に受験のための新たな負担を課すことも問題です。公立高校の受験を希望するすべての人に開かれた出願システムとなるよう、必要な見直しを行うことを求め質問を終わります。