議会報告

2023年9月議会 教育スポーツ委員会 「2026年のアジア・アジアパラ競技について」

カテゴリー:

【しもおく奈歩議員】

 2026年のアジア競技大会、アジアパラ大会についてうかがいます。中国・杭州で第19回アジア大会が開かれました。しかし、ここにきて大会の財政問題があらためてクローズアップされています。札幌市が2030年冬季五輪の招致を断念しました。断念した理由は、東京五輪の汚職や談合事件などの不祥事で、市民に理解が広がらなかったためとしています。

 さて、アジア競技大会です。建設しない、と決めたはずの選手村について、アジア・オリンピック委員会(OCA)から設置を求める意見が出ている(時事通信10.1)との報道がありました。まず、この点について伺います。

 今年3月、大会組織委員会は、選手村の整備を断念し、主催者であるアジア・オリンピック評議会(OCA)と協議すると発表。6月にはOCAの視察も受けて、理解を得た、としていました。ところが、複数の報道機関から、「選手村を小規模ながら設ける方針に再度変更した。ホテルなど既存の宿泊施設を活用する原則は維持するが、病院や娯楽施設といった選手へのサービス機能を中心に、選手村を運営する見込み。」「OCAから設置を求める意見が出たことを受け、小規模な形での実現へ模索を続ける」といった情報が相次いで流れました。

 私は6月議会で、「アジア競技大会は、国や競技種目を超えたアスリートの交流を通して、「友情と平和の促進」をはかる点に特徴がある。交流の場として選手村がないとすれば、この友情と平和の促進、選手同士の交流の場を組織委員会として準備しなくて良いのか?」と質問しました。当局からは「選手同士が交流できる場を確保するよう、検討が進められています。」との答弁がありました。

 そこで質問します。選手村を整備しないことで、大会主催者とはしっかり合意できていますか?知事が「選手村は整備しない」と述べた方針は変わりませんか?選手同士が交流できる場として、『選手村』機能の検討が具体化される、と理解して良いですか? お答えください。

【スポーツ局】

  • 選手村については、本年3月に開催された組織委員会理事会において、多額の整備費を要する選手村の施設整備を行わず、ホテル等の既存施設を活用する方針を示しており、現在もその方針に変更はない。
  • ホテル等の既存施設を活用することについては、6月に実施されたOCAによる現地視察において、おおむね理解を得ており、また、7月に開催されたOCA総会において、選手村の整備は行わず、ホテル等の既存施設の活用について説明したところである。
  • 引き続き、OCAとは、ホテル等の既存施設を活用して必要な選手村機能を確保することについて、協議を進めていく。
  • なお、選手同士の交流については、愛知・名古屋の文化を紹介しながら、選手同士が交流できる場を確保するよう、組織委員会において、引き続き、検討を進めている。

【しもおく奈歩議員】

 心配なのは、杭州アジア大会を視察した組織委員会の職員から、「選手村も視察し、その豪華さに驚いた」「これまでのサービスと遜色のないものにしないといけないが、難しい」との感想が報じられていることです。「国家の威信」をかけて開催される中国での大会の豪華さに引きずられてはいけません。愛知では、簡素で効率的な大会運営を進めるという基本方針を堅持すべきですが、いかがですか?

【スポーツ局】

  • 愛知・名古屋でのアジア競技大会、アジアパラ競技大会は、華美・過大なスポーツ大会とするのではなく、既存施設を有効活用するなど、あらゆる工夫をすることで、経費の抑制を図っていく。
  • 引き続き、簡素で合理的、機能的な大会運営を目指した開催準備を進めていく。

【しもおく奈歩議員】

 大会の開催経費が大きくふくらむ懸念が生じています。アジアパラ大会の開催経費が当初発表の150億円から200~230億円になる見込みとされました。アジア大会の開催経費も当初の850億円から増えてしまうのではと、中日新聞などでも報道されており、私もそう思います。

 まずパラ大会についてうかがいます。10月3日、アジアパラ大会の開催都市契約が締結されました。2022年3月の開催表明時点での財政計画は「アジア競技大会の競技会場や選手村の施設を共用することにより、アジアパラ競技大会に必要な追加経費として、150億円を想定、アジア競技大会の850億円とあわせて1000億円を想定」するとしていました。

 そこでうかがいます。アジアパラ競技大会の現時点での開催経費の見込みはいくらか?ふくらんでしまった要因は何か?また増えた経費をどうやって捻出するのか?愛知県と名古屋市の負担割合はアジア競技大会と同じですか?答弁を求めます。

【スポーツ局】

  • アジアパラ競技大会の開催経費は、アジア競技大会の競技会場等を共用し、追加経費として、200億円から230億円になると想定される。
  • 開催経費については、膨らんだということではなく、2022年3月28日の開催表明時に発表した追加経費の試算は、過去大会の実績等を参考にして行われた目安であり、その後、開催都市契約の締結に向けて、アジアパラリンピック委員会(APC)と協議する中で、新たに判明した事項や状況の変化があった。
  • 例えば、2022年3月の試算時には、警備や輸送を警察などが支援している状況が反映されておらず、仮設整備費も盛り込まれていなかった。
  • また、選手村の施設整備を取りやめたことによる影響を考慮する必要があることに加え、東京パラリンピックを踏まえ、アクセシビリティに求められる水準が向上していることから、バリアフリー対応等により仮設整備費の増加も予想される。
  • さらに、昨今の物価高騰や労務費の上昇といった要素も加味して、改めて積算を行い、9月8日の組織委員会理事会において、概算としてお示しした。
  • それから、今後、財源確保としては、宝くじやスポーツ振興くじ等の各種助成金、民間企業のスポンサー協賛金やチケット収入の確保、国への支援要請、競馬・競輪・競艇など公営競技における協賛レースの開催などをお願いしていきたいと考えている。そうした財源の確保により、できる限り行政負担を少なくしていきたいと考えている。
  • また、愛知県と名古屋市の行政負担割合については、アジア競技大会と同様に2:1となっている。

【しもおく奈歩議員】

 パラ大会の150億円としたのは2022年、1年前ですよ。一年間で5割増し。大丈夫ですか。これからも経費がまだまだふくらむのでは、と危惧します。

 同様に、アジア競技大会についてもお聞きします。アジア競技大会の開催経費が850億円と示されたのは、いまから7年前の2016年。当時の資料を見ると、「大会主催者負担経費として、運営経費440億円、競技会場仮設整備費110億円、選手村仮設整備費300億円、合計850億円。さらに経費の圧縮に努め、経費を精査する。入場料収入やスポンサー収入の確保に努め、行政負担の上限は600億円とする」「行政負担の600億円について愛知県400億円、名古屋市200億円の負担とする」としています。

 しかし、この7年間で物価高騰など大きな変化があり、また300億円の選手村構想も大きく変わります。パラ大会では約1.5倍の経費増です。

 そこであらためてうかがいます。アジア競技大会の開催経費は、現時点ではいくらになる見込みですか?行政負担の600億円、愛知県負担予定の400億円は変更されませんか?経費削減の努力をしてきたと思います。当初見込みから圧縮できた経費についてはどういうものがあるか?あわせて紹介してください。

【スポーツ局】

アジア競技大会の開催経費については、2016年の開催構想発表時の850億円から変更していない。また、そのうち行政負担は600億円で、愛知県負担分400億円についても、変更の予定はない。

 それから、これまで行ってきた経費圧縮の主なものとしては、選手村仮設整備費を圧縮するため、名古屋競馬場跡地に設置する予定であった選手村の整備を取りやめ、ホテルなど既存の宿泊施設を活用する方針に切り替え、準備を進めていること、また、競技会場仮設整備費などを圧縮するため、水泳の競泳と飛込、馬術の会場を東京に変更するなどしてきた。

【しもおく奈歩議員】

850億円と行政負担の上限600億円は堅持するのですね。大事な点なので、再度、確認します。いいですか?

【スポーツ局】

  簡素で合理的、機能的な大会運営により予算の範囲で収まるよう、組織委員会や名古屋市を始め、関係者とともに努力していく。

【しもおく奈歩議員】

 経費をまかなう収入面の見通しはどうでしょうか?大会経費の850億円、行政負担は600億円、その差額250億円は、入場料収入やスポンサー収入等で確保するということですが、東京五輪の汚職事件などで、企業の協賛意欲が低下し、スポンサー収入が苦しいと聞きます。250億円を確保する見通しはありますか?

【スポーツ局】

  • 先月27日に、組織委員会がマーケティング代理店候補企業として、株式会社新東通信を代表企業とする4社で構成するコンソーシアムを決定した。新東通信は地域団体や地元企業と強い結び付きを持っており、そのほかの3企業はいずれも国内大手企業で、それぞれに特色あるネットワークや大規模スポーツ大会に関する経験や知見があり、この4社がうまく機能すれば、大きな成果が期待できるものと選定委員会でも評価されている。
  • 今後、契約締結に向けて、代理店候補事業者と協議、調整を行っていく中で、こうした特色を生かした効果的なマーケティングの在り方を、組織委員会において検討していく予定である。
  • そして、先ほども申し上げたように、スポンサー協賛金やチケット収入の確保に努めるとともに、宝くじなどの各種助成金、公営競技による協賛レース開催などにより、250億円を確保できるよう努めていきたいと考えている。

【しもおく奈歩議員】

 6月議会では観客数の見込みをたずねたが答弁できなかった。入場料収入をきちんと見込むのなら、有料観客数の見込みを示すのは当然です。今日は聞きませんが、ぜひきちんと見通しを持っていただきたい。

 ところで、東京オリンピックの経費はどうだったのか。東京五輪の大会経費は立候補時点の7340億円が、実際には1兆4238万円と2倍に膨らみ、東京都の負担も1538億円から5965億円と実に4倍にふくらみました。できる限りの経費を抑えると言いますが、経費の増大は避けがたい、と私は考えます。

 組織委員会と県・市のアジア・アジアパラ競技大会推進議員連盟は、先日、国に支援を求めていくことを決議しました。ところが、アジア大会については2018年、パラ大会については2022年、それぞれ開催を認めた閣議了解の文書には、「大会運営費は、国によりいかなる負担も助成も行わないこと(18年)、国費以外により賄われるものとすること(22年)」「特別の財政措置は講じないこと」とはっきり書かれています。

 国はお金を出しませんよ、という二つの閣議了解について、知事も市長も、大会が国に正式に認められた、と歓迎のコメントは出していますが、財政支援がないことには一言も触れていません。

そこでうかがいます。二つの国際的競技大会に、国が財政関与しないと決めたのはなぜか?答弁を求めます

【スポーツ局】

  • アジア競技大会は、1958年に第3回大会が東京で、1994年に第12回大会が広島で開催されており、2026年に愛知・名古屋で開催される第20回大会は、日本で開催される3度目のアジア競技大会となる。
  • 最終的には国が判断したものであるが、前回、第12回大会における閣議了解においても新たな特別の財政措置は講じない旨記載しており、愛知・名古屋大会についても、これに倣い、同様の閣議了解を行ったものと思われる。

【しもおく奈歩議員】

 大会での県と市の負担の上限は変えない。経費増も抑えてきた。収入不足が予想されるのはスポンサー収入です。その穴埋めを国に求めるのですか。

 パラ大会費用の一定割合を国に求めるのは、多少は理解しますが、それなら計画段階で国の費用負担をきちんと位置付けておくべきではなかったのですか?収支が厳しくなりそうだから国に支援して、というのは、問題です。

国に支援を求めるのは、スポンサー収入の見込み違いを埋めるためですか? いくら国の支援が必要なのですか?国の支援が受けられなくとも二つの大会は開催できるのですか?国の支援がないと県民に新たな負担を強いることになりませんか?以上、お答えください。

【スポーツ局】

  • まず、国に支援を求めるのは、見込み違いを埋めるものではない。平成23年に制定されたスポーツ基本法では、第27条で、「国は、国際競技大会の我が国への招致又はその開催が円滑になされるよう、環境の保全に留意しつつ、そのための社会的気運の醸成、当該招致又は開催に必要な資金の確保、国際競技大会に参加する外国人の受入れ等に必要な特別の措置を講ずるものとする。」としており、国際競技大会であるアジア・アジアパラ競技大会は、国においても支援していただくことを要請しているところである。
  • また、最近では、東京パラリンピックにおいて、国が1/4の経費を負担していること、世界水泳選手権2023福岡大会にも開催経費に多額の国補助金が投入されていることから、アジア・アジアパラ競技大会についても国による財政支援をお願いしたいと考えるものである。
  • それから、いくら国の支援が必要なのかというご質問に関しては、現時点では正確な数字を申し上げることはできないが、国からも支援をいただくことにより、県市の行政負担ができる限り少なくなるよう努めていきたいと考えている。
  • そして、「国の支援が受けられなくとも大会は開催できるのか」、「国の支援がないと、県民に新たな負担を強いることになるのか」というご質問については、今年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」に、2026年アジア・アジアパラ競技大会が、着実な準備を進める大規模国際大会の一つとして位置付けられたところであり、国においても、明確に両大会を国家的なプロジェクトとして推進していくべきものとされた。国の支援を得ながら、県民に新たな負担を強いるようなことがないよう、組織委員会や名古屋市を始めとする様々な関係者と協力し、あらゆる方策を考え、開催資金の確保に努めていきたいと考えている。

【しもおく奈歩議員】

 とうとう札幌市は、2030年の冬季五輪の誘致を断念しました。スポーツ大会だけでなく、大阪万博でも経費がどんどん膨らみ、地元と国の負担増をめぐり混迷を深めています。

 知事は今年2月、選手村整備を断念した時に「東京オリンピックをめぐるさまざまな事件で公金が投入される大規模なスポーツ大会への世論は大変厳しくなっている。県民、市民の理解をいただきながら準備を進めていく必要がある」と述べました。いまその知事が、国に公金投入を要請する事態となっています。

 県民に説明した結果、「そんな負担増は認められない」と県民の意思が示されたら、撤退や延期も選択肢に入れるべきではないでしょうか。そういう緊張感をもっていただきたい。現時点で、県民・市民の理解を得るために、二つの大会経費の見通しについて、透明性を高めて、県民・市民に情報を公開し、説明する考えはありませんか?

【スポーツ局】

  • これまでも、選手村整備の取りやめや、一部の競技会場の変更、アジアパラ競技大会の開催経費など、大きな決定事項があればその都度、組織委員会の理事会や記者発表、Webページなどを通じて、説明してきた。
  • 大会経費の見通しについても、引き続き同様に、県民の皆様に丁寧に説明していきたいと考えている。

【しもおく奈歩議員】

 県民から歓迎される大会にするために、大会経費の負担も含めて情報を公開していくことが必要です。

そして、アジア大会は、スポーツにより友情を育み、多様性を認め合うことを通じて、国際平和に寄与する一大イベントです。平和と友好の架け橋となる大会を、県民にとって負の遺産にならないようにしていただくことを要望し、質問を終わります。

▲ このページの先頭にもどる

© 2015 - 2024 日本共産党 愛知県委員会