日本共産党しもおく奈歩です。ただいま議題となっています。諸議案のうち、第81号議案、第82号議案、第87号議案、及び第94号議案について、反対の立場から討論します。
初めに第81号議案 令和5年度愛知県一般会計補正予算第2号についてです。この補正予算には、長年の懸案である特別支援学校の長時間通学や教室不足の解消につながる2つの特別支援学校の設置や低所得者世帯への子育て支援と、県民福祉の向上につながる予算も盛り込まれていますが、以下の2つの理由で賛成できません。
教育に混乱と格差を持ち込む「ラーケーション」は賛成できない
一つ目は、ラーケーション推進事業費です。ラーケーションとは、校外学習活動の日として、一年間に3日まで学校に登校しなくても欠席扱いせず、子どもたちが保護者らとともに校外で体験や探究の学び・活動を自ら考え、実行するものです。
「休み方改革」を通じ、生産性向上を目指すという大村愛知県知事の目玉の政策のようですが、教育現場の声を置き去りにした、問題山積みの政策です。4点、問題を指摘したいと思います。
第一に、ラーケーション導入による学習の遅れをカバーする手立てがないことです。ラーケーション取得によって、受けられなかった分を自習するとしています。しかし、実際に「どの家庭でも、学習の補充ができるとは限らない」という声も寄せられています。技術や調理実習、音楽など家庭では、自習が難しい授業もあります。
今教育現場は、先生が足りなくて多忙化しています。そんな中で、子どもたちへフォローする体制をつくるのは困難だと思います。子どもたちの学びが保障されるのか大変心配です。
第二に、学級や学校の運営に重大な支障を招くことになりかねないということです。子どもたちがいつ、何人、休むかわからない中で、学級・学校を運営するのは難しい「校外学習や修学旅行の班決めなど、計画的なクラス運営ができなくなる不安が解消されない」という声があります。学年によっても、細かな授業計画は違ってきます。
第三に、子どもたちの間に、格差を広げ、自己肯定感の低下を招きかねないことです。「ラーケションの難しい家庭もある。格差拡大になりそう」と心配する声があります。大企業に勤めている家庭ばかりではありません。休めない保護者、生活保護を受けている家庭、親が病気を患っている家庭、シングルマザーやシングルファーザーの家庭など事情は、様々あります。ゆとりのある家庭は、制度が使えますがそうでない家庭は生活格差がはっきりみえてしまいます。「ラーケションに行ってこんなことをした・・と話せる子はいいけど、その制度を使えないことで、自己肯定感をさげてしまう子どももでてしまうのでは」と、現場の声があります。
子どもたちの中に格差を広げるような、制度を愛知県がやるべきではありません。
第四に、休み方改革と言いながら、教員の長時間労働・多忙化解消に逆行することです。新たな制度を始めることによって、現場は混乱し負担が大きくなってしまうのではないかと思います。雇用主である愛知県が、教員に負担を押し付け、休みたくても休めない状況に追い込むことになってしまいます。「休み方改革」というのであれば、まず長時間労働が問題になっている学校現場で、正規教員を増やし、休める環境をつくることが先ではありませんか。
以上4点指摘させていただきました。
そもそもいったい誰のための休日なのでしょうか。一部報道によると、ラーケションはトヨタカレンダーが追い風になったとありました。知事も会見で「経済団体、産業界から休日は、親子でいろいろな活動がしたいと要望があった」と語っています。大企業の要望が後押しになったのではないでしょうか。学校現場に混乱をもたらすような制度をつくるよりも、子育てしながら働く人々が子どもや学校に合わせて休みやすい社会にすることこそ必要です。教育現場に混乱と負担、格差を広げるような制度を持ち込むべきではありません。
防災拠点・水道供給は県民の命を守る事業、民間委託に反対
2つ目は、愛知県基幹的 広域防災拠点整備事業費についてです。県民の命にかかわる「基幹的広域防災拠点整備事業」について、その整備と事業の必要性は認めますが、これは、県民の命に直結する公共施設の整備と運営をPFI 手法により特定の民間企業に委ねることが問題です。以上の理由により、第81号議案には賛成出来ません。
次に、第82号議案 令和5年度愛知県水道事業会計補正予算第一号についてです。豊橋浄水場の再整備をPFI手法で行う理由としてあげられたのは、同一敷地内で給水事業を行いながらの再整備なので、設計・施工と運転管理を一括発注する方がリスクを回避し安全に運転しながら工事も進められる。一括発注することで費用も節約でき、浄水場の空きスペースも民間の知恵で有効活用してもらえる。この2点ですが、どうでしょうか。
工事期間10年+運転管理20年、合計30年の長期にわたり、同一事業者に運転管理業務を委託することになります。運転管理は現在すでに民間委託されていますが、数年ごとに業者を選定し、チェックがかかります。30年の長期委託では競争原理も働かず、会社都合で業務継続できないリスクも考慮すると、果たして安全といえるのでしょうか。
そもそも水道事業は、県民の命を守る事業です。浄水場は、水道事業にとって水を送り出す、言わば心臓にあたる重要な施設であり、企業利益よりも安全性・安定性・継続性が優先されるべきです。公共が担うべき事業のなかでも、住民の命に直結する分野を民間に、しかも一括発注で大企業中心でしか受注できない方法で、委ねることに賛成できません。
「ジブリで子供料金」「高校生奨学金の返還訴訟」は、問題あり
次に、第87号議案 愛知県都市公園条例の一部改正についてです。この条例改正案は、愛・地球博記念公園の一角に新たに設置する遊具について、利用者が多いと予想される土日・休日、夏休み等に限り有料化するというものです。ジブリパーク気分を味わえる遊具を公園の無料エリアに設置することには私も賛成です。しかし、どうして来場する子どもたちと保護者から使用料(4歳~小6=百円、中1以上は3百円)をとる必要があるのでしょうか。愛知県が子育て支援に力を入れるというのなら、無料の公園エリアに設置する遊具は、無料開放するのが当然ではありませんか。しかも4歳から小学校6年生までと幼児も含めて使用料を徴収する。保護者からではなく、子どもたちからこんなお金の取り方をする公園を私は他に知りません。
すっきりと無料開放し、安全管理は公園管理者である県の責任で万全を期すのが当然です。子どもから使用料金を徴収する条例改正には賛成できません。8月4日の供用開始から施行されるこの条例改正により、予定される収入額は年間わずか1480万円です。私はきっぱり無料にすべきだ、と申し上げます。
最後に、第94号議案 訴えの提起についてです。この議案は愛知県から貸与を受けた高等学校等奨学金貸付金の返還が滞っている方に、返還を求める裁判を起こすというものです。
奨学金返済がいま若者に重くのしかかっています。「2022年の自殺者のうち、理由の一つとして奨学金の返還を苦にしたと考えられる人が10人いたことが、警察庁などのまとめでわかった」との報道がありました。事態は深刻です。大学生の奨学金だけなく、高校の奨学金も問題です。いまの制度では返還免除の対象になるのは本人が死亡又は重い障害で就労が不可能になった場合のみです。あまりに冷たく機械的です。せめて返還免除の対象に、本人と保証人の経済的理由も加えるなど、困っている若者にしっかりと寄り添い、支援すべきです。滞納者を裁判に訴え、困っている県民をさらに追いこみかねない議案に賛成できません。
以上、県民のくらしを守ることや、教育の充実、子育て応援に逆行する中身である議案について、反対であることを表明し、討論とさせていただきます。