(未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団事務局)
【下奥奈歩委員】
3月の委員会では、昨年5月1日現在の教員不足数が小中高特別支援の合計で183人、昨年度より58人増加していると報告されていました。
そして、教員不足は年度当初より年度の後半がより深刻、と聞いている。年度途中で産休や育休に入る教員の代替にと予定していた臨時任用の教員を、正規の教員不足のために年度当初から配置してしまい、補充が追いつかない。昨年4月1日では2534人の正規教員不足による欠員補充が行われたと聞いています。これでは臨時任用や非常勤講師も本来の目的のためにはまったく足りなくなります。先生が見つからない。5月1日時点の調査だけでは実態を正確につかめないのではありませんか。そこでうかがいます。
今年5月1日現在での教員不足数は把握できているんでしょうか。非正規の教員で代替している人数も含めて救員不足のリアルな数字をきちんと示してください。2学期、3学期と教員不足がどう推移していますか。
小・中・高・特別支援 それぞれ、また特に不足が深刻な教科もあるのではないか。志願者数を増やす努力もされていると思いますが、最近の動向はどうか。以上、教員不足の現状と認識をうかがいます。
【教職員課長】
令和5年5月1日現在の教員の未配置数ですが、名古屋市を除く本県の公立の小学校で52人、中学校で47人、高等学校で19人、特別支援学校で22人、合計で140人でした。
正規教員の不足による非正規の欠員補充数は、小学校で1、288人、中学校で771人、高等学校で298人、特別支援学校で246人、合計で2,603人でした。
昨年度の2学期及び3学期における教員の未配置数は、把援している人数で、小中学校について、5月1日現在で145人(小86人・中59人)であった未配置数が、9月1日現在で137人(小78人・中59人)、3月1日現在で115人(小50人・中65人)でありました。なお、高校、特別支援学校については調査しておりません。
また、教科別では、中学校技術、高等学校工業といった、教員免許状保有者が少ない教科・科目で不足が解消できていない状況です。
教員採用選考試験における志願者数は減少 向にあり、2024年度採用については、昨年度から360人波の6.048人でした。
【下奥奈歩委員】
教員不足をもたらしたものは、正規教員の配置を抑制し、非正規教員にかなりの部分を依存してきたことが大きいと私は思います。
教員不足の実態は深刻です。なかには管理職が担任を持たざるを得なくなったり、どうしても教員が見つからず授業もできずに生徒に成績がつけられなかったり(中学校の美術と聞きました)というケースまで生じています。生徒との信頼関係が特別に必要な特別支援学級の現場でも教員の入れ替わりが激しい状況があるそうです。「予定の変更が苦手な特性のある子どもたちの情緒が不安定になり、非常に辛い思いをしている」という声を聞きました。
「先生がいないのは、子どもの権利条約違反ではないの?」と、名古屋の子どもが市の子どもの権利相談室に実情を訴えたという話もありました。
子どもたちの学ぶ権利を保障するためには、正規の教員を増やして、ゆとりをもって子どもたち一人ひとりと向き合える時間をつくれる学校運営できるようにすることが必要です。
わが党の国会議員がこの問題を国会で質問した際に、文部科学省は答弁で「都道府県等が正規教員を任用した場合においてはそれに対応する給与水準で国庫負担をしている。」「積極的に正規教員の採用を進めていただくようにお願いをしてきたところでございます。」と、こたえていました。国が、積極的に正規教員の採用をすすめるように言っているのに、愛知県は、過去最大の臨時教員で補い、教員不足が生じてしまっています。
非正規教員に依存し続けるやり方では教員不足は解決できません。教育に臨時はありません。
子どもの権利条約から見て、教員不足は深刻な課題という認議をお持ちでしょうか?その解決には、正規の教員を増やしていくことがいちばんだと考えますが、いかがでしょう?答弁を求めます。
【教職員課長】
本来配置しなければならない教員が配置されていない学校があることについては、早急に解消すべき課題であると認識しております。教員不足の解消に向けて、正規教員の採用を積極的に行っており、今年度は、昨年度より160人増の1,710人を新規採用しました。
来年度については、定年引上げ制度が導入されるため、前年度では945人いた定年退職者がいないことになります。退職者が減れば、新規採用者数も減ることになりますが、正規の教員定数を確保できていない欠員数を減少させるため、採用予定人数を1,610人とし、前年度比100人波にとどめたところです。
過酷な労働を学生に強いる教育実習は、改善が必要
【下奥奈歩委員】
教員志願者の減少も大きな問題です。長時間労働の問題など、教員の働き方こそ改革が必要です。教員を志望した学生が、学校現場に最初に接するのが、教育実習です。ここで子どもたちと触れ合い、先輩教員の姿に感銘を受け、「先生になってね!」と子どもたちから手紙をもらい、「教員になろう!とあらためて思った」という学生がたくさんいます。教育実習は、年間で何人くらい行われているのか、指導体制がどうなっているのか、教えてください。
【教職員課長】
名古屋市を除く本県の公立学校で、昨年度(令和4年度)教育実習を受けた教育実習生の数は、小学校873人、中学校1,119人、高等学校548人、特別支援学校144人、合計2,684人でした。
教育実習生を受け入れる学校では、研修部主任や教務主任が中心となり、教育実習実施計画を算定し、教育実習生を学校全体で受け入れ、教育実習生を支援する体制を整えます。教育実習生1人につき、1人の指導教員がつき、学級経営や教科指導についてマンツーマンで指導します。なお、中学校や高等学校、特別支援学校では、指導教員が教育実習生の専門教科と一致しない場合があるので、その場合、教科指導を担当する別の指導教員との複数体制で指導します。
【下奥奈歩委員】
いま、教育実習に行って、あんな労働環境では働けない、と教員になる夢を断念する学生が少なくないという実態があります。過酷な教育実習の実態は国会でも問題になりました。
民青同盟愛知県委員会が行った教育実習生へのアンケートがあります。実習先は愛知県内に限りませんが、国会でも配布された資料です。
実習中の勤務時間はどうでしょうか。実際の勤務時間は1日13時間30分、研究授業前では14時間30分というケースがありました。10時間以上が7割です。朝の7時半から夜の6時、7時まで、遅いと9時近くまで学校にいる。労働基準法では8時間を超えて働く場合には一時間の休憩が必要とされています。しかし、昼食の時間は食育や子どもたちとの時間になり、ほとんど休憩時間というものはありません。
授業の持ちコマ数はどうでしょうか。27コマも担当するケースもありました。普通は6コマ、7コマでもたいへんなのに、現職教員並みに働かされるケースもありました。授業準備に追われて、子どもたちと接する時間がほとんどない実習期間となってしまったそうです。
なかには実習の1週目から授業をしなさいと言われて、学校や子どもたちの様子もわからないのに、事前に指導案をつくってきなさいというケースもあったそうです。教員の多忙ぶりをみて相談したくても、できない雰囲気もあったとのことです。また、学校側が実習生に「あなたに割く時間がないから」とそもそも、指導を受けられないという深刻なケースもあったと聞いています。
もちろん、指導力のある教員と出会い、子どもたちともふれあい、やりがいを感じた実習生もたくさんいます。実習先の格差も大きいです。子どもが好きで、学校の先生になりたいと希望をもって学んできているのに、半数近い学生が教育実習を体験して、「教員になるのを諦めざるを得ない」と考えてしまう、という深刻な声が寄せられています。教育実習は、本来、どのような時間数で行われるものか。過酷な労働を学生に強いる状況が起こっていますが、教育委員会は認識されているでしょうか。
【教職員課長】
教育実習生は、配属校教職員の勤務時間(1日7時間45分、1週間38時間45分)を基準に、各学校で決められた出校時刻から退校時刻の間で実習を行います。
教育実習生の授業実習時間等は、各大学の教育課程により、目安や基準が設定されています。ある大学では、2週間の実習を行う場合、子供の生活や学習活動、数師の指導活動等を観察する活動として3〜4時間、指導教員が行う活動に補助的に参加する活動として2時間、指導教員の指導のもと、実習生が主体的に計画して、授業や学級行事等の指導を行う活動として2~5時間を目安として示しています。
これらの基準をもとに、各学校で教育実習実施計画を築定し、実習が行われますが、授業実習時間等以外にも、教育実習生が指導案を作成したり、大学に提出する授業の観察記録等をまとめたりする「教務の時間」や、自主的に他の教員の授菜を見て学ぶ時間も確保されています。
各学校に対しては、指導教員が教育実習生に対し、教育実習生の過度な負担となるような指導を行わないことや、不適切な指導を行わないよう、校長会等を通じて伝えていますが、一部で指導教員の指導に熱が入り、実習生への指導時間が長くなる場合もあると聞いています。このような場合には個別に過度な指導とならないよう伝えております。
例年1月に、教育実習生が在籍する大学と県教育委員会とで行う「教育実習受入れ事務打合せ会」では、教育実習校受け入れ校の反省及び次年度への要望として、教育実習生の勤務上の諸問題や教育実習の内容等の課題について共通認識しています。大学側からそれほど深刻なケースがあるとは聞いていないというのが現状であります。
【下奥奈歩委員】
教育実習は一義的には大学の責任なので、大学が相談窓口になります。しかし、どうしても多忙な学校に実習をお願いする立場なので、立場が弱くなっています。学校と教員が超多忙な状態なのはその通りですが、ここで踏ん張って、教育実習生を温かく迎え、教員への夢を育んでいかないと、先ほど述べてきた状況では、学生が希望を失い教員志望の学生はますます減っていくと思います。また、教育実習指導のなかで、ハラスメントを受けた話も聞いています。
数育実習生をめぐっては、今年3月に文部科学省から、「ハラスメントや教育実習の適切な時間管理についての通知」が出されています。どう受け止めていますか。また、教育委員会として、県内の教育実習の実態を調査し、学生の声も聴き、もちろん学校現場の声も聴いたうえで、長時間労働の是正や適切な持ちコマ数を示すことなど、必要な改善を進めるべきではありませんか。答弁を求めます。
【教職員課長】
令和5年3月29日付で文部科学省から発出された「教育実習等におけるハラスメントの防止及びその適切な対応等について」は、教育実習に関わる全ての学校が留意すべきことであるととらえ、令和5年4月7日付で、県内の県立学校及び各市町村教育委員会に通知文書を発出しました。
先程申し上げましたとおり、各学校に対しては、指導教員が教育実習生に対し、不適切な指導を行わないことや、教育実習生の過度な負担となるような指導を行わないよう。校長会等を通じて伝えております。また、「教育実習受入れ事務打合せ会」において、教育実習生への指導上の諸問題や教育実習の内容等の課題について、協議し、改善を行っております。文部科学省の通知文にあります、ハラスメントや時間管理の問題が教育実習生から寄せられた場合、教育実習生が在学する大学を通じて県教育委員会に伝えていただくことを事務打合せ会で確認しており、引き続き必要な改善を行ってまいります。
【下奥奈歩委員】
学生から、「教員の魅力はあるけど、働き方がしんどい。子どもがあってこその教育現場だから、子どもが嫌いで教員にならないわけではない。教員の労働環境改善こそが教員希望者を増やすことにつながる」という声が寄せられています。
勉強でも人間関係でも、子どもが成長発達するには、伴走する教員の時間と心の余裕が必要です。教育現場の多忙化を改善し、教員不足を抜本的に改善するために教育の専門家である正規教員の大幅な採用増を求めて質問を終わります。