1. 議案質疑 「スペースジェット撤退の後始末に三菱重工の負担求めよ」
第一に、航空機サプライヤーへの支援についてです。
エアロマート名古屋2023出展支援の拡大ということで、支援企業を30社から45社に拡大し、出展料についても企業の半額負担25万円を肩代わりし全額支援とする内容です。
航空宇宙分野の国際的な展示商談会であるエアロマート名古屋は2年ごとに開かれており、2021年にも6月補正で出展支援が、今回のように対象企業数を増やし、半額支援から全額支援へ支援額も拡大されました。背景にあったのは前年10月の三菱重工、三菱航空機によるスペースジェットの開発凍結方針の発表でした。大きな影響を受けた県内の関連企業を支援するために、と支援内容が拡大されたと理解しています。
さて、いま航空機産業にとっては、コロナ過を抜け出しつつある「需要回復期」であり、多少なりとも明るい見通しが持てるようになってきた時期です。だから、サプライヤーへの支援内容は一昨年の補正後の対象企業数や負担水準ではなく、当初予算で示された30社、半額支援にしたものと思います。
ところが2月、三菱重工業がスペースジェット事業から撤退を決め、またまた関連業界に激震が走りました。
そこで伺います。今回、航空機サプライヤーへの支援拡大の補正予算を組んだのは、一般的なコロナ不況や中小企業支援だけではなく、SJ撤退による影響への対応だとの認識で良いでしょうか?
私は、コロナ禍による不況から中小企業を守り支援する対策を否定するものではありません。
しかし三菱のSJ事業には、国からは約500億円が投入されており、愛知県からも用地確保や駐機場整備などで少なくとも81億円以上が注ぎ込まれています。撤退による影響については2月議会でも議論がありました。県が261社を対象に行い101社から回答があった緊急アンケートでは、53社が開発や量産に参加予定だったとしており、撤退の影響ありとの回答は15社です。
知事は、SJ量産に向け先行投資をしている部品メーカーへの影響を懸念し、三菱重工に「丁寧な対応」を要請したと報じられました。
県として、必要な支援策を講じるのならば、その原因となった三菱重工のSJ事業撤退をしっかり総括し、三菱重工に対し県がSJ事業に投じてきた県費の返還を求めるべきです。
そこで、伺います。航空機サプライヤーの支援拡大には、更なる県費の投入ではなく、その要因をつくった三菱重工に応分の負担を求めるべきではありませんか。
2. 議案質疑 「特定の結婚観を押し付けるな 雇用改善・家計支援こそ」
第二に、出会いの場をつくり結婚支援することについてです。愛知県がこの結婚支援策を少子化対策として位置付けています。少子化対策として結婚をすすめることは、結婚したら子どもを生むものという風潮をつくりかねないものだと思います。これは、子どもを持てないカップル、持たないと決めたカップル等の多様性を否定するものにつながると考えます。また、子どもを産むか産まないかは個人の自由であり、性と生殖に関する健康と権利ともぶつかります。
そこで、伺います。結婚支援を少子化対策と位置付けるのは、結婚したら子どもを産むものという特定の結婚観を県が押し付けてしまうことになると考えますが、認識を伺います。
今回の愛知県が結婚支援を行うにあたり、「少子化に関する意識調査」の[独身にとどまっている理由]の「結婚したい相手にまだめぐりあわないから」を根拠の一つにあげています。しかし、その調査の「期待する少子化対策」の「結婚支援施策」の項目の上位3項目は、「賃金を上げて安定した家計を営めるよう支援すること」「安定した雇用環境を提供すること」「夫婦がともに働きつづけられるような職場環境の充実」です。
そこで、伺います。これらの声がある中で、今回、とりわけ少子化対策に婚活イベントの開催など出会いの場の創出の事業を行うのはなぜでしょうか?理由を伺います。
結婚支援のなかに、出会いサポートポータルサイト「アイコンナビ」の活性化というものもあります。この中に、婚活いろはたしなみ講座という項目があります。その中に、付き合いかた、コミュニケーションの取り方、身だしなみ、などの各項目で女性はこうあるべき、男性はこうあるべきとわざわざ分けて記載があり、特定の恋愛観を押し付ける内容が含まれています。多様性が尊重されないものになっています。
そこで伺います。アイコンナビの新規利用者の開拓や改修するのであれば、女性らしさや男性らしさで分けるのではなく、自分らしさを大切にする多様性の観点から見直す必要があると思いますが、認識を伺います。
3. 県の答弁(要旨)
・県は、三菱SJの開発中止を受け、航空宇宙産業に関連する県内企業に対し、本年2月に開発中止等の影響を把握するため緊急アンケート、3月に実態を詳細に把握するためヒアリングを実施。
・その結果、航空機需要の低迷により設備稼働率が低下する中、新たな受注獲得に向けた販路拡大が喫緊の課題であることや航空機業界のイメージ悪化により人材確保が困難であることなど、苦境にある県内航空機サプライヤーの状況が改めて浮き彫りになった。
・このため、本年9月に本県で開催される航空宇宙産業の展示商談会の出展支援の拡充や、イメージ回復のため学生等に航空宇宙産業の魅力を発信する取組等を新たに実施する。
・加えて、資金繰りの悪化に伴い新たな設備投資に躊躇する企業も多いことから、設備投資を行う企業への「航空宇宙産業応援補助金」を新設する。
・県内航空機サプライヤーは、三菱SJ開発中止のみならず、新型コロナを背景とした航空需要の長期低迷により大変厳しい状況にあるため、これらの取組を総動員して、引き続き、航空機産業の生産基盤の維持・強化に努めていく。
・三菱重工業(株)は、2020年10月のSJの開発中断時点から、サプライヤーに対して補償等を行っていると聞いており、これに関して本県から同社にサプライヤーへの丁寧な対応を重ねて求めるとともに、対応状況の適宜報告を受けてきた。
・一方、航空機産業は、新型コロナの影響により一時的に需要が大きく落ち込んだものの、今後20年間で世界のジェット旅客機の運行機数が1.7倍に増加すると見込まれる成長産業である。
・今回の補正事業では、今後期待される航空機需要回復期において県内航空機サプライヤーが競争に打ち勝てるよう、販路拡大や人材確保等の前向きな事業活動を支援する、航空機業界全体が裨益するものであり、他の事業と同様、本県が実施すべきものと考える。
・今年度当初予算で実施する各種事業に加え、補正事業の実施を通じて、本県の航空機産業が自動車に次ぐ第二の柱として大きく成長するようしっかりと支援していく。
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結婚支援にかかる認識についてお答えをいたします。
少子化の要因の一つといたしまして、未婚化・晩婚化が指摘をされております。
そのため、本県では、2007年度から少子化対策として様々な結婚支援に取り組んでおり、2011年度には出会いサポートポータルサイト「あいこんナビ」を開設して、結婚を「希望する」方へ婚活イベントなどの情報提供を行い、出会いの場を創出してまいりました。
結婚支援は少子化対策の位置づけではありますが、今回の結婚支援事業につきましては、あくまで結婚を「希望する」独身の男女に出会いの機会を提供することを目的としており、県として特定の価値観を押し付けるものではございません。
次に、出会いの場の創出事業を行う理由についてお答えをいたします。
2018年に実施した少子化に関する県民意識調査の結果では、賃金の上昇や雇用環境の提供、職場環境の充実が期待する結婚支援施策の上位3位となっております。
少子化対策は国を挙げて取り組むべき課題であり、国が3月に発表いたしました「こども・子育て政策の強化についての試案」では、基本理念として若い世代の所得の増加や全ての子育て世帯への切れ目ない支援が掲げられており、今後、国は具体的な対策の検討を進め、6月までには大枠を示すとしておりますので、この国の動向を注視しながら、適切に対応してまいります。
先ほどの本県の調査では、独身の方の約8割は結婚する意思はあるものの、そのうちの約半数の方が、独身にとどまっている理由として「結婚したい相手に巡り会えないから」と回答しております。
また、コロナ禍による外出自粛なども加わり、結婚につながる出会いの少なさが非常に危惧されるところでございます。
県としましては、喫緊の課題である少子化対策に、まずはできることから着実に取り組むため、結婚につながる出会いの場を創出する事業を実施することとしたものでございます。
最後に、あいこんナビについてお答えします。
出会いサポートポータルサイト「あいこんナビ」では、婚活を始めようとする方を後押しする情報を提供しており、議員御指摘のとおり、身だしなみやコミュニケーションのたしなみ、アルコールが提供される席でのマナーなど、婚活イベントに参加される方に向けたアドバイスを掲載しております。
また、身だしなみに関しては、女性向けのアドバイスとして「ネイルアートが派手すぎないか」、男性向けのアドバイスとして「ひげの剃り残しがないか」といった具体的な内容も示しております。
これらのアドバイスは、男女それぞれの一般的なマナーのひとつとして分かりやすくお示ししているものでございます。
もとより、女性、男性に関係なく、自分らしさを大切にして、ご自身の魅力を相手に理解していただくことは大事なことでございますので、今後のあいこんナビ改修にあたっては、分かりやすさだけではなく、自分らしさという視点を踏まえて検討してまいりたいと考えております。
4. 再質問
航空機サプライヤーへの支援拡充は、スペースジェット事業からの撤退による影響も踏まえたものだ、ということです。だったら三菱重工にも応分の負担を求めるべきですが、それは求めない。それをもとめないまま更なる県費の注入を進める。航空宇宙産業への支援のあり方については、この機会に、一旦立ち止まって考えるべきだと指摘しておきます。
結婚支援については、特定の価値価値観をおしつけるものではない、出会いの場の提供である、との答弁でした。しかしながら、それでも愛知県が主体となって、少子化対策として結婚支援に踏み込むことは、誤ったメッセージをおくることになりかねません。その危惧はまだ解消されていないことを申し上げ、私からの議案質疑を終わります。
補正予算案に対する討論
第74号議案令和5年度愛知県一般会計補正予算第一号について反対の立場から討論を行います。
今回の補正予算案は、物価高騰対策を中心とした予算案になっています。物価高騰対策は必要です。しかし、2点賛成できないものが含まれていました。
以下2点、反対の理由を述べさせていただきます。
第一に、航空宇宙産業振興事業費についてです。これは、販路拡大や人材確保に取り組む航空機サプライヤーへの支援を拡大するものです。
コロナ禍では多くの中小企業が厳しい経営環境に置かれました。公共交通の一分野を担う航空業界、その製造を担う地元企業、航空機サプライヤーへの一定の支援は必要です。
しかしながら、今回の補正予算案では、企業規模に関係なく商談会への出展基本経費の全額支援を、対象企業の枠も拡大して行う、というものであり、賛成できません。
至れり尽くせりの助成をなぜ航空宇宙産業にだけ行うのか、コロナ禍で困っている地場産業、中小企業全体に支援を拡大すべきです。県がこの分野に力を入れ、支援メニューを当初予算に組み込むことは理解します。しかし補正でさらに特別扱いする必要が生じたのはなぜか。はっきり言って三菱重工がSJ事業から撤退したことによる後始末を県民の税金で行うためだと言わざるをえません。
県のアンケートでは、SJ撤退により影響を受けた企業は15社、開発や量産に参加する予定だった53社、これらの企業には、三菱がきちんとていねいな対応をすべきであり、今回の補正予算で提案されるような支援も、本来なら三菱の責任と負担で行うべきものです。少なくとも受けた補助金を返還し、中小企業支援の財源に充てるべきです。
ところが三菱は民間航空機の開発から軍用ミサイルの開発に技術転用をはかると公言しています。このままでは航空宇宙産業への支援が、結果的に軍需産業を支援することにすらなりかねません。これまでの航空宇宙産業への支援のあり方をこの機会に見直し、大企業に社会的責任をしっかり果たすよう県として指導すべきです。三菱重工のSJ事業撤退の後始末まで県民の税金で行う、今回の補正予算案には賛成できません。
第二に、少子化対策推進事業費についてです。これは、県主催婚活イベントの開催や民間婚活イベントへの支援、出会いサポートポータルサイト「あいこんナビ」の活性化を行うというものです。
結婚という極めてプライベートで個人の人生の選択に自治体が介入すべきではありません。少子化対策に結婚支援・婚活イベントを掲げていますが、結婚イコール出産という特定の結婚観を県が押し付けることにもなってしまいます。それは、男女カップルの多様性や同性婚を望む人達など多様な人生の選択への配慮が抜け落ちています。他県の同じような事業では、企業にも婚活を働きかけるところもあり、結果的に従業員のプライバシーに土足で踏み込むことになり、深刻なハラスメントになる問題も起こっています。何より、少子化対策の根本的な解決にはなりません。
内閣府は5年に1度、少子化で国際意識調査を行っています。20年調査では「自国が子どもを生み育てやすい国と思うか」の問いに、日本は「そう思わない」が61・1%に達しました。ドイツ22・8%、フランス17・6%、スウェーデン2・1%と比べるとあまりに大きな違いです。97%以上が、「自国が子どもを産み育てやすい」と答えたスウェーデンでは、「教育費の支援、軽減がある」「育児休業中の所得保障が充実している」ことが理由としてあげられています。学費・医療費・生活費の支援が充実し社会全体で支える体制や仕組みがあることが、出産・子育ての一番の応援になると思います。
日本ではどうでしょうか。出産や子育ては、個人やカップルの自由な選択です。しかし、子どもを産み育てたいと願っても、低賃金・非正規雇用・長時間労働・男女の賃金格差などの困難を強いられている状況があります。それは、愛知県が行った少子化に関する県民意識調査にも表れていることです。これらの解決なしに少子化対策は進みません。ジェンダー平等の国際的な流れにも逆行し、愛知県として少子化対策に婚活イベントを推進することには賛成出来ません。
以上述べてきた2点の問題が含まれているため、補正予算案に賛成できないことを表明し、討論とさせていただきます。