議会報告

議案質疑「三菱重工のSJ失敗の後始末に県民の税金投入」「少子化対策に婚活支援」

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    • 【しもおく奈歩議員】 第七十四号議案令和五年度愛知県一般会計補正予算第一号について質問をいたします。
       第一に、航空機サプライヤーへの支援についてです。
       エアロマート名古屋二〇二三出展支援の拡大ということで、支援企業を三十社から四十五社に拡大し、出展料についても企業の半額負担二十五万円を肩代わりし、全額支援とする内容です。
       航空宇宙分野の国際的な展示商談会であるエアロマート名古屋は二年ごとに開かれており、二〇二一年にも六月補正で出展支援が、今回のように対象企業数を増やし、半額支援から全額支援へ支援額も拡大されました。背景にあったのは、前年十月の三菱重工、三菱航空機によるスペースジェットの開発凍結方針の発表でした。大きな影響を受けた県内の関連企業を支援するためにと支援内容が拡大されたと理解しています。
       さて、今、航空機産業にとっては、コロナ禍を抜け出しつつある需要回復期であり、多少なりとも明るい見通しが持てるようになってきた時期です。だから、サプライヤーへの支援内容は一昨年の補正後の対象企業数や負担水準ではなく、当初予算で示された三十社、半額支援にしたものと思います。ところが、二月、三菱重工業がスペースジェット事業から撤退を決め、またまた関連業界に激震が走りました。
       そこで伺います。
       今回、航空機サプライヤーへの支援拡大の補正予算を組んだのは、一般的なコロナ不況や中小企業支援だけではなく、スペースジェット撤退による影響への対応だとの認識でいいでしょうか。私は、コロナ禍による不況から中小企業を守り支援する対策を否定するものではありません。しかし、三菱のスペースジェット事業には、国から約五百億円が投入されており、愛知県からも用地確保や駐機場整備などで少なくとも八十一億円以上が注ぎ込まれています。撤退による影響については二月議会でも議論がありました。県が二百六十一社を対象に行い、百一社から回答があった緊急アンケートでは、五十三社が開発や量産に参加予定だったとしており、撤退の影響ありとの回答は十五社です。
       知事は、スペースジェット量産に向け先行投資をしている部品メーカーへの影響を懸念し、三菱重工に丁寧な対応を要請したと報じられました。 県として必要な支援策を講じるのならば、その原因となった三菱重工のスペースジェット事業撤退をしっかり総括し、三菱重工に対し、県がスペースジェット事業に投じてきた県費の返還を求めるべきです。
       そこで伺います。
       航空機サプライヤーの支援拡大に、さらなる県費の投入ではなく、その要因をつくった三菱重工に応分の負担を求めるべきではありませんか。


    •  第二に、出会いの場をつくり結婚を支援することについてです。
       愛知県がこの結婚支援策を少子化対策として位置づけています。少子化対策として結婚を勧めることは、結婚したら子供を産むものという風潮をつくりかねないものだと思います。これは、子供を持てないカップル、持たないと決めたカップル等、多様性を否定するものにつながると考えます。また、子供を産むか産まないかは個人の自由であり、性と生殖に関する健康と権利ともぶつかります。
       そこで伺います。
       結婚支援を少子化対策として位置づけるのは、結婚したら子供を産むものという特定の結婚観を県が押しつけてしまうことになると考えますが、認識を伺います。
       今回の愛知県が結婚支援を行うに当たり、少子化に関する意識調査の独身にとどまっている理由の結婚したい相手にまだ巡り会わないからを根拠の一つに挙げています。しかし、その調査の期待する少子化対策の結婚支援施策の項目の上位三項目は、賃金を上げて安定した家計を営めるよう支援すること、安定した雇用環境を提供すること、夫婦がともに働き続けられるような職場環境の充実です。
       そこで伺います。
       これらの声がある中で、今回、とりわけ少子化対策に婚活イベントの開催など出会いの場の創出の事業を行うのはなぜでしょうか。理由を伺います。
       結婚支援の中に、出会いサポートポータルサイト、あいこんナビの活性化というものもあります。この中に、婚活いろはたしなみ講座という項目があります。その中に、付き合い方、コミュニケーションの取り方、身だしなみなどの各項目で、女性はこうあるべき、男性はこうあるべきとわざわざ分けて記載があり、特定の恋愛観を押しつける内容が含まれております。多様性が尊重されないものになっています。
       そこで伺います。
       あいこんナビの新規利用者の開拓や改修をするのであれば、女性らしさや男性らしさで分けるのではなく、自分らしさを大切にする多様性の観点から見直しが必要であると思いますが、認識を伺います。

    •  

    • 【経済産業局長】 県では、三菱スペースジェットの開発中止を受け、航空宇宙産業に関連する県内企業に対し、本年二月に開発中止等の影響を把握するための緊急アンケートを、三月には実態をより詳細に把握するための追加ヒアリングを実施いたしました。
       その結果、航空機需要の低迷により設備の稼働率が低下する中、新たな受注獲得に向けた販路拡大が喫緊の課題となっていることや、航空機業界のイメージ悪化により人材確保が困難となっていることなど、苦境に置かれている県内航空機サプライヤーの状況が改めて浮き彫りになりました。
       このため、本年九月に本県で開催されます航空宇宙産業の展示商談会、エアロマート名古屋二〇二三における出展支援の拡充や、航空宇宙産業のイメージ回復を図るため、学生等に航空宇宙産業の魅力を発信する取組等を新たに実施することとしております。
       加えて、緊急アンケート等の結果では、資金繰りの悪化に伴い新たな設備投資にちゅうちょしている企業も多くあったことから、設備投資を行う企業への補助制度である航空宇宙産業応援補助金を併せて新設することとしております。
       県内航空機サプライヤーは、三菱スペースジェットの開発中止のみならず、新型コロナウイルス感染症を背景とした航空機需要の長期低迷により大変厳しい状況にあることから、これらの取組を総動員して、引き続き航空機産業の生産基盤の維持、強化に努めてまいります。
       次に、今回の補正事業における費用負担についてのお尋ねでございます。三菱重工業株式会社においては、二〇二〇年十月のスペースジェットの開発中断時点から、サプライヤーに対しまして補償等の対応を行っていると聞いており、これに関しまして、本県から同社に対し、サプライヤーへの丁寧な対応を重ねてお願いするとともに、対応状況について適宜報告を受けてまいりました。
       一方、航空機産業は、新型コロナウイルスの影響により一時的に需要が大きく落ち込んだものの、今後二十年間で世界のジェット旅客機の運航機数が一・七倍に増加すると見込まれる成長産業であります。
       今回の補正事業は、今後期待される航空機需要の回復期において県内航空機サプライヤーが競争に打ち勝てるよう、販路拡大や人材確保等の、航空機業界全体が裨益する前向きな事業活動を支援するものであり、他の産業と同様、本県が実施すべきものと考えております。今年度当初予算で実施いたします各種事業に加え、今回の補正事業の実施を通じて、本県の航空機産業が自動車に次ぐ第二の柱として大きく成長するよう、しっかりと支援をしてまいります。

    • 【福祉局長】 結婚支援に係る認識についてお答えをいたします。
       少子化の要因の一つといたしまして、未婚化、晩婚化が指摘をされております。そのため、本県では、二〇〇七年度から少子化対策として様々な結婚支援に取り組んでおり、二〇一一年度には出会いサポートポータルサイト、あいこんナビを開設して、結婚を希望する方へ婚活イベントなどの情報提供を行い、出会いの場を創出してまいりました。
       結婚支援は少子化対策の位置づけではありますが、今回の結婚支援事業につきましては、あくまで結婚を希望する独身の男女に出会いの機会を提供することを目的としており、県として特定の価値観を押しつけるものではございません。
       次に、出会いの場の創出事業を行う理由についてお答えをいたします。二〇一八年に実施をいたしました少子化に関する県民意識調査の結果では、賃金の上昇や雇用環境の提供、職場環境の充実が期待する結婚支援施策の上位三位となっております。
       少子化対策は国を挙げて取り組むべき課題であり、国が三月に発表いたしました、こども・子育て政策の強化についての試案では、基本理念として若い世代の所得の増加や全ての子育て世帯への切れ目ない支援が掲げられており、今後、国は、具体的な対策の検討を進め、六月までには大枠を示すとしておりますので、この国の動向を注視しながら適切に対応してまいります。
       先ほどの本県の調査では、独身の方の約八割は結婚する意思はあるものの、そのうち約半数の方が、独身にとどまっている理由として、結婚したい相手に巡り会えないからと回答しております。また、コロナ禍による外出自粛なども加わり、結婚につながる出会いの少なさが非常に危惧されるところでございます。県といたしましては、喫緊の課題である少子化対策に、まずはできることから着実に取り組むため、結婚につながる出会いの場を創出する事業を実施することとしたものでございます。
       最後に、あいこんナビについてお答えをいたします。
       出会いサポートポータルサイト、あいこんナビでは、婚活を始めようとする方を後押しする情報を提供しており、議員御指摘のとおり、身だしなみやコミュニケーションのたしなみ、アルコールが提供される席でのマナーなど、婚活イベントに参加される方に向けたアドバイスを掲載しております。また、身だしなみに関して、女性向けのアドバイスとしてネイルアートが派手過ぎないか、男性向けのアドバイスとしてひげのそり残しがないかといった具体的な内容も示しております。こうしたアドバイスは、男女それぞれの一般的なマナーの一つといたしまして分かりやすくお示しをしているものであります。
       もとより、女性、男性に関係なく、自分らしさを大切にして、御自身の魅力を相手に理解していただくことは大事なことでございますので、今後のあいこんナビ改修に当たりましては、分かりやすさだけではなく、自分らしさという視点を踏まえて検討してまいりたいと考えております。

    • 【しもおく奈歩議員】 幾つか答弁をいただきましてありがとうございます。最後に要望させていただきたいと思います。
       航空機サプライヤーへの支援の拡充は、コロナのこともあるということでしたけれども、スペースジェットの事業からの撤退による影響も踏まえてのことだということです。だったら、やっぱり三菱重工にも応分の負担を求めるべきです。それを求めないまま、さらに県費の注入を進める航空宇宙産業への支援の在り方については、この機会に一旦立ち止まって考えるべきだと指摘をしておきます。
       結婚支援については、特定の結婚観を押しつけるものではない、出会いの場の提供であるという御答弁をいただきました。
       しかしながら、それでも愛知県が主体となって、少子化対策として結婚支援ということに踏み込むことは、やはり誤ったメッセージを送ることになりかねないと思います。その危惧はまだ解消されていないということを申し上げ、私からの議案質疑を終わります。

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