県政の窓

「ステーションAi」の建設を見直し、すべての 中小企業・小規模事業者への支援を

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日本共産党愛知県委員会が発表した「ステーションAi」についての見解を紹介します。

「住民の福祉の増進」に反する「ステーションAi」

 愛知県は7月21日、スタートアップの支援拠点施設「ステーションAi」の整備・運営事業者をソフトバンク株式会社に決定しました。
 スタートアップとは、「IoT、AIなどの最先端の技術を活用し、新しい革新的なビジネスモデルを用いて急成長をめざす企業」(あいちビジョン2030)のことです。
 「ステーションAi」は名古屋市昭和区の県勤労会館跡地に、スタートアップ企業とパートナー企業(スタートアップと協業する企業)を入室させる施設をつくり、そこで研究開発、実験、試作を行うとともに、海外の大学・企業などと連携して、スタートアップとパートナー企業による新規事業の創出、新製品・新サービスの開発を進めます。愛知県は10年間で1000社のスタートアップの誘致を目指すとしています。
 愛知県はスタートアップ支援を産業政策の最優先課題とし、そのためにスタートアップの支援拠点として「ステーションAi」整備に向けて準備を進めてきていました。しかし、新型コロナ感染症がまん延する下で、当初予定していた「ステーションAi」の内容の再検討が求められているとして、2020年2月に行った入札公告をいったん取り消して事業内容を見直し、再び入札公告を行って今回のソフトバンク㈱の落札に至りました。
 今回の落札金額は143憶4833万円で、この費用でソフトバンク㈱が建設した「ステーションAi」をソフトバンク㈱がPFI事業として運営を行います。愛知県とソフトバンク㈱との契約は10年契約で、ソフトバンク㈱は10年間の運営権の対価として2億5500万円を愛知県に支払うことになっています。
 愛知県がスタートアップ支援に熱心なのは、日本で遅れているイノベーション(技術革新)の創出を行うためです。愛知県が2020年11月に策定した県の基本計画である「あいちビジョン2030」では、イノベーションの創出のため、スタートアップの推進以外では、次世代自動車関連産業の育成・振興、航空宇宙産業の振興(代表例はスペースジェット)、ロボット産業の育成・振興、新たな企業立地の開発、外国企業の誘致などを挙げています。いずれも地元の中小企業・小規模事業者、地場産業全体を振興することより、一部の高度先端産業だけを支援するものです。
 イノベーションの創出自体は必要なことですが、それを行政が先頭に立って多額の税金をつぎ込んで推進することは、「住民の福祉の増進を図る」ことを目的とする地方自治体の本来の役割を果たすことにはなりません。
 愛知県はすでにAichi Sky Expo(国際展示場)を610億円(土地代を含む)で建設し、今後もジブリパーク建設に340憶円、新体育館建設に200憶円などを予定しており、「厳しい財政状況」(2021年度予算編成について)にも関わらず大型事業の推進を進めようとしています。

運営権の対価は当初予定の約10分の1に

 問題なのは、ステーションAiに対する愛知県の大盤振る舞いです。
 運営権の対価は当初の予定では20年間で49億6千万円となっていました。それを10年間で2億5500万円と約10分の1の金額に変更しました。県はその理由として、①期間を半減した、②DX(デジタルトランスフォーメンション)への対応の設備に対する支出増、③ソーシャルディスタンス確保のためのスペース確保で収入減となる、④スタートアップのパートナー(大企業)の利益が少なくなる、という4点をあげています。期間が半分になったら金額が半分になるのは理解できますが、それ以外の理由で10分の1になるのはとても納得できることではありません。DXへの対応は当初から想定されたことです。ソーシャルディスタンスの確保は中小企業・小規模事業者でも今は当然のこととしてやっています。しかし、それに対して県が補助を出すということは全くやっていません。どうしてステーションAiだけ支援するのでしょうか。大企業であるパートナー企業の利益の減少への補填は典型的な大企業応援です。

赤字を全額補填する大盤振る舞い PFI事業のあり方としても問題あり

 さらに問題なのは、「ステーションAi」の運営で赤字が出た場合、その全額を県が補填する仕組みになっていることです。民間企業が新たな事業を行う時は、減収となるリスクも想定したうえで事業を開始しています。ところが、その想定される赤字を全額県が補填する。こんなことはあり得ないし、あってはならないことです。同じように運営権対価を設定して民間企業が運営しているAichi Sky Expo(国際展示場)の場合も赤字に対する県の補填の仕組みがあります。それは最初の5年間の赤字は県が全額補助、6年目以降は想定収入額の15%以上を下回った場合は下回った赤字分を県が負担するというものです。国際展示場の場合でも大盤振る舞いと言っていいものですが、「ステーションAi」のように無条件で赤字を全額補填というのはとんでもない大盤振る舞いです。この点について県は、Aichi Sky Expoの場合は他にも会議場等の施設があって収益の予測が可能であるが、「ステーションAi」の場合は前例がなくて収益・リスクがどうなるか分からないため赤字は全額補填する、としています。つまり、かなりのリスクがあるから県が補填するということです。実際に大村知事は「ステーションAi」について、「(リスクが大きいから)民間企業にはできない」と発言しています。この発言は「ステーションAi」のようなPFI事業のあり方としても間違ったものです。PFIについて内閣府は、「予測できない事態により損失等が発生するおそれ(リスク)があります。PFIでは、これらのリスクを最もよく管理できる者にそのリスクを負担させることでコストの削減やサービスの向上を達成」するとしています。内閣府がPFI事業のメリットとしてあげていることに反するものです。

すべての中小企業・小規模事業者への支援を

 経済成長のみをめざすイノベーションではなく、防災や環境、福祉などの向上をめざすイノベーションこそ求められています。
 高度先端産業や急成長型の中小企業への支援だけでなく、事業を継続していること自体を評価して「持続的発展」を目指す中小企業・小規模事業者への支援を進めることがコロナ禍の今こそ求められています。
 一部の高度先端産業のみを対象とするスタートアップ支援や「ステーションAi」の建設を見直し、すべての中小企業・小規模事業者を支援する産業政策に転換することを強く求めます。

※ステーションAiは現時点ではSTATION Aiという呼び方に変更されています。

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