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「新しい生活様式」に、第2滑走路は必要か
「うそ」の上塗り、国交省の埋立願書は問題

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         埋立目的は「臨海緑地」か?

 国交省中部地方整備局は2月2日、中部国際空港沖の埋立免許願書を提出しました。埋立理由は、「臨海緑地」「大地震時の海洋廃棄物の仮置き場」「名古屋港の浚渫土砂処分場」としています。今年中に埋立免許が認められ、ボーリング調査が始まろうとしています。

 マスコミは「第2滑走路建設へ前進」「政財界喜び、漁業者複雑」(中日新聞)などと一斉に報じました。SDGs(持続可能な開発目標)が国際的に進行し、「コロナ禍」での「新しい生活様式」が動き始めている今、「第2滑走路は必要か」を真剣に考えることが求められています。

「テレワーク」の推進、大量交通体系の再構築が必死

 2月23日の選抜高校野球の組み合わせ抽選会は、全国32校をオンラインでつなぎに行われ、細分化されたテレビ場面に、32校のキャプテンの表情が放映されました。“2021年を多国間主義の転換点に”が合意されたG7首脳会議(2月20日)は、オンラインで開催されました。L社のテレビ会議システムは、移動時間の削減や業務スピードの向上を売りに、すでに2500社の利用に至ったと宣伝しています。

「業績は取り戻せない」
航空輸送の計画変更は必至

 働き方の多様化を推進する総務省は、「働き方改革」の重要な施策の1つとして、テレワークの推進を掲げています。あたかも新型コロナウイルスの拡大によって、各企業がテレワークに移行せざるをえない状況が生まれ、緊急事態宣言化(2020年4月)の東京都では、会社からのテレワーク推奨・命令率65%、従業員のテレワーク実施率49%がテレワークを実施したと報道されています。

 そのような「新しい生活様式」が始まっている今、鉄道・自動車・飛行機などの大量輸送手段・インフラ整備のあり様、交通体系の再構築が必至といえます。

建設費2000億円は、公費の無駄遣い

 中部国際空港沖埋立事業の総事業費は、約2000億円と報道されています(読売新聞2007年6月5日)。第2滑走路とするならば、国と愛知県は巨額の負担金や無利子貸付金の支出が想定されます。また、中部国際空港の拡充に必要として、県の有料道路「第2知多道路」(事業費1000億円以上)に莫大な県費投入に拍車がかかります。

 今回の新型コロナウイルス感染症は、年4千億円の税収減となった2008年のリーマンショックに匹敵する経済危機と言われています。中小企業を含む愛知県の産業の再建、新自由主義で脆弱さを露呈した地域医療の再構築にも大きな事業費を必要とします。不要不急で根拠があいまいな事業への公費の無駄支出は避けなければなりません。

大規模改修は、第2滑走路がなくても可能。

県営名古屋空港を積極活用

 県は第2滑走路の必要性の大きな理由に「滑走路等のメンテナンス時間の確保も困難。 加えて、大規模改修への対応も近い将来必ず直面する課題」をあげています。

「名古屋空港は便利で近い」

 フジドリームエアラインズ(FDA)の拠点空港となっている県営名古屋空港は、民間機と自衛隊機で合計約33,020回(2019年度)、で、十分に余裕がり、なによりも名古屋市に接近し、高速道路など交通事情も整備されています。県営名古屋空港周辺の自治体(春日井市・小牧市・豊山町)は、コミュータ空港としての存続拡充を県に要望しています。

 滑走路1本で年間離着陸回数13 万回を超える国内屈指の交通量を有する地方拠点空港であるの福岡空港では、これまで4回の大規模改修を実施しています。飛行機の運航がない午後11時~朝6時の間で、しかも日々の工事終了直後に大型航空機が高速、高頻度で走行する条件下で実施されました。

埋立願書は、必要性も経済性も「うそ」の上塗り

 海や河川は、国民の共有財産である公有水面です。埋立免許は、「特定人に埋立権を付与し一般人の自由使用を廃止するものであること、また、自然環境の改変を伴い地元住民の生活、環境の保全等に影響を及ぼす」ことから、埋立免許を行うにあたっては、「出願に係る土地需要が真に必要なものであり、埋立ての規模は過大であってはならず、埋立ての場所は適正な位置でなければならない」となっています。今回の埋立願書は、重大な問題を含んでいます。

① 「埋立ての必要性」が不明

 願書は「埋立地の用途は緑地」、埋立理由は「津波漂流物を一時保管するための臨海緑地」、「名古屋港の浚渫土砂処分場」と記されています。「地震時の名古屋港への災害流出物」については、「名古屋港管理組合の防災計画」、「愛知県災害廃棄物処理計画」「名古屋市廃棄物処理計画」のどれにも記されていません。願書の2か所で、「なお、本事業は、中部国際空港の二本目滑走路をはじめとした同空港の機能強化に資するものとして地域の要請に掲げられている」と紹介してます。「真に必要な埋立」が不明です。

② 「うその地盤設定」で経済性を評価

 名古屋港の浚渫土砂処分場に4候補地が比較検討されました。願書に記載された「総合評価」で、中部国際空港沖が「一番経済性が優位」となっています。それは、有識者検討会や2度のパブリックコメントで、「中部国際空港沖の西護岸の基礎地盤は強固であり、地盤改良を行う必要はない」条件で整備費用を計算し、その結果「処分コストが最も安い」評価を導いています(下図のとおり)。

 しかし、今回提出された願書では、西工区の地層地盤は「柔らかい粘土層」が覆っているので、護岸断面に地盤改良(サンドコンパクション)を施工するとなっています。検討段階での「処分コストが最も安い」を導くために、虚偽の護岸条件を「捏造」しています。透明性、客観性、合理性、公正性を確保していくことが重要とした「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」の精神を大きく逸脱しています(※ マヨネーズ状の柔らかい護岸下部地盤を隠した沖縄の辺野古米軍基地建設によく似ています)。

浚渫土砂処分コストの比較「中部国際空港沖が右図。
「護岸の地盤は固いため、地盤改良は不要」として計算し、その結果、処分コストは「小」と評価し、最良の候補地とした

③ 浚渫土砂を「二重に計上」している過ち

 「名古屋港港湾計画」(改訂平成27年12月)は、「本港において発生の見込まれる浚渫土砂を埋立処分するため、海面処分用地を次のとおり計画する」として、「南5区198ha」「ポートアイランド地区78ha」を明記しています。港湾計画に盛り込まれている浚渫土砂にもかかわらず、提出された埋立願書は、全く別の用途、別の場所に使用する「二重計上」としています。上位計画にあたる港湾計画に齟齬した願書は改められなければなりません。

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