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「奥三河いのちの砦」 町立東栄医療センターを守れ

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 「へき地の医療崩壊は、地域の消滅に値する」「医療は住民生活を支える重要なインフラ」「地域が存続していくために少数の入院病床を残すことが贅沢とは思えない」・・・東栄町町長リコール住民投票と町長辞任・出直し選挙を報じる各紙に、どうしても中山間地の病院を存続させたい切実な声が響いています。町民1404人町外含む8281人の病院や人工透析守れの署名が集まったように、その声は誰も否定できません。旧東栄病院(現・町立東栄医療センター)に透析室を開設した藤堂元病院長は「へき地の不採算医療を担う東栄医療センターの責務として人工透析と入院ベットは絶対に残さなければならない」(自治労連愛知「あいちの仲間」第1219号引用)の言葉を残しています。

 前東栄町長は、これらの切実な声を全く無視し、「人口減」「医療従事者の確保困難」「病院財政の破綻」を理由にあげて、「病床の廃止」「救急病院の廃止」「人工透析の廃止」にひた走っています。そして12億円を投入して「無床で、休日・夜間休診の新診療所」を建設しようとしているのです。

前町長「病院の赤字額3億円、税金で穴埋め」と宣伝

 中山間地のへき地・不採算地域にあっては、「病院財政の確立」は大きな課題です。

 東栄町の普通会計決算(平成29年度)は、歳入合計32億円(内、町税収入3.3億円)ですが、「一般会計から東栄病院への交付金は2013年度~2019年度の7年間で11億円」(中日新聞6月22日)と報じています。

 前町長は、「3億円余の一般補てんをし、我々の全体の予算規模を見て、そうゆう状況の中でそういうことが本当に果たしてできるんであろうか」(2019年12月議会町長答弁)と「異常さ」を強調しています。(※ 救急医療を廃止したことで入院患者が大幅に減っている。救急医療の半数程度を東栄病院で対応していた(北設楽郡3町村の救急搬送人員数549人、搬送先医療機関「北設楽郡263人」(平成20年度)(愛知県東三河北部医療圏保健医療計画より))

  国の算定額では不十分、国費のさらなる充実を

 東栄町への地方交付税交付金(国費)は17億円余で、その中には、東栄病院事業費が含まれています。R2年度の普通交付税交付金には、「稼働病床数@73.5万円」「救急告示病床数@169.7万万円+3290万円」「病院投資の起債元利償還金の25%」などが、また、特別交付税交付金には、「不採算地区病院 稼働病床数@87.5万万円+1580万円」「派遣医師諸費用」「訪問看護費用」「研究・研修費用」「共済追加費用」「基礎年金拠出金」などが算定されています。

 町の行政報告会で8千万円以上が交付税交付金の算定額になっていると報告されています。一般会計から病院への繰入金の相当の額は、国から配分される地方交付税交付金で補填されています。

 しかし、国の中山間地の医療への助成制度は不十分です。これまで本村伸子衆議院議員らの指摘から、国は、不採算地区病院への地方交付税措置の充実(R2年度)、「地域社会再生事業費」の創設で普通交付税の基準財政需要額(令和2年度6600万円)に参入されています。毎年毎年、町立病院の赤字に悩まされないような抜本的な国の支援がどうしても必要です。

                                   (単位:千円)

(表-1)H26年度H27年度H28年度H29年度H30年度R1年度
普通交付税交付金(※1)1,498,3901,573,5631,573,0671,538,8671,522,0421,544,080
特別交付税交付金(※1)180,054178,524174,954174,969184,636175,976
合 計1,678,4441,752,0891,748,0211,713,8361,706,6781,720,056
このうち病院算定額(※2) 83,500115,50086,50086,900 
病院への繰入金(※2)62,000110,000182,000200,000262,845267,374

(※1 交付税は総務省「決算カード」より、繰入金は「町医療センター基本構想H30年12月」より)

(※2 2020年行政報告会での資料での資料・発言より)

  厚労省「へき地医療の確保は一義的には県の責任」

へき地医療に無責任な愛知県

東海4県と長野県の中山間地の幾つかの病院の状況が次表(表-2)です。

(表-2)病院病床数医業支出額一般会計から繰入金備考(出所)
静岡県浜松市国保佐久間病院60床1,312百万円639百万円H29年度新公立病院改革プラン
長野県独法・県立阿南病院85床1,644百万円849百万円H29年度決算
三重県町立南伊勢病院50床975百万円215百万円H29年度新公立病院改革プラン
岐阜県恵那市国保上矢作病院56床959百万円190百万円H29年度新公立病院改革プラン

 浜松市は、中山間地(旧佐久間町)に存在する佐久間病院を「医療過疎の北遠地域医療の要」として6億円余を、また、長野県は長野県下伊那郡阿南町にある県立阿南病院を「下伊那南部地域唯一の病院」として8億円余を一般会計から繰入し、病院運営を支援しています。

 国の「へき地保健医療対策検討会報告書」は、「保健医療関係者及び行政は、保健医療サービスを住民・患者に公平に提供する責任を連帯して負っている。へき地・離島の保健医療サービスの確保は一義的には都道府県の責任である。都道府県内のへき地・離島の保健医療対策に関するビジョンを確立し、関係者にそれぞれの責任と役割の自覚を促し、必要な調整を行うことが重要である」と県の責務を特別に強調しています。

 愛知県は、「県立病院が果たす役割の中には高度で専門的な医療を提供することのほか に政策的医療等を担うことも含まれているため、その運営には、医業収益以外 に一般会計からの繰入金が用いられている」(県立病院中期計画(2017)とし、県立病院事業費約300億円/年度に対し、約50億円/年度を一般会計から繰り出しています。

 日本共産党愛知県委員会が浅尾もと子東栄町議とともに愛知県へき地医療支援室に要請した際、県の室長は「東栄町への県の特別の支援は考えておりません。町長の(無床化など)決断は尊重します」と答えました。医業支出費の半分以上を一般会計から支援する浜松市や長野県に比して、愛知県のへき地対策は遅れています。

 「過疎地の医療態勢は本来区域的な課題。問題が顕在化したことで、隣接自治体や県などと連携が進むといい」(岩崎高崎経済大教授・6月27日付毎日新聞)、「町単独での病院維持が無理なら、北設楽郡全体で考えるべきだ」(伊藤北設楽郡医師会長・6月22日付中日新聞)「過疎地の自治体病院は普通交付税に加えて特別交付税お措置がある。・・・診療所に縮小することでこれらも減らされてしまう。再建に成功したほかの地域に学ぶべきだ。過疎地では、医療福祉は雇用を生み、消費を増やす貴重な産業」(伊藤城西大学教授・8月3日朝日新聞)などが有識者から提案されています。財政問題とともに、へき地病院の経営の在り方についても、へき地創生の新しい役割を担うものとしての愛知県の姿勢が問われています。

(参考:公立病院に係る地方交付税の措置については、東海自治体問題研究所所報(7月10日 438号)に中川博一理事のレポートで詳しく掲載されています)

(参考:「地域社会再生事業費」の詳細は 000712924.pdf (soumu.go.jp) です。

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