日本共産党愛知県委員会は11月2日、東京・調布市の住宅街陥没事故(10月18日)を受けて、県リニア推進事業室を訪問し、JR東海にリニア中央新幹線の工事と計画の中止を愛知県として求めるよう申し入れました。
すやま初美県副委員長(衆院7区候補)、内田けん衆院愛知6区候補、鷲野恵子、下奥奈歩両前県議が参加しました。陥没事故は東京外環道トンネル工事の真上で、街路の下が長さ5m×幅3m×深さ5mの大きな空洞が発生、事故原因究明まで工事は中止されています。 すやま氏は、来年開始予定の愛知県内のリニアトンネル工事で同様のシールド工法が採用されていることから、住民の安全が確保されるまで工事中止を要請しました。春日井市や名古屋市北区の亜炭鉱掘削地域での地盤沈下や新型コロナで東海道新幹線の利用客が激減していることを指摘し、「リニアの必要性が問われている。莫大な経費を浪費するリニア計画は中止すべきだ」と強調しました。内田氏は「調布の事故を受けて住民の不安がますます増えている。企業の儲けではなく、住民の暮らし最優先の県政を」と強く求めました。
亜炭鉱跡の空洞の下をリニアトンネル掘削
住民の不安に対し、JR東海「地盤沈下はない」
2015年3月、春日井市の公園に、突然大きな穴が現れました(赤旗記事参照)。春日井市や守山区の地下には、亜炭鉱掘削の空洞がいっぱいあります。住民は、リニア計画のパブリックコメントで、「陥没の可能性がある」「調査が不十分」「地下構内に充満している地下水が抜け落ちるのでは」と多くの不安を提出しています。また、愛知県知事も「亜炭の掘削跡におけるトンネル工事では・・・適切な調査計画を作成すること」「実施内容が抽象的に示されているのみ、・・・事後調査を実施すること」とJR東海に意見書を出しました。
それに対しJR東海には、「亜炭鉱跡は地下14mまで。リニアは40m以上の大深度地下トンネル、必要に応じて適切な対策を講じるので地盤沈下の影響はない」と一蹴し、事後調査対象事項にも指定していません。
「愛知県としての意見は出したが、決定するのは事業主体のJR東海」と曖昧な姿勢の県担当者に対し、「それなら愛知県は、リニア建設を認可した国交省にきちんと要望すべきだ」と対応を求めました。
日本共産党の主張
「工事を中止して計画を撤回し、在来鉄道網の整備を」
リニア計画は環境破壊、採算、沿線自治体の負担など数々の問題を置き去りに進められています。リニア中央新幹線はJR東海が事業主体となり、37年には大阪まで延伸開業する計画です。総額9兆円の巨大開発事業です。自民党政府は公的資金である3兆円の財政投融資を投じています。
建設工事は深刻な環境破壊をもたらします。JR東海は13年9月、南アルプストンネルの工事で大井川の水量が毎秒2立方メートル減少するとの予測を静岡県に示しました。静岡県は60万人分の生活用水・貴重な農業用水にあたるとして、トンネル湧水の全量を大井川に戻すよう求めています。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大によって、リニア計画をこのまま推進できるかが根本的に問われています。JR東海の主な収益源である東海道新幹線の旅客は、コロナ危機で大幅に減りました。テレワークやweb会議の普及によってビジネス客の減少は一時的なものにとどまらないといわれます。居住地も含めたライフスタイル全体の大きな変化が起こりつつあります。リニアの採算性は以前にも増して疑問です。JR東海の経営が悪化すれば公共交通機関としての安全性、公共性がおろそかになるおそれがあります。コロナ危機は大都市への一極集中に見直しを迫っています。東海道新幹線とリニアによる「大動脈の二重系化」という構想自体、無謀なものとなっています。
リニア計画は事業費の3分の1を公的融資で賄う事実上の国家プロジェクトです。政府はリニア計画を成長戦略で「21世紀型のインフラ整備」に位置づけています。JR東海と一体にリニア計画を推し進めてきた政府の責任は重大です。取り返しのつかない環境破壊や事業の失敗で将来に禍根を残さないよう、計画を白紙撤回すべきです。また、JR東海に対しては、東海道新幹線の大規模リスクに備えるなど安全対策を優先させること、地域住民の「足を守る」公共交通機関として、在来線の安全性・利便性の確保へ投資を振り向け、地方鉄道網の拡充をはかることを求めるべきです。