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リニア新幹線、計画を撤回し、在来鉄道網の整備を

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  リニア中央新幹線建設促進期成同盟会会長の大村愛知県知事は7月22日、国、静岡県及び東海旅客鉄道株式会社に対して、「水資源・自然環境への影響の回避・軽減とリニア中央新幹線の早期実現を両立させる観点から、積極的に協議を進めることで、早期に静岡工区の課題解決が図られることを強く期待する」声明を発表しました。

   また、6月24日の記者会見で大村知事は、「・・2027年度開通ということで、私どもは様々な事業、プロジェクト、名古屋駅の大改造、名古屋駅界隈(かいわい)の再開発、大改造等々も取り組んでおります。・・・ できるだけ早く解決策を見いだしていただきたい。・・・(南アルプストンネルの)ヤード工事を始めたからといって、トンネル工事がそのままなし崩し的に、つながっていくということにはならない・・・ まずはヤード工事をやっていただいて、その上でこの水問題は有識者会議の皆さんで英知を結集して、より良い解決策を見いだしていただきたい」と早期の着工を求める国やJR東海に同調する立場を表明しています。

      大井川の流量減少は、静岡県の死活問題

  南アルプストンネルの工区は山梨、静岡、長野の各県に分かれています。トンネルを掘り進め、水を含む断層(破砕帯)にぶつかるとトンネル内に大量の水が湧き出ます。JR東海は、静岡県境付近でトンネルがほかの工区のトンネルとつながるまでの間は、トンネル内に湧き出た水が標高の低い山梨県と長野県に流出して大井川には戻らないと説明しています。静岡県はこの区間のトンネル湧水は元々、大井川水系の水資源だとして大井川に戻すよう求めています。

 

   静岡・山梨県境付近には大量の地下水がたまっている破砕帯(畑薙山断層)があるとされ、大井川の直下にも破砕帯がある可能性があります。流出するトンネル湧水は本来、大井川の水源にあった表流水と地下水なので、中下流域に届くはずの水が減ってしまうと静岡県の関係者は懸念しています。

  全長168キロの大井川の流域には、14カ所のダムと20カ所の水力発電所があります。発電に使われた表流水は農業用水、工業用水、

上水道に再利用されます。また、島田、焼津、藤枝、吉田の3市1町に地下水を採取する井戸が約千本あり、流域の人々の生活、生業を支えています。大井川では渇水が頻発しています。直近では2018年12月から19年5月にかけて147日間に及びました。1994年には節水率が50%に達し、牧之原台地の茶が枯れてしまいました。工業用水もあるため、節水は企業の生産活動も左右します。

 

   7月16日に開かれた有識者会議でJR東海は、大井川上流部に掘削するトンネル周辺で、掘削完了から20年後に渇水期の沢の流量が最大で7割程度減少する、トンネル周辺では掘削完了20年後に地下水位が300メートル以上低下するとの予測結果を示しました。委員から、「沢が枯れるかもしれない」との声が出ました。静岡県の難波副知事は「地下水位が300メートル下がるというのはとんでもない。生態系への影響は厳しい。南アルプスの自然環境が大変なことになる」と述べました。西側を中央構造線、東側を糸魚川―静岡構造線と呼ばれる巨大な段層に区切られた南アルプスは年間数ミリずつ隆起し、地下には垂直方向の断層がたくさんあるとされます。南海トラフ地震、直下型大地震が最も心配される地域に超高速の電車は危険です。

      大断層にトンネルを開ける、未知の危険な事業

 
 

   国交省がリニアの南アルプスルートの付近で建設を進めている中部横断自動車道の付近には、日本有数の活断層帯である糸魚川―静岡構造線などが走り、その影響で地盤がもろくなっている箇所が多くあります。もろい地盤の影響で工事が難航、トンネル19カ所のうち、18カ所で施工中に崩落が発生し、全線開通時期は当初の2017年度内から20年内へと3年ほど延期されています。  「黒部の太陽」で知られる黒部川ダム建設資材を運び込むために計画された大町トンネル は、糸魚川―静岡構造線に当たる北アルプスの赤沢岳山腹にトンネルを貫通させる工事、破砕帯(長さはおよそ80m)に遭遇、大出水と崩落する土砂に拒まれ、ルートの変更も検討されました。7か月後、何本も掘られた水抜きトンネルの効果に黒部の厳寒が加わって坑内の湧水が減少し破砕帯を突破しましたが、黒部ダム建設で171人の多くの作業員が犠牲になる難工事でした。

 

   日本共産党の主張

  「工事を中止して計画を撤回し、在来鉄道網の整備を」

 JR東海が2027年に予定していたリニア中央新幹線の開業が延期に追い込まれつつあります。静岡県内のトンネル工事が引き起こす大井川の流量減少にJR東海がまともな対策を示さず、県が工事を認めないためです。リニア計画は環境破壊、採算、沿線自治体の負担など数々の問題を置き去りに進められてきました。予定が行き詰まった今、工事をやめ、計画を白紙撤回すべきです。

 リニア中央新幹線はJR東海が事業主体となり、37年には大阪まで延伸開業する計画です。総額9兆円の巨大開発事業です。安倍晋三政権は公的資金である3兆円の財政投融資を投じています。  建設工事は深刻な環境破壊をもたらします。JR東海は13年9月、南アルプストンネルの工事で大井川の水量が毎秒2立方メートル減少するとの予測を静岡県に示しました。県は60万人分の生活用水にあたるとして、トンネル湧水の全量を大井川に戻すよう求めました。JR東海は全量戻すと約束しましたが、昨年8月になって一定の期間は水を戻せないと表明しました。県はあくまで全量戻すことを求め、水資源の確保と自然環境の保全について47項目にわたってJR東海に回答を求めています。  大井川は静岡県民の6人に1人にあたる60万人余が生活や事業、発電に利用し、「命の水」と呼ばれています。一方、慢性的な水不足に悩まされており、渇水は深刻な問題です。工事による流量の減少は南アルプスの貴重な生態系にも大きな打撃を与えかねません。

 今年4月には国土交通省の「静岡工区有識者会議」が始まり、減水について検証されています。リニア推進の国交省が人選した会議ですが、JR東海の説明は、専門家から「住民は納得しない」「疑問に答えていない」と酷評されるありさまです。JR東海は、静岡県や流域自治体が求める対策を示さないまま、金子慎社長が6月26日、川勝平太知事と会談し、準備工事に限って開始したいと要請しました。知事が認めなかったのは当然です。

 さらに新型コロナウイルスの感染拡大によって、リニア計画をこのまま推進できるかが根本的に問われています。JR東海の主な収益源である東海道新幹線の旅客は、コロナ危機で大幅に減りました。テレワークやビデオ会議の普及によってビジネス客の減少は一時的なものにとどまらないといわれます。リニアの採算性は以前にも増して疑問です。JR東海の経営が悪化すれば公共交通機関としての安全性、公共性がおろそかになるおそれがあります。  コロナ危機は大都市への一極集中に見直しを迫っています。東海道新幹線とリニアによる「大動脈の二重系化」という構想自体、無謀なものとなっています。

 リニア計画は事業費の3分の1を公的融資で賄う事実上の国家プロジェクトです。安倍政権はリニア計画を成長戦略で「21世紀型のインフラ整備」に位置づけています。JR東海と一体にリニア計画を推し進めてきた政府の責任は重大です。取り返しのつかない環境破壊や事業の失敗で将来に禍根を残さないよう、計画を白紙撤回すべきです。また、JR東海に対しては、東海道新幹線の大規模リスクに備えるなど安全対策を優先させること、地域住民の「足を守る」公共交通機関として、在来線の安全性・利便性の確保へ投資を振り向け、地方鉄道網の拡充をはかることを求めるべきです。

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