中部地整が、名古屋港の浚渫土砂の処分場として、中部国際空港沖を決定。環境影響評価の最終段階(評価書を確定2020年3月)にある。今後は、関係漁業組合への漁業補償の同意、公有水面埋立認可を申請、「県知事の許可」が予定される。これらの進捗は速やかに行われ、近々の事業着工が想定される。 二本目滑走路建設促進期成同盟会は2020年3月、同空港の2本目滑走路の早期実現に向けた緊急要望、「未来への希望の旗を掲げることが必要」とし、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済対策の一環として早期実現を求めた。戦後最大の経済危機のもとで「不要不急事業の見直し」の世論を全く無視した姿勢である。
今後の15年間で、「埋立護岸の概成」「ポートアイランドの仮置土砂と航路浚渫」を実施し、中部国際空港第二滑走路の概成を構築・竣功する。その後、(株)中部国際空港に売却、空港上物(滑走路など)が整備される。
県と中部財界が言う第2滑走路の5つの必要性
「令和2年度国の施策・取組に対する愛知県からの要請」より
① 航空需要の拡大、航空ネットワークの充実や昇龍道プロジェクトの推進で、2018年度は航空旅客数が過去最高を更新する1,236万人、発着回数が10.3 万回と堅調に推移した。 (※県と空港㈱は、15万回/年で2本目滑走路が必要と言っている)
② 加えて、空港島内では、複合商業施設「FLIGHT OF DREAMS」「愛知県国際展示場」が開業し、国際交流拠点としての機能も一層充実してくる。
③ G20 愛知・名古屋外務大臣会合、2020 年ワールドロボットサミット(※5月に中止を決定)、2026 年の第20 回アジア競技大会など、国際的な行事が数多く開催される。
④ 近い将来、中部国際空港の年間発着回数は約15 万回に到達すると想定しており、滑走路が一本である状況下では、深夜早朝時間帯に実施している滑走路等のメンテナンス時間の確保も困難となる等、空港運用上の支障が生じてくる。
⑤ 加えて、供用開始から14 年が経過したことにより、大規模改修への対応も近い将来必ず直面する課題であり、ピーク時間帯を含め、航空便の受け入れ制約が現実味を帯びてきた。
「第2滑走路は不要な大型開発です」
日本共産党はこう考え方ます
① 「コロナ時代」にそくした交流・交通・仕事の在り方の検討が求められている
新型コロナウイルスへの国際的感染拡大は、世界と社会の在り方が根本から問われている。グローバルや一極集中の社会、インバウンド政策などの見直し、テレワークなど働き方の変革、そのインフラである電車や航空など交通・交流政策の見直しは必死となった。第2滑走路建設の埋立申請や事業着工の拙速な動きを止めることが求められている。
② 県営名古屋空港を積極活用する。着陸回数増対応も、メンテナンス対応も十分できる
フジドリームエアラインズ(FDA)は、県営名古屋空港と青森、新潟、福岡などの8都市をコミュータ航空で結んでいる(24便・日)。小型機の拠点空港となっている。 着陸回数は、民間機と自衛隊機で合計約33,020回(2019年度)、で、十分に余裕がある。名古屋市に面し、高速道路など交通事情も整備されている。
一方で、滑走路を利用する航空自衛隊小牧基地は、基地機能の強化を進めている。また、国と米軍はF35戦闘機の試験飛行や広域整備拠点化を進めている。 県営名古屋空港周辺の自治体(春日井市・小牧市・豊山町)は、コミュータ空港としての存続拡充を要望し、F35戦闘機など軍事基地化に反対している。
③ 第2滑走路建設費2000億円は、公費の無駄遣い
浚渫土砂処分場の総事業費は、約2000億円と報道されている(読売新聞2007年6月5日)。国と愛知県は、巨額の負担金や無利子貸付金の支出が想定される。 第1期事業計画は、総事業費7680億円。国・地元自治体・民間の負担割合は4:1:1である。地元自治体は512億円、うち愛知県の負担額は58.7%300億円。その内訳は、出資金が約60億円、無利子貸付金が約240億円となっていた。(※2005年完成時の総事業費は5950億円に圧縮され、愛知県の出資金は49億円、無利子貸付金は191億円となっている。[空港場造成に連動する空港島内の企業庁の造成事業は含まれない])。
県は、「第2滑走路の総事業費と財政スキームは検討の段階にない」(2020年度環境一斉行動への回答)と回答を避けている。そこで、関西空港の第2滑走路事業(空港用地1兆1400億円、2008年8月完成)を参考にして推定する。そこでは「総事業費の55%を出資金と無利子貸付金で確保。国と自治体が2:1の割合で負担する」としている。これらを参考に計算すると、第2滑走路の地元自治体は約370億円、愛知県は215億の巨額の負担金と計算できる。 また、中部国際空港の拡充に必要として、県の有料道路として第2知多道路(事業費1000億円以上)を2018年度に着工している。
④ 当地は「多様な鳥類及び海生生物の重要な生息・生育地域」、環境が破壊される
環境影響評価書に対する知事意見は、「本埋立区は、伊勢湾中央部から中部国際空港に向かって海底が急激に駆け上がる地形的な特性から、海生動物の貧酸素からの待避場所としての機能を有しているとともに、浅瀬には底生動物が多く存在し、空港の季節護岸周辺に形成された海生生物の生息・生育環境と相まって海生動物にとって良好な環境が形成されており、多様な鳥類及び海生生物の重要な生息・生育環境となっている。その一部は環境省から「生物多様性の観点から重要度の高い海域に選定されている」と指摘している通り、伊勢湾の環境保持に大切な海域である。
⑤ 滑走路の大規模改修は、第2滑走路がなくても可能
(関西国際空港・福岡空港の施工例からみる)
● 関西国際空港の滑走路、アスファルト舗装の全面打直し修繕(施工例) 関西国際空港は、昼間の混雑時間帯では2本の滑走路の運用が求められていたため、夜間の時間帯に修繕工を行い、日々交通開放する方法で行った。 2007年、開港から13年たった第1滑走路の大規模修繕(アスファルト舗装の全面打ち直し)を行った。2007年第2滑走路(B滑走路)がオープンし、次の施工時間(深夜滞)が確保可能となった。
「施工期間中の運用条件」 期 間:2007年10月~2008年8月末(舗装工事は12月~) 日 :週5日(日,火,水,金,土)(月・木は第2滑走路のメンテの) 時間帯:23:10~翌日6:40(7時間30分) 日々交通開放を行うため、毎朝の舗装終了時に舗装工事の末端(新・旧舗装の施工箇所)で1%勾配でアスコン擦り付けを実施し、飛行機の発着ができるようにする
● 福岡空港(滑走路1本)では4回の大規模改修を実施(施工例) 福岡空港は滑走路1本(2,800m×60m)で,離着陸回数年間13 万回を超える国内屈指の交通量を有する地方拠点空港である。 変状が発生した福岡空港滑走路の舗装は,コンクリート版上に昭和48 年度,61 年度,平成12~14 年度の3回にわたってアスファルト混合物によるオーバーレイ工事が行われ,全層厚65cm 程度まで積層されている。平成16~17年度には、大規模な切削打換え工事(厚さ20㎝)を行っているが、飛行機の運航がない午後11時~朝6時の間で、しかも日々の工事終了直後に大型航空機が高速、高頻度で走行する条件下で行われている。
● 中部国際空港は開港以来15年が経過している。県は第2滑走路の必要性の大きな理由に「滑走路等のメンテナンス時間の確保も困難。 加えて、大規模改修への対応も近い将来必ず直面する課題」をあげている。中部地整の浚渫土砂処分場の施工期間は15年以上、土砂の沈下安定期間や滑走路施工に更に数年が必要とされる。「近い将来必ず直面する大規模修繕」を第2滑走路の竣工予定の約20年後(開港後、約30数年間)まで待てないと思われる。
● 他の空港のように、セントレアの大規模改修は夜間施工時間を確保して行う 。大規模改修は「第2滑走路の竣工予定の約20年後まで待つことはできない」とすれば、他の空港のように夜間施工時間を確保して実施する。その際、十分に余裕のある県営名古屋空港を積極活用する。
● 日常のメンテ作業は深夜帯の運行の工夫を図る。
深夜12時~午前6時の間の運行状況 旅客便‥発便/週 5便・着便/週 19便 合計 23便/週 貨物便‥発便/週11便・着便/週 22便 合計 33便/週( 機器の交換・点検、滑走路の小規模修繕などのメンテナンス作業は、中部国際空港の深夜におこなわれている(右図参照)。 特に、Am3時〜6時の間が空白時間となっている。運行の工夫で、メンテ時間の確保は可能ではないか。