大村愛知県知事は、「5月8日以降も延長した休業要請への新たな協力金は考えない。財源も未来永劫にあるわけでもない」と表明し、「協力金も加算する」などとした東京都などとの違いを鮮明にしました。休業要請されている多くの事業者が、営業の再開に移る動きが顕著になり、収束に向かっている環境が一変し、新規感染が再び流行することが懸念されます。
愛知県は4月の臨時議会で、総額365億円の新型コロナウイルス感染症対策事業を決定しました。主たる財源は、国費260億円と県の積立金である財政調整基金からの繰入金82億円です。総額1兆円の「地方創生臨時交付金」の愛知県への配分は124億円と決まりましたが、そのほとんど全てが感染症対策事業に費やされる予算となっています。そのため「休業協力金」の財源は、財政調整基金となっています。大村知事の今回の表明は、国の次元を超えた補正増額がない限り、県費投入をこれ以上はしないという県民の願いからかけ離れた冷たい姿勢を明言したものです。
リーマンショックの6年後に、「積立基金」は回復 , 県民の営業と暮らし回復へ、財政の全力投入を
4月補正で財政調整基金82億円を投入しましたが、それでもなお財政調整基金は400億円以上あります。知事は4月臨時議会で、「県民のいのちとくらしを守るため、ありとあらゆる施策を展開する。未曾有の難局を乗り越えるため、県民の皆様、医療従事者、市町村、団体、事業者などオール愛知で克服したい」と決意を表明しました。全ての行財政の投入、国へ更なる財政支援を強くもとめるなど、県政の責務がいまこそ発揮されるべきです。 下図は、今年度の当初予算に添付された愛知県の「基金残額の推移」です。ここから愛知県の基金運営の中身をうかがい知ることができます。2018年までは決算。2019年度は最終予算見込み。2020年度は当初予算。
一番上段の「減債基金(任意積立分)」と2段目の「財政調整基金」(赤い線で囲まれた部分)が法律や特定目的以外の基金で、その使途が何ら拘束されない基金です。この数年間は、年度始めの当初予算で、約1千億円を超える財源不足分として活用されています。3月に可決した2020年度当初予算も、財源不足分として、減債基金のほとんど全額と財政調整基金の約半分463億円、合計1343億円を活用しています。 これまで長年にわたって、当初予算では多額の予算不足が生ずるとして基金活用で帳尻を合わせていますが、2014年度から2018年度の決算においては、県税収入が当初の想定以上にあって財源不足分が確保されたとして全額がそれぞれの基金に戻されました。2018年度決算では財政調整基金や減債基金に全額返納だけではなく、余った400億円で財政調整基金を増額する結果となっています。毎秋の予算編成方針では「厳しい財政状況」が枕言葉のように強調されていますが、愛知県の予算編成の内実についての検証が求められています。
「2008年秋のリーマンショックを超える」経済危機が懸念される今こそ、あらゆる手立てを組み立て、県民の営業と暮らし回復をめざさなければなりません。2008年のリーマンショック経済対策では、国・地方が思い切った財政投入しました。日本総研の立岡健二郎氏は「・・・道府県の基金残高は、その他特定目的基金を中心に2008、2009年度と激増したが、これは、国がリーマン・ショック後の経済対策の一環として基金を活用した事業に交付した総額5兆円にも上る国庫支出金が原資であり、その後、事業の実施などに伴い、基金は取り崩されることになった。もっとも、そうした国庫支出金が、本来自主財源により賄われるはずだった単独事業費に充当されたことなどにより、財政的余裕が生じ、結果として、財政調整基金や減債基金の積み上がりにつながった可能性がある。・・・」(「地方自治体の基金はなぜ積み上がるのか」JRIレビュー 2019.Vol5)と指摘しています。愛知県の「基金残高の推移」からも全国と同様な財政運営がうかがわれます。
大村知事は記者会見で、「県財政には限りがある。財源も未来永劫にあるわけでもない。事業者も行政のお金で食べていこうとは考えていない」と人件費や固定費など日々のやりくりに苦しんでいる事業者を逆撫でる無謀な発言が報道されています。セントレア空港内の国際展示場建設では用地費を含め約600億円(全て県費)を支出しました。水需要は満たしているのに1千億円以上の県負担金を出す設楽ダム建設、総事業費2千億円と言われるセントレア空港の第2滑走路建設を進めています。今こそ不要不急の事業を中止するとともに、県民の苦難と痛みの寄り添う施策を今こそ展開すべきです。