開発事業と大企業応援
豚コレラ対策
9月県議会定例会が9月17日に始まった。会期は10月16日までの予定。補正予算を含め27本の議案が提出された。一般会計補正予算には127億8563万円が計上されている。
中身は、豚コレラ緊急対策、西三河南部地域(ゼロメートル地帯)の広域防災拠点の基本設計、あさり資源回復に向けた増殖場の造成など、県民にとって切実な事業がある。
ジブリパーク
一方で、県知事が本会議での予算説明で強調しているのは、豚コレラ緊急対策を除けば、「ジブリパーク開業に向けた公園整備の推進(7250万円)」「スタートアップ企業を積極的に支援するための支援拠点の整備の推進(2438万9千円。外に債務負担行為9460万円)」「愛知県国際展示場『アイチスカイエキスポ』に官民連携の催事開催(1億5492万円)」「愛・地球博記念公園の駐車場検討や周辺道路の対策検討の推進(9900万円)」と、開発型、大企業優遇型の予算である。
ジブリパークについては、他のテーマパークの教訓を深めたり、県民の意向や要望を聞くことなく、様々な施設の基本設計や駐車場確保の検討や調査がすすめられている。
国際展示場
中部国際空港島内に8月30日にオープンした県国際展示場は、来年の東京五輪の開催中は関東圏の大規模展示場が使用できないことを当て込んだ需要予測となっており、長期的な活用の見通しがない。県は催事を無理につくり、活用をアピールしようとしている。
海外企業誘致
さらに問題があるのは、スタートアップ事業の推進である。スタートアップとは、「AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット=センサーとネット通信機能を持ったモノ)などの最先端の技術を活用し、新しい革新的なビジネスモデルを用いて急成長を目指す企業」への支援事業で安倍政権の成長戦略。
「エコシステムとは、本来は生態系を意味するものの、経済分野においては、地域資源が有機的に結びつき、循環する中で、自立的に成長、発展していく成り立ち」。「具体化に向けては、スタートアップ企業を、この地域から発掘、育成、展開、海外進出させていく施策の流れと、優秀かつ成功しているスタートアップ企業を世界からこの地域に誘引する施策の流れの両面から展開していく」となっている。
つまり、トヨタや三菱など大企業を中心とした先端企業の海外進出を促進し、海外からの企業誘致をめざすものなのである。
県は昨年10月に、「アイチスタートアップ戦略(あいちスタートアップ・エコシステムの形成に向けて)」を策定し、県の経済産業局に、スタートアップ推進課を立ち上げ、スタートアップ支援事業や、スタートアップ支援拠点の整備をすすめようとしている。
中心は中小企業
しかし、地域産業の中心、中核は中小企業・小企業であり、多くの労働者(30人未満の事業所で働く従業者の割合は76・2%、300人未満では97・6%)がここで働き、生活を維持している。
中部経済新聞(9月24日付)は、中小企業の経済団体である愛知中小企業家同友会の景況調査報告(2019年8月末)を紹介しているが、調査報告は、「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断DI」が、3期連続で「良い」超過幅の縮小となり、「景気後退局面入り」の可能性の高まりを指摘し、消費税増税による打撃を懸念している。
今必要なことは、今年2月の県議会定例会で、当時の日本共産党県議団が主張した「先端技術の特定分野を主とした産業・経済政策ではなく、愛知の産業を支える中小企業に目を向けて、中小企業を『経済の根幹』に、農業を『基幹産業』に位置づけ」ることである。
(日本共産党愛知県委員会政策委員長・佐々木朗)