8日午後、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の展示が再開されました。
同企画展は開幕わずか3日で中止に追い込まれていました。河村たかし名古屋市長(芸術祭実行委員会会長代行)による中止要請や、菅義偉官房長官が同芸術祭への補助金交付について「精査したい」と述べるなど「検閲」にほかならない圧力や、芸術祭実行委員会への「電凸」(でんとつ)といわれる大量の抗議・脅迫電話があったことによるものです。
同展示中止直後から再開を求める作家や市民の運動が広がりました。国際的にも展示中止に抗議して、作品展示を拒否したり変更する作家が広がりました。
愛知県が設けた検証委員会は、9月25日の中間報告で「条件が整い次第、すみやかに再開すべき」と提言しました。
「表現の不自由展・その後」の実行委員会が展示再開を求めた仮処分の審尋が30日、名古屋地裁で開かれ、6―8日に再開することで芸術祭実行委員会と和解しました。
展示が再開された8日、会場の県芸術文化センターには、観覧希望者の長い行列ができました。この日は「安全上の配慮」を理由に入場者は抽選60名でした。
さらに、不自由展中止に抗議してきた海外作家らの作品もすべて展示されました。
名古屋市議会では、日本共産党の田口一登議員が9月13日の本会議個人質問で河村市長の中止要請について質問しました。田口氏は「憲法が保障する表現の自由の侵害にあたる」とし、さらに行政の長の発言となれば「憲法が禁止する検閲」だと批判しました。
一方、改憲右翼勢力「日本会議」の自民党議員は、展示中止を当然視する議会発言をしました。
愛知県議会では3日、県民環境委員会で自民党の佐藤英俊、増田裕二、鈴木雅博、近藤裕人の4県議が「不自由展をやり玉に」(「中日」)攻撃。さらに自民党県議団として4日、展示再開に同意できないとする申入れを知事におこない、最後まで再開を妨害しました。自民党県議団は「丸ごと改憲議連」であり日本会議が後押ししています。
展示再開当日の、会場前には日の丸を掲げる右翼らが座り込み、河村名古屋市長が拡声器で再開反対の演説をしました。これについて大村秀章知事は、ツイッター(ネットの短文投稿サイト)で「県立美術館の敷地を占拠して、とても公職者のやられることとは思えません」と抗議の談話を出しました。
萩生田光一文科相は、大村知事が「再開をめざす」といった翌日の9月26日、既に決定していた芸術祭への補助金全額の7800万円の交付を撤回しました。国による再開妨害です。
10月5日に名古屋市内で開かれた補助金不交付決定の撤回を求める県民集会では、美術・文化関係者から「検閲・文化ファシズムとのたたかい」「国の補助金カットは思想・研究・教育にも波及する」「手をつないで補助金不交付撤回に向けてがんばる」との発言が相次ぎました。
県政の窓