〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
決算に関する報告書189ページの勤労者福祉推進事業費に関連して質問します。
サービス残業是正
【下奥奈歩 委員】
まず、労働基準法違反などいわゆるブラック企業対策について質問します。
今、残業代が出ない、長時間過密労働などブラックな職場が横行し、若者が使い潰される事態となっています。
愛知労働局は今年、5月29日、2016年に労働基準監督署が指導監督した事業所は前年に比べ12%増の6323カ所だったと発表しました。これは、長時間労働の是正を目指すとする厚労相の方針を受け、重点的な監督対象を残業月100時間超から80時間超にしたことで対象企業が増加したものです。この指導監督した事業所のうち、3分の2に当たる4,213事業所で法令違反があったとしています。
いまだにこのような違反事業所が相次ぐというのは異常事態です。
そこで伺います。関係部局として、当然これらの内容について掌握されていると存じます。これらの違反内容について、その特徴や具体的事案について、簡潔にご説明願います。
【労働福祉課】
平成28年に県内の14の労働基準監督署が実施した監督指導の実施結果によりますと、主な法令違反は、「労働時間・休日」が1,841件、「健康診断」が1,075件、「時間外労働等による割増賃金」が776件となっております。
違反内容の事案としては、36協定の届を行わず、労働者に法定労働時間・日数を超えて時間外労働・休日労働を行わせていたもの、また、協定の届出はあるものの、協定時間・日数を超えて労働を行わせていたもの、時間外労働、深夜労働等を行わせているのに、割増賃金を支払っていないものなどがございます。
【下奥奈歩 委員】
残業代未払いの問題も深刻です。厚生労働省は8月9日、2016年度の「未払い残業代」は127億円と前年度に比べ27%増となったと発表しました。愛知県はどうだったのか、お伺いします。
【労働福祉課】
厚生労働省は、平成28年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめています。
愛知県の状況は、愛知労働局に確認したところ、支払われた割増賃金は、3億6,681万円で前年度に比べて18.9%の減となっております。
【下奥奈歩 委員】
サービス残業是正も依然として重要な課題ですが、愛知労働局は今年度、過労死などの労災請求があった事業所への監督指導を徹底する方針です。すでに極端な事業を公表するなどの対応をしています。
そこで伺います。労働法令違反が増えている事態を受けて、愛知県としてはどのように受け止め、労働者に対して、どのように対応しているのかお伺いします。
過労死などブラック企業対策は
【労働福祉課】
事業所における労働法令違反は、あってはならないことであり、憂慮すべき事態と受け止めています。
労働者としては、労働法令を理解することにより、事業所に対して改善を求めたり、違反事例があれば、労働基準監督署へ申告できるようになることが必要です。
そのため、労働法令の周知を図るため、労働者向けに「労働法ガイドブック」、若者向け「知ってる?働くルール」を作成するとともに、労使双方に労働問題の基礎的・専門的な知識を付与することを目的として、本県や県労働協会において労働講座を開催しています。
また、愛知県産業労働センターの労働相談コーナーや7か所の県民事務所に労働相談窓口を設置して労働相談に応じており、法令違反があった場合は、事業所を管轄する労働基準監督署へ申告手続を行うよう案内する、といった対応をしております。
【下奥奈歩 委員】
愛知県としては、労働相談窓口を設けるなど強化してブラック企業対策するということのようです。この労働相談の件数や相談内容などの状況はどうなのか、お伺いします。
【労働福祉課】
「ブラック企業」について明確な定義はありませんが、一般的には、労働関係のルールを無視し、労働者、主に若者に、厳しいノルマや長時間労働、サービス残業など、過重な労働をさせ、労働者を使い捨てにするような企業を指します。
平成28年度、本県の労働相談窓口における相談件数
4,248件のうち、いじめ、パワハラが533件、ただし、相談者本人の申出によるもので、事実確認をしたものではありません、サービス残業が63件、長時間労働が34件となっています。
相談内容は、一例ですが、「実際は、月200時間を超える勤務時間であるが、180時間となるよう勤務時間を書き直せと指示を受けた。」「残業が毎日12時頃まで、先週は徹夜もあった。土曜日の休日も勤務している。毎日2時間分しか残業代は支払われていない。」「上司から暴言、恫喝を受け、会社へ訴えたところ、会社の総務課長から謝罪はあったが、納得できないため、上司を訴えたい。」といったものがありました。
相談窓口のさらなる周知を
【下奥奈歩 委員】
相談窓口は、何か困ったことがあったときに相談できる場所がるというのは本当に大事なことだと思います。なので、相談窓口を知らせて発信してくことも大事だと思います。県の方のご尽力で昨年は、労働相談窓口を紹介するポスターをコンビニに貼っていただきました。
コンビニのポスターは何か所で掲示されたのか、お伺いします。また、今後も相談窓口周知のためコンビニや大学など若者が集まるところへのポスター掲示と合わせて、SNSなども活用しながら若者に発信が必要だと思いますが、今後の取り組みについて伺います。
【労働福祉課】
相談窓口を紹介するポスターについては、平成28年度は、「連携と協力に関する包括協定」を結んでいるサークルKに対し、
1,230枚の掲示を、今年度は、ファミリーマートに対し、
600枚の掲示を依頼しております。
若者への労働相談窓口の周知については、従来から、働くルールとともに相談窓口を記載したリーフレットを作成し、これから働く大学生等の若者に対し配布しているところです。
加えて、若者に対しては、SNSの活用も有効であることから、若者を対象とした就職総合支援施設である「ヤングジョブあいち」や「ファミフレあいち」のフェイスブック、ツイッターによる情報提供を行っています。
今後も、効果的な周知方法を検討してまいりたいと考えております。
【下奥奈歩 委員】
フェイスブックやツイッターも活用されているということでありましたし、今年度もファミリーマートに600枚ということでありましたので、是非そういう取り組みを今後も推進していってほしいと思います。
ブラックな職場環境が多い中、働くルールや県の労働相談などを周知する県の「若者向け働くルール」のリーフレットは働く人を守る対策の一つとして、大変有効な手段だと思います。
以前、このリーフレットの増刷を求め質問した際、5千部から1万部に増刷していただきました。この間どういったところで活用されているのか、お伺いします。
【労働福祉課】
「若者向け働くルール」リーフレットは、これから働くこととなる卒業予定の大学生等の若者を中心に配布しています。
これから働く大学生等にとって、就職先の選択にあたり、求人票等に記載された労働条件を確認することは、その企業の働き方を知る上で大変重要であります。
そのため、県内の大学・短期大学等に配布し、就職活動中の学生等に対する就職相談などに活用いただくとともに、県の主催する就職面接会などの機会に大学生等に直接配布し、働くルールを理解のうえ、就職を希望する企業の労働条件を確認するよう促しています。
また、県内の高校生に対するキャリア教育に活用していただくため、県内のすべての高等学校に配布しています。
このほか、県内のハローワーク、「ヤングジョブあいち」などの就職相談機関やウインクあいちにあります労働総合支援フロア等の労働相談コーナーに配布し、これらの機関を訪れる若年労働者、求職者等に対する相談の際に、活用していただいています。
高校生のバイトもブラック 働くルールのリーフ配布を
【下奥奈歩 委員】
今、高校生のバイトが多くなっています。バイトもブラックな状況になっております。しかし、働くルールを知らずに働いている場合が多いと思います。職場環境の改善やブラックな職場の根絶は落ち論ですが、働く側も自分を守るために知識として働くルールを知ることが必要です。
そこで伺います。県内すべての高校生に、高校には配布されてると思いますが、高校生、生徒に行き届くようにとか、成人式で配布できるようにするなど、さらなる活用に向けて、リーフレットの増刷や各方面の活用方法など、今後拡充も必要と思いますが、県の今後の取り組みを伺います。
【労働福祉課】
「若者向け働くルール」リーフレットは、先ほど答弁させていただきましたが、県内のすべての高等学校に配布し、進路指導担当者の就職指導や先生がキャリア教育を行う際にご活用いただいているところです。
配布先につきましては、実際に就職に直面している者に配布することが効果的であると考えており、就職面接会やヤングジョブあいちなどの就職支援機関に重点的に配布しております。今後とも配布先の見直しを行うなどして、より効率的な活用方法に努めてまいりたいと考えています。
【下奥奈歩 委員】
是非、働くルールや窓口の周知のために拡充を要望したいと思います。就職をする人はもちろんですが、先ほども言ったように高校生のバイトもありますので、そういうことも踏まえまして、配布先の見直しなども行っていただきたいと思います。
私は、昨年2月の予算質疑でも若者雇用の質問をしました。その時に県は「雇用に関する労働相談を行うことで若者が安心して働ける環境づくりを促進していきたい」こう答弁していたと思います。
そこで、労働相談に寄せられるものの中には、法令違反などもあると思われますが、そういった場合、若者が安心して働けるように、問題解決のために、現在はどのような対応をされているのか、お伺いします。
【労働福祉課】
労働基準法違反が疑われる場合には、事業所を管轄する労働基準監督署への相談を案内しております。
不当解雇など労働契約法違反が疑われる場合には、愛知労働局による指導・助言やあっせんを案内するケースもございます。場合によっては、本県が委嘱している弁護士による相談を実施後、裁判所の労働審判の申立をするケースもあります。
【下奥奈歩 委員】
いわゆるブラック企業の問題が社会問題化し、過労死も後を絶たないというのが、今日の深刻な労働実態であり、悪質な違反事例などは、県当局として積極的に労働基準監督署と連携、連絡を密にして、取り組んでいくことが非常に大事な問題だと思います。今後、この点でどのように取り組んでいくのか、お伺いします。
【労働福祉課】
労働基準監督署を所管する愛知労働局との連携については、本県主催の労働講座で、愛知労働局の職員を講師に招き、「過重労働による健康障害防止のための労務管理」や「改善事例」に関したテーマで開催しています。
また、「過労死等防止対策推進法」に定められた過労死等防止啓発月間、11月に向けた取組として、先月、知事と愛知労働局長と連名で、78経済団体等に対し、「長時間労働削減をはじめとする「働き方改革」に向けた取組に関する要請書」を交付し、過重労働の解消等について、協力要請を行ったところです。
職場でのパワハラ・いじめ対策
【下奥奈歩 委員】
ありがとうございます。是非連携を密にして積極的に取り組んでいただくよう要望します。
次に、いわゆる「過労死110番」などに寄せられている事案で共通しているのは、過労死に至るのに長時間労働と並んで、電通事件にも見られるように、いわゆるパワハラやいじめが伴っていることです。
中日新聞によりますと、16年度うつ病などの労災認定が最多だったと厚生労働省が発表し、しかも若い世代が増加したとのことです。 15年末に命を絶った電通の、当時24歳だった高橋まつりさんも、16年度に労災認定されています。
そこで伺います。この問題で、愛知ではどうだったでしょうか。増加の程度、過労自殺の状況、認定された人の業種別ではどうなのか、お伺いします。
【労働福祉課】
最初に労災認定の増加の程度ですが、愛知労働局が公表した、平成28年度の愛知県内の「精神障害に関する事案の労災補償状況」によりますと、支給決定件数は27件で、前年の10件に比べ大幅に増えており、統計が残っている平成18年以降では過去最多となっています。
次に、過労死自殺の状況ですが、精神障害の労災認定を受けたもののうち自殺の推移は、平成26年度及び平成27年度はそれぞれ2件、平成28年度は4件となっています。
精神障害の労災補償状況のうち、業種別の給付支給決定件数は、「製造業」10件、「建設業」4件、「運輸業、郵便業」3件の順となっています。
【下奥奈歩 委員】
いずれにしても、生きるために働いている職場が原因で、若者が命を落とすという、深刻な事態が続いています。これ以上若者が命を落とすことがないよう対策や、過労死根絶は急務です。
そこで伺います。若い世代、特に被害が集中している、このメンタルヘルス対策、パワハラ対策について、愛知県として、今後どのように各事業所への啓発に取り組んでいくのか、お伺いします。
【労働福祉課】
若い世代を適切に指導していくには、職場でのコミュニケーションづくりを進めていくことが重要となっており、また、気軽に相談できるよう、事業所内に相談窓口を設置し、周知することも必要です。
このような若者の特徴を踏まえた対処方法を、県内各地で開催する「職場のメンタルヘルス対策セミナー」や「労働講座」の中でテーマの一つとして取り上げ、啓発してまいりたいと考えています。
【下奥奈歩 委員】
厚生労働省が2016年に行った調査では、パワハラ対策を実施している企業は52%にとどまります。職場でのいじめや嫌がらせは増え続け、厚労相への労働相談は、5年前に比べると7割近く増加しました。16年に行った厚労相の1万人調査によれば、およそ3人に1人がパワハラを受けているという回答が寄せられています。
厚労省も今年度中に報告書をまとめるとしていますが、今まさに、根絶していくための積極的な取組が必要な時だと思います。改めて対策の強化を要望します。
次に、11月4日、5日付の朝日新聞に、車大手が無期雇用を回避という報道がなされ、本決算年度も含めこの間に、改正労働契約法である「5年ルール」の抜け道を利用して、正規化を進めない仕組みをつくってきたという記事が出ました。これではますます非正規化が進む恐れがあり、雇用改善につながらず、改正労働契約法の目的に逆行する事態だと考えます。
車大手が大きな比重をもつ本県にとって見過ごすことのできない問題ですので、改めて当局の見解をお伺いします。
【労働福祉課】
厚生労働省は、大手メーカー8社の本社がある都府県の労働局に実態調査の指示を出したとのことでありますので、その調査を見守りたいと考えています。
【下奥奈歩 委員】
調査を見守るだけではいけないと思います。県としても他人ごとではない話ですので、しっかりと考えていただきたいと思います。大企業優先の立場に立つのではなく、県民本位、県民こそ主人公の立場から、雇用関雇用改善に、関係機関と連携して取り組むよう要望して質問を終わります。