トピックス

[2017年11月8日]決算特別委員会 教育費 しもおく議員

カテゴリー:

〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕

教員の多忙化解消 フォローアップ会議の内容について

【下奥奈歩 委員】

 「学校業務改善推進事業費」が含まれる「教育委員会運営費」が計上されている「愛知県歳入歳出決算書」20ページ「11款 教育費 第1項 教育総務費」に関連し「教員の多忙化解消プラン」の取組について質問します。

 今、多数の教員が過労死ラインを超える勤務を強いられる異常事態となっており、教員の多忙化が大きな問題となっています。

 文部科学省が10年ぶりに実施した2016年度の公立小中学校教員の勤務実態調査で、中学校教諭の約6割、小学校教諭の約3割が、週60時間以上勤務し、厚生労働省が過労死ラインとしている月80時間以上の残業をしていることがわかりました。

 教員の多忙化の解消は待ったなしです。そこで、県の取り組みを進める教員の多忙化解消プランについて、昨年からの会議の流れもありますので、順次質問していきたいと思います。

 昨年年11月に教員多忙化解消プロジェクトチームから提言を受けて、県が昨年度末に公表した教員多忙化解消プランは、昨年設置された教員多忙化解消プロジェクトチームによる会議を経て作られたものであります。そこで、このプラン策定の経緯について簡潔に、まず説明をお願いします。

【教育企画課長】

 教育委員会では、平成20年3月には一斉定時退校日の設定、平成22年3月には適正な勤務時間の管理や長時間労働による健康障害の防止を働きかけるなどの取組を進めてきたが、多くの教員の在校時間が長時間にわたっている状況にある。

 一方で、学習指導要領が改定される中で、知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」を実践していくため、教員には、指導力や授業力のさらなる向上が求められており、そうした研鑽のための十分な時間をいかに確保していくかが大きな課題となっている。

 教員の多忙化解消は、教員自身の心身の健康維持の問題であるとともに、本県の教育水準の維持・向上に関わる重要な課題であると捉え、平成28年6月から、有識者や教育関係者をプロジェクトチームとした会議を7回にわたって開催し、同年11月に「教員の多忙化解消に向けた取組に関する提言」をいただいた。この提言を踏まえ、教員の長時間労働の是正に向けた具体的な取組を進めていくため、本年3月に「教員の多忙化解消プラン」を策定したものである。

【下奥奈歩 委員】

 ありがとうございます。

 この「多忙化解消プラン」の基本的な方向については、当事者である教員の方々を始め、多くの教育関係者が、教員が忙しくて疲弊している現状を改善していこうと県が動き出したことに期待し、評価しているところです。

 そこで、プランの主な内容について、プランの概要版に基づいて、策定の趣旨、基本的な考え方、達成すべき数値目標、具体的な取組の柱、進捗状況の点検、フォローアップ会議及び4つの柱の内容について、それぞれ簡潔に説明していただきたいと思います。

【教育企画課長】

 まず、プランの策定の趣旨として、教員の長時間労働の改善は、教員が一人ひとりの子どもに丁寧に関わりながら、質の高い授業や個に応じた指導を実現していくための重要かつ喫緊の課題と捉え、教員が学習指導、生徒指導などの本来的な業務に専念できる環境づくりを進めることとした。その趣旨を踏まえ、基本的な考え方として、「教員一人ひとりのワーク・ライフ・バランスに十分配慮し、各教員が健康的に教育活動に従事できる環境を整えていくことは、学校設置者の責務であり、質の高い教育を持続的に行っていくための基盤である。」と示したところである。

 続いて、達成すべき数値目標として、厚生労働省が定めている脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準を踏まえ、在校時間が月80時間を超過している教員の割合を、平成31年度までにゼロにすることを目標に掲げたところである。

 次に、具体的な4つの取組の柱とその主な内容についてであるが、一つ目の柱として、出退勤時間の電子化に向けた研究や全県的な学校の開錠・施錠時間等の設定に向けた検討など、在校時間管理の適正化、二つ目の柱として、学校経営案における業務改善目標の明記や教員のキャリアステージを見通した体系的な研修の実施など、学校マネジメントの推進、三つ目の柱として、休養日等の設定や外部指導者等の活用など、部活動指導に関わる負担の軽減、四つ目の柱として、取組実践検証校の成果の普及や会議・調査・研修・研究指定校等の精選など、業務改善と環境整備の四つの柱により取組を進めることとしている。

 プランの進捗状況の点検については、取組の工程表に基づき、本年10月に県教育委員会の関係課に進捗状況を確認するとともに、各市町村教育委員会に対しても、多忙化解消に向けて実施している取組についてのアンケート調査を実施している。さらに、毎年度末に開催する教育関係者、有識者等で構成されるフォローアップ会議において、取組全体の効果の検証と内容の見直しを行うこととしており、教育委員会として、プランの取組を着実に推進することにより、教員が健康的に教育活動に従事できる環境を整え、質の高い教育を持続的に行っていくための基盤づくりを進めていきたいと考えている。

【下奥奈歩 委員】

 ありがとうございます。今ご説明がありましたように、このプランの主旨では、「教員の長時間労働の改善」を「重要かつ喫緊の課題」ととらえ、また、基本的な考え方で環境を整えていくことは、学校設置者の責務」としている点、さらに全国的にも先進的な数値目標を掲げるなど、大変評価できるプランだと思います。

 全ての学校の先生が伸び伸びと心身ともに健やかに取り組めるようになる環境づくりは大事です。

 しかし、同時に、いくつかの疑問のある点がありますので、以下、お尋ねします。

 まず、数値目標の中に、本来であれば2015年に閣議決定された「過労死等防止対策大綱」で掲げられているような「年次有給休暇取得率を70%以上」などの数値目標も加えるべきではないかと考えるが、県の見解を伺います。

【教育企画課長】

 「過労死等防止対策大綱」は学校にも適用されるものであり、この方針に基づいて様々な取組を進めていく必要があると考えている。

 年次有給休暇の取得促進については、教員が健康的に教育活動に従事していくために重要な取組であると考えているが、教員の多忙化解消の取組としては、まずは「在校時間が月80時間を超過している教員の割合をゼロにすること」に焦点をあて、学校における業務改善につながる取組を進めてまいりたい。

【下奥奈歩 委員】

 次に、こうした数値目標を実現するために「フォローアップ会議」を立ち上げるとお聞きしましたが、この会議に、教員代表はいるのでしょうか。当事者がもし入っていないとすれば、一番現場で苦しんでいる声が伝わり辛く、反映されない可能性もあり、問題だと思いますがいかがでしょうか。また、フォローアップ会議は公開されるのでしょうか。

【教育企画課長】

 フォローアップ会議の委員として、教員代表を加えることは考えていないが、現場の意見を聞くことは大切であると認識しているので、フォローアップ会議とは別に、教員との意見交換の機会を設け、その声をフォローアップ会議において報告をしたいと考えている。

 なお、会議は、公開で行うことを予定している。

メンタルヘルスを行う保健スタッフの充実を求める

【下奥奈歩 委員】

 改善すべき点は改善されるよう要望する。

 次に、全国的に教員の病気休職者が年間約8,000人で、そのうち約5,000人が精神疾患によるものとされています。多くの教員が健康を害し、命を脅かされるという事態が各地で起こっており、これらを防ぐにはメンタルヘルス・パワハラ防止対策の取組を強化することが重要と考えます。しかしながら、このプランでは対策としてセルフケアと現場の管理職が行うラインケアに比重が置かれているだけであり、教職員のメンタルヘルスを専門に行う保健スタッフの充実強化が必要だと専門分野からの意見があります。この点について県の見解を伺います。

【福利課長】

 平成24年3月に教職員のメンタルヘルス対策を総合的に推進するために策定し、平成28年3月に一部改訂を行った「県立学校の教職員の心の健康づくり計画」において、メンタルヘルス対策の推進には、「セルフケア」「ラインケア」に加えて「保健スタッフ等によるケア」「外部資源によるケア」の4つのケアを総合的に行うことが大切であるとしており、教職員のメンタルヘルス対策については、保健スタッフ等専門家による対応についても必要不可欠であると考えている。

 「教員の多忙化解消プラン」においては、県立学校において取り組むものとして「セルフケア」・「ラインケア」の推進を掲げているが、県教育委員会では、臨床心理士や保健師が電話や面談により相談に応じるメンタルヘルス相談や臨床心理士、保健師が県立学校の依頼に基づき実施するメンタルヘルス巡回相談など保健スタッフ等専門家による事業を実施している。

 今後も、メンタルヘルス対策の推進・充実を図り、教員のメンタルヘルスの保持増進に努めていく。

部活において、朝部活の見直しを

【下奥奈歩 委員】

 今日、メンタルヘルス・パワハラ防止強化は、一般的にも社会的要因の強い課題です。教員の健康、命を守る取り組みとして引き続き強化されるよう要望します。

 次に、プランでは長時間労働を解消するために「部活動の改善」がとりわけ重視されています。時間外勤務80時間を超える教員が、県内の中学校で38.7%に及び、県立学校における時間外勤務80時間を超えている教員の内訳で最も多いのが部活動の在り方だと言われています。

 豊橋市では、2017年度から朝部活の禁止を通知するなど独自に早い動きを見せています。朝部活について、県のプロジェクトチームの会議では「生徒の睡眠不足や朝食の欠食につながることもあり、医学的には決して推奨できるものではない」として「原則としては実施しないよう努める必要がある」と強調しているます。生徒のみならず、遠方から勤務する教員であればなおさらです。

 また、中京大学スポーツ学部の教授は「朝は体が起きておらず、朝部活は頑張っても効果が薄い。効果があるのは午後から」と指摘しています。

 そこで、今どのように具体化されているのか、県下の状況についてご説明をお願いします。また、県として、朝部活についてどう認識されているのか伺います。

【保健体育スポーツ課長】

 部活動指導の在り方について、教育委員会事務局のワーキンググループにおいて、「部活動指導ガイドライン(仮称)」の策定に向けた検討作業を行っており、朝練習の実施状況を含め、各学校に対して「部活動に関する実態調査」を行い、現在、集計作業を進めているところである。

【下奥奈歩 委員】

 効果が薄く弊害のある朝部活の見直しを強く要望します。

 中学校では土日の部活動指導の時間が1日あたり2時間10分と2006年度調査に比べ倍増しております。負担解消を求める教員の声が広がり、文科省は今年1月、休養日を設定するよう求める通知を出しました。一歩前進ですが、より根本的な解決が求められています。

 そこで、部活動への負担解消には積極的な外部講師の活用が有効だと考えます。外部講師の配置について、進捗状況と今後の見通しを伺います。

【保健体育スポーツ課長】

 中学校の部活動における外部指導者の活用については、これまでも各市町村や学校の実情に応じて行われている。

 単独での指導・引率が可能である部活動指導員については、平成30年度文部科学省の概算要求に「部活動指導員配置促進事業」が盛り込まれており、本県としては、国の動向を注視しつつ、本事業の活用を検討してまいりたい。

勤務時間の実態把握に電子システムの導入を

【下奥奈歩 委員】

 必要な外部講師が配置されるよう予算の拡充を要望します。

 長時間労働解消のためにはまず、在校時間の記録による勤務時間の実態把握が大前提です。現状では在校記録時間表を用いて、勤務時間の実態把握の取り組みが行われている。しかし、現実には忙しい毎日で月末にまとめて記入することが多く見られるようです。残業しているにも関わらず「80時間・100時間を超えないように」管理職から言われるあまり、記録票に正確な時刻が記入されないということもあるようです。

 こういった現状を改善するために、勤務時間の正確な記録のためには、やはり電子化や機械化の方法に切り替える必要があります。そこで、具体的な改善のとりくみについて伺います。

【教職員課長】

 教員の多忙化解消プランでは、県教育委員会が実施する具体的な取組の4つの柱の一を「長時間労働の是正に向けた在校時間管理の適正化」とし、その具体化として「在校時間調査の改善」を掲げている。ここでは、県立学校について「県教育委員会は、現在、各教員が手書き等により行っている在校時間記録について、平成29年度、出退勤記録の電子化、総務事務システムとの連携について研究を進め、各教員による記録や集計事務の負担軽減を図るとともに、管理職が、各教員の在校時間を随時、把握できるようにする」としており、今年度取り組んでいるところである。

 まず、平成30年1月から稼働する新しい総務事務システムに、これまで手書き等で行っていた「在校時間等の状況記録」の様式を入力画面に組み込み、休暇や出張等の服務情報が自動反映されるようにし、正確性の確保と入力者の負担軽減を図ってまいりたい。

 今後は、ICカード等の利用による出退勤記録の電子化や総務事務システムとの連携により、教員の在校時間等記録やその集計事務の負担軽減と管理職が客観的な記録に基づき各教員の在校時間等を随時確認することが可能となるよう、条件整備に向けてさらに研究を進めていきたいと考えている。

 なお、小中学校については、県立学校における取組の成果を教育事務所、市町村教育委員会に速やかに情報提供し、積極的な取組を促してまいりたい。

【下奥奈歩 委員】

 まだまだ改善はこれからという状況です。長時間労働解消のための改善に向けしっかりと取り組んでいただくことを要望する。

 さらに、多忙化解消に向けて根本的に教員定数を増やすことが必要だと思います。そして、学校訪問の簡素化や公開授業の指導助言をなくすとか、実務の電子化を思い切って進めるとか、様々な個別の取り組みで改善の余地があると考えられます。これらの改善の県下の現在の進捗状況を伺います。

【高等学校教育課長】

 教育委員会が実施する学校訪問は、指導主事が直接学校を指導する重要な機会と考えており、例年できる限り多くの学校を訪問している。

 学校の実態把握や教育課題の解決、学習指導の改善はもちろんのこと、業務の改善や多忙化解消も含めた指導・助言を行うことによって、各校の教育活動の質の向上と効率化につながっているものと考えている。

 研究指定校が実施する公開授業や研究発表会では、学校からの要望に基づき、指導主事等による指導や助言を行っている。研究指定校の公開授業等での指導・助言は、他校に対する研究成果の普及の一助となり、多くの学校の授業の質の向上につながるものと考える。

【下奥奈歩 委員】

 教員の長時間労働は子ども達の教育にも深刻な影響を及ぼしています。激務に追われていて、子どもの話にじっくり耳を傾けることや授業の準備もままならない、勉強の遅れている子に丁寧に教える時間がない。長時間労働は子ども達一人一人に心を寄せる教育の重大な妨げです。

 国と県、市町村は、教員の生命・健康のためにも、子どもの教育のためにも、直ちに長時間労働を解消する責任があります。是非教員の多忙化解消の具体化を強化していただくことを要望して質問を終わります。

 

 

▲ このページの先頭にもどる

© 2015 - 2024 日本共産党 愛知県委員会