〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
アサリやノリの養殖減った三河湾
【しもおく奈歩 委員】
設楽ダム問題にも大きく関わる、豊かな三河湾の再生とアサリを守ることについて質問していきます。
三河湾は日本有数の豊かな海でした。数十年前まで、三河湾のどこでも車エビが獲れ、クルマエビ、アサリの漁獲、ノリの養殖では日本一になることも少なくありませんでした。そして、三河湾は豊かな資源を生み出す海であったばかりか、どこの海岸でも、潮干狩りが楽しむことができました。
愛知のアサリの量は2004年以来、全国1位です。干潟、浅場の大規模造成、六条干潟の稚貝放流などで、ピークには2万3000トン、その後も1万トンから2万トンのアサリがとれました。ところが、2015年には8282トンと、1万トンをわりこみ、2016年には3400トンと減っています。私は、先月、水産試験場に行って、話を伺ってきました。水産試験場は、ここ3年ほど、アサリは不漁であると言っていました。
また、4月30日の中日新聞でも「県水産試験場によると、ちかくまとまる昨年分の集計ではピークだった2008年の四分の一を大きく割り込むことが予想されています。」と報道されています。
まず、三河湾のアサリが不漁になっている現状と原因、及びその対策について、県の基本的な見解を伺います。
【水地盤環境課主幹(調査)】
県水産試験場によれば、近年のアサリ漁獲量減少の原因として、台風や冬の季節風による波浪の影響で、稚貝の定着、生存個体数が減少してきたことや、ツメタガイやカイヤドリウミグモなどの害敵生物の影響などいろいろな要因が考えられるとのことである。
県農林水産部によれば、対策として、三河湾において新たなアサリ漁場となる干潟・浅場の造成、豊川河口のアサリ稚貝の有効活用、漁業者によるカイヤドリウミグモなど害敵生物の駆除など干潟・浅場の保全活動の支援を行っていくとのことである。
【しもおく奈歩 委員】
いまアサリだけでなく、三河湾の生物が重大な事態になっており、これらを回復させ豊かな三河湾を取り戻すため、三河湾の多様な自然の再生、三河湾の再生が緊急の課題だと思います。愛知県も「三河湾里海再生プログラム」というのを過去に3か年で取り組まれ、そのチームに環境部も入ってとりくまれていたと思うので順次質問したいと思います。
藻場や浅場が高度経済成長期に一気に減少してきたことについて伺います。
藻場や浅場は、魚やアサリの赤ちゃんの育つゆりかごであり、同時に水質浄化の高い機能をもっています。
しかし、三河湾の代表的な藻場であるアマモ場は、1930 年代から1970年代までの間に12,000ha から1,000ha 程度に減少していたとされています。そして、その後の状況についても、1973(S48)年度に949ha 存在した藻場が、1996(H8)年度には570ha となっており、たった20年の間に藻場がおよそ4 割も激減したことになります。また、干潟の面積も1945年頃には約2600haでしたが1970年までに急速に減少しました。
干潟は、アサリなどの貝による水質浄化機能が、内湾の中で最も高い地域です。干潟が失われたことが、赤潮や、貧酸素水塊の大きな原因の一つと言われています。
このような藻場や浅場の減少が、魚やアサリの減少、水質悪化の原因につながっていると考えられます。
三河湾里海再生プログラムでも、埋め立てなどにより浅場や藻場が失われて環境が悪化したことを指摘しています。この点について、県の認識を伺います。
【水地盤環境課主幹(調査)】
三河湾里海再生が必要な背景の一つに、埋め立て等による干潟、浅場及び藻場の減少があり、「三河湾里海再生プログラム」では、主要施策として、干潟・浅場の造成を位置づけた。
貧酸素水塊の悪影響
【しもおく奈歩 委員】
次に、「三河湾環境再生プロジェクト行動計画」というものがあります。まず、この計画についてどういうものなのかを簡単に説明をおねがいします。また、この行動計画は、県環境部としてはどのように推進していくのか伺います。
【水地盤環境課主幹(調査)】
本県では、平成24年度から、県民、NPO等と一体となって三河湾の環境再生に向けた取組の機運を高める「三河湾環境再生プロジェクト」を実施している。
行動計画は、このプロジェクトを推進するため、学識者、NPO、漁業、流通業、観光業、レジャー業の関係者で構成する委員会が、平成25年度にまとめたものである。
行動計画は、「多くの人々に三河湾に関心を持ってもらうことに関する行動計画」と「干潟・浅場・藻場の保全・造成に関する行動計画」からなっている。
環境部では、行動計画を推進するため、干潟等の造成事業を実施する農林水産部、建設部と連携して取り組んでいる。
【しもおく奈歩 委員】
その行動計画の中で、貧酸素水塊について触れられています。貧酸素水塊とは、水中溶存酸素量が極めて不足している孤立した水塊ということです。
水産試験場でのお話によると、「三河湾の環境で、貧酸素が一番よくない。浚渫工事で3メートルより深く掘ると、貧酸素の影響をうけてしまう。昨年、航路、泊地から貧酸素水塊、硫化水素が竹島にきて、アサリが死んだことが観測されている」とのことです。貧酸素水は、まず、そこに住む生物が窒息し、強い風などで湧き上がって、アサリや魚などを死滅させます。今後、また3メートルより深い場所を増やすとなればそれは、貧酸素水の巣を増やすものです。深く掘るのは海の環境によくないということがわかります。
里海再生プログラムでも、先ほどの行動計画でも貧酸素水塊が海域環境悪化させた経緯があったことや、水質悪化の負のスパイラルを招くとしています。貧酸素水塊の発生とその影響について、どう認識しているのか伺います。
【水地盤環境課主幹(調査)】
三河湾では、夏場、表層の水温が高くなり、海水の上下方向の混合が起こりにくくなるため、底層に植物プランクトンの死骸等の有機物が堆積し、この有機物を分解するために底層で酸素が消費される。
特に、三河湾奥部には、大規模な用地造成等のために海底の土砂を採取した跡が窪地となっている。こうした窪地などでは、海水が滞留することで顕著な貧酸素化が進み、貧酸素水塊が形成される。
貧酸素水塊は、底生魚介類に影響を及ぼすともに、風などの影響で浅い海域に湧き上がり、海域の生物に影響を及ぼす場合もある。
【しもおく奈歩 委員】
私は、水産試験場でアサリが海の環境循環にとって重要な役割を果たしていることや、埋め立てが環境を変える要因のひとつになっていること、環境循環が断たれたことをききました。
干潟には、さまざまな生物がすんでいて、大きさから生活の仕方まで多種多様な生物が生活をしてそれらがお互いに関係しあってひとつの生態系をつくっています。
そして、生物が生活する中で浄化作用もあります。有機物である餌をろ過して食べるアサリなどによる除去、底泥を食べるゴカイやバクテリアによる有機物の分解、微生物によって、アンモニアや硝酸などを分解し窒素にして大気中に放出除去する。有機物を捕食にした生物を漁獲により取り上げて除去する。鳥類が餌として外部に運び出す。こうして、生物による水質浄化が行われています。
また、藻場の減少も生物が減少した原因です。藻場は、生物が暮らしていく場であり、卵を産み育てるばでもあります。生活をする場所失われたらいきていけません。
今まで、述べてきた埋め立てなどの影響でうまくまわっていた環境の連鎖が断たれてきたという認識はありますか?生物の多様性が低下してきていることについての見解を伺います。
【水地盤環境課主幹(調査)】
戦後の経済発展に伴う埋立等により、干潟、浅場及び藻場が減少した。また、陸域から流入する汚濁負荷の増大により富栄養化が進行した。
干潟・浅場は、植物プランクトン等を餌とし、水質浄化の働きを持つ二枚貝などの生息場所である。また、藻場は、魚類の稚魚等の生息場所として重要な役割を果たしている。
干潟、浅場の減少は、植物プランクトンが増殖する赤潮の発生や、それにより起こる貧酸素水塊の発生につながると考えられ、藻場の減少は稚魚等の生息場所の減少につながると考えられる。
こうしたことから、干潟、浅場及び藻場の減少は、海域の生物に影響を及ぼすものと考えられる。
生物豊かな三河湾の再生を
【しもおく奈歩 委員】
先ほど伺ってきた認識を踏まえて、ではこの先三河湾再生へどうしていくのかが重要です。
三河湾の問題といえば、事業活動、生活排水などによる富栄養化でした。下水道整備など海に流れ込む水の窒素やリンを取り除くことに取り組んできました。2年前の水産庁 干潟・藻場検討会での研究者の発表によれば、下水道も整備が進み窒素やリンが減ってきたにもかかわらず、赤潮や貧酸素水塊の発生がおさえられていません。逆に沿岸は、窒素やリンの数値が下がり窒素やリンは、生き物の栄養ですから、漁業生産の減少につながっている、というのです。沿岸の貧栄養化の現状と水産物への影響について、どう認識しているのか、まず伺います。
【水地盤環境課主幹(調査)】
伊勢湾・三河湾における環境基準の達成率について、長期的な推移をみると、全窒素及び 全りんは改善傾向にある。
伊勢湾・三河湾では、漁獲量の変化と栄養塩類濃度の因果関係は不明である。
栄養塩と漁業生産の関係については、今後国において科学的な調査が実施されると聞いており、県としては、こうした国の動向を踏まえ対応していく。
【しもおく奈歩 委員】
次に伺います。三河湾里海の再生で目指しているのは、きれいな海だけでなくアサリや魚などがたくさんいる、豊かな三河湾のはずです。逆に、見た目がきれいでも、生き物がいなくては、意味がありません。
水質環境基準を、窒素、リンの総量規制から「生物の豊かさ」へ転換し、栄養塩類のコントロールを行っていくことが必要ではないでしょうか。
そこで伺います。水質環境基準を、これまでの水質汚濁の防止から、生物生産に適正な濃度に転換する必要がある、というのが、新しい知見です。このことについての環境部としての見解を伺います。
【水地盤環境課主幹(調査)】
全窒素、全りんの水質環境基準は、水域の利用目的に応じて定められている。三河湾においては、水浴に加えて、水産利用といった利用目的を基に水質環境基準を設定している。
平成28年度の公共用水域の水質調査結果によれば、全窒素は環境基準の達成が図られておらず、全りんは環境基準達成状況の評価を開始した平成8年度以降、初めて環境基準を達成した。
県としては、引き続き環境基準の達成・維持に向け取り組んでいく。
【しもおく奈歩 委員】
藻場や浅場・干潟については先に述べたとおり生物の住む場所を取り戻していくことが三河湾の再生につながると思います。三河湾再生プロジェクトの一覧で、環境部もきれいな海のため、流入負荷削減と干潟浅場造成が効果的。生物の回復や円滑な物質環境 豊かな海の実現のため干潟浅場造成が効果的と言っています。
そういうのであれば、県環境部として三河湾再生へ藻場や干潟・浅場の造成へ部局や国とも連携し加速させていくべきではないでしょうか?環境部も関係している伊勢湾再生 海域検討会 三河湾部会の議事録によれば、愛知県は「蒲郡地区、三谷地区が、六条潟へのアサリの供給源となっている可能性があり、浅場、干潟の造成適地」と発言しています。私は蒲郡市議会を6月9日に傍聴しました。その際、蒲郡市は「この3月に大塚地区が試験施工に設定された。早期の実現をしていただくよう、県、国に働きかける」と答弁されていました。
大塚地区の実施時期を伺います。また、蒲郡地区、三谷地区の干潟造成も早く、取り組むべきと考えますが、三河湾の環境再生させ環境を守る立場から県環境部の認識を伺います。
【水地盤環境課主幹(調査)】
大塚地区において干潟・浅場の試験施工を進める国土交通省中部地方整備局三河港湾事務所に確認したところ、大塚地区における試験施工時期は関係者調整を行い、できるだけ早い時期に実施したいとのことである。
環境部としては、水質浄化に資する干潟の造成を推進する必要があると考えている。
次の世代、その先へ自然の恵み残して
【しもおく奈歩 委員】
愛知県知事定例記者会見(5/1)で「三河湾の生産力を回復しないと日本のアサリがなくなる」と危機感を述べ、「干潟の造成や外敵駆除を本格的にやるための予算を組んでいる」と述べていました。アサリにとっても三河湾再生にとってもこの事業は重要だと位置付けて部局連携してがんばってほしいと思います。
最後に、私は地元豊橋で六条潟を守る活動をしている方にお話しを伺いました。その方は、わずかたかだか40年、50年で生物が減少し汚れた浜にしてしまった。埋め立てを増やすことになると、また浜の様子がどのようになるかわからない。今まで埋め立てたのは仕方ないでも、これ以上の埋め立てはだめだ。設楽ダムも反対。もう浜をいじめないでほしいと話していました。
三河湾再生プロジェクトの中にも「河川上流域のダム等河川構築物の設置による流量変化、土砂収支変化や水質変化を回避することも極めて重要」と述べています。
三河湾は私たち若者にとっても、そしてまた次の世代にもこの自然の恵みを残していくことが必要です。大型開発など目先のことにとらわれるのではなく何百年さきも考えて自然を残すことを考えてほしいです。埋め立てや設楽ダムはきっぱりやめて三河湾再生とアサリを守ることを求め質問を終わります。