〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
リニア新幹線工事にともなう住環境の破壊は許されない
【下奥奈歩 委員】
リニア中央新幹線建設に関わる環境問題について質問します。私は、2015年の12月議会の当委員会で、リニア中央新幹線建設が、大きな環境破壊を及ぼすことについて指摘し、環境影響評価書に、知事意見が生かされていない問題をただしました。その質問の中で、残土置き場の問題をとりあげ、環境影響評価書の姿勢では、県民の住環境が守れないと述べました。
その後、名古屋市中区の名城非常口の工事が、昨年6月に、発生土置き場が決まらないまま、住民説明会の直後に工事が強行され、周辺住民から批判がでています。
そして、愛知県珪砂鉱業協同組合が、春日井市の坂下非常口から出される、工事の発生土を、通称「瀬戸グランドキャニオン」と呼ばれている陶土採掘跡地の埋め戻しとして受け入れる意向を示しました。そして、昨年11月22日、28日と瀬戸市でJR東海、発生土を運搬する前田建設、愛知県 珪砂鉱業協同組合による発生土搬入に関わる住民説明会が行われ、のべ200人を超える住民が参加しています。この説明会では、坂下非常口から出る発生土10万立方メートルを、17年1月から、19年の中頃まで、1日あたり片道最大100台の運搬車両が通る計画が説明されました。参加された住民の方からは「運搬ルートは通学路だから、児童の交通事故が心配」「運搬ルートを変えてほしい」「白紙撤回してほしい」と批判的な意見が多くだされています。まさに、一昨年の12月議会で私が指摘したとおりの問題が、今進行しているのです。
環境影響評価書は、残土について、「本事業内での再利用をはかる」と盛土部分のない愛知県内では可能性のない対策を述べ、車両運行についても、「工事区域の位置や周辺の道路網を考慮して、主要な道路までの運行ルートを想定し、住居等の分布を踏まえて、設定」とし、人と自然の触れ合いの場への影響の予測・評価については「影響を与えることはない」と断じていました。
しかし、ルートとされた、国道155号線は、現在でも、庄内川掘削関係の車両が、瀬戸市内の155号線を通過し、16年の2月8日から11日に、瀬戸市が行った調査では、昼間平均で、自動車騒音の環境基準である70デシベルを超える71デシベルを記録しています。今でさえ、騒音基準をクリアできていないのに、そこをさらに1日往復200台のトラックが走行すれば、さらに騒音被害がひどくなることは明らかです。しかし、JR東海は、1日片道100台の走行だけを問題として、騒音被害はないとしています。
これでは、環境影響評価の「影響を与えることはない」ことにも、環境影響評価準備書への知事意見で「発生土置き場(仮置き場を含む)等の付帯施設の設置に当たっては、環境影響をできる限り回避又は低減すること」、「車両運行に伴う道路沿道への騒音、振動及び大気質の影響の低減に努めること」、「車両運行に伴い人と自然との触れ合い活動の場に影響を与えるおそれがあることから、その影響について、調査、予測及び評価を行うこと」と求めた内容に反していると考えますが、県のお考えをお示しください。
【環境活動推進課主幹】
リニア中央新幹線事業については、環境影響評価法、いわゆるアセス法に基づき、JR東海は、この事業を実施することによる影響について、調査、予測、評価を行い、その結果を取りまとめた環境影響評価準備書を公表した。
この準備書に対して、本県は平成26年3月に知事意見を提出しており、この知事意見では、効率的な運行による車両台数の抑制や平準化などを、JR東海に求めている。
これを受け、JR東海は、知事意見の内容を勘案し、準備書に記載されている事項に検討を加えた上で、環境影響評価書を平成26年8月に公表している。この評価書の中で「運行ルートなどの分散化など、車両の運行計画に配慮する」との見解を示すとともに、準備書に記載した環境保全措置に加えて、「環境負荷の低減を意識した運転の徹底」を追加している。
JR東海は、こうした環境保全措置を確実に行うことにより、事業による影響を回避・低減できるとしている。
県としては、知事意見を踏まえ適切な対応を行うよう、また評価書に記載された環境保全措置を確実に行うよう、引き続きJR東海に求めていく。
【下奥奈歩 委員】
瀬戸市民にとっては、リニア関係のトラック走行だけではありません。全体としてどうなるかが問題であり、そこを県として質していくべきではないでしょうか。 しかも、運搬コースは、瀬戸市民に対する説明会で、瀬戸市民から安全性に対する危惧が出されたように、瀬戸市立水野小学校への通学路になっており、道路周辺には、市民にとって大切で通行が頻繁にされる、郵便局や病院や介護施設があります。JR東海は、工事関係車両は、安全運転に努めること、交通安全のための誘導員を1人、小学校下校時から工事車両運行時間としている夕方5時まで、中線横断歩道に配置し、安全に配慮すると説明しています。しかし、これで十分なわけがありません。現在でも、渋滞時には脇道にトラックなど一般車両が侵入してきています。
そこで伺います。JR東海の関係車両が脇道に侵入してくる可能性も危惧されていますが、百歩譲って、JR東海関係車両にそういうことがないとしても、車両走行台数が増えれば、他の工事関係車両は脇道など迂回車両の増加の可能性は極めて高いものがあります。
その原因は、リニア建設の工事に伴って起こるものですから、環境保全の立場から、運行コースの変更をJR東海に求めていくべきと考えますが、県の考えをお示しください。
【環境活動推進課主幹】
JR東海は、工事関係車両が決められたルートから外れて、脇道へ侵入することがないよう、運転手に対して教育を徹底するとしている。
県環境部としても、環境保全の立場から、脇道への侵入防止の徹底を図るよう、引き続きJR東海に求めていく。
【下奥奈歩 委員】
先ほども述べたように、JRの車両だけでなく、それに伴って他の車両が入ってくるという可能性があるということを言っておきます。交通事故ワーストの県だからこそ、厳しい対応が求められるのではありませんか。しかも、「瀬戸グランドキャニオン」への発生土の搬入が、春日井坂下非常口からのものにとどまるかを、瀬戸市民のみなさんは心配しておられます。JR東海は、瀬戸市民への説明会では、発生土の受け入れ先の分散化をはかっているとして「坂下非常口以外の非常口・トンネル等については、愛知県珪砂鉱業協同組合や他の発生土の受け入れ候補地への搬入を検討中です」「検討の結果、瀬戸へ搬入することとなった場合には、別途説明いたします」と、坂下非常口以外の発生土の搬入の可能性を示唆しています。
先に述べた名城非常口の発生土の搬入先も決まっていないとされていますが、当初、JR東海から瀬戸市民に配布された「中央新幹線工事(坂下非常口)からの発生土搬入に関して」には、その他の(2)として、「他の発生土の搬入に関しては、名城非常口(立坑)は平成30年度以降、他の非常口(立坑)及びトンネルは、詳細計画が確定した時点に、別途ご案内させて頂きます」と書いてあり、名城非常口からの搬入が予定されているかのような表現までありました。
愛知県内のリニア工事の発生土は、644万立方メートルが想定されています。そのうち、今回、瀬戸への搬入を予定しているのは、10万立方メートルにすぎません。坂下非常口から出る土量だけでも100万立方メートルが想定され、名城非常口も120万立方メートルが想定されています。これらの発生土が瀬戸に搬入されることとなれば、1日最大2000台のトラックが走行することも予想され、住環境が著しく破壊されることは明らかです。
瀬戸市民からは、これ以上の環境悪化を許さないためにも、「環境影響評価をやってほしい」、これ以上の発生土の受け入れをしないためにも、瀬戸市と「環境保全協定を結んでほしい」との声が出ています。さらに、「住民の納得のないままの発生土の搬入をやめてほしい」との声もでています。
これらの県民の声にこたえ、JR東海に、県としても要望していくべきではありませんか。県の考えをお示しください。
【環境活動推進課主幹】
JR東海は、瀬戸市内の発生土の運搬ルートにおいて、大気、騒音、振動の調査、予測を行っており、その結果、環境への影響は小さいと説明会の場で明らかにしている。
また、JR東海は、工事車両の平準化など、環境影響評価書に記載された環境保全措置を確実に実施することにより、影響を回避・低減できるとしている。
県としては、こうした環境保全措置を確実に行うよう、引き続きJR東海に求めていくとともに、必要に応じて関係市と協力して、適切な対応をJR東海に求めていく。
【下奥奈歩 委員】
瀬戸への発生土搬入との関係で、春日井坂下非常口の工事説明会が今年2月21日に行われ、220人を超える春日井市民の方が集まりました。JR東海は、2027年のリニア開業に間に合わせるために、深夜の3時まで工事を行うと説明し、騒音や振動の被害を心配する市民の声に何ら答えていません。工事のよるトラックの走行で春日井市内の渋滞が予想され、先ほど、瀬戸市についてお話ししたと同様の被害が市民に及ぼうとしています。
県は先ほどから、事業者であるJR東海が適切に対応しているとばかり述べていますが、そうなっていないからこそ、今、県民から意見がでているのです。事業者まかせにとどめることはできません。
県は「あいちビジョン2020」を策定し、2030年までに「環境首都あいち」の実現をめざしていくとしており、このビジョンをうけて策定した「第4次愛知県環境基本計画~県民みんなで未来へつなぐ『環境首都あいち』~」では、「目標の実現に向けては、県民の健康や生命の保護を第一とした『安全・安心の確保』を最優先として取り組みます」としています。第4章の2020年度までの環境施策の方向では、2、「安全で快適に暮らせるあいち」にむけてでは、「大気汚染防止法や水質汚濁防止法等の各種法令の適切や運用や条例等による本県独自の規制、各種計画による総合的な施策の推進など、大気、水質、土壌、地盤、騒音、振動、悪臭等の環境保全及び改善対策を、今後も着実に推進します」と述べています。
環境首都をめざすというなら、リニア建設に伴う、重大な環境悪化を放置しておくわけにはいけません。県独自としても、環境調査を行い、JR東海に要望することをはじめ、必要な対策を打つ必要があるのではありませんか。県のお考えをお示しください。
【環境活動推進課主幹】
本県としては、周辺環境へ影響の低減は非常に重要であると考えており、環境保全措置をしっかりやっていくことは重要であるとの認識のもとに、引き続きJR東海に求めていく。
JR東海に対しては、環境保全に万全を期すとともに、住民の方に丁寧に説明し、ご理解を得ながら進めていくよう、重ねて求めていく。
【下奥奈歩 委員】
残念ながら、県として積極的な対応をするという回答を聞くことはできませんでした。私は、リニア建設に伴う環境悪化の現実が明らかになっている今、一昨年の12月議会でも述べたように、改めて、問題の多いリニア中央新幹線計画について、中止を含めた抜本的な見直しを県が国に求めること、リニア中央新幹線開業ではなく、環境首都あいちにふさわしく、環境充実の施策を行うことを求めて、質問を終わります。