日本共産党しもおく奈歩です。私は、日本共産党県議団を代表して、第91号議案平成28年度愛知県一般会計補正予算及び、第94号議案愛知県名古屋飛行場条例の一部改正について、第96号議案児童福祉施設の設備及び、運営に関する基準を定める条例の一部改正について、第104号議案設楽ダムの建設に関する基本計画の変更について、第106号議案訴えの提起について、反対の立場から討論を行います。
収支見込みのない事業 税金のつぎ込みになるのではないか
最初に、第91号議案平成28年度愛知県一般会計補正予算についてです。
まず、補正予算に大規模展示場の整備に債務負担行為を合わせて、349億円が計上されています。
この、大規模展示場は、2020年の東京オリンピック、パラリンピックで首都圏の会場が使えないためその受け皿として、中部国際空港の空港島に整備されるというものです。
この整備は、2019年の開業に間に合わせるために、設計と施工を一括発注するデザインビルド方式で行うものですが、デザインビルド方式には、設計・建設業務が“業者丸投げ”となり、工事の内容について発注者のチェックが効かず、追加工事などにより事業費が膨れ上がる危険性も指摘されているなど、公共事業のあり方としても大きな問題がある手法です。
私は、振興環境委員会でデザインビルド方式について指摘をしました。県は答弁で「リスクがあるとは考えていない」と答弁をしました。
日経のアーキテクチュアという雑誌や、国土総合研究機構が出しているデザインビルドに関する提言の中でも、デザインビルド方式につきまとう要求条件、設計基準の不明確さなどは、不確かな条件での入札となり、価格設定の問題、コスト、リスク増大の問題があること、品質に関する管理監督が不透明になるという危険性があると指摘されています。
公共工事の執行においては、透明性を確保して説明責任をはたすために設計施工分離方式が原則ではないでしょうか。
リスクを背負ってデザインビルド方式を選ぶ県の姿勢は、極めて問題だと指摘しておきます。
また、大規模展示場について、知事は「簡素に」といいますが、349億円という額がもうすでに莫大な額になっています。「コスト削減やなるべくお金がかからないように」という言い訳はすでに通用しません。
大規模展示場自体の今進めているものや、全体の積算根拠は未だ示されていません。現在あるのは既存の施設を6万平方メートルに見立てて収支のシミュレーションをしたものです。これは、単なる仮定、推定であり架空の根拠でしかありません。
千葉県幕張メッセが、結果的に赤字になって県が財政支援しているように、愛知県も同じ道を歩む可能性があり、県民の税金が湯水のごとく注ぎ込まれていくという問題があります。10年20年と県が負担を負う恐れのある大規模展示場には賛成できません。
次に、同じく補正予算でアジア競技大会招致金として120万円が計上されています。
この招致金は、OCA(アジアオリンピック評議会の略称)憲章の第44条アジア競技大会の開催申請に、招致の場合、申請と共に、払い戻し不可の招致金を支払うことが書かれています。ですが、何に使われるのかは書いてありません。このことについて、振興環境委員会での質問にたいして、答弁は、「中身は、立候補地を評価する経費の一部に使うのではないかと考えています。JOCへ聞いたら、何に使うのかはOCAから示されていない。と返事があった。」という答えが返ってきて、さらに、領収書も出ないことが明らかになりました。
県民の大事な税金で、120万円という大金を、憲章に書いてあるからという理由だけで何に使われるのか県民と議会に明らかにできないのに簡単に払ってしまうというのは大きな問題だと思います。
さらに、アジア競技大会については、未だに試算や財政計画が示されていないという問題があります。福岡県では、試算がされて600億円以上かかり財政確保が困難で、断念したと報道がされていました。
なのに、愛知県は試算もしていない状況です。また、開催構想の中に財政計画は書かれていません。日本オリンピック委員会のホームページでも「これからアジア競技大会を開催するところは財政面での負担が大きくなるばかりだ」と指摘をしています。
このような大規模プロジェクトは事業計画や財政負担計画、招致推進活動費の内訳など、県民と議会に明確にする必要があるのは当然のことです。県のやりかたはあまりにもずさんだといわざるをえません。
日本共産党県議団は、「アジア競技大会」そのものについては、スポーツを通じてアジアを含めた国際平和と友好を促進し、スポーツの振興やアスリートたちの願いに寄り添うという点では賛成です。
しかし、アジア競技大会を理由に、西知多道路整備、中部国際空港二本目滑走路整備など、無駄な大型開発が進むことが予想されます。そうなれば、県民の負担が増えるばかりです。
暮らしと経済、教育、福祉が充実して、そのもとで、アジア競技大会招致の声が広がってから、県民と一緒になって、検討するのが筋ではないでしょうか。招致金も使途不明で、財政計画も示せず県民にわかりやすい説明もできない状況での招致には賛同できません。
二つ目は、第94号議案愛知県名古屋飛行場条例の一部改正についてです。
この議案は、あいち航空ミュージアムの整備に伴い、観覧料を決めるということや、指定管理者制度の導入のために出てきた議案です。
あいち航空ミュージアムは、主な展示コンテンツの内容はまだ、決まっていない状況だときいています。コンテンツがはっきりしないなかで、今回観覧料が突然出てきました。
観覧料は、全国の航空博物館や、愛知県内のリニア鉄道館やトヨタ博物館を参考に決めたと、委員会の質疑に対する答弁の中で言われました。
いろんな施設の入場料を参考に、入場料を決めたというだけで、料金設定に具体的な根拠はありません。展示コンテンツがまだ決まっていないのに観覧料が先に決まるというのは順序が逆であり、説明のつかない決め方だと思います。
もうひとつの、指定管理者についてです。あいち航空ミュージアムは指定管理者制を導入することとしており、指定管理者は、展示の見せ方や、説明、案内といったことを行うとしています。
今の段階で、「日本の名機100選」が展示される予定だときいています。
愛知県のホームページの中に載せている「日本の名機100選」には、民間機と数々の戦闘機も載っています。戦闘機の説明には「果敢に挑んだ」「命中率をあげた」とだけ記載されています。指定管理者によって、こういう展示の仕方や、説明がされたら、戦争美化につながる可能性があると考えます。
愛知の航空産業の発展を理由に、戦争美化されるおそれのある展示の仕方や、懸念される零戦展示を県が進めるおそれがあることを大いに危惧するものです。昭和38年に平和県宣言を決議しています。この決議を尊重し、愛知県としてやるべきことではないとかんがえます。
今、県がやるべきは、素晴らしい技術が二度と軍事に使われず、平和的に利用されることを願うというメッセージを発信していくときです。
三つ目は、第96号議案児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部改正についてです。
子ども達の命はもちろん 成長発達を守る責任を果たすべき
この議案は、保育士の配置基準を緩和するものです。保育士不足を理由に当分の間とした、国の基準緩和に従って県も、保育園の配置基準を「朝、夕などの児童が少数となる時間」は、最低2名のうち1名を「1日につき8時間を超えて開所する保育所」などでは、配置基準などにより必要とされる数の3分の1以内は、保育士と同等の知識及び経験があれば、無資格でもよいとしています。
しかし、無資格者で保育をするというのは、子どもの命や安全を粗末にして、保育の質を後退させることになります。また、子どもたちの一日一日の発達の保障ができなくなってしまいます。
県は、国の規制緩和に従って、質を後退させる保育に変えてしまうのではなく、県の役割は子どもたちの命や安全を守るために、保育の質確保と、お母さんたちが安心して子どもたちを預けられる環境をつくることです。保育の質を悪化させる、規制緩和には賛成できません。
四つ目は、第104号議案設楽ダムの建設に関する基本計画の変更についてです。
税金の使い方の見直しを 無駄なダムはいらない
この議案は、5月25日に国から照会がきて、設楽ダムの建設に関する基本計画の変更について意見を求められたものです。
中身は、ダム検証に伴う工期延期とこれまで総事業費2070億円としていたものを、物価上昇や、消費税増税を理由に2400億円に引き上げるというものです。同時に県の負担は721億円から809億円と88億円の増額になると説明されています。
これまで、国は、設楽ダム総事業費は2070億円で絶対変わらない、その範囲で全部やると日本共産党の国会議員団に説明してきました。なのに、今回2400億円に増額されてしまいました。県は簡単に「やむをえない。」といって「はいはい」と返事をしてしまうことは大問題です。
また、今回の増額を突破口に、県も物価上昇や、工期延期を理由に水源地域対策費も増額される恐れがあります。そうなれば、ますます県の負担が大きくなります。
設楽ダムには、自然環境を破壊するという問題や、地盤が不安であるという問題、さらに、利水問題では、過大な需要予測をしているという問題があります。
今回、国から意見を求められていますが、返事の期限はないようです。なので、この際、山積している問題と増額について改めて慎重に検証をするべきです。県民の負担が増える基本計画の変更には、賛成できません。
最後に、第106号議案訴えの提起についてです。
これは、愛知県から貸与を受けた国公立高等学校等奨学金貸付金または、高等学校等奨学金貸付金の返還を平成28年1月末で6年以上延滞している方に対して、貸付金の返還を求めるというものです。
この議案は、昨年の6月、12月にも提出されて、その際わが党県議団は反対をしています。そして、引き続き、また今回も前回から何の改善もなく、同じ内容で訴えの提起として議案にあげられてきました。
今日では、格差や貧困の増大、非正規雇用の増大など、ますます若者たちの経済状況は深刻になってきています。これから次の世代を担っていく若者に対して丁寧で慎重な対応が必要だと考えます。
滞納者に対して訴えの提起を行うことは、返済に苦しんでいる人にますます大きな不安を与えてしまうことになります。
今、高い学費の問題が10代20代の若者を苦しめる事態になっています。高校で奨学金を借りて、さらに大学で奨学金を借りて合わせて、1千万円の借金となっている若者もいます。学びを支えるのが本来の奨学金です。しかし、日本の奨学金は、借りたら返す学生ローンとなっています。卒業と同時にやってくるのは、多額の奨学金返済です。これでは、なんのための奨学金か、わかりません。
憲法26条は、「教育の機会均等」を保障しています。「愛知県高等学校等奨学金」制度を教育の機会均等を保障するにふさわしい制度となるように、制度の改善をはかり、国に対して国庫補助金復活を求めるべきではないでしょうか。また、誰もが、安心して高校へ通えるために、奨学金給付制度や返済支援制度の創設、高校の授業料無償化が求められています。
憲法が定める、教育の機会均等への責任をしっかりと果たすべきということを強く申し上げ、以上の理由から、第106号議案訴えの提起について反対です。
以上、県民の願いとは逆行する補正予算と今述べてきた4議案に対して、反対であることを表明し、県民の福祉暮らし優先の県政を行うべきであることを申し添えまして、日本共産党県議団を代表しての討論とさせていただきます。