2025年12月議会 福祉医療委員会
【しもおく奈歩議員】 6月の委員会でも質問した「18歳までの医療費無料化」について、今回も質問したいと思います。 前回質問のなかで触れたように、県内の市町村で18歳まで医療費無料化が拡大しました。しかし、多くの市町村で財政負担が増えたり財源確保に苦労したりしているようです。
名古屋市は県の子どもの医療費無料制度に独自に上乗せして入通院とも18歳年度末まで無料にしています。25年度でみると、県と名古屋市の子どもの医療費無料化にかかる総予算は約130億円です。そのうち県の負担は約23億円、たったの18%です。残りの82%は名古屋市の負担です。豊橋市も県の子どもの医療費無料制度に上乗せして入通院とも18歳年度末まで無料です。県と豊橋市の子どもの医療費無料化にかかる総予算は24年度で17億円です。このうち県が負担しているのは約3億3000万円20%です。残り80%を豊橋市が負担しています。
愛知県が市町村と費用を半分ずつ負担する現行制度のもとで、入通院とも18歳年度末まで対象を拡大することで、市町村の負担軽減につながり他の施策に財源を活用できます。例えば、名古屋市は現在107億円の負担ですが、県が18歳年度末まで引き上げることで65億の負担になり、42億の負担軽減になります。9割の市町村が18歳までの医療費を無料化している今、県が18歳年度末までに対象を拡大し、県内の市町村の負担を軽くする、県の役割が求められると思います。
国に要望し、市町村任せにするだけではなくて、入院も通院も18歳まで医療費無料化を支えるために県の役割が必要だと考えますがいかがでしょうか。
【児童家庭課担当課長】本県の子ども医療制度は、通院医療にあっては小学校就学前、入院医療にあっては中学校卒業までの子どもを対象として、医療保険の自己負担分の無償化を行う市町村へ助成を行うものです。
各市町村においては、子育て支援に係る様々な施策を推進される中で、県の助成制度をベースに、市町村として子ども医療費助成の対象年齢拡大の必要性を判断した結果、2025年10月1日現在、18歳までの児童については、通院医療にあっては50市町村、入院医療にあっては全ての市町村が助成対象としているところです。
県といたしましては、このベースとなる県助成制度を持続可能な制度として運用していくことで、その役割を果たしてまいりたいと考えております。
【しもおく奈歩議員】 市町村で努力をして18歳まで拡大して、その分負担が増えているわけです。その軽減をしていくということは、県がさらに拡充をして役割を果たしていくことが欠かせないと思います。都道府県のなかでも、18歳まで医療費無料化の流れが始まっています。群馬県は、子どもの医療費助成を18歳まで対象を引き上げました。ホームページには、「少子化対策や子育て環境の充実をはかるため、県内どこに住んでいても子どもの医療が無料で受けられるように」と、引き上げの理由としてあげています。入院・通院ともに高校生世代までを対象とし、所得制限なし、受診時の自己負担なし、窓口での立替払いなしと大変使いやすい制度だと思います。
対象年齢引き上げの際に、子どもの医療費無料化について、県内の県立高校に通う生徒の保護者へアンケート調査を実施されています。その中で、「9割が子育て家庭の経済的負担が軽減される。」と答えたそうです。自由記述をみてみますと、「教育面で費用がかかるので、医療費無料化は高校生こそありがたいと思う。」「部活で怪我することが増え、手術や入院することになり、初めてのことで動揺したが、医療費が無料というのを聞いて、不安材料が1つ消えて、気持ちに余裕も持てた。」など、歓迎する声がありました。
他県のアンケートではありますが、子育て支援の後押しになっています。県内どこに住んでいても格差なく医療費無料で受診できます。 愛知県内では、市町村によって、通院で一割窓口負担があったり、通院は中学校卒業まで無料に留まっているところもあり、格差が生まれています。県内どこに住んでいても格差なく、18歳まで医療費無料制度を受けられるようにするのは県の役割です。
そこで伺います。進んだ他県の取り組みに学んで、愛知県でも18歳まで対象を引き上げて通院も入院も無料へと取り組むべきと考えますがいかがでしょうか。
【児童家庭課担当課長】本県としましては、所得制限及び一部負担金の無い、対象年齢を含め、全国都道府県の中でも一定の水準にある仕組みとして、長年に渡り取り組んでいるところであり、引き続き安定的な制度運用に努めてまいりたいと考えております。
【しもおく奈歩議員】 県が今までは全国でも水準として高いとも言われてということもあるかと思うが、安定してと言っている間に、群馬県がそうした充実したものになって18歳まで拡大すると、同じように鳥取県もそういう取組を始めたんです。愛知県の水準を上回る県が出てきているわけで、そうした進んだ県に学んで、さらに愛知県も高い水準に持っていくために、18歳まで引き上げることが必要だと思います。
また、一部自己負担や所得制限などはありますが入院と通院ともに18歳年度末までとしているところも、福島県、東京都、静岡県など9都県に広がって努力が始まっています。
国が、行うことで全国一律の助成制度になることも大変大事だと思いますが、国の判断待ちにせず、県が率先して決断し取り組むことで県内の格差解消になると思うが、この点認識を伺います。
【児童家庭課担当課長】 格差解消の件でご質問をいただきました。市町村が地域の実情に応じてそれぞれの政策的判断により助成対象の拡大を図ってきたというものであり、県としては現在の制度を引き続き、持続可能な形で運用してまいりたいと考えております。
【しもおく奈歩議員】 それでは大変不十分な答弁かなと思います。愛知県では、通院で義務教育就学前まで窓口負担を無料、入院は中学校卒業までを対象としています。2023年度の決算額は87億1千1百万円と前回答弁いただきました。それでは、愛知県が18歳まで通院・入院ともに引き上げた場合はどれくらいかかるのでしょうか。独自に試算してみました。だいたいの計算ではありますが、約230億円程度必要だと思います。
充分予算措置可能だと思います。対象を引き上げても、持続可能な制度として安定的に運営することはできるのではないでしょうか?答弁を求めます。
【児童家庭課担当課長】 県といたしましては、子ども医療を始めとした福祉医療制度全体を、将来に渡って安定的に運用していくことが大変重要であると考えておりまして、当面は現行の水準を維持してまいりたいと考えております。
また、子ども医療制度につきましては、本県も含め全国全ての自治体で独自の負担軽減・無償化が行われている現状を踏まえると、全国一律での制度創設など、国において統一的な対応が図られるべきものであり、今後とも様々な機会を捉えて、国へ申し入れを行ってまいります。
【しもおく奈歩議員】 国へ言うのももちろん大事ですけど、ぜひ県独自で判断をして子ども医療や福祉についても充実する県政になっていただきたいと思います。
子どもの権利条約の4つの原則のなかで、生命・生存および発達にたいする権利「すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障される」、子どもの最善の利益「子どもに関することが決められ、行われる時は、「その子どもにとって最もよいことは何であるか」を第一に考える。」とあり、それを保障する政策を進めるのは県の責任でもあります。子どもの権利保障の観点からも愛知県として、18歳まで通院・入院無料へ早急に決断することを重ねて要望し、質問を終わります。