【しもおく奈歩議員】 この間、保育団体からも繰り返し要望が出されている「育休退園」について伺います。育休退園とは、保護者が第2子や第3子の出産のために育児休業を取得すると、家庭で保育できる環境があるとみなされ、すでに保育園に通っていた上の子どもの退園を迫られるというものです。子どもに関する施策を考える土台には、子どもの権利の視点が重要です。
まず、子どもの権利条約について触れておきたいと思います。昨年、日本が子どもの権利条約を批准して30年が経ちました。子どもの権利条約は、子どもを権利の主体であることを明確にしたものです。子どもは生まれながらに、おとなと対等平等にひとりの人間として権利、人権を持つと同時に、成長の過程にあって保護や配慮が必要な、子どもならではの権利があることを宣言しました。まず、子どもの権利条約の4原則について、お示しください。
【加藤担当課長(保育)】 児童の権利に関する条約の4つの原則とは、「差別の禁止」「子どもの最善の利益」「生命、生存及び発達に対する権利」「子どもの意見の尊重」とされております。
【しもおく奈歩議員】 お示しいただいた4原則は、条文に書かれている権利であるとともに、あらゆる子どもの権利の実現を考える時に合わせて考えることが大切な、「原則」であるとされています。この条約は現在、国連加盟国数を上回る196の国と地域で締約され、世界で最も広く受け入れられている人権条約です。
日本は批准から30年になりますが、条約を生かした施策や普及はすすんでおらず、日本政府は、国連子どもの権利委員会から、子どもの権利の保障が不十分だという勧告を繰り返し受けています。愛知県の政策のなかでも、子どもの権利を保障することに力を尽くしていくことが重要です。
そこで、伺います。子どもが保育園で過ごす時間のなかでも、子どもの権利条約が活かされることが重要と考えますが県の認識を伺います。
【加藤担当課長(保育)】 児童福祉法第1条は、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」と規定しています。
保育所は、児童福祉法に基づく児童福祉施設であり、児童福祉法を踏まえ、児童の権利に関する条約の精神に則った対応が必要であると認識しております。
【しもおく奈歩議員】 保育士不足など、子どもの権利条約が脅かされているいくつかの問題があります。育休退園もその一つだと思います。保育を必要とする子どもたちの発達や健康、最善の利益を無視して子どもにとっては、強制的に退園させられてしまう人権侵害ともいうべき状況があります。保育園でつくってきた、コミュニティの場を奪われてしまっています。
育休退園を設けている自治体は、減少してきてはいるものの、昨年度段階で愛知県下では41市町村。75%の自治体が解消できていません。問題が解消しているのは政令市の名古屋や中核市四つのうち岡崎市以外の豊橋市、豊田市、一宮市など13市町村です。
2点伺います。7割を超える市町村で「育休退園」の規定がいまだに残っていることは愛知県の保育行政にとって、解消すべき大きな課題の一つだと考えますが県の認識を伺います?
また、愛知県の子ども計画「はぐみんプラン」のなかでは育休退園はどのように位置づけられているのか、いないのかこの点についても伺います。
【加藤担当課長(保育)】 保護者の育児休業中の保育所の継続利用の取扱いにつきましては、国の通知において、次年度に小学校入学を控えるなど、子どもの発達上環境変化に留意する必要がある場合、または、保護者の健康状態やその子どもの発達上環境の変化が好ましくないと考えられる場合など市町村が児童福祉の観点から必要と認めるときとされており、この場合でも、保育所の利用に関し公平な状況を保ち、地域としての適切な保育の実施に留意することとされております。
保護者が育児休業を取得する際は、保護者や子どもの希望に沿った選択ができることが望ましいことではありますが、一方で、地域の保育ニーズが高く、待機児童が発生している、あるいは年度途中で希望の時期に入園することができず、保護者が育児休業を延長せざるを得ない地域にあっては、保育の必要度や公平性の観点から、保育所の継続利用ができないことも、やむを得ない措置だと考えております。
なお、はぐみんプランには、育休退園についての記載はございません。
【しもおく奈歩議員】 育休退園の理不尽さを訴える、親の声や保育士からも声がたくさん出されています。子育て家庭に大きな負担と不安を与えており、子どもの権利の観点からも問題です。問題点は主に三つです。
第一に、上の子と生後間もない下の子の面倒を見る負担が大きいことです。下の子どもを育てることに手いっぱいで、退園した子どもの「公園で遊びたい」など要求に答えられる余裕がない、という声を伺っています。
第二に、育休終了時に2人の子どもを同時に同じ保育園に入園させることができるか?不安をかかえることです。
あいち保育研究所の調査によると、育休終了後の保育園の利用申し込み対応について、希望していれば上の子が通っていた保育所に優先入所させるが7自治体、希望していても優先入所させることができないが21自治体、配慮はするが優先入所とはいえないなどが12自治体となっています。
第三に、上の子が保育者や友だちとの関係から離れて、それまで得ていた遊びの場や人間関係を失うこと。退園により、せっかくできた友達と離れ離れになり、親は信頼関係をつくってきた保育士さんと離れて、復帰の際にまた同じ保育園に戻れるかもわからない中子どもも親も、不安だという声があります。
弟や妹が生まれてうれしいのに、子どもから「なんで私が保育園に行けなくなるの?」と聞かれて、本当に上の子につらい思いをさせてしまったと多くの保護者が嘆いています。また、保育士さんに子育ての話をきいてもらう場を失うことも精神的に大変だという声もありました。
そこで、伺います。子育てを応援する愛知県として、子どもの権利の観点も踏まえて育休退園を撤廃するよう、愛知県から市町村へ積極的な後押し、助言をお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。答弁を求めます。
【加藤担当課長(保育)】 育児休業中の継続利用については、市町村において、子どもと家庭の状況や、地域の実情に応じて判断されるものではありますが、児童福祉の観点から、子どもの健やかな育ちを支えていくため、県としましても、保育の実施主体である市町村と連携し、保護者や子どもの意思に沿った育児休業中の継続利用を始め、より良い保育サービスが提供されるよう支援に努めてまいります。
【しもおく奈歩議員】 子育て環境の改善へ、市町村任せではなく育休退園撤廃を推進する姿勢を示していただきたいと思います。多くの子が利用する保育施設は、子どもたちの成長と発達を保障できる安心安全な環境が何より求められています。保育士を増やすことも含めて、子育て支援に力を尽くしていただくことを求め質問を終わります。