私は、決算第1号「令和5年度愛知県一般会計 歳入歳出決算」、 決算第5号 「愛知県国民健康保険事業特別会計 歳入歳出決算」の認定に反対の立場から討論を行います。
反対する第一の理由は、物価高騰から県民の暮らしを守る施策が全く不十分であったことです。
ロシアのウクライナ侵略等の影響により、物価高騰で県民の暮らしは格差と貧困が拡大しています。帝国データバンクの調査によると食料品は2023年1年間で前年より26%も多い32,396品目が値上げされ、2023年9月の消費者物価指数 食料は前年同月比で9%も上昇し、県民の台所は火の車となってしまいました。食料品以外でも、水道光熱費をはじめ軒並みの値上げで実質賃金は下がり、県民の暮らしが追い詰められています。
こんなときこそ、愛知県は、国の悪政から、県民の暮らしや福祉・医療・子育て・教育を守る「防波堤」の役割を果たすことが求められています。しかし、その努力は十分だったといえるでしょうか。令和5年度一般会計決算では、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」や「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」により、国費約200億円を活用し、物価高騰対策を行いましたが、県費の投入はほとんどなく、事業内容も中小企業・小規模事業者向けのエネルギー高騰対応支援などにとどまりました。
日本共産党愛知県議団は日本共産党愛知県委員会と共に、「消費税を5%に減税やインボイス制度の導入撤回を国に求めること」「県の最低賃金を時給1500円へ引き上げるとともに、 会計年度任用職員など非正規職員の処遇を抜本的に改善すること」「県営水道料金を値上げしないこと」などを要望してきましたが、これらは、ほとんど取り組まれていません。それどころか、水道料金の引き上げや国民健康保険の納付金の引き上げなど、くらしを守ることに逆行する動きとなりました。物価高騰のなかでは、県費つまり一般財源をもっと使って値上げを抑えこみ、県民のくらしを温める施策を積極的に展開すべきでした。
決算に反対する第二の理由は、不要不急の巨額な事業に県民の貴重な財産を投入していることです。
道路をとりまく事情が大きく変わっても西知多道路などの高規格道路推進、人口減少で利水が減少するのに県負担金1073億円に膨れ上がった設楽ダム建設、利用客がコロナ前の水準に戻らない中部国際空港の第二滑走路建設、各地で環境破壊を招き膨大な電力を消費するリニア中央新幹線など、不要な大規模事業の推進に県の財政を投入していることです。
ジブリパーク、ステーションAi、新体育館建設に対し、数百億円もの巨額の県費を投入しています。
今年10月31日にオープンしたスタートアップ支援拠点の「ステーションAi」にも156億円が投じられてきました。オープン翌日の11月1日には、ステーションAiの入口周辺に、「愛知県民をイスラエルの人権侵害に加担させるな」と抗議する市民の姿がありました。「令和5年度決算に関する報告書」には、「STATION Aiプロジェクト推進事業費」の「海外スタートアップ支援機関 連携推進事業費」として、「イスラエルのイノベーション庁との連携でマッチングを3社と行い」「県内企業の新規事業開発に向ける」と掲載していまます。
あるパレスチナ研究者は、「イスラエルのスタートアップ文化と軍の関係は不可分。国連の人権専門家はイスラエルとの軍事関係の解消を求めており、事業連携はこの動きに逆行している。アジア諸国と愛知県の信頼やつながりが傷つく危険がある。県は国際法を遵守する立場から事業の中止の決断を下す必要がある」と指摘しています。いまもガザ地区などでは、人道的危機が続いています。イスラエルとの事業連携を続けてきたのは問題であり、断ち切るべきです。
愛知県には軍需関連企業が集中しており、スタートアップ支援がいつの間にか、軍事支援につながりかねません。「ステーションAi」の運営すべてを民間事業者に任せるのではなく、愛知県として最大の警戒とチェックが必要です。
第三に、市民合意のない豊橋市の新アリーナ建設に関する補助金を支出し、事業の推進を県として後押ししてきたことです。
昨年12月議会の補正予算で、新アリーナ事業をすすめる事業者公募・選定に係る費用についての補助金として、総費用5500万円の半額、2750万円を県が豊橋市に支援するとしました。私は本会議で、「最大の問題は、市民合意が得られていないということです。市民合意のないアリーナ建設は立ち止まるべきです。市民にていねいに説明したうえで市民合意を経た計画でなければ、県として補助すべきではありません。」と討論し、反対しました。
また、昨年6月議会の教育・スポーツ委員会では、「(この問題は)市民の声を聞いて進めるべきではないか? このままでは、市民からの合意が得られない計画に愛知県がお墨付きを与えることになるのではないか?」との私の質問に、スポーツ局は、「豊橋市新アリーナは、豊橋市が市民の理解を得ながら進められると認識している」と答弁しています。
新アリーナ建設について、豊橋市民の理解が得られていないことはいまや明白になりました。市民合意がないままの計画に、愛知県が補助金という形で支援を続けてきたことを認めることはできません。
高すぎる国保料、県費の補助金復活で是正を
次に、決算第5号「令和5年度愛知県国民健康保険 事業特別会計歳入歳出決算」の認定に反対する理由を述べます。
2015年に国民健康保険法が改定され、2018年度から「都道府県が、市町村とともに国民健康保険の運営を担い、財政運営の責任主体として、安定的な財政運営や効率的な事業の確保などの中心的な役割を果たすこと」となりました。国保の財政運営は、県が算定した納付金を各市町村が県へ支払い、県はその納付金や国や県の支出金から各市町村へ保険給付費を交付する制度に大きく変わりました。保険料(税)の額は市町村が決定しますが、県の役割が大きくなったのです。
2023年度に国保料(税)を引き上げた自治体は28(52%)です。愛知県の国保運営協議会でも委員から、「3年間で49市町村が国保料(税)を引き上げている」と指摘されています。
値上げの要因はいくつかあります。
まず、県への納付金が高くなりました。2023年度の被保険者一人当たりの県への納付金額は15万8002円。前年度より1万3186円重くなり、伸び率は109.1%です。2021年度から2024年度までで約3万円22.6%も引き上げられ、市町村国保と県民の大きな負担となっています。
一般会計からの繰り入れを削減してきたことも影響しています。県が法定負担分に加えて助成していた法定外の県単独補助金(最高額28億円(1997年度)を2013年度に廃止したことに加え、県として各市町村に、決算補填等を目的とした一般会計からの繰り入れを削減・解消するよう求め続けてきました。その結果、愛知県下では2016年度約125億円から2022年度には約31億円に決算補填等を目的とした繰り入れは大きく削減され、市町村の国保会計を圧迫しています。
昨年もこの流れが続きました。昨年度に定めた「第3期国保運営方針」は、「令和11年度までに「納付金ベースの統一」すなわち、「自治体毎の医療費を全く考慮せずに、国保適用人口と所得状況だけで各自治体の納付金を決定する」旨を定め、「完全統一(全県が同一の保険料(税)率)」できる環境を醸成するとしています。そのためには、更に徹底して、「決算補填目的の『一般会計繰入金』を廃止する」方針を打ち出しました。これでは、ますます国保料(税)の値上げを招いてしまいます。認めるわけにはいきません。
「国の施策・取組に対する愛知県からの要請書」では、国民健康保険について、「被保険者の年齢構成が高いため医療費水準が高く、また所得水準が低いため保険料負担率が高いといった構造的な問題を抱えており、医療費に見合う保険料(税)収入の確保が困難」との認識を示し、国に対してさらなる公費負担の増額を求めています。
高い保険料(税)で負担が重い、と認識しているのなら、国に負担を求めつつ、まず県として単独補助金を復活すべきです。一般会計からの繰り入れを県として行い、国保料(税)の値上げを抑えるべきです。
物価高騰が続いたなかで、国保料(税)の値上げをくいとめる県独自の手立てをとらず、県民の負担増を招いたことは問題です。国民健康保険特別会計決算は認定できないことを申し上げ、討論といたします。