議会報告

地元の意見を大切に、県立海翔高校の存続を
2024年6月 教育スポーツ委員会「議案質疑」

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【しもおく奈歩議員】 第114号議案「愛知県立学校条例の一部改正案について」をうかがいます。この議案は、来年4月から県立の津島北高校と弥富市にある県立海翔高校を統合し、新たに津島北翔高校を設置するというものです。 

この計画が発表されたのはわずか3年前、2021年12月に県教育委員会が発表した、「県立高等学校再編将来構想―中学校卒業者数の急減期を見据えた 県立高等学校の一層の魅力化・特色化と再編」でした。在校生や保護者、地域住民へのていねいな説明と合意が得られないまま統廃合を強行するのは問題です。パブリックコメントでも厳しい意見が寄せられていました。

第一に、県立高校の地域的配置バランスの問題です。弥富の海翔高校を廃止することで、弥富市、蟹江町、飛島村の3市町村いわゆる海部南部地域には県立高校が一つも存在しない空白地域になります。一方で津島市内では県立高校が3校残ることになります。

尾張西部地区は、「他地区に比べて中学校卒業者数の減少の進行が早く」加えて弥富や蟹江などはJRや近鉄など名古屋への利便性が高く、名古屋の高校に進学する生徒が多い、としています。しかしパブコメへの県教委のコメントでは、「海翔高校では、名古屋市南部から通学している生徒が多い」との記載があります。地域の活性化という点でも名古屋が近いから地元の高校はいらない、ということで良いのでしょうか。海翔高校は、蟹江高校と海南高校が統合して2005年に開校されました。この20年で、蟹江町からも弥富市からも県立高校がなくなり、弥富市は県下38市のうち県立高校のない唯一の市になってしまいます。

これでは、この地域が愛知県から見捨てられた、と思われてしまうのではないでしょうか?どこに住んでいても安心して高校に通い、こどもたちの学びを保障することは県立高校を所管する愛知県教育委員会の果たす役割ではないでしょうか。この統廃合により、県立高校の空白地域を新たにつくってしまうことは問題ではありませんか?答弁を求めます。

【県教委・担当課長】 海翔高校と津島北高校がある尾張西部地区は、他地区に比べて中学校卒業者数の減少の進行が早い状況にあります。海翔高校では、設立当初、生徒の7割程度が海部地区から通学していましたが、徐々にその人数・割合は低下し、統合を決定した2021(令和3)年当時は、名古屋市から通学する生徒が4割程度と高い状況になっています。反対に、海部南部地域の中学生の主な進学先は名古屋市となり、弥富市内の高校への進学者は、愛西市内や津島市内の高校への進学者と比較しても少ない状況です。

 このように地域の中学校卒業者数の推移や中学生の進学動向、海翔高校の入学状況を総合的に勘案し、海翔高校を統合することとしました。

【しもおく奈歩議員】 第二に、多くの生徒と教職員、保護者と地域のみなさんで育んできた海翔高校の特色ある教育を無くしてしまうことは、県の高校教育にとっても大きな損失になります。

高校のホームページには、「2006年に開校した海翔高校は、コ-スを備えた普通科に福祉科を併置する総合選択制の学校です。水郷(すいごう)地帯に位置しており、豊かな自然に囲まれています。普通科には、環境防災・スポーツ・普通の3コースを備え、地域と密着した教育活動を推進してきました。福祉科では、体験を重視した授業や、特別養護老人施設での実習等が充実しており、高齢社会を担う人材に求められる資質・能力を育んでいます。2年次には介護職員初任者研修、3年時には介護福祉士国家試験をそれぞれ受験します」とあります。

ゼロメートル地帯で環境防災を学ぶ貴重な場です。ここでなければ実感できないことも少なくないと思います。地元の介護施設との密接な関係を築いて、充実した実習を行い、介護や福祉分野で働く貴重な人材を育てています。高校と地域の施設との密接な連携があってこそ高い教育的効果が発揮できたのです。福祉科は新しい高校にも引き継がれますが、実習先の確保や信頼関係の確立など、一からやり直すのでしょうか。これまで築いてきた地域との関係を壊すのはあまりにも乱暴です。

パブリックコメントには、「廃校対象の学校は「困難校」あるいは困難校に準ずるような学校ばかりである。」というコメントがありました。県立高校には、地域のセーフティネットの役割もあります。地元からは、「中学校で不登校だった生徒も海翔高校が安心できる居場所になり育っていった」「模試の費用や部活のジャージ代も親の負担が気になると話す生徒もいる」「学校に来るだけで精いっぱいという子も少なくない」などの声が寄せられました。様々な困難を抱えている子どもたちを温かく迎え、励まして育てる、ほんとうに貴重な役割をこの高校は果たしているのではありませんか。

Q2知事も県教委も「誰一人取り残さない」ことを教育理念に掲げているはずです。海翔高校の果たしている役割、とりわけ地域と一体感を持って子どもたちを受け入れ育てていることをどう評価しているのでしょうか? 誰一人取り残さない、と踏ん張り地域で果たしている役割こそ守り育てていくべきではありませんか?答弁を求めます。

【県教委・担当課長】 海翔高校では、教職員の尽力もあり、生徒に寄り添ったきめ細かな教育が行われていると承知しています。しかしながら、近年は入学を希望する生徒が減少するとともに、地元生徒の割合も低くなり、今後さらに子供の数が減少していく状況であるため、海翔高校を統合するという判断に至りました。

 津島北翔高校には、海翔高校に設置している福祉科を移転しますが、海翔高校が築いてきた教育を引き継いでいけるよう取り組んでいきます。

【しもおく奈歩議員】 第三に、校舎と施設・設備について簡単にお聞きします。津島北高校は長い伝統がある学校です。一方で、校舎や施設設備の老朽化が大きな課題となっています。海翔高校は県下でも比較的新しく、改修工事も済んだばかりで、地域の避難所としても貴重な場と聞いています。

Q3なぜ新しい校舎ではなく古い校舎の方へ統合するのでしょうか、費用対効果を考えても納得できないとの意見がありますがいかがですか。新しい学校になることで、津島北高校の校舎や設備は一新されるのか、現状維持なのか、あわせて伺います。

【県教委・担当課長】 統合後の高校に設置する福祉科は、県内に4校のみであり、通学範囲が広域となるため、交通の便の良い場所に設置することが望ましいと考えました。そのため、名鉄の駅から近い津島北高校の校地で、新たな学校を開校することとしました。

 統合による校舎の整備については、福祉科の実習に対応するため、実習棟の新築と既設校舎の一部を改修し、最新の実習設備を導入することとしています。

今回の統合にあわせて充実した実習環境を整えることで、今後ますます需要の高まる福祉分野で活躍できる人材を育成していきます。

 【しもおく奈歩議員】 弥富市では、2022年に市民から「地域や学校現場の声を聞き、意見が反映され海翔高校の存続を望む」という、愛知県に対する意見書の採択を求める請願が提出されました。否決されたものの、存続を求める市民の声がありました。海翔高校は、少人数学級が実現し先生が丁寧に生徒をフォローしているそうです。また、福祉の現場で活躍している卒業生もいます。将来を担う子どもたちの活躍の場を奪う統廃合は、立ち止まるべきということを申し上げ、議案質疑を終わります。

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