日本共産党愛知県委員会としもおく奈歩議員は9月28日、愛知県庁で記者会見し、「愛知県議会が日本共産党を含む無所属議員の一般質問機会を全国で最も保障していない」ことが明らかになった調査結果を示し、「全議員に対し、議員固有の権能であり、議員活動の中心である質問機会を保障し、多様性を反映する議会にすべき」と提言を発表しました。また、後日、県議会議長に面会を求め、改善を申し入れる予定です。
無所属・一人会派の存在は、無視できない県民の声
愛知県議会は定数102 そのうち9人が無所属(二人は一人会派)であり、第三会派の公明党4人、第四会派の減税3人よりも多い。県民の多様な意見を議会論戦、県政運営に活かすことは県議会の責務であり、本会議での一般質問はそのための基本的な舞台である。
4年に1回しか一般質問を認めないルールは、県民の声を封じるもの
ところが愛知県議会の議会運営委員会は2023 年6月14 日、無所属議員の一般質問について以下のようなルールを決定した。任期中に1人1 回以内。1 年に概ね2 人。各定例会に1 人以内。任期最終年度の2 月定例会は行わない。というものである。
しかも、この決定をした議会運営委員会には、無所属議員は1人も参加していない。
多くの有権者は議員の質問に期待して一票を投じている。議員から質問の機会を奪うことは、県民の声をないがしろにするものである。「任期中に質問回数を1人1回とすることは議会の自殺行為だ」(昇秀樹教授 8.31 毎日新聞)との厳しい指摘もある。一人一人の議員は、所属会派や与野党の区別なく対等・平等でなければならない。
そこで他の都道府県議会の状況を調べてみた。まだまだ不十分な調査だが、おおよその傾向は把握でき、愛知県議会の遅れが際立っていることが確認できた。
無所属議員・一人会派議員の本会議一般質問回数 8 割が年1 回以上 4 年に1回は3 県
47 都道府県議会中40 議会(8 5%)では、無所属や一人会派の議員に年1 回以上本会議一般質問を保障している。4年に1 回なのは、愛知、埼玉、神奈川の3 議会だけである。
議員定数より1年間の一般質問議員数が多いか同数の議会が27(57%)と過半数である。愛知は定数102 、一年間の質問者は70 。定数の68%の議員しか質問できない。質問回数は年間一人当たり0.68 回。任期中4年間の一人当たり質問回数は2.7 回となる。最も少ないのは、神奈川の1.8 回、次いで東京の2回、以下、埼玉2.2 回、山形2.2 回、兵庫2.3 回、広島2.5 回、奈良2.7 回、と続き、愛知は下から8番目である。
質問回数が多いのは滋賀県議会で任期中4年間に一人10 回。鳥取9.9 回、富山9.3 回、島根8.9 回、長野8.9 回、沖縄8.3 回。この6県では議員が年間2回以上質問している。
議員全体の平均質問回数と無所属・一人会派議員の質問回数の比較 格差は愛知が最大
愛知の無所属議員は4年に1回の質問。愛知県議会の年平均質問人数は70人×任期4年で280回。これを定数102で割ると全体では議員1人が任期中の4年間に2.7回質問できる。少なくとも無所属議員にも4年間で2回は質問させなければ平等とは言えない。
東京の無所属議員は4年間で4回質問する。全体の質問数は64回×4年で256回になり、定数127で割ると質問回数は4年間で22回。無所属議員はその2倍も質問機会がある。
神奈川の無所属議員も4年で1回の質問。全体の質問数は47回×4年で188回、定数105で割ると1.8。小数点以下を切り捨てると、全議員が4年に1回程度となり差はない。
埼玉も4年で1回。全体の質問数は年51回×4年で204回。定数93で割ると2.2回。
岐阜は一人会派議員の質問は4年で8回。全体では80回×4年で320回。定数46で割ると4年間で6.9回。平均より少し質問機会が多い。三重は4年で4回。全体は57×4=228÷定数48=4.7。小数点以下を切り捨てると4年に4回となり差がない。
格差が22倍を超えるのは愛知2.72.7、埼玉2.22.2、沖縄2.072.07の33議会のみ。2727議会は逆に無所属・一人会派議員の質問機会が全体平均よりも多いか同じである。沖縄は年1回の質問は保障されており、全体の質問回数が多いことが要因であり同列には扱えない。
愛知県議会の2.7対1という格差は全国一であり、格差解消は急務である。
全議員の平均と無所属・一人会派の質問回数の格差を示すこの数値は、少数意見を大切にしているか否か、議会の民主的運営の程度を判断する一つの指標となりうると考える。
本会議での一般質問日数は愛知が10日で短い方から10番目となる。最も短いのは、5日で東京、山形。8日が3県。9日が33県。10日が兵庫と愛知となる。一般質問日数が多いのは、鳥取24日、富山22日、千葉19.5日、岡山19日、茨城18日など。ただし、一人当り質問時間、一日当り質問者数、質問方式(一問一答など)には大きなちがいがある。
調査から提言「質問日数を4日増やして、全議員に質問の保障を」
愛知県議会は、質問できる議員数、質問日数がそもそも少ない。加えて、無所属・一人会派議員への質問回数を極端に制限し、会派間の不公平・格差が日本一大きくなってしまった。この是正は急務である。県民の多様な意見を議会に反映させてこそ、民意を集約した形での首長と対等に渡り合える議会になれる。調査結果を踏まえて以下、提言したい
無所属・一人会派議員と多数会派議員との質問機会の格差は、基本的に全体の質問回数を増やすなかで解消すべきである。具体的には定例議会ごとに一日か二日、一般質問の日数を増やし、全議員が年一回は一般質問ができるようにすべきである。(一日7人×年4日=28人増で年間質問者数が98になり、ほぼ全議員に質問機会が保障される。)
無所属・少数会派に質問機会を加重配分し、より多様性を反映する議会にすべきである。
その他の課題について
議会の民主的運営の課題としては、既に6月14日に日本共産党県議団・党愛知県委員会として10項目を議長に申し入れている。調査結果からは以下の諸点も明らかになってきた。
請願に対する討論を認めないのはごくごく少数
愛知県議会では、本会議で請願に対する討論ができない。請願への討論が不可の議会は、愛知の他に、茨城、大阪、熊本、東京、埼玉の6議会のみ。41議会(87%)が討論できる。
愛知でも議会運営委員会で論議されており、9月議会からの討論実施を期待したい。
独立した控室があるか
31議会(66%)では一人会派の議員にも独立した控室が設けてある。
会派として認めるか
33議会(70%)が一人会派を認めている。その他は条件付き、無所属扱い、該当会派なしなど。愛知県議会は基本的に無所属扱いなので、条件付き、として数えた。
議案質疑が本会議でできるか
愛知県議会など多くの議会が一般質問と議案質疑を一括で行っている。質問できないと議案の質疑すらできない。一般質問とは別に本会議での質疑機会を設けているのは9議会。
*調査結果の留意点及び調査方法について
* 日本共産党愛知県議団ニュース(2023年9月号)などでは、近隣2県の一般質問回数について、岐阜県議会4回、三重県議会2回としている。岐阜県議会は一人会派であっても、いわゆる国政政党には代表質問が認められている。議会日程では代表質問と一般質問は区別されていない。実際には一人会派の日本共産党岐阜県議団は年4回、毎回の定例議会で本会議質問に立っている。三重県議会は、年間一回60分の質問枠が割り当てられている。一人会派の日本共産党三重県議団は、30分ずつ年2回一般質問を行っている。全国調査では原則を重視し、一般質問の回数を岐阜2回、三重1回と記載した。
* 山形県議会の一人会派年間一般質問回数がゼロになっている。HPでみると、毎議会開かれ、広報誌でも本会議質問と同様に紹介されている予算特別委員会(県予算の総合的な審査並びに県財政及び県政課題についての調査審議 定数41)で年に1回、無所属・一人会派議員が質問していることがわかった。
〇 調査は、党県議団事務局員で分担し、各県党県議及び各都道府県議会事務局に、電話による聞き取り、又は質問票の記入をお願いし、各議会HPも参考にした。慣例や直近の実績、年間の区切りなど、調査者及び回答者により違いがあることに留意いただきたい。
交渉会派のあり方、議会運営委員会への参加状況も調査しているが未集計段階である。
(参考)議員にとって一般質問とは何か
「議員必携」全国町村議会議長会 第1111次改訂版(編)学陽書房より
議員の権限 発言権
議員は会議に出席して、議題となった事件等について、議長の許可を得て質疑・討論・質問・動議の提出等必要な発言をすることができるが、この発言こそ議員活動の中心となるものである(21P)
質問とは
質問とは、議員がその町村(都道府県)の行財政全般にわたって、執行機関に疑問点をただし、初診の表明を求めるものである。・
(標準町村議会会議規則では、「一般質問」「緊急質問」の二つが規定されている。)
この議員の質問権は、この二つの規定によって与えられるものではない。町村(都道府県)の重要な意思を決定し、住民に代わって行財政の運営を監視する権能を有する議会の構成員である議員が、行財政全般について執行機関の所信や疑義をいつでもただすことができないとその職務を十分果たすことができないから、議員固有の権能として与えられているのである。(152P)
質問の取り扱い 一般質問
一般質問の時期
一般質問は定例会において行われ、臨時会では許されない。
一般質問の時期としては、会期の始めに行う方法と会期末に行う方法がある。
政策に取り組み、政策に生きるべき議員にとって、一般質問は、最もはなやかで意義のある発言の場であり、また、住民からも重大な関心と期待を持たれる大事な議員活動の場であることから、会期の始めに行っている町村(都道府県)がほとんどである。(153P)
(調査結果の一覧表)