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Q&A 「表現の不自由展・その後」中止問題

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「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」中止問題について、日本共産党愛知県委員会の佐々木朗政策委員長に「表現の自由」侵害と歴史修正主義の2つの角度から説明してもらいました。


Q 河村たかし名古屋市長は、税金を使い公共施設で行うものは、口が出せると主張していますが?
A 税金を投入し、公共施設を使用していることを理由に公権力が文化・芸術作品を問題視し、内容によっては支援をしない、撤去させるというのは、憲法21条2項が禁じる検閲行為です。
 芸術・文化への公的助成は専門家の判断にゆだね、国や自治体は〝金は出しても口は出さない〟という原則を堅持すべきです。

Q 河村市長は、「公共事業として相応しくない作品」「検閲ではない」と主張します。どう考えますか。  
A 市長は、「自費で、個別に私営の個人ギャラリー等で作品を公表することは自由であり可能だから、憲法が禁止する『検閲』とは全く関係ない」(8月5日)などと主張します。しかし、2015年の「表現の不自由展」はもともと、外部からの圧力で中止になった民間ギャラリーの写真展(12年)がきっかけで企画されたものです。民間まかせでなく公共こそが、国民の多様な表現の機会を保障する役割を果たすべきです。
 そもそも今回の展示は、美術館等で展示を拒否されたり、展示後に撤去された作品を、その経緯とともに展示し、「(表現の)自由をめぐる議論の契機を作りたい」(同企画展実行委員会あいさつ文)として企画されたもので、個別の作品への賛意を示したものではありません。
 市長が「公共事業として相応しくない作品」と決めつけ、展示中止に追い込むのは、違憲の「検閲」以外の何物でもありません。

Q 河村市長は、旧日本軍「慰安婦」について、「アジア各地の女性を強制的に連れて行ったというのは事実と違う」「国もそういうことはなかった」(8月5日記者会見)と主張しています。
A 河村市長の主張こそ事実に反します。政府は、河野談話(1993年「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」)で、韓国人「慰安婦」が「募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と認め、謝罪しています。
 河野談話は、安倍内閣ですら、「見直すことは考えていない」との立場を繰り返し表明しています。
 強制的に「慰安婦」にされたことを示す外国側の公文書は存在しています。旧オランダ領東インド・スマラン(現インドネシア)でオランダ人女性を強制的に連行して「慰安婦」とした「スマラン事件」などの公文書です。
 さらに、元「慰安婦」らが日本政府に謝罪と賠償を求めた裁判の判決で、強制的に「慰安婦」にされた事実が認定されていることも、河村市長は直視すべきです。日本の裁判所の判決で、「極めて反人道的かつ醜悪な行為」「ナチスの蛮行にも準ずべき重大な人権侵害」と断罪されています。
 さらに問題なのは、「慰安婦」問題を「強制連行」の有無に矮小化することで、その全体像と本質を覆い隠すねらいがあるということです。
 女性たちは、ひとたび日本軍「慰安所」に入れば性奴隷状態におかれたということは、多数の被害者からの証言があり、旧日本軍の公文書に照らしても動かすことができない事実です。この事実こそ、「軍性奴隷制」として世界からきびしく批判されている日本軍「慰安婦」制度の最大の問題です。
 河村市長の主張の根本にあるのは、過去の侵略戦争と植民地支配への反省を欠き、それを正当化する歴史修正主義の立場です。
 こうした態度は北東アジアの平和をつくるうえでも有害であり、政治家としての資質が厳しく問われます。

国際芸術祭2019 あいちトリエンナーレ(8月1日~10月14日)
 あいちトリエンナーレは、2010年から3年ごとに開催されている国際芸術祭です。実行委員会の会長は大村秀章愛知県知事、会長代行は河村たかし名古屋市長。愛知芸術文化センター(名古屋市東区)など県内4会場で8月1日から10月14日まで開催。企画展「表現の不自由展・その後」は、わずか3日限りで展示中止になり、再開をもとめる市民の行動が広がっています。22日午後2時から名古屋市中区の若宮公園ミニスポーツ広場で集会とデモがおこなわれます。

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