2018年6月議会 振興環境委員会
一般質問「地球温暖化の問題について」
〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
【下奥委員】
地球温暖化の問題について、質問します。今、国会では「気候変動適応法」が6月6日参議院本会議で全会一致で可決・成立しました。
まず、この「気候変動適応法」について、ご説明をお願いします。
【地球温暖化対策課 主幹】
気候変動適応とは、気温の上昇、大雨の頻度の増加、農作物の品質の低下、動植物の分布域の変化など、気候変動の影響に対して、被害の防止又は、軽減などを図るものであり、「気候変動適応法」は、こうした内容を目的として、制定された法律と理解しております。
【下奥委員】
政府が今進めようとしている適応策は、すでに起こってしまった温暖化による諸現象、水害、農産物被害、生体系破壊などへの対策のことを指しています。適応策だけが強調されていますが、もう一つ必要なのは、CO2削減など温暖化を止める対策である緩和策との一体的推進が重要です。
次に伺います。国会審議の中で参考人質疑が行われて、わが党国会議員が質問に立ちました。そのときに、WWF(世界⾃然保護基⾦)ジャパンの⼩⻄雅⼦・⾃然保護室次⻑は、法案に「緩和策と適応策が⾞の両輪だと明⽰してほしい」と要望されていました。また、気候ネットワークの桃井貴⼦・東京事務所⻑は、温室効果ガスを2030年までに13年⽐26%削減とする⽇本の⽬標を引き上げるべきだと強調しました。さらに、世界の流れに逆らい⽯炭⽕⼒発電を推進する⽇本について「緩和策が全く不⼗分。むしろ真逆の状況」と指摘されました。
また、5月8日付の日刊工業新聞の社説で「適応は重要だが、気候変動を抑える最⼤の⼿段は温室効果ガスの排出削減だ。これを実現することが最⼤の「適応」だ」と述べています。
そこで、伺います。適応策も大事ですが、CO2削減など温暖化を止める対策である緩和策が最大の適応策だと考えます。環境首都あいちとしてこの緩和策を柱に据えて、地球温暖化対策に取り組むべきではないでしょうか?答弁を求めます。
【地球温暖化対策課 主幹】
本県は、本年2月に策定した「あいち地球温暖化防止戦略2030」において、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減するという「緩和策」の目標を掲げ、あらゆる主体との連携による様々な施策を推進することとしています。
また、本県の戦略では、「緩和策」により地球温暖化の進行の抑制に最大限取り組んだ上で、それでも避けられない影響に対しては、「適応策」により適切に対処するよう取組を進めることとしています。
【下奥委員】
国連気候変動に関する政府間パネル IPCC第5次評価報告書では「現行を上回る追加的な緩和努力がないと、たとえ適応があったとしても、21世紀末までの温暖化は、深刻で広範にわたる不可逆的な世界規模の影響に至るリスクが、高いレベルから、非常に高いレベルになるだろう」と記述しています。つまり、温室効果ガスの排出を抑制せず増加するままにした場合、適応策だけでは不十分だということです。
2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みを定めた「パリ協定」が2016年11月4日に発効しました。これは、世界の平均気温の上昇を産業革命当時に比べ2度未満、できれば1・5度未満に抑えるため、温室効果ガスの排出を今世紀後半には「実質ゼロ」に抑えることを目標にしています。
しかし、日本はこのパリ協定の精神に反して、脱炭素化や再生可能エネルギーの普及が遅れています。それに、追随して遅れているのが愛知県です。愛知も世界の脱石炭の流れに逆行し、石炭火力発電を推進しています。
環境省の資料によりますと、現在石炭火力発電の新増設計画は、約1850万kw。これらの計画がすべて実行されれば、老朽化石炭火力が廃止されるとしても、2030年度の削減目標を約6800万トン超過すると掲載されています。
愛知県内では、武豊火力発電所5号機の建設工事が開始されてしまいました。どんなに高い技術を使っても二酸化炭素を大量に排出し地球温暖化を加速させるものです。
県は、あいち地球温暖化防止戦略で2030 年度の温室効果ガス総排出量を 2013 年度比で 26 パーセント削減する目標を掲げています。
そこで、伺います。石炭火力推進では、パリ協定に逆行し、県の掲げる目標も達成にもならない、むしろ温室効果ガスを増大させてしまうのではないでしょうか?答弁を求めます。
【地球温暖化対策課 主幹】
石炭火力などの発電事業は、国のエネルギー政策に関わるものであり、発電事業に伴う温室効果ガスの排出削減対策については、電力業界が平成27年7月に「低炭素社会実行計画」を発表し、取組を進めているところであります。
この計画は、国の「長期エネルギー需給見通し」や、国がパリ協定に向けて世界に示した、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減するという目標を踏まえ、電力業界全体として、2030年度の二酸化炭素排出係数を2013年度比で35%程度の改善をトータルで目指すものであります。
なお、国は、「電力業界全体の取組が継続的に実効を上げているか、毎年度、その進捗状況を評価する」としており、本県としては、国の動向を注視してまいります。
【下奥委員】
次に伺います。武豊石炭火力は、木質バイオマス混焼これは、石炭と木質バイオマスを混ぜるので混焼という言い方をするそうですが、この木質バイオマスが安定供給できるのかという問題があります。この木質バイオマスなどの調達の困難さが指摘されています。
これは、わが党議員の国会質問のなかで明らかにしています。今年の4月17日付の中日新聞に、政府が掲げる2030年に国内電力消費の約4%という目標を達成しようとすれば、年間3千万トンの輸入が必要になる、しかし、2016年、世界中で流通した発電用のペレットは1400万トンだと。ぜんぜん足りていないということです。原料となるアブラヤシなどを取るために森林の乱開発にならないかという懸念もあるようです。
世界全体がこういう状況になっているとき、供給が途絶える可能性も否定できません。こういった指摘があることについての県の認識を伺います。
【地球温暖化対策課 主幹】
事業者は、武豊火力発電所に係る環境影響評価手続きの中で、環境影響評価準備書への愛知県知事の意見に対して、木質バイオマス燃料の調達に当たっては、「調達先を分散化させること等により供給安定性を確保する」としています。
また、同手続きの中で、経済産業大臣は、事業者に対して、「海外の木質バイオマスの調達に伴う違法な森林伐採等を回避するとともに、混焼率を維持するよう燃料の調達及び設備の維持管理に努める」よう勧告しています。
県としては、事業者は、大臣の勧告などに従って、環境に配慮しながら、適切に木質バイオマス燃料の混焼率の維持に努めるものと考えております。
【下奥委員】
地球温暖化は、人間の活動が原因となった二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの増加が原因となって引き起こされています。温室効果ガスの発生を減らし、地球気温の上昇を抑えることが地球温暖化対策の最も重要な課題です。何度も言いますが、石炭火力はどんな高い最新の技術を用いても、天然ガス火力の2倍もの二酸化炭素を排出するものです。木質バイオマス混焼も見かけ上は高効率に見えるだけであって環境負荷低減になりえるものではありません。
気候ネットワークが出している「気候ネットワーク通信」の中で、「国内にまだ42 基もある石炭火力発電所の新設計画、そして、途上国に支援をする新規の石炭火力発電事業への融資、どれ一つ、パリ協定とは整合しません。パリ協定の目標は新規の石炭火力は言うまでもなく、既存火力においても2030 年頃には全廃しなくては達成できないものです。日本がどのような取り組みをすすめようと、石炭火力を大きく推進する方針を改めない限り、世界からの信頼は取り戻せません。中長期の経済的な利益、気候変動被害を回避する利益、そして、世界の人々が平和で豊かで健康に暮らせることの共通利益のために、今回のエネルギー基本計画において、脱石炭の方針を速やかに決定すべきです」と、指摘しています。
気候変動は、県民のくらしに影響します。環境省・文科省・農林水産省・国土交通省・気象庁がまとめた「日本の気候変動とその影響」というレポートがあります。その中で、猛暑日の日数が増加していること、コメの品質低下や果樹生産の日焼け、着色不良、藻場の衰退・消失、熱中症の増加など現状とともに予測が示されています。
そこで、伺います。県民の暮らしにも多大な影響を及ぼす地球温暖化の対策強化が急務です。そのためにも、温室効果ガスを増やす大きな原因となっている石炭火力をやめて、脱石炭への方針に直ちに切り替えるべきではないでしょうか?答弁を求めます。
【地球温暖化対策課 主幹】
電力のエネルギー源は、安全性、安定的供給、経済効率性、環境適合など様々な側面を満たすことが求められます。
国においては、これらの観点を踏まえ「長期エネルギー需給見通し」において、多様なエネルギー源を活用した電源構成、エネルギーミックスを示しています。
火力発電所をどうするかについては、エネルギーミックスの見直しに関わることであり、その判断は国が行うべきものと考えております。
【下奥委員】
国が石炭火力を推進する判断をしている限りは、県もそれに従うということですか。
【地球温暖化対策課 主幹】
「あいち地球温暖化防止戦略2030」は、国のエネルギー政策を踏まえた計画であり、この戦略に基づき施策を推進しているところであります。
【下奥委員】
2015年に世界の温室効果ガス排出を今世紀後半までに実質ゼロにするというパリ協定が採択され世界各国が合意しました。気候ネットワークの資料によると、ニュージーランド、イギリス、カナダなどが石炭火力の閉鎖を発表し世界の流れは脱石炭となっています。先進国G7で石炭火力の新規建設を進めようとしているのは日本だけです。
パリ協定の目標を実現しようとするなら、愛知も直ちに脱石炭へと思い切って舵をきり緩和対策を柱にすえた地球温暖化対策に取り組むことを強く求め質問を終わります。