2018年6月議会 振興環境委員会
一般質問「コミュニティバスについて」
〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
【下奥奈歩委員】
コミュニティバスについて質問します。今、各地で地域の公共交通が不足している、あったとしてもとても不便で、高齢者の移動が困難という事態が起こっています。
それに伴ってさまざまな問題が出てきています。一つは、日常生活を送ることができない「生活難民」が急増していることです。病院にいくことができない、役所までの交通手段がないといったことや、買い物に行けない「買い物弱者」の65歳以上が農水省の推計で10年で2割増となり全国で824万人にのぼっている、という実態があり生活に支障が出ています。これは、スーパーやコンビニが遠いことに加えて車が使えないからです。
二つ目は、高齢者の事故が増えていることです。先月29日の中日新聞の報道によると、高齢者運転者が事故の過失割合が大きい「第一当事者」となった比率が昨年21.3%に達し、2008年の14.1%から7ポイント増加しているとのことです。同じ29日の新聞記事で93歳の男性が日々の暮らしがあるからと運転をやめられず続けた結果、事故を起こしてしまったという記事がありました。
そこで、伺います。高齢化が進む中で地域の足を確保することは重要な課題です。私が前回、コミュニティバスの質問をした際、県は答弁で「今後ますます高齢化が進む中、車に頼らなくても生活できる環境を作っていくことが大切と考えている。」と述べました。
高齢になっても移動が制約されることなく、生活が充足できるようにするために、県が積極的に生活交通の強化を行うべきではないでしょうか?答弁を求めます。
【交通対策課主幹】
高齢者に限らず、車に頼らなくても生活できる環境を作っていくことは、大切な行政の役割であると考えています。一方で、それぞれの地域で移動のニーズは様々であるので、住民に身近な市町村が中心となって、地域の実情に応じた生活交通を地域の関係者とともに確保していくことが重要と考えております。
【下奥奈歩委員】
高齢者や体が不自由なかたなど移動制約者の解消は、県が積極的に取り組むべきです。
次に伺います。公共交通の充実は経済活性化にもつながります。大阪府高槻市の例を紹介します。高槻市では、70歳になると市営バスの無料乗車証が交付されます。その経費に市は、6億円一般会計から支出しています。重要なのは、市が自らこの6億円の財政負担の有効性を調査し、それを確認したことです。
2015年に「高齢者無料乗車証制度の利用実態」調査を行い、市営バスが高齢者の社会参加の支援や介護予防などでさまざまな効果を果たしていることを検証しました。
調査の結果、無料乗車証には、①社会参加効果、②健康増進効果、③経済効果、④環境負荷低減効果の4つの効果があることが結論づけられています。
まず、社会参加効果についてです。無料乗車証を利用している高齢者の59%が外出するのに役立っていると回答しています。外出する機会が増え、とくに買い物、通院、趣味などに利用されています。
健康増進効果では、無料乗車証利用者は利用していない人に比べて、歩行数が一日あたり869歩多いことが調査の中で明らかにされています。
経済効果では、無料乗車証利用者は1回の利用につき平均3080円消費していることが結果の中で示されています。そして、これに利用日数、利用者数、外出機会の割合増加などから年間の直接効果額、32億円になると算出しています。
その他にも、高槻市営バスは、市民が居住するほとんどの地域を走っていることに加えて、無料乗車証制度によって交通弱者は作り出されていないということです。
これは、人口約35万人規模の大阪府高槻市が検証し出した調査結果です。この調査から外出の機会が増えることで県民の暮らしがもっと充実することがわかります。
そこで、伺います。交通空白地域をなくし、使いやすいものにすることでバスを利用する人も増えていきます。コミュニティバス含め、公共交通を充実させることで愛知の経済も元気にする効果が期待できるものと考えます。国土交通省が今年発表した「交通政策白書の中にも「地域の存続・活性化のためにも移動手段の確保は必要不可欠であり、地域の交通手段の確保は地域の課題として取り組まなければならない」と述べています。人口減少・過疎化といわれる中で地域の振興として位置付けて、地域の活性化につながることに県の課題としても交通手段の確保へ取り組むべきではないでしょうか?答弁を求めます。
また、高槻市のように、県としても他県の例も参考にしながら、市町村とも連携し生活交通の実態や効果について調査・検証してはいかがでしょうか?
【交通対策課主幹】
地域の交通手段の確保は、まちづくりや観光振興など様々な分野に効果をもたらすものであることから、地域振興につながるものであると考えます。県としては、地域振興の観点からも引き続き、公共交通の確保、維持に努めてまいりたいと考えています。
生活交通の実態や効果については、市町村が公共交通の利用者や地域住民へのヒアリング、現地調査などにより把握し、それを踏まえて公共交通の改善や利便性の向上を図っています。県としては、市町村の地域公共交通会議等に参画し、そうした市町村の取組について他の自治体の事例を紹介するなど、引き続き助言等を行ってまいりたいと思います。
【下奥奈歩委員】
大阪府高槻市の調査でも示しているように、公共交通はまちづくりの土台となるものです。移動ができる手段なければ何も始まりません。公共交通が充実することで、外出し買い物や観光などの機会が増えていきます。県民が元気にいきいきと社会参加できる仕組みとしても必要不可欠です。その土台を保証するのは、県民のくらしを支える県 行政の役割です。
次に伺います。私は、前回のコミュニティバスの質問のときに「住民の足を守る各市町村のコミュニティバスは市町村ごとに運賃の大きな差があります。地域の差をなくして、どこに住んでいても安心して移動できる地域の足が確保されるべき」と、質問しました。
そのとき県当局は、「国土交通省が作成している手引書では、「安易な無料化やワンコインなど、安価な運賃の設定をすると、公平性や採算性の面で問題が生じる恐れがあるほか、既存の交通機関にも悪影響を及ぼす可能性があるので、注意が必要」とされているところである。と国の政策をそのまま読み上げました。
しかし、例えば京都府京丹後市では、バス事業者と積極的に協議を重ねて、運賃引き下げと共に利用者の利便を高め利用を増大することに成功しています。
公共交通の運賃の高さが県民の公共交通を利用から遠ざけているように思います。低料金で公共交通を利用できるようにすることは課題です。そして、愛知県内どこに住んでいても、運賃面で平等に住民の足を守るのは自治体の責務です。
そこで、伺います。運賃の地域格差など生活交通の不十分な状況をこのまま県として放置し続けていていいのでしょうか?市町村任せにするのではなく、県も一緒になって事業者への働きかけを行い、利便性向上へ取り組むべきではないでしょうか?答弁を求めます。
【交通対策課主幹】
一般に、運賃の値下げは相応の需要増加がなければ収入減となり、補助路線の場合、赤字が増えることによって財政支出の増加にもつながっていきます。委員お示しの京丹後市では、運賃の値下げと同時に、路線の利便性の向上を始めとする様々な取組により需要を増やした事例であり、またその際、京丹後市において地域公共交通会議を催して協議を行い、様々な取組を行ったと承知しております。運賃の値下げについては、値下げによる需要増を待つだけではなく、積極的に利便性向上や住民の意識改革を行うこと等の取組を総合的に実施しないとうまくいかないものと考えます。県としては、地域公共交通会議等の場で、こうした観点の重要性について助言を行ってまいりたいと思います。
【下奥奈歩委員】
地域を細かく走るコミュニティバスをはじめデマンドタクシーなど生活交通が今求められています。私の住む豊橋では、一部分コミュバスが走っているだけで、ほとんどの場所では車がなければ生活ができません。
豊橋市民から「今はまだ運転できるからいいけど、10年後はもう運転できない。車を手放したあとは交通手段がなく、買い物など不便になる」「スーパーや病院、市役所など暮らしていく中で必要になる主だったところに停まるバスがあると助かる」「高齢化が進む中でコミュニティバスを必要とするひとは確実に増えていく」という声をききました。
先程、高齢者事故の話をしましたが先月の中日新聞記事の中で愛知県警は「公共交通に乏しい地域は、免許を返納したくてもできない高齢者もいる。自治体など交通手段を確保する必要がある」と述べています。そういうのなら、自動車王国となっている愛知県が積極的に交通手段の確保へと動き出すべきです。
そこで、伺います。この間、コミュニティバスへの県独自の財政支援を求めても「市町村が、その費用負担をどうするかも含めて、地域の実情に応じ、住民や交通事業者らと連携し、対応していただくべきものと考えている」の答弁を繰り返すだけでまったく答えていません。市町村はがんばって走らせていますが、財源が厳しい地域もあります。また、走らせていないところは支援があれば始められます。費用負担を市町村任せにせずに、県も一緒になって生活交通を充実させるためにも、県独自の財政支援を行うべきではないでしょうか?答弁を求めます。
【交通対策課主幹】
地域内の生活交通の確保については、地域の関係者が協力して主体的に取り組まなければうまくいかない問題であり、住民に最も身近で実情を把握している市町村が行うのが適切であります。
したがって、コミュニティバス事業については、市町村がその費用負担をどうするかも含めて、地域の実情に応じ、住民や交通事業者らと連携し、対応していただくべきものと考えております。
県の役割としては、引き続き、交通ネットワーク全体の維持に影響が大きい広域的・幹線的な路線の確保に努めるとともに、市町村の地域公共交通会議等に参画し、広域的な見地からの助言や情報提供等を行うことで、市町村の支援に努めてまいりたいと考えております。
【下奥奈歩委員】
先ほどの答弁で公共交通の確保・維持が大事であったり、まちづくりの効果があると述べられました。そうであれば、その立場から県独自で、もちろん市町村や地域住民も頑張るが、市町村が走らせているところ、頑張ろうとしても走らせられないところなど等色々ありますが、県内に細かくコミュニティバスを走らせる県全体の巡回バスを充実させていくためにも県独自の財政支援は必要だと思いますが、やらない理由は何なのか?答弁を求めます。
【交通対策課主幹】
地域内の生活交通の確保については、地域の関係者が協力して主体的に取り組むべきものと考えており、住民に最も身近で実情を把握している市町村が行うのが適切であります。 県としては、市町村の地域公共交通会議において、いろいろな意見・助言を行い、問題解決に努めております。
【下奥奈歩委員】
生活交通は、市民生活の中で衣食住とともに大きな役割を担い、人との交流の機会をつくり社会を豊かにしています。高齢化社会がますます進行する中で、買い物や通院、文化的行事への参加などの交通が困難となっています。誰もが、いつでも、どこでも、自由に移動できるように生活交通を充実させることは県が果たすべき役割です。車がなくても安心して暮らして、どこへでも移動できる社会の実現へ財源の使い道を切り替えて、県民の切実な声を受け止めてコミュニティバスへ財政支援を行うことを強く求めて質問を終わります。