2018年6月議会 振興環境委員会
一般質問「カジノを含むIR誘致について」
質問と答弁を掲載します 。〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
【下奥奈歩委員】
カジノを含むIRの問題について質問します。
国際観光都市としての機能整備に関する研究会が今年の3月に「国がめざす日本型IRの活用について、愛知県として検討を進めていくべき」という内容を含むとりまとめを知事に報告しました。
その後、国会では、政府が、4月27日にカジノを合法化するカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案を閣議決定し、国会に提出、カジノ実施法案の審議入りが強行されてしまいました。そして、6月19日の衆議院本会議で賛成多数で可決されてしまいました。
そこで、伺います。研究会が提出した〔とりまとめ〕ではIRの検討を進めるよう促していますが、この方向で県としても進めていくのでしょうか?答弁をもとめます。
【地域政策課主幹】
本県では、中部国際空港やその周辺エリアにおいて、MICEを核とした国際観光都市の実現に向け、調査研究を進めているところでございます。
県としての進め方については、今年3月にご報告いただいた研究会の取りまとめを踏まえ、国際観光都市としての機能整備の具体化に向け、更なる検討を進めてまいりたいと考えております。
【下奥奈歩委員】
大村知事は、今年4月23日の記者会見で「日本型IRも視野に入れてMICEを核とした国際観光都市をめざしていく。そういった形での検討を進めていく」と述べています。この記者会見での発言は、県民のくらしを守るはずの行政がギャンブル推奨の立場に立つという、極めて重大な発言であり、カジノ推進の知事の歪んだ姿勢が表れていると考えます。
国で議論が進められているカジノ実施法案について、各種世論調査を見てみますと、朝日新聞の6月16日・17日の調査では「今国会で成立させる必要はない」が73%、共同通信の調査では、成立させる必要ないが69%となっており、カジノ実施法案成立必要なしが7割にのぼり、反対する国民の声は明瞭です。
また、日本司法書士会連合会が「特定複合 観光施設区域整備法案いわゆるカジノを含む統合型リゾート実施法案に強く反対し、その廃案を求める会長声明」を出しました。そして、昨年は県民から「愛知にカジノを設置しないよう求める請願」が提出されました。
そこで、伺います。カジノについてこれだけ多くの反対の声が起こっていることについて県はどう認識されていますか。伺います。
【地域政策課主幹】
本県としては、現在、国会においてIR整備法案の審議が行われていることから、まずは、そうした動向を見守ってまいりたいと考えております。
【下奥奈歩委員】
次に伺います。私は、以前委員会の中で「カジノによるギャンブル依存が大変深刻な状況となっています。一生完治しないギャンブル依存・賭博中毒について県はどうとらえているのか」と質問しましたが、県は「国において検討が進められている」という答弁で、県としては考えていないという、国任せのいいかげんな姿勢が明らかになりました。
5月25日に、ギャンブル依存対策法案が衆議院で賛成多数で可決されました。今回可決された依存症対策は、法案の提出者が「依存症者を減らすことが法案の目的」と述べると同時に「カジノ解禁が新たな依存症を増やす」ということも認めているものです。カジノ解禁とギャンブル依存症は相いれないものです。
そこで、伺います。今、日本ではパチンコなどの依存症を疑われるかたが300万人以上いるといわれており、社会的課題として対策を行うことは急務です。そして、依存症対策というのならカジノによる新たな依存症を生み出さないことが必要だと考えますが、県の見解を伺います。
【地域政策課主幹】
ご質問の点については、現在、国会においてIR整備法案の審議が行われていることから、県としましては、まずはそうした動向を見守ってまいりたいと考えております。
なお、依存症全般については、関係省庁一体となって包括的な対策を推進するため、平成28年12月にギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議が設置され、平成29年8月には、第3回の関係閣僚会議において、ギャンブル等依存症対策の強化策が取りまとめられました。いずれにしても、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進するため、ギャンブル等依存症対策基本法案が国会に提出され、現在、国会で審議が進められているところであると認識しております。
【下奥奈歩委員】
カジノ実施法案について、衆議院で参考人質疑が行われました。そこで、静岡大学の鳥畑教授が「経済効果をカジノの高収益に依存するIR型カジノは必然的に依存症対策を形骸化 形だけにものにしてしまう」と指摘しています。カジノを誘致しないことが最大の依存症対策であることは明らかです。
次に伺います。安倍首相は、「世界最高水準のカジノ規制」と述べました。その中身は、週3回・月10回という入場回数制限で、72時間連続カジノづけを容認することであり120回の入場を認めるものです。そして、一回6000円と規制の意味のない入場料などに「何が最高基準だ」と批判の声があがっています。
カジノは、毎日24時間営業で窓もない時計もない部屋で時間の感覚もなく永遠と高額な賭けを繰り返すものです。
他のギャンブルとは違う異次元ともいえる危険性を示したのが、カジノ業者が客に掛け金を貸す「特定賃金貸付業務」です。
カジノ客が手持ちの資金を使い果たしても、さらに賭け続けるためにカジノ業者から賭博資金を借りることができます。負ければ借金を負ったうえ、それを取り返そうとさらに深みにはまっていく仕組みです。
そこで、伺います。依存症を増やすだけでなく多重債務者を生み出すこの危険な仕組みが盛り込まれている点について県の見解を伺います。
【地域政策課主幹】
県が昨年度設置しました研究会は、MICEを核とした国際観光都市として相応しい機能整備のあり方について、ご意見やご提言をいただくことを目的として設置したもので、都市計画や経済、観光、建築等を専門分野とする地元の大学教授を委員として検討を行ったものであります。
【下奥奈歩委員】
危険な仕組みが盛り込まれているものを県が検討するというのは県民のくらしを守ることとは相反するものではないでしょうか?
これまで日本の公営ギャンブル、パチンコで、事業者が現場で貸付をすることがあってはならないと考えられてきました。それは、ギャンブル依存症に直結することになるからです。IRカジノは結局、愛知県民をカジノ依存にするうえ借金地獄に陥れるものでしかありません。
次に伺います。先月 5月12日に愛知県弁護士会主催「カジノつくって本当に大丈夫?」と題したシンポジウムが開催されました。その中で韓国のカジノでギャンブル依存症になった男性がついたて越しに体験をお話しされました。
その男性は、カジノに初めて行ったときは、掛け金もこづかい程度で負けて、その時にVIP待遇を受けられるカードを作成。会社の資金繰りに困り、40万円を150万円に増やすことはできないか?とカジノに行くことを思いつき、このときそれが成功。その後30数年カジノに通い、1000万円を超える借金をつくり自己破産したそうです。
カジノでは、ある程度お金を賭ける人は韓国までの飛行機代もリムジンの送迎も無料とのこと。24時間営業で、2日でも3日でもかけ続けることができる。「負けてもやめない限り取り返すことができるという気持ちになる」と。
VIP待遇という甘い罠を仕掛けて、のめりこませて、人間の思考を失わせていくそして、そこから抜け出せずに依存症となってしまう。どれだけ、カジノが危険かよくわかるお話です。
そこで、伺います。カジノは一人の人間の人生を狂わすほど危険なギャンブルです。それなのに、政府は負の影響についての議論が不十分なまま衆議院内閣委員会でカジノ実施法案が強行採決されてしまいました。県も、研究会では専門家も入れずにほとんど議論がされてないと思います。カジノの負の影響についてどう認識されていますか?答弁を求めます。
【地域政策課主幹】
昨年度の研究会は、MICEを核とした国際観光都市として相応しい機能整備のあり方についてご検討いただくために研究会を設けたものであります。
ご質問については、現在、国会において、ギャンブル等依存症対策基本法案やIR整備法案の審議が進められていることから、県としては、まずはそうした動向を見守ってまいりたいと考えています。
。
【下奥奈歩委員】
カジノ依存を生み出し、人の人生が崩壊するものを愛知に誘致するなんてことは許されません。カジノで観光や地域の振興と政府は述べていますが、カジノは人の人生を不幸にするもの。その不幸を土台にして観光・地域の振興というのは歪んだ考えです。カジノ誘致について常滑含めて反対の声が多く上がっています。愛知県弁護士会や大学の教授も警鐘を鳴らしています。
カジノは将来に禍根を残すものです。住民の立場にたって、カジノ構想は取りやめるべきではないでしょうか?答弁を求めます。
【地域政策課主幹】
ご質問について、本県では、中部国際空港やその周辺エリアにおいて、MICEを核とした国際観光都市の実現に向け、調査研究を進めているところであります。国際観光都市としての機能整備の具体化に向け検討を進めてまいりたいと考えております。
【下奥奈歩委員】
最後に要望を申し上げます。公益財団法人 中部圏社会経済研究所が今年の4月に「名古屋大都市圏ハートランドビジョン」を公表しました。その中で「全国に先駆けて、統合型リゾート(IR)の整備を検討し、世界からの誘客力の向上を図る」「あわせて、中部国際空港(セントレア)、金城ふ頭、等を舞台にMICE拠点を整備し、情報発信を行うことで、IRや観光資源とともに国内はもとより世界的な観光交流規模を誇る魅力的なMICE市場を形成する」こう述べています。この研究所の役員には評議員に、トヨタや中電といった大企業が名前を連ねています。
県民をギャンブル依存症に陥れるカジノ誘致を大企業といっしょになって進める知事の姿勢は、県民に背を向けていると言わざるを得ません。
そもそも、行政のやるべきことは県民の暮らしや、福祉、命を守ることが役割です。県が、違法性がたかいうえ、カジノ資本が国民を搾取し深刻なギャンブル依存症を増加させるカジノ誘致を狙うことは、行政の役割として逆行するものです。私たち若者や次の世代が希望をもてる社会をつくるとき、愛知にも日本のどこにもカジノは必要ありません。カジノ誘致はきっぱりやめるべきことを強くもとめ質問を終ります。