〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
愛知学園について 子どもたちの安心の居場所づくりを求める
【わしの 恵子 委員】
この施設は不良行為をしたり、その恐れのある児童、その家庭環境などの理由で生活指導を必要とする児童の自立を支援し、合わせて退所した児童についても援助を行いことを目的とした児童自立支援施設です。
私は先日、愛知学園を訪問し、お話を伺ってきました。そこでいくつかの問題があることを感じました。
この施設に入所する児童については虐待という心の貧困にとどまらず、経済的にも貧困であり、親や友人たちとのかかわりや愛情も希薄で、対人関係での貧困と多くの問題を抱えていると思います。そういう児童を受け入れて、児童福祉法上の支援を行うことを目的として設けられた愛知学園という施設ですので、開放的で家庭的な環境で児童を支援していくことが求められます。
愛知学園創立100年記念しに掲載された、元指導主任専門員の秋山弓子さんの手記「学園生活を回顧して」の中で、「学園は健康で文化的な生活を提供することは生活指導の前提」と書かれていますが、私は、これが「要」だと考えます。そこで施設が児童にとって健康で文化的な生活を送れるようになっているのかどうか検証したいと思います。
まずはハード面です。
生活の場である寮は、女子棟は平成2年、男子棟は平成3年の建築で、外壁の塗装や細かな修繕は行われていますが、全体として古い感じがします。冷房はあるが、暖房は大型のストーブだけで十分に暖まらない。畳や台所のシンクも古くて交換を要望している。トイレも洋式を要望しているが、改善がされていないということです。
寮内にある職員スペースも(12~13人)の職員が仕事をするには狭く、日々の子ども達への対応や打ち合わせなど十分にはできないと感じました。
校舎棟には、冷房はなく扇風機だけ。トイレの洋式はたった一つだけでした。耐震基準は満たしているが、床や壁はヒビが入っていました。図書室の図書もたいへん古い本ばかりで、子ども達はあまり活用していないそうですが、子ども達が楽しく本に親しむことができるように、入れ替えが必要だと思いました。廊下には子どもたちの上手な絵や、教室にも習字の作品が貼られており、音楽室では幾人かの女子がピアノや電子オルガンを熱心に引いていました。生徒たちが、地震をもって好きなピアノを弾いている様子に、私は「頑張っているな」と感銘を受けました。
入所児童は、学校教育の中で学力が十分に育っていない児童が多いと言われます。だからこそ学力が十分身につくような支援が求められるところです。子ども達は、義務教育である前の学校に在籍したまま、愛知学園に入所してきます。ところが愛知学園では、義務教育を続いて受けることができず、義務子養育に準ずる学科指導を個々の能力に応じて受けているのです。
私は、そのことを聞いて、なるほどそれゆえに校舎棟が子どもたちの学びの場としては不十分なものになっているのか、これでは学力低下に歯止めをかけることは困難ではないかと思わざるを得ませんでした。この点については、これまでも義務教育が受けられるよう、長年努力はされてきたことと伺いますが、もうこれ以上待てないと思います。一刻も早く義務教育が受けられるようにするべきだと強く指摘しておきます。
そして女子寮と校舎を結ぶ通路には、立派な外灯が何本もありますが、電気がつくのは一本だけで、あとは配線が壊れたままということです。日が落ちたら外は真っ暗で、苦肉の策で職員が通路に設置したのが小さな園芸用のライトです。職員は懐中電灯をもって暗い夜道を通っているそうです。イノシシも出ると職員が言っていましたが、けもの道もあるのではないかと思います。
もし、災害が起きた時、避難しようにも真っ暗で身動きが取れません。命に係わることです。
以上、ハード面について、いくつかの問題を指摘させていただきましたが、「健康で文化的な生活を提供することは生活指導の前提である。」これが愛知学園という施設の在り方の基本だと思います。そのためには、必要なところには予算をきちんと取り、安心して子どもたちが学び、暮らすことができるようすべきだと考えますが、どのようにされるのかお答えください。
【児童福祉課主幹(児童家庭)】
児童自立施設は、様々な問題のある児童を一定期間入所させ、集団生活のもとに発達段階や個別の事情に応じて衣食住を保障し、自立を支援する施設でありますので、安定した集団生活を送るためには、安全で安定した生活環境が求められることは言うまでもありません。
愛知学園は昭和38年に現在の場所に移転後、平成2年と3年に児童が生活する寮については全面改築したほか、居室の張替など居住環境の改善に努めてまいりました。
また、体育館の内装やトイレの改修など校舎等の設備の改善についても順次、努めているところです。
今後も、緊急性や安全性の確保、必要性を踏まえ、学園の現場の声をしっかり聞きながら老朽化した設備の修繕や更新の予算の確保に努めてまいります。
【わしの 恵子 委員】
次にソフト面についてです。
愛知学園においては、過去には職員の死亡事件、職員への手段暴行事件も起きています。そして、平成27年5月の職員への集団暴行事件を受けて、「検証委員会」が事実の把握や発生原因の分析等を行い、今年3月に報告書が作成され、再発防止に向けての提言が出ています。
そこで伺いますが、検証委員会の再発防止に向けての提言について、施設の関係者はどのように受け止めているのか。職員間で共有の問題として議論などされているのかどうかについてお聞きします。
【児童福祉課主幹(児童家庭)】
平成27年5月の集団暴行事件につきましては、検証委員会の提言を重く受けとめ、愛知学園において再発防止に向けた検討会議を設置し、広く職員の意見を聞きながら、対応策、改善策を検討しているところです。
【わしの 恵子 委員】
検証委員会の報告書の12P、5の改善に向けた取り組みの徹底では、「過去2回の重大事件の都度、検証が行われ、愛知学園は外部の有識者による検証報告書として提言を受けています。しかし、「職員の中には、提言を受けて作成された『愛知学園自立支援マニュアル』の存在を知らない職員もいるなど、教訓が十分に継承、徹底されているとは言い難い状況にある」と指摘されているが、この点についていかがですか。
【児童福祉課主幹(児童家庭)】
検証報告書では、愛知学園において平成14年度の職員死亡事件以降も平成18年度の女子児童による集団暴行事件など重大事件が起きているが、職員の移動もあり、その教訓等が十分に継承、徹底されているとは言い難い状況にあると指摘されたものであり、愛知学園において、先ほど申し上げた検討会議において過去の重大事件における反省教訓を踏まえ、学園としての具体的な対応策、改善策について検討しているところです。
【わしの 恵子 委員】
さらに報告書の総括では「今回の事案は個々の児童や職員の問題だけではなく、硬直化した体制の中で、職員間の話し合いや協働による解決の意欲が低下し、信頼感が薄くなり、それぞれの職員や寮が孤立化していく過程の中で発生しており、愛知学園の体制の問題がその背景にある」と指摘されているが、これについてどう捉え、解決の方向にもっていこうとしているのか。
【児童福祉課主幹(児童家庭)】
職員の孤立化を防ぎ、連携を図るためには、担当職員だけではなく管理職を含めた職員全体が児童や寮の状況を適切に把握することが重要です。そのため、検討会議において効果的な情報の伝達と共有の方法について検討しているところです。
また、若手職員が多い状況を踏まえ、研修を通じて職員のより一層の専門性の向上を図り、体制の強化に努めることとしております。
【わしの 恵子 委員】
施設運営及び職員の体制強化についてア~オまで5点あげられているが、とりわけ「効果的な支援策を立てるためのケース検討会議」の重視と、地域や学校、学識経験者等を委員とする「安全委員会」の導入についてはしっかり取り組んでいただきたいが、具体的に愛知学園では安全委員会を導入されているか、されていないのか。されていないのであればどのようにしていくのか伺いたいと思います。
【児童福祉課主幹(児童家庭)】
愛知学園においては、全ての入所児童について、保護者、児相、学校、愛知学園による4者懇談会を、入所1か月後、退所1か月前、入所期間中は3~4カ月に1回程度行っております。
また、入所後と退所前、問題行動等がみられた場合にケース検討会議を開き、必要に応じて児童精神科医師等から助言をうけ、支援技術の向上を図っております。
児童福祉施設における安全委員会方式とは、施設で起きた暴力問題について、地域の関係者や学識検討者等を委員とする安全委員会において対応を検討する方法であり、児童自立支援施設においても有効な取組と考えております。
現在、愛知学園では、これに取り組んでおりませんが、児童家庭課においても愛知学園に参考資料を提供し、検討しているところです。
【わしの 恵子 委員】
安全委員会が導入されていない理由というのは、どうお考えですか。
【児童家庭課課長】
安全委員会の方式については、有効なものと考えているが、愛知学園においては職員間の意思疎通や共有といった検証報告書で提言いただいたことですぐにやるべきことがまだかなりあり、当面はその改善策をやって、それから第三者機関である安全委員会の導入についても検討していきたいと思います。まだ検証の優先度合から安全委員会については導入していないということです。
【わしの 恵子 委員】
最後に、愛知学園を退所したのちに、復帰した学校や高校進学、就職する生徒もあると考えますが、退所後の支援についてどのように行われているか伺います。
【児童福祉課主幹(児童家庭)】
退所後の児童に対しては、愛知学園退園後半月から2か月の間に、学園職員が家庭、学校、職場に訪問して、状況を把握し、激励したり、相談に応じたりしております。その後も必要に応じて、訪問や電話などにより支援を行っております。
【わしの 恵子 委員】
退所後の支援をされているということであるが、この成果についてはどのようにお考えでしょうか。
【児童福祉課主幹(児童家庭)】
平成27年度の退所児童への支援につきましては、訪問指導を21件行っております。また児童からの電話や手紙による近況報告が48件あり、訪問といった支援による対応から児童からの報告が一定程度あり、退所支援の効果があるものと考えます。
【わしの 恵子 委員】
私は、愛知学園におられる職員の方々には、本当に日頃から子どもたちの自立支援に熱心に取り組んでいただいていることは、もちろん承知しています。しかし、昨年5月の入所児童の逮捕事件以来、暫定入所定員を30人に縮小していますが、それでも入所児童は月平均15人にとどめており、いまだに自立支援が必要な児童に対応できる施設になっていないと感じます。一刻も早く目標にかなう施設になるよう、改善させることを願って質問いたしました。よろしくお願いします。