〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団事務局〕
【下奥奈歩委員】
第140号議案平成27年度一般会計補正予算のうち、環境調査センター・衛生研究所のPFI手法による整備に対して反対の立場で質問をします。
PFI事業は、公共施設などの建設、維持管理、運営などを民間の賃金や経営能力を活用して推進するものです。民間の活力を発揮させる場、とコスト削減を掲げています。今回の事業内容は、建設、維持管理、清掃で、運営に関しては、県がこれまで通り行うため、人員削減はないとのことでした。ですが、PFI事業に関しては、さまざまな問題点や、疑問点があります。
建設について、です。建設段階から民間業者にゆだねているため、安全性について、県として厳格なチェック体制が必要です。たとえば、仙台市のPFI事業で「スポパーク松森」というゴミ焼却熱を利用した温水プールが建設されました。開館からわずか一か月の2005年宮城沖地震で、プールの天井が崩落する事故が起き、多数の利用者が重傷を負うという深刻な事故がおきました。不十分な検査で、手抜き事故を見抜けなかったことが原因でした。
また、最近では旭化成建材の杭打ち偽装が問題となりました。この愛知でも偽装があったことが発覚しています。その中には県の発注した工事も含まれていました。データで確認するにしてもそのデータが改ざんされていれば、それまでで、何の意味もありません。PFI事業で、建設を民間に任せることについて、安全性の保障はあるのでしょうか。建設に、手抜きや、偽装などの問題が起こったときに、「知らなかった」「想定していなかった」では済まされないことです。
何を持って「安全です。大丈夫です。」と言えるのでしょうか。その根拠はなんでしょうか。安全性の保障と合わせて、答弁をもとめます。
【環境政策課主幹】
まず、施設の安全性については、県が昨年度実施した「基本設計」に基づき、県の公共工事で用いられる「構造基準」、あるいは「耐震基準」に基づいて建替え工事を行うため、建替え後の施設の安全性は十分に確保されております。
次に、施設の整備にあたっては、県の公共工事と同様に、工事監理の業務をPFI事業者とは別の事業者に県が直接委託するとともに、県の職員による現場立会いや工事検査を適切に行うなど、事業者をしっかりと監督していきたい。
【下奥奈歩 委員】
建築基準法は第1条で「国民の生命、健康及び財産の保護を図る」と明記しています。また20条では「建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、定める基準に適合するものでなければならない」としています。 建築基準法が守られずに、偽装がおこり、見抜けない中で、安全性が保障されるのかが大変疑問に思います。
例えば、災害によって耐震性に問題があり、建物が壊れた場合、また建築に不備があり、事故が起こった場合の県としてのチェックの甘さや責任が問われるのではないでしょうか。事故が起こったとき県が県民に対する責任を果たすことが県民の安心感につながると考えますが、どうでしょうか。答弁をもとめます。
【環境政策課主幹】
新施設において、万が一事故が発生した場合は、事業者は速やかに県へ報告を行うとともに、県と協議を行いつつ、事業者の責任で問題の解決にあたることを、今後、事業者と締結する事業契約書に定めてまいります。
また、緊急を要し、事業者が対応できない場合は県が対応することとし、その費用を事業者に対して求償していくことになります。
【下奥奈歩 委員】
次は、コスト面についてです。民間業者は、利益をあげるために参入するのであり、このため、地方自治体が直営で運営する場合と対比しても、コスト面で割高となる場合もあります。高知県高知市では、高知医療センターの建設、管理を当初はPFI事業として開始しました。ところが、材料費を安くして医業収入の23.4%にすると約束して落札したのに、大赤字を繰り返し、契約解除となり、行政の直営となりました。
滋賀県野洲市ではPFI事業として、市立野洲小学校と野洲幼稚園について、増改築と清掃などの施設の維持管理をしていました。しかし、通常の学校の10倍以上のコストがかかったため、2011年に委託契約を解除して、年間約5億円が節約できると計算されています。
コスト削減といいながらも、結局は「想定していない」ことが起こり、コストが上がってしまうことが懸念されます。また、コストを削減して、清掃もいい加減になったり、維持管理もいい加減になったりするなど、質が確保できなくなる可能性もあるのではないでしょうか。この点について答弁をもとめます。
【環境政策課主幹】
委員が示した事例は、収益事業が前提となっている事業であるが、事業者が見込んでいた収益が得られなかったため、経営が行き詰まり、追加の費用が発生したものであります。
今回の環境調査センター・衛生研究所は、「環境行政・衛生行政の拠点施設」として、行政検査の実施や環境測定などを行う「試験・研究機関としての機能」を担っており、整備後においても収益事業は想定していないので、想定外の事業費が発生することはないと考えております。
また、施設の維持管理についても、質が落ちるのではないかとのご質問であるが、事業者が提出する事業計画書は、県が事前に確認を行うとともに、事業の履行報告書については、県が承諾しないと代金を支払わないことも考えているので、事業の質は確保できると考えております。
【下奥奈歩 委員】
この施設は、環境や、衛生に関しての調査研究をする、最後の砦です。」といわれているようです。環境や衛生の最後の砦である重要な施設を、コスト削減だからとPFI事業で、民間に託すのではなく、県が直営で責任をもち建設、維持管理を行っていくべきと考えます。どうでしょうか。答弁を求めます。
【環境政策課主幹】
黒田委員の質問に対する答弁と同じ内容となるが、環境調査センター・衛生研究所の建替えについては、平成25年度に総務部が実施した「PFI導入検討調査」において、PFI手法を導入することによりコスト削減が見込まれるという調査結果が示され、これを受けて、平成26年度に環境部において「詳細調査」を実施したところ、トータルコストが削減可能となること、併せて、提案審査を通じて事業者を競わせることによって、より質の高いサービスの提供を受けることができるという結果が得られたことから、PFI手法を活用した整備を行うこととしたものである。
【下奥奈歩 委員】
環境調査センター・衛生研究所は昭和47年に現在の北区にたてられました。そのとき以来、維持管理はしてきたものの建て替えは一度も行われずに今日に至っています。老朽化しているのに、長い間放置されていたことにも問題があるのではないでしょうか。建て替えについては、必要だと思いますが、ただ、建て替える目的を果たすことと、コスト削減ということだけに飛びつくことに大きな問題があります。先ほども指摘したように、国民の生命、財産を守る諸制度の規制緩和が進み、耐震強度偽装などのように、質よりもコスト中心の運営が進められることになりかねません。県民にとって大切な施設であるからこそ何よりも安全が最優先されるべきです。
以上、述べてきたように不安や懸念材料があることから、PFIによる整備に反対をして、質疑を終わります。