〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団事務局〕
【下奥奈歩 委員】
リニア中央新幹線に関連する環境問題について、質問をします。リニア中央新幹線は、自然環境を大規模に破壊するものであり、さらに、従来型の3倍以上の電気を消費して、大規模なエネルギー消費をもたらします。国会の議論の中でも政務官が「リニア中央新幹線事業は、その事業規模の大きさから、相当な環境負荷が発生する、という懸念はその通りです。」と、認めて、「多くの水系を横切ることにより、地下水や河川への影響等の可能性も考えられます。」という答弁をしています。また、環境大臣の意見の中では、「本事業は、その事業の大きさから、本事業の工事に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしてもなお、相当な環境負荷が生じることは否めない。」と指摘され、そして、「河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い。」ということも指摘しています。
環境大臣が指摘しているように、リニア中央新幹線の事業というのは、相当な環境負荷を与える今世紀最大の事業で、周辺住民のみなさんへの影響もかつてない大規模なものとなります。
県は、愛知の自然環境を守るべきとかんがえます。県として、リニア中央新幹線事業に対して、環境への大きく影響を与えるものという認識はありますか?答弁を求めます。
【環境活動推進課主幹】
リニア事業については、環境影響評価法に基づき、環境影響評価が実施されています。
この環境影響評価制度は、開発事業の内容を決めるに当たって、それが環境にどのような影響を及ぼすかについて、あらかじめ事業者自らが調査、予測、評価を行い、その結果を公表して、県民のみなさんや国、地方自治体から意見を聴き、それらを踏まえて、環境保全の観点からよりよい事業計画を作り上げていこうとすることを目的としております。
リニア事業の主体であるJR東海は、この制度の趣旨を踏まえて、環境影響評価準備書への知事意見の内容を勘案し、準備書の記載事項に検討を加え作成した環境影響評価書において、それぞれ対応を見解として示しています。
JR東海は、評価書に記載された環境保全措置を確実に実施することにより、事業による影響を回避・低減できるとしています。
【下奥奈歩 委員】
県の認識とお尋ねします。
【環境活動推進課主幹】
本県としては、この評価書に記載された環境保全措置をJR東海が適切に実施し、環境保全に万全を期することが肝要であると考えております。
【下奥奈歩 委員】
県は、昨年3月に、55項目に及ぶ中央新幹線(東京都・名古屋市化間)環境影響評価準備書に対する知事意見を提出しました。その後JR東海は、わずか1カ月で、沿線の知事意見を踏まえた環境影響評価書を4月に作成し、7月には、環境大臣意見を勘案した国土交通大臣意見を受け、8月には補正評価書を公表し、工事認可申請をしています。
環境影響評価書が作成された際、わずか1カ月の期間ということで、沿線自治体からは、本当にまじめに検討したのか、など批判が相次ぎました。中日新聞の2014年4月24日の記事によると、県リニア事業推進室は「事業全体の流れとして着実に進んでいる」とし、県環境活動推進課は「計画を詰めていく中で県の要望を反映してもらえると思う」と話したとされています。大村知事も「今後もしっかりと対応していくよう求めたい」とコメントしたとなっています。
しかし、市民団体や県民のみなさんからは、自然環境破壊、亜炭採掘跡による地表沈下・陥没、電磁波の影響、工事車両による騒音、振動などの住環境破壊など環境影響評価が極めて不十分との意見が多く出されています。そこで伺います。県は基本的認識として、55項目の知事意見について、補正を含め環境影響評価書に反映し、JR東海は、知事意見をふまえた環境保全措置をすすめているとお考えでしょうか。考えをお示しください。
【環境活動推進課主幹】
JR東海は、環境影響評価書に記載された環境保全措置を確実に実施することにより、事業による影響を回避・低減するとしています。本県としては、環境保全に万全を期すよう、事業者にしっかりと対応するよう求めてまいりたいと考えております。
【下奥奈歩 委員】
私は、県の認識は不十分ではないかと思います。
第1に自然環境の破壊の問題です。リニア中央新幹線のルートが予定されている岐阜県と愛知県の県境周辺には、湧水(ゆうすい)湿地(しっち)が存在し、その環境に適したシデコブシなど「東海(とうかい)丘陵(きゅうりょう)要素(ようそ)植物群(しょくぶつぐん)」が生息しており、保守基地が予定されている地域の近辺には、愛知高原国定公園があり、ギフチョウなど希少な野生動植物が多く生息しています。一連の工事や鉄道施設の建設がこうした生態系に影響を与え、自然環境を著しく破壊することにつながります。
知事意見では、工事の実施に伴う排水の動植物及び生態系に与える影響の問題で、環境影響評価準備書は生息及び生育環境に影響は及ばないとしています。ですが、排水の量及び項目ごとの濃度が示されていないと指摘した問題について、評価書では、排水量も水質も示さず、必要な処理施設を設けるから大丈夫です。としています。これで知事意見は反映しているといえるのでしょうか?科学的な根拠も示さずに「環境に影響は及ばない」と強弁するJR東海が自然環境を保護するという保証はあるのですか?答弁を求めます。
【環境活動推進課主幹】
JR東海が環境影響評価書において示した見解によれば、排水量に応じた濁水処理施設を設け、そこで水質を改善した上で放流することにより、環境影響を確実に低減できるとしております。
【下奥奈歩 委員】
第2に、亜炭採掘跡による地表沈下や陥没問題です。この間、春日井市でもリニア中央新幹線建設を予定する路線周辺で、陥没事故が起きています。亜炭はかつて重要な燃料源として、採掘のための亜炭坑が掘られました。愛知県内では名古屋市東部から、近郊の小牧市、春日井市、などに分かれて分布しています。亜炭鉱は、廃坑したあと埋め戻しがされず、多くの亜炭採掘跡が残され、現在でも地表沈下や陥没の原因となっています。春日井市の亜炭採掘跡の空洞には現在水が満たされ、それによって地盤が安定していると考えられています。JRはHPで「春日井市東部の亜炭採掘跡においては、路線は大深度地下トンネルとなり、既往文献調査などに想定される採掘跡の空洞の深さよりも深いところを通過すると考えます。さらに、トンネル工事実施前には綿密な空洞調査を行い、必要に応じて適切な対策を講じることから、地盤沈下の影響はないと予測します」と断じています。しかし、1932年の高蔵寺町誌に、竪坑の深度が大深度地下を上回る51メートルに及ぶことが記されています。しかも、実際の坑道がどのように掘られたかはわかっておらず、それらが地下で結びついていることから、トンネル工事によって部分的であれ、地下水が抜けることが起きた場合、連携して浅い所にある亜炭採掘跡を満たしている水が抜ける可能性があります。よって、地表沈下や陥没が起きる可能性を否定することはできず、地元住民は大きな不安を抱いています。リニア事業により陥没した場合、県はどう対応をしますか?地盤沈下や陥没は起こらないといえますか?答弁を求めます。
【環境活動推進課主幹】
JR東海によると、リニア中央新幹線が走行する大深度地下トンネルは、亜炭採掘跡とされる空洞よりもかなり深いところを通過するとのことであります。また、JR東海は、トンネル工事実施前にボーリング調査や物理探査などの空洞調査を綿密に行うとともに、必要に応じて空洞を埋める、補強するなどの対策をとることから、事業実施による陥没は発生しないとしております。
【下奥奈歩 委員】
陥没が発生したら県はどのような対応をするのですか。
【環境活動推進課主幹】
JR東海は地盤の変位のモニタリングを行い、その結果を公表するとしていることから、県としては、その結果を確認してまいります。
【下奥奈歩 委員】
知事意見では、亜炭採掘跡のボーリング調査や物理探査等による空洞調査などの「調査は関係機関と協議し適切な調査計画を作成すること」を求めていますが、評価書は「調査計画の策定に当たっては、今後、専門家や関係機関等の意見を踏まえ、検討していきます」とあります。関係機関には関係住民は当然含まれるべきと考えますがこの点について県の考えを示してください。
【環境活動推進課主幹】
JR東海が亜炭採掘跡の空洞調査計画を策定するにあたっては、専門家や春日井市の意見を踏まえて検討していくと聞いております。
【下奥奈歩 委員】
第3は、電磁波の影響の問題です。この問題は市民団体のみなさんから、リニア中央新幹線の乗客や路線の地上部に住む住民の健康に対する影響で、強く問題が指摘されています。しかし、JR東海は、国際非電離放射線防護委員会ICNIRP(イクニルプ)のガイドラインを下回っているから問題ないとの態度を示しています。
これに対し、知事意見では電磁波の「生態系に及ぼす影響等に関する知見が乏しいことから、今後も磁界(電磁波)の影響について知見の収集に努め、必要に応じて適切に対応する」ことを求めましたが、評価書では「知見が乏しく予測評価することは難しいと考えているため、準備書の中で評価項目として取り上げておりません」と述べ、影響に問題はないと繰り返すだけで、知見の収集や適切な対応について無視していますが、これで知事意見が反映しているといえるでしょうか、県民の率直な懸念にこたえているといえるでしょうか、県の考えを示してください。
【環境活動推進課主幹】
電磁波の人体に及ぼす影響を予防する観点から、世界保健機関(WHO)の見解に従い、現在、国際的基準としてガイドラインが定められています。JR東海は、今回のリニア中央新幹線の走行による電磁波はこの数値を下回るとしています。また、リニアの電磁波による動植物への影響については知見が乏しいことから、JR東海は環境影響評価書の中で、今後も情報の収集に努めていくとしております。
【下奥奈歩 委員】
工事車両による騒音、振動などの住環境破壊の問題です。その前提として、残土の置き場がいまだに確定していません。環境影響評価の段階で、残土の置き場が定まらず、事後調査にゆだねられていること自体が環境影響評価の名に値しないものです。残土置き場が確定していなければ、大量の土砂がどの通路やどの時間帯で持ちだされるのかということが定かでなく、住環境に対する正確な影響を予測することができません。現在、瀬戸市の陶土採掘場跡地を残土の置き場に使おうという動きがありますがもし、瀬戸市を残土置き場に仮定した場合でも、土砂を運搬するトラックが大量に、都市部である名古屋市内や春日井市内を通行することになります。環境影響評価書によれば、1日の車両台数は数百台が予定されています。最大は、春日井市熊野町付近の非常口で1日800台と予測されています。工事時間を午前8時から午後6時の10時間と仮定すれば、1日800台とは、1時間当たり80台、1分当たり1・3台となります。しかも、これは日常の車の通行数量は加味されていません。まさにひっきりなしにトラックが家の前や学校、保育園、病院、公園などを通過することになり、騒音や振動、粉塵が住環境を著しく脅かすことは明らかです。名古屋市では、駅周辺で開削工事が行われるため、さらに通行量は集中することは予測されます。
これに対し、知事意見では「発生土置き場(仮置き場を含む)等の付帯施設の設置に当たっては、環境影響をできる限り回避又は低減すること」を求め、車両の運行の影響について「調査及び予測を行った地点を選定した理由を具体的に示すこと」、「車両運行に伴う道路沿道への騒音、振動及び大気質の影響の低減に努めること」「車両運行に伴い人と自然との触れ合いの活動の場に影響を与えるおそれがあることから、その影響について、調査、予測及び評価を行うこと」を求めています。しかし、評価書は、残土については、「本事業内での再利用をはかる」と盛土部分のない愛知県内では可能性のない対策を述べ、車両運行についても、「工事区域の位置や周辺の道路網を考慮して、主要な道路までの運行ルートを想定し、住居等の分布を踏まえて、設定」と一般論です。また、調査地点の具体的な理由を示さず、人と自然の触れ合いの場への影響の予測・評価については「影響を与えることはない」と断じ、予測・評価を無視しています。これで知事意見が反映しているといえるのでしょうか。
【環境活動推進課主幹】
JR東海は、トンネル工事等に伴う建設発生土については、本事業内で再利用するとともに、他の公共事業等への有効利用に努めることとしております。
【下奥奈歩 委員】
県民の住環境が守られるのでしょうか。
【環境活動推進課主幹】
道路沿道については、残土が発生する非常口の工事車両は、予測・評価が行われ、回避・低減策が示されております。
【下奥奈歩 委員】
県民からの不安や、知事意見で出しているように環境への影響で、懸念されることがたくさんあります。静岡県では、JR東海を呼んで、リニアへの影響を検討、意見する「環境保全連絡会議」というものが現時点で5回開かれています。そこで、大井川の問題など、地元の皆さんの声がとりあげられています。静岡県が県としてこうした会議を開催させることは、県民の不安の声を直接JR東海に伝えることができる、とても大事な取り組みです。愛知県でもこういう取り組みをすべきではないでしょうか。答弁をもとめます。
【環境活動推進課長】
静岡県内では、リニア中央新幹線は南アルプス国立公園を通過する計画となっていることから、本県の状況とは大きく異なっております。このため、本県では、このような組織を設置する考えは持っておりません。
【下奥奈歩 委員】
今日は主な環境の問題について質問いたしましたが、JR東海が示した補正を含む環境影響評価書は、知事意見を反映したものとはいいがたく、県民の環境を守る評価となっているとは言えません。県として、県民の環境を守るように環境影響評価のやり直しを求めるべきと考えます。
私は改めて、問題の多いリニア中央新幹線計画について、中止を含めた抜本的な見直しを県が国に求めること、リニア中央新幹線開業ではなく、環境首都あいちにふさわしく、環境充実の施策を行うことを求めて、質問を終わります。