〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団事務局〕
【下奥奈歩委員】
第141号議案 行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例の制定について、反対の立場から、質問をします。
この条例制定は社会保障・税番号制度、いわゆるマイナンバー法の施行に伴い、新たにマイナンバーを含む個人情報に関する規定を整備するものです。マイナンバー法は赤ちゃんからお年寄りまで全国民に原則、生涯変えられない12ケタの番号をつけ、また企業や官公庁にも13ケタの法人番号が割り当てられるものです。
マイナンバー制度が施行されて、10月末から個人番号を通知する「通知カード」の発送が開始されています。配達間違いなどの事故が相次ぐ一方、住民が希望してないのに自治体がマイナンバーを住民票に記載したりするなどのミスも起きています。厳重管理が必要な個人のプライバシーを扱う仕組みなのに、始動したとたんにトラブル続きでは国民の不安は募るばかりです。来年1月からの本格運用に突き進むのはあまりに危険です。県は、国がいうままに制度を推進していますが、さっそくトラブルが起こっている事態についてどう考えますか?答弁を求めます。
【情報企画課主幹(行政情報)】
10月からマイナンバーの通知が開始される中、これまでに郵便局による誤配や、配達の遅れなども発生しているようですが、誤って届けられたマイナンバーは、番号を振り直すなど今後の利用にあたり住民の方が困る又は不安になることがないよう適切に対応されていると聞いております。
また、通知カードの配達の遅れにつきましても、年内には配達を完了する予定ということで、1月からの制度の運用開始には支障ないものと考えております。
【下奥奈歩委員】
マイナンバー制度は、国民の各種個人情報を個人番号によって結び付けて、活用する制度で、利便性が協調されています。ですが、県民一人ひとりの個人情報が容易に名寄せ・集積されるということであり、ひとたび流出したり、悪用されたりすれば、甚大なプライバシー侵害やなりすましなどの犯罪の危険性を飛躍的に高めることになります。
マイナンバーを取り扱う企業側は、日本商工会議所が11月30日に発表した調査によりますと、「マイナンバーへの対応がほぼ完了している」とこたえた企業は、わずか13.9%となっています。一方「準備にまだ着手していない」「具体的に何をしていいかわからない」合わせて41.3%の企業が着手していない状態となっています。また、調査に対して、企業からは「マイナンバーの対応は完了したが、実際の運用が開始されたときに、問題が発生しないか懸念している」と不安の声が寄せられています。
始まってから、何か起きたときに「想定外でした。」では済まされない話です。
県民を守るために、情報漏えいを防ぐ対策として、地方自治体を含めて、個人情報を管理している諸機関から情報を流失させないように監視することが必要だと考えますが、県としてどう対応していくのでしょうか。答弁を求めます。
【情報企画課主幹(行政情報)】
行政事務でマイナンバーを利用する国や県、市町村のほか、企業等においても、情報漏えいすることのないようマイナンバーを適切に管理する義務があります。そのため、これまで以上にセキュリティ対策を強化していく必要があると考えております。また、県におきましては、職員研修なども実施しております。
また、県が民間企業の監視をすることはできませんが、安全管理対策を適切に行うよう業界団体を通じて周知を図っております。
【下奥奈歩委員】
中小零細業者にとってもこのマインバー制度は大きな負担となるものです。番号制度のもとで、従業員を雇用する事業者は、税務署に提出する源泉徴収票などの法廷調書に個人番号を記載することが求められます。そのため、従業員の個人番号の管理が求められることになります。個人番号は法律によって特段の管理が求められ、そのためのコストが生じます。専門家の方は、次のように話しています。「管理は、よほどコンピューターに精通した人でないと自力でこなせないでしょう。外部の業者に依頼すれば、さらに、負担がふえます。安全管理措置を実行すると企業はいくら負担することになるのか。『従業員が100人で、支店が数か所』という企業を想定して試算したところ、初期費用で1千万、毎年の維持費で4百万円という数字がでました。零細業者では、管理コストは、数十万円必要と言われています。」
「また、作業の面では、全ての社員、契約社員、アルバイトに加えて、その扶養家族全員に交付されるマイナンバーを集めて、来年1月からの給与支払いや、人事のシステムに反映させるだけでも、企業にとって大変な作業となります。」と企業への負担が大きいことを指摘しています。さきほど申し上げましたとおり、企業は作業に追われて、対応がまだ完了していない企業が多くあります。帝国データバンク名古屋支店の調査によりますと、愛知県内の企業も対応完了は1割未満となっています。
コスト面、作業面、で中小零細業者へ、重い負担が強いられることについて県としてどう考えていますか。答弁をもとめます。
【情報企画課主幹(行政情報)】
企業などにおいては、源泉徴収票やハローワークに提出する書類などに個人番号を記載するため、従業員の個人番号を収集、管理する必要があります。それぞれの企業の規模に見合った対策をしていただければよいと考えますので、国が示すガイドラインなどマイナンバーの管理方法について、引き続き、広報に努めてまいります。
【情報企画課主幹(行政情報)】
企業も大小様々でございますので体制的に余裕のない所もあると思います。ただ、小規模のところが大規模なシステムを導入する必要はございませんので、先ほど申し上げましたように、それぞれにあった対策をして頂ければよろしいかと考えております。
【下奥奈歩委員】
個人番号を利用することができる事務であげられている、「法律に基づく特別障害者等に障害の種類及び程度に応じて県が上乗せして支給する手当(愛知県特別障害者手当、愛知県障害者福祉手当・愛知県福祉手当)に関する事務や「特別支援学校に就学する児童の保護者等に対して法律による特別支援教育就学奨励費に県が上乗せして支払う経費に関する事務」は弱い立場の人に対して行われるもので、弱いものいじめではないでしょうか。
マイナンバー制度により、税や社会保障の分野では、徴税(ちょうぜい)強化や社会保障給付の削減の手段とされかねません。弱い立場の人をさらに追い詰めるものとなります。県がこのような弱いものいじめとなる制度を推進することは、県民の暮らしを守るという、本来の県の役割からするとそれに反しているのではありませんか。答弁を求めます。
【情報企画課主幹(行政情報)】
条例で定めようとしている二つの事務は、それぞれ国の法定事務に上乗せして手当等を支給する事務であり、申請などの手続も一緒に行われるもので、法定事務と独自利用事務は密接に関係しております。今回、仮に条例でこれらの事務を定めないとした場合、法定事務では添付書類がいらなくなるのに、県の事務のためだけに書類を添付する必要が生じ、実質的にマイナンバー制度のメリットを県民が享受できないことになってしまいます。
条例は、行政手続きに係る県民の負担を減らし、県民サービスの向上を図るものであると考えております。
【情報企画課主幹(行政情報)】
マイナンバー制度は、適正に運用することで、公平公正な社会の実現、住民の利便性向上を図っていくため、法令に基づいて全国一斉に実施しようとするものですので、県民に混乱が生じることのないよう、制度趣旨を踏まえて適切に準備を進めていくことが県の責務であると考えます。
【下奥奈歩委員】
根本的な問題である情報漏洩や監視社会への国民の不安がなくならず、また、実務面でも準備が大きく遅れているもとで、このままマイナンバー制度がスタートをしてしまうことは、今後大きな禍根を残すことになるのではないでしょうか。
マイナンバー制度が実施されなくても、住民生活への不都合は生じません。マイナンバー制度は、税、社会保障の分野をはじめ、住民の個人情報、多くの行政手続きに関連し、地方自治体の根幹にかかわる問題ともいえます。住民の不安が高まっているなか、スケジュールありきで進めるのではなく、もう一度、制度を根本から見直すことが必要だと考えます。
県として、県民の暮らしを脅かすこの制度を推進して、条例を制定するのではなく、国に対して実施中止を求めるべきと考えますがどうでしょうか。答弁を求めます。
【下奥奈歩委員】
最後に、いままで、述べてきたように、マイナンバー制度は問題や県民の不安が山積しています。そもそも国家による多岐にわたる個人情報の集積を許してよいのかという問題があります。憲法13条は個人の尊重を謳い(うたい)、プライバシー権を認めています。憲法で保障された人権を侵害していいはずがありません。憲法に違反する国家による情報集積を、社会保障という憲法で保障された国民の権利を切り捨てる方向で活用するなど断じて許せません。世界では米国や韓国のように共通番号の見直しに動いていたり、ドイツやフランス・イギリスではプライバシーを重視する立場から共通番号制度の導入そのものをあきらめていたりしています。
マイナンバー制度は、情報流出の懸念がぬぐえないとともに国家による情報集積は国民の監視をさらに高めるものです。
今回の条例制定の議案は、マイナンバー制度を自治体の場で実施をすすめるものです。
世論調査にも表れているような国民の不安を取り除く最良の方法は、マイナンバー制度を実施しないことです。国において実施中止を宣言することも当然ですが、愛知県においても、この条例案を成立させないことで、情報連携を許さず、マイナンバー制度を実質的に機能させないことが求められます。よって本議案に対して反対することを述べ、質疑を終わります。