議会報告

2015年7月7日 6月定例議会本会議の討論【わしの恵子議員】

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2015年7月7日 6月定例会本会議【わしの恵子議員】

日本共産党愛知県会議員団を代表して第90号議案、平成27年度愛知県一般会計補正予算(第2号)及び第92号議案・第94号議案・第95号議案・第104号議案について反対の立場から討論を行います。

 

【第90号議案、補正予算のラグビーワールドカップ開催】

最初に第90号議案、補正予算のラグビーワールドカップ開催についてです。

補正予算案にはラグビーワールドカップ2019開催のための負担金6666万7千円が計上されています。

日本共産党は、ラグビーワールドカップの日本開催については、日本や地域でのスポーツ振興にも役立つものであることから賛成です。

しかし、開催する地方が負担する金額が、12会場で総額36億円に及び、そのうちの4億円が愛知県と豊田市に提起され、愛知県としては2分の1の2億円を負担するという重大な問題があります。

所管の常任委員会の質疑でも明らかになったように、ラグビーワールドカップ2019の財政運営について、収入の大半は観客のチケット収入で賄うしかないという構造となっています。当局が示したのは、チケット代を2万円とかなり高く想定しても少なくとも3万3千人がチケットを買わないと収入不足になるというものです。これまでのジャパンラグビー、トップリーグの観客数は4700人と一桁違います。それを補うものとして地元負担金が36億円もかけられているのです。

しかもこうした負担のあり方が県民に十分知らされることのないまま、誘致がすすめられたことは極めて重大です。さらに県は、事前の「秘密保持誓約書」を提出し、「開催都市ガイドライン」の一般公開もしないまま、地元負担を隠して、誘致をすすめ、開催が決まってから負担を押し付けるやり方は、県民不在と言わざるを得ません。

 

冒頭にも述べましたが、日本共産党は、ラグビーワールドカップ特別措置法に賛成していますが、開催計画は適切なものでなければならず、地元自治体に過大な負担を押し付けるようなものであってはなりません。そのためにも国がしっかりと支援をすべきであり、なによりも住民合意のもとに進めるべきだと考えます。

 

補正予算のもう一つ問題は、人手不足に対応した人材育成を実施するという名目で、航空機製造、人材育成事業費が計上されていることです。

これは、厚生労働省が4月17日、「地域創生人材育成事業」に愛知県の介護分野及び航空機製造分野の人手不足に対応した人材の育成事業を採択したことに伴い、国が事業費の全額を負担するということで、補正予算案に計上されているものです。

3年間にわたる事業で、今年度は映像教材の開発を、28年度29年度は航空機の機体構造組立、実技在職者の訓練費を、その内訳は20日間の研修受講のための給料と通勤費などの諸手当、社会保険料を補助するものです。限度額を一人当たり25万円とし、愛知県では255人を予定しています。

その背景は、ボーイング787機の増産計画をすすめるためであります。部品の35%が日本で作られていますが、現在の人材の配置では、生産テンポは月10機ですが、さらに2019年には月14機の増産をめざしているということです。

しかし、これは、三菱重工業など大企業自体の問題ではないかと考えるものです。なぜ、航空機製造に公費を支出するのかとお聞きしたら、「県の重点政策であり、盛り上げる必要がある」という事でした。さらに危惧するのは、次期戦闘機F35と関係があるのではという問題です。今回の事業目的にはそのことは言及されていませんが、「F35の製造と関係ない」とは否定できないと考えるものです。

 

そこで第1に、航空機の製造については、三菱重工をはじめ、名だたる大企業の事業であり、公費を投入すべきではないこと。

第2に、次期戦闘機F35の製造も予定されており、軍需産業への公費投入であること。以上の理由から、第90号議案のラグビーワールドカップ開催及び、航空機製造人材育成事業に係る一般会計補正予算案には賛同できません。

 

【第92号議案愛知県県税条例等の一部改正】

次に、第92号議案愛知県県税条例等の一部改正についてです。

この条例改正は、国の地方税法等改正によるものでありますが、今年度から法人実効税率を段階的に引き下げるとともに、来年度も続いて法人事業税の所得割の引き下げにより、法人実効税率の引き下げを行うものです。これらの税収減の穴埋めのために、外形標準課税のさらなる拡大、減価償却制度の見直し、法人事業税の損金不算入化などが検討されています。

 

「稼ぐ力」のある企業の税負担を軽減し、経済の好循環を作り出すというのが政府の説明ですが、法人事業税の外形標準課税の拡大は、所得が赤字の法人でも、課税が強化されることになります。税は所得に応じて課税されるものですが、今回の改正は「赤字法人に増税、黒字法人に減税」です。今回の対象となるのは、資本金1億円以上の法人ですが、負担増となる赤字企業も少なくない数にのぼるのではと予想されます。

厳しい経営のときこそ企業に踏ん張ってもらえるように、地域に根づく雇用を生み出すよう財政面でも応援策をとるのが、本来の政治・行政の役割ではないでしょうか。

今、国上げて賃上げに取り組もうという一方、このような赤字企業への増税は、人件費などコスト圧縮を招き、逆に、雇用の安定化や賃上げにマイナスの影響を与えることになると考えます。以上の理由から第92号議案は賛成できません。

 

【第94号議案、住民基本台帳法施行条例の一部改正及び、第95号議案、愛知県個人情報保護条例の一部改正】

次に、第94号議案、住民基本台帳法施行条例の一部改正及び、第95号議案、愛知県個人情報保護条例の一部改正についてです。

これは「マイナンバー法」施行に向けて、2つの条例を整備するものです。

マイナンバー制度は、赤ちゃんからお年寄りまで住民登録をしている全員に生涯変わらない番号を割り振り、社会保障や税の情報を国が一括管理するものです。

国の計画では、今年10月から住民票をもつ国民全員に12桁の番号をつけ、マイナンバーとして、「通知カード」を市区町村を通じて郵送、来年1月から年金確認などの手続きでマイナンバーを使用することを要求し、希望者には顔写真やICチップが入った「個人番号カード」を交付するとしています。

これまでは年金、医療、介護、雇用の情報や納税・給与の情報はそれぞれの制度ごとに管理されていましたが、今後はマイナンバーで一つに結ばれます。

税や社会保障の個人情報を国が一元的に管理・活用し、地方公共団体が連携利用できるもので、そのねらいは、税や保険料の徴収強化や社会保障の削減にあります。いま、個人の年金情報の漏えい、流出発覚から1か月が過ぎ、この間、流出した情報は101万人分と判明、各地で不審電話が相次ぎ、お金をだまし取られる被害もあることなどマイナンバー制度への不信が広がっています。 政府がいくら「情報保護のさまざまな措置をとっている」と説明し、本県でも「マイナンバー法」による「特定個人情報」の目的外使用の禁止、例外事例を追加するなど、特定個人情報の保護条例の規定を整備する」としても懸念と不安は消せません。マイナンバーそのものがプライバシーを危険にさらす仕組みだからです。制度導入は断念すべきです。

 

従って、第94号、第95議案は認めることができません。

 

【第104号議案、訴えの提起】

最後に、第104号議案、訴えの提起についてです。

 これは、「愛知県高等学校等奨学金」の長期に渡り返済が滞っている方へ、返還請求訴訟の提起について議会の承認を求めるものです。

 今年の1月末現在で、滞納期間が6年以上の方に、配達証明郵便による通知をしたが、奨学金受給者、連帯保証人のいずれも返還の意思が示されなかったということで、債権の回収と消滅時効の中断を図るため、民事訴訟を提起しようというものです。

 私は、県教育委員会は、奨学金の返済が滞っている方々に対して、何度も電話や訪問活動など粘り強く働きかけ、返済を求める努力を尽くされていることは十分理解するものです。

 今回、県が行った返済が滞っている方々へのアンケート調査の回答を見ると、「生活苦しいが分割支払いを希望します」「長い間体調を崩して仕事もできず、支払ができませんでしたが、これから仕事をして払います」「親と協力して返金します」「生活保護を受けていて入退院を繰り返して収入が不安定なので父親に援助してもらいます」と滞納していること真剣に受け止めています。また、「母子で生活しており生活困難、いつまでに支払できるか約束できない」という方もあるなど生活相談が必要な方もあります。

 

問題は、6年間請求したが返済がないので返す意思がないと判断された方々のことです。奨学金返済ができず、不安と負担を抱えているのに、アンケートにも回答を寄せることもできず、心を痛めている人について、私は危惧するものです。貧困の増大、非正規雇用の増大など今日の青年の経済状況は深刻であり、県は丁寧で慎重な対応が求められています。

 

こんな中で、いま切実に求められていることは、高校生が本当に安心して使える奨学金制度に改善していくことであり、滞納者に対して訴えの提起を行うことは、返済に苦しんでいる人にますます大きな不安を与えてしまうことになるのではないかと思うものです

 

 そこで「愛知県高等学校等奨学金」が、高校での学びを保障するものとなっているかどうか、制度の現状について調べてみました。高校生向けの奨学金は、かつては、大学生向けの奨学金と同様に、旧「日本育英会」が扱っていましたが、10年前の2005年度から、都道府県に移管されました。そして国庫補助もありましたが、計画的に減らされ、そしてついに今年度からは、国庫補助がゼロになり、県独自の財政のみでこの事業を運用していくことになったのです。

 

憲法26条は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定め、「教育の機会均等」を保障しています。

 高等学校については、その高い進学率が示すように国民的な教育機関となっており、かつ、その効果は広く社会に還元されるものとなっている現状を踏まえ、高等学校教育に係る費用負担について、これまでの家庭による負担から社会全体で負担するよう政策を転換することが必要となってきています。にもかかわらず、国が国庫補助をゼロにしてしまったことは逆行ではないかと思います。

 

 そこで「愛知県高等学校等奨学金」制度が、本来の趣旨通り、教育の機会均等等を保障するにふさわしい制度となるよう、制度の改善を図るべきと考えます。何よりも、安心して利用できる奨学金にするため、返済が不要である奨学給付金制度にすることこそ求められているのではないでしょうか。

 

以上の理由から第104号議案の訴えの提起については賛同できません。

 

以上で討論を終わります。

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